アカデミー国際長編映画賞(Academy Award for Best International Feature Film)、従来の名称でアカデミー外国語映画賞(Academy Award for Best Foreign Language Film)は、アカデミー賞の部門の一つ。
概要
アメリカ以外の映画で、外国語(英語以外の言語)の映画のための賞。アカデミー賞の他の賞とは違い、アメリカ国内で上映されている必要はない[1]。
外国語映画の表彰は、1947年度から1949年度にかけては「特別賞」の一つとして[注釈 1]、1950年度から1955年度(1953年度は表彰なし)にかけては「名誉賞」の一つとして行われ[注釈 2]、1956年度の第29回からノミネート方式の「外国語映画賞」という単独の賞になった[注釈 3]。
国際長編映画賞を受賞するのはプロデューサーや監督ではなく、代表作品の選出国で[注釈 4]、授賞式で監督は選出国を代表してオスカー像を受け取り[1]、所有することが出来る[13]。2014年度の第87回から、初めてオスカー像に選出国と監督名が刻まれるようになった[13]。
日本作品では、2008年度の『おくりびと』(滝田洋二郎監督)、2021年度の『ドライブ・マイ・カー』(濱口竜介監督)の2作品が受賞している[14]。授賞式では名誉賞を受賞した3作品(『羅生門』『地獄門』『宮本武蔵』)[14]と通算でアナウンスされる[注釈 5]。
1975年度では日本人監督である黒澤明監督の『デルス・ウザーラ』が受賞しているが、本作はソビエト連邦作品である[16]。
2006年度の第79回には単独の賞になって50周年を迎え、日本の渡辺謙とフランスのカトリーヌ・ドヌーヴが非英語圏俳優代表として壇上に立ち、これまでの受賞作の歴史を紹介した[17][18]。
2019年度の第92回から、「国際的な映画製作環境において、“外国語”という言い方はもう時代遅れではないか」との懸念から、名称をアカデミー国際長編映画賞に変更することが、アカデミーによって発表された[19][20][21]。なお、候補作選定にかかるルール変更は特にない[1]。
受賞までの流れ
各国から出品
毎年各国から1作品だけ出品できる。実写の劇映画だけではなく、アニメーションやドキュメンタリーでも構わない[22][1]。40分を超える長編映画で、台詞の50%以上が英語以外の言語であり、正確な英語字幕も必要とされる[22]。
出品条件は、制作された国で前年の10月からその年の9月の間に初公開され、35ミリフィルムか70ミリフィルム、もしくはデジタル・シネマ・フォーマットでなくてはならず、少なくとも7日連続で劇場にて商業上映された作品であること[23]。またアメリカ合衆国国内で上映されている必要はない[1][23]。作品の適性など何らかの問題が生じた場合は「映画芸術科学アカデミー」が最終決定をする。
日本からの出品作は、日本映画製作者連盟が選考している[23]。
ノミネート選考
世界各国から出品された作品は、アカデミー賞を審査する「映画芸術科学アカデミー」によって厳選される。第79回(2006年度)からはノミネート発表一週間前に最終候補9作品が発表され、そのうちの5作品が本選にノミネートされるという形式になった。
第92回(2019年度)からは最終候補のショートリストが9作品から10作品に拡大された。その内7作品は国際長編映画コミッティ会員が、3作品を国際長編映画賞エグゼクティブコミッティ会員が投票で選ぶ[21][1]。
受賞選考
アカデミーによる上映会が行われ、5本すべての本選ノミネート作品を見たアカデミー会員のみによって投票が行われる。そして、最も多くの票を集めた作品に外国語映画賞が授与される。
受賞・ノミネート作品
1940年代
特別賞
1950年代
名誉賞
外国語映画賞
1960年代
1970年代
1980年代
1990年代
2000年代
2010年代
2020年代
英語圏からの出品
アメリカ以外の英語圏の国からも、英語以外の言語の作品が出品されている。以下は主なもの。
他の賞にもノミネートされた作品
外国語映画賞以外のアカデミー賞の部門には「ロサンゼルス郡で1週間連続ロードショーされた作品が対象」というノミネート条件がある。したがって、外国語映画賞へ出品された作品も、上記の条件を満たしていれば他の賞へエントリーされることができる。そのため、外国語映画賞本選ノミネート作品の中には、他の賞にもノミネートされた作品がある。以下、その主な作品例を挙げる。
外国語映画賞とは違う年に他の賞にノミネートされた作品
上記の例は同年に外国語映画賞と他部門にノミネート・受賞した作品のみである。しかし、外国語映画賞にノミネートされた後の別の年に「ロサンゼルス郡〜ロードショーされた作品が対象」のノミネート条件を満たせば、(外国語映画賞とは違う年の)他部門にノミネートされることも可能であった。以下はその主なもの。なお、ルール変更により現在は国際長編映画部門への出品と他の部門への出品を別の年のアカデミー賞に対してすることは不可となっている。
脚注
注釈
- ^ 1947年度(第20回)に外国語映画を特別賞(Special Award)として表彰[2]。1948年度(第21回)と1949年度(第22回)は、特別外国語映画賞(Special Foreign Language Film Award)として表彰。同時に特別賞(Special Award)とも[3][4]。
- ^ 1950年度(第23回)から1955年度(第28回)にかけて、5本の外国語映画を名誉外国語映画賞(Honorary Foreign Language Film Award)として表彰。同時に特別賞(Special Award)とも[5][6][7][8][9]。
- ^ 1956年度の第29回より、外国語映画部門(Foreign Language Film)を創立。「For the first time, there was a competitive category for foreign language films. …」[10]
- ^ ただし外国語映画部門が創設された1956年度(第29回)は、プロデューサーにも授与されている[10][11]。翌1957年度(第30回)から、選出国にのみ授与されるようになった[12]。
- ^ 単独の外国語映画部門が創設されてから、日本作品で2度目の受賞となる『ドライブ・マイ・カー』は、授賞式(第94回)では日本から(名誉賞と合わせて)「5度目の受賞」になると紹介。- プレゼンターから『ドライブ・マイ・カー』の受賞が発表された直後のアナウンス:「This is the 5th Oscar and 14th nomination for Japan.(これは日本の5度目の受賞と、14度目のノミネーションになります)」[15]
- ^ 監督、出演者、スタッフがほぼアルゼンチンで、製作国もアルゼンチン、ウルグアイ、スペイン共同製作にもかかわらずウルグアイ映画として出品したため失格。
出典
関連項目
外部リンク
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特別賞 | |
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名誉賞 | |
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