カムリ(CAMRY)は、トヨタ自動車が製造している中型高級乗用車である。かつては日本国内で販売されていたが、現在は海外でのみ販売を行っている。
当記事ではトヨタ自動車公式の分類[1]に倣い、前身のセリカ・カムリ(CELICA CAMRY )を初代とする。また、以下のモデルについても記述する。
ゆったりした直進安定性と居住性を鑑み、ロングクルージングを意識して開発された高級セダンである。全世界100か国で累計1,800万台以上(2016年12月時点)を販売しているベストセラーカーであり、同じセダンのカローラと共にトヨタ自動車の屋台骨を支える世界戦略車でもある。2017年のトヨタ車の中での世界販売台数はRAV4、ヤリスに次ぐ第5位となっている[2]。
海外における人気は絶大であり、特に北米市場では乗用車部門で16年連続で販売台数トップの実績を誇っている。2016年は北米で39万台近くが売れており、これは毎日1,000台以上が売れている計算になる。またオセアニア・東南アジア・インド地域での人気も高い。
このため6代目以降は海外での販売を主眼に置いた開発がなされ、車幅は日本国内販売を主とするマークXや上位車種のクラウンよりも広く設計されている。EセグメントのBMW・5シリーズやメルセデス・ベンツ・Eクラスと同格寸法で、より大きな室内空間を意識した設計となっている。かつてはV型6気筒を搭載する上級グレードが販売されていたが、7代目以降の日本国内仕様、および海外専売となった11代目以降は直列4気筒のみとなっている。
2000年代半ばからはマークXと同車格として扱われ(姉妹車ではない)、機敏なドライブフィールを重視する後輪駆動のマークXと、後席居住性を重視したカムリとで販売チャネルおよび客層が分けられていた。
初代のみは小型車であるFR時代のセリカ/カリーナとの姉妹車で[注釈 1]、「セリカカムリ」を名乗っていた。
2代目でFF(前輪駆動)化されるとともに「セリカ」の名が取れてカムリの単独ネームとなり、クラウンより広い室内寸法を誇る中型車として、姉妹車となる初代ビスタとともにカローラ店におけるカローラの上位車種という位置づけとなった。続く3代目ではアメリカ、オーストラリア[注釈 2]での現地生産を開始し、本格的な世界戦略車としての道を歩み始めた。
2006年(平成18年)1月のフルモデルチェンジでウィンダムと統合され[注釈 3]、カローラ店専売車では最上級車種となっていた。車名を変えた後継車種の案も出たが、世界戦略車としてのネームバリューを国内で向上するという思惑と、「カムリ」という従来からのイメージ打破を目指し、車名を継続した。
2011年(平成23年)発売の9代目より日本国内向けはハイブリッド専用車種となった。他のトヨタのハイブリッド専用車種は全てのトヨタ販売店にて販売されているが、カムリは従来通りカローラ店のみの販売となっていた[注釈 4]。なお、ハイブリッド専用車となってコンセプトが明確になったことと、ラージサイズのハイブリッドセダンにしては価格設定が割安なことが受け、9代目のAVV50型は日本国内での売れ行きも好調であった。
2013年(平成25年)7月2日、米国トヨタ自動車販売はアメリカにおけるカムリの累計販売台数が1,000万台に到達したことを発表した。カムリは1983年に米国市場に投入され、初年は52,651台を販売した(2012年の販売台数は404,886台である)。それから30年での記録達成となった[3][4]。
2017年(平成29年)7月10日、日本で10代目にフルモデルチェンジしたタイミングで販売チャネルを拡大し、従前から取り扱っているカローラ店に加え、トヨペット店とネッツ店、加えて東京地区のトヨタ店での取り扱いを開始した。特にネッツ店に関しては、前身の販売チャネルのひとつである旧トヨタビスタ店で販売されていた初代セリカカムリ以来、約35年間のブランクを経ての投入となり、ラージサイズのセダンとしても2005年(平成17年)8月に販売を終了したアリスト以来となる。日本国内仕様の生産は堤工場が担当し、2020年5月時点で、トヨタモビリティ東京、および東京地区を除く全てのトヨタディーラー(トヨタカローラ店(以下、カローラ店)、トヨタ店、トヨペット店、ネッツ店)各店で扱った[注釈 5]。
2023年の11代目へのフルモデルチェンジをもって、再び日本国内での販売は終了。加えて北米向け仕様の日本工場での製造も終了(オーストラリア向けは継続[5])となり、以降は再び海外専売車となる。
1980年1月発売。セリカのセダン版として「セリカ・カムリ」(CELICA CAMRY)を名乗り[6]、2代目セリカ/カリーナの姉妹車であった(元来セリカのセダン版がカリーナにあたる)。同年3月のクレスタ発売と同時にトヨタビスタ店(現ネッツ店)がオープンすると、クレスタの下級車種としてビスタ店でも併売された。歴代カムリでは唯一の後輪駆動車である。
当時のトヨタでは、2代目カムリ/初代ビスタをカローラ店/ビスタ店で発売すべく開発中であったが、当時のカローラ店取扱のセダン系車種はカローラが最高級であり、それ以上のクラスはカローラ店の顧客には馴染みがなかった。そのため、できるだけコストをかけず(新たにデザインされたのはリア周りのみでフロント側は輸出用カリーナの流用だった)に市場を開拓すべく急遽市場へ投入されたモデルであり、販売期間は2年2か月(1982年3月販売終了)と短命であった。
1982年3月登場。キャッチコピーは「大きなカムリ」。トヨタでは初となる横置きエンジンによる前輪駆動を採用[注釈 7]し、セリカのサブネームが外れる。同時にビスタ店専売となる姉妹車のビスタが登場し、カムリはカローラ店専売車種となった。前輪駆動化によって「(当時の)クラウンより広い」と評された室内空間が売りであった。
このモデルからコロナに代わってトヨタを代表するミドルセダンとなり、米国をはじめ世界各地へ輸出されるようになる[注釈 8]。日本国内向けは4ドアセダンのみであったが、輸出仕様はビスタにあった5ドアリフトバックもラインナップされた。なお、米国仕様は法規制のため、SAE規格の角型4灯式ヘッドライトを採用していた。
トヨタ・オーストラリアは2009年12月、同国ビクトリア州のアルトナ工場において、カムリ・ハイブリッドの生産を開始した。同モデルはオーストラリアにおいて2010年2月から販売開始される。生産は年間10,000台が予定され、うち300台はニュージーランドへ輸出される計画である[14]。フロントグリル、テールランプなどが独自意匠となっている[15]。
日本仕様は2017年7月10日にフルモデルチェンジを実施。「TNGA」に基づき、プラットフォームやパワートレーンなどを完全新開発した点が大きな特徴である。取扱店は従前からのカローラ店に加え、トヨペット店とネッツ店でも併売されることとなった。
エクステリアは、TNGAに基づきエンジンおよび乗員レイアウトを下げることで低重心シルエット化。大人しい印象だった9代目モデルとは一転し、躍動感にあふれ、スポーティな印象を与えるデザインを採用した[35]。フロントは、トヨタ車独自のフロントフェイスである「キーンルック」を進化させ、アッパーグリルはスリム化。立体的なロアグリルと対比させるデザインとした。また、LEDヘッドランプは3層に重なったLEDクリアランスランプを備えたBi-Beam LEDヘッドランプとなった。サイドは低重心感を表現するためフードとフェンダーを低く構え、ベルトラインも低い位置に設定。ルーフの後端が延長され、サイドウインドウをコンパクトな形状に変更した。リアは9代目では左側に配置していた車名ロゴをバックドアガーニッシュ上に移動している。
ボディサイズは先代モデルと比較して全長は+35mm、全幅は+15mm拡大。一方、全高は25mm低くなっている。また、ホイールベースは50mm延長され2,825mmとなっている。
インテリアは、TNGAに基づき部品の小型化やレイアウトの見直しを行い、インストルメントパネルの張り出しを抑えるとともに、エンジンフード・カウル・ベルトラインを下げて視界を改善している。また、センタークラスターパネルはナビゲーション(「G"レザーパッケージ"」に標準装備)とヒーターコントロールパネルを一体化し、段差や見切りが限りなく少なく面一に近い仕様の「フラッシュサーフェス」デザインを採用した。パーキングブレーキにはカムリ史上初となる電動式を採用。
トヨタ車では初となる液体封入式のエンジンマウントを4点すべてに採用して最適配置。サスペンションはフロントに新開発のマクファーソンストラット式を、リアにはダブルウィッシュボーン式を採用。パワーステアリングにはラック平行式電動パワーステアリングを採用したほか、ステアリングコラムを新開発し、剛性を高め、操舵感を向上している。
パワートレインは、TNGAを導入した完全新設計の次世代エンジン「ダイナミックフォースエンジン」と、改良を加えたハイブリッドシステム「THS II」を組み合わせて搭載。エンジンは全く新しい形式名を与えられた「A25A-FXS」型。また、モーターも新開発の「2NM」型が搭載された。世界トップクラスの熱効率41%を達成し、動力性能・燃費は大きく向上。システム最高出力は先代比で4kW(6PS)向上し155kW(211PS)を発生する。また、海外市場向けに搭載されるV型6気筒3.5Lエンジン「2GR-FKS」型は301HPの出力を発生する(北米仕様の数値)。2019年には日本でも北米仕様のXSEグレードをベースにトムスからC35の名前でV6エンジン搭載車が日本国内でも発売される。またトランスミッションは電気式無段変速機を継続採用するが、新たに6速シーケンシャルシフトマチックを備えた。(Direct Shift-CVT)
ハイブリッド用バッテリーをリアシート背面から床下へ移動したことでトランク容量が先代の440Lから525Lへ拡大され、国内仕様においては7代目以来となる全面トランクスルー機構が復活した。
日本国内仕様のハイブリッド用バッテリーはリチウムイオン電池のみとなる[注釈 19]。
衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」を全車に標準装備するとともに、後退時の死角に左右後方から接近する車両を検知して自動的にブレーキ制御を行う「リヤクロストラフィックオートブレーキ」をトヨタ車として初採用した。
アメリカ合衆国アメリカ・ケンタッキー州ジョージタウン TMMK(北米向け)
日本(オーストラリア向け)
2023年11月14日にアメリカで発表、この代よりガソリン車はなくなり、全車ハイブリッド車のみとなる[46]。(一部、中国向けには2000ccガソリン車の設定あり)また日本では販売されない。
エクステリアでは、この数年でデビューした5代目プリウスやクラウンシリーズなどと同様、「ハンマーヘッド」のフロントマスクを採用。
エンジンは2.5L4気筒エンジンと第5世代ハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインを搭載。従来型と比べ、モーターはより軽量・コンパクトとなり、システム出力を強化している。低速域ではエンジンの回転数を低く抑えるとともに、多くのパワーをハイブリッドシステムから引き出すことで、加速力と燃費性能を両立させた。駆動方式はFFと全輪駆動(AWD)で、最高出力はFFモデルでは225ps、AWDモデルでは232psとされた。サスペンションのチューニングも刷新され、レスポンスやスタビリティ、ハンドリング性能を改善。運転者に安心感を抱かせるとともに、快適性を高めた。基本的にはハイブリッド専用車となるが、中国では2.0リッターの純ガソリン車もラインナップされる。
先進安全機能面では、歩行者検知機能付きのプリクラッシュセーフティシステムや車線逸脱防止システム、オートハイビームなどの予防安全装備のほか、全車速追従機能付レーダークルーズコントロールといった運転支援機能も含まれたToyota Safety Sense 3.0を搭載する。
2007年から、北米で最も人気のある自動車レース・NASCARの最高峰クラスであるモンスターエナジー・NASCARカップ・シリーズ(カップ戦)と、その直下のエクスフィニティ・シリーズにカムリ[注釈 20]で参戦している。規則により駆動形式はFR、エンジンはV型8気筒自然吸気となっている。
2008年3月9日のスプリントカップシリーズ第4戦ジョージア州アトランタ・モーター・スピードウェイで、ジョー・ギブス・レーシングのカイル・ブッシュのドライブで、外国車メーカーとしては1954年のジャガー以来、日本車メーカーとしては史上初となる優勝を達成した。
2009年にはネイションワイド・シリーズ(現・エクスフィニティ・シリーズ)で、ジョー・ギブスのブッシュがトヨタとして初のドライバーズ・マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得している。
2011年にはF1王者のキミ・ライコネンが、カムリでネイションワイド・シリーズにスポット参戦した。
2015年にはカイル・ブッシュが骨折による欠場という苦境を跳ね返し、トヨタと自身にとって初のドライバーズチャンピオンを獲得。続く2016年にはデニー・ハムリンがトヨタ初のデイトナ500制覇をもたらし、同年マニュファクチャラーズチャンピオンも獲得(アメリカ以外の自動車メーカーとして初)。またエクスフィニティでもダニエル・スアレスがチャンピオンとなっている。
2017年にはマーティン・トゥーレックス・ジュニアが圧倒的な速さでドライバーズチャンピオンとなり、マニュファクチャラーズチャンピオンも連覇した。
2018年にはエクスフィニティ・シリーズでカムリでの参戦が終了。後継はGRスープラとなった。
2019年のカップ戦は、最終ラウンドに進んだ4台中3台をカムリが占める圧倒的な速さをみせた。最終戦ラウンド前には3度目のマニュファクチャラーズ制覇を決めた上、ブッシュが2度目の戴冠を果たしている。
2017年のデトロイトモーターショーでのXV70型カムリのワールドプレミアでは、トヨタ自動車社長の豊田章男のあいさつ中に、ブッシュとハムリンが登場するサプライズがあった[47]。また同年のSEMAショーではカイル、ハムリン、トゥーレックス・ジュニア、スアレスの4人がそれぞれカスタマイズした4種類のカムリを披露した[48]。
オフィシャルカーとしても活躍しており、2009年にはNASCAR史上初めてのハイブリッドカーのペースカーとしてカムリ・ハイブリッドが登場。また2012年のデイトナ500ではフルモデルチェンジしたカムリがペースカーとして使用されている[49]。
アルゼンチンのツーリングカーレースである『トップレースV6』や『ツーリスモ・カルッテラ』では、カムリがベース車両として用いられている。
1990年代スーパーツーリング規定下の南アフリカツーリングカー選手権では、3S-G(直列4気筒ターボ)のカムリが参戦していたが、これは日本ではセプターの名で発売されていた車種である[50]。トヨタのワークスドライバーだった関谷正徳は、1995年にキャラミで行われたレースにこのマシンでゲスト参戦している[51]。
ドラッグカーとしても使用され、2015年にTRD USAの開発したカムリのファニーカーがNHRAでタイトルを獲得している。
また、ワークス活動ではないが中東地区ではドリフト仕様のベース車として、XV30型、XV40型を中心に日本でいうところのAE86レビン/トレノ同様人気がある[注釈 21]。
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