『カティンの森』(カティンのもり、ポーランド語: Katyń)は、2007年(平成19年)製作・公開のポーランドの映画(en:Cinema of Poland)。
第二次大戦中、ソビエト連邦のスモレンスク近郊に位置するカティンの森において、約2万2000人から2万5000人に及ぶポーランド人捕虜が内務人民委員部によって虐殺された「カティンの森事件」を題材とした映画である。R15+指定。
略歴・概要
自らの父親もまた同事件の犠牲者である映画監督アンジェイ・ワイダが、80歳のときに取り組んだ作品である[1]。原作は、脚本家でありルポルタージュ小説家でもあるアンジェイ・ムラルチクが執筆した『死後 カティン』(Post mortem. Katyń, 工藤幸雄・久山宏一訳『カティンの森』)である。構想に50年、製作に17年かかっている。
撮影は『戦場のピアニスト』等でも知られるポーランド出身の撮影監督パヴェウ・エデルマン、音楽はポーランド楽派の作曲家クシシュトフ・ペンデレツキが手がけた。ポーランドでは、2007年9月17日に首都ワルシャワでプレミア上映され、同年同月21日に劇場公開された[2]。
翌2008年(平成20年)、第58回ベルリン国際映画祭でコンペティション外上映された[2]。
ワイダは、2010年(平成22年)4月7日、ロシアのウラジーミル・プーチン首相、ポーランドのドナルド・トゥスク首相が出席した「カティンの森事件」犠牲者追悼式典に参列した[3]。同月10日に開催予定であったがポーランド空軍Tu-154墜落事故のため中止となった「カティンの森事件」追悼式典のための大統領機には、搭乗してはいなかった[4][5]。
日本では、2009年(平成21年)10月20日に東京国際映画祭で上映されたのちに[2]、アルバトロスが配給して同年12月5日に公開された[1]。翌2010年5月7日には同社が発売元となり、DVDがリリースされた[1]。
ストーリー
1939年4月、ドイツはドイツ・ポーランド不可侵条約を廃棄し、同年8月にドイツとソ連の間で独ソ不可侵条約が締結された。同年9月1日にドイツがポーランドに侵攻することで第二次大戦が始まり、9月17日にソ連も同様にソ連・ポーランド不可侵条約を廃棄してポーランドの東部に侵攻した。独ソ不可侵条約には秘密議定書があり、両国はそれに従ってポーランドへの侵攻と分割占領を行ったのである。
ドイツ軍に追われた人々と、ソ連軍に追われた人々は、ポーランド東部のブク川で鉢合わせになった。その中に、クラクフから、夫のアンジェイ大尉(アルトゥル・ジミイェフスキ)を探しに来たアンナ(マヤ・オスタシェフスカ)とその娘ニカ(ヴィクトリア・ゴンシェフスカ)がいた。そこで、逆にクラクフへ向かう大将夫人ルジャ(ダヌタ・ステンカ)に出会う。アンナは、ルジャ夫人にクラクフに戻るように勧められるが聞き入れなかった。
その後、アンナとニカは、駅でソ連へ連行される直前のアンジェイ、彼の友人イェジ(アンジェイ・ヒラ)らポーランド軍将校たちに出会うことができた。アンナはアンジェイに逃亡を勧めるが、アンジェイは軍への忠誠のため拒否し、家族と別れた。そして捕虜として教会に収容されたアンジェイはこれから起こることを日記に記そうと心に決める。
独ソ不可侵条約を破ってソ連領に侵攻したドイツ軍が、1943年4月に元ソ連領のカティンの森の近くで、一万数千人のポーランド将校の死体を発見した。ナチス・ドイツの宣伝機関は、これを1940年のソ連軍の犯行であることを大々的に報じた。
その後ドイツが敗北し、大戦が終結した1945年以後、ポーランドはソ連の衛星国として復興の道を歩み始めた。そしてソ連はカティンの森事件をドイツ軍の仕業であると反論し、事件の真相に触れることはタブーとなった。苦難を乗り越え、大戦から生き残った軍人や国民、カティンで親族を失った遺族らには厳しい現実が待ち受けていたのである。
やがてアンナのもとに、アンジェイ大尉の手帳が手渡された。手帳には、殺害の数日前までの出来事が、克明に記されていた。アンナは、アンジェイ大尉の身に起こったことを、改めて認識するのである。
スタッフ
キャスト
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マヤ・オスタシェフスカ
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アルトゥル・ジミイェフスキ
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ヴィクトリア・ゴンシェフスカ
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ヴワディスワフ・コヴァルスキ
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アンジェイ・ヒラ
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ダヌタ・ステンカ
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ヤン・エングレルト
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マグダレナ・チェレツカ
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パヴェウ・マワシンスキ
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アグニェシュカ・カヴョルスカ
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アンナ・ラドヴァン
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クルィスティナ・ザフファトヴィチ
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スタニスワヴァ・チェリンスカ
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クシシュトフ・グロビシュ
受賞・ノミネート
註
原作
- アンジェイ・ムラルチク『カティンの森』 工藤幸雄・久山宏一訳
- 集英社文庫、2009年10月。ISBN 4087605906
関連項目
外部リンク
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