RAV4(ラヴフォー)は、トヨタ自動車が生産・販売しているクロスオーバーSUV。4代目は海外専売車となっていたが、5代目から再び日本市場に投入された[1]。
初代RAV4は本国の日本でいう「5ナンバーサイズ」に収まるコンパクトなサイズのクロスオーバーSUVであったが、主に北米市場の要求から、モデルチェンジのたびにボディサイズを拡大、2代目以降3ナンバーサイズとなった。主要市場の欧米においては他の同社製SUVよりもコンパクトなサイズとなっている。生産はトヨタ自動車高岡工場(愛知県豊田市)と、グループ会社の豊田自動織機長草工場(愛知県大府市)である。
4代目は日本での販売こそされていなかったものの、欧州全域・北米・南米・オセアニア・中国・東南アジア・南アフリカなど、世界200か国で使用される世界戦略車である。2016年時点でRAV4はカローラ、ハイラックスに次いで世界で3番目に売れているトヨタ車であり[2]、2017年には世界全体の自動車販売台数ランキングでも4位となるほどの人気を示している[3]。特に北米での人気は際立っており、アメリカの乗用車販売台数で16年連続1位であったカムリを抜いて首位に立った[4]。
国内復帰した5代目も安いとは言えない価格帯と全幅1855ミリメートル~という巨大なサイズながら、オールマイティな優秀な点が高く評価されて5か月間もの間日本の月間販売台数SUV部門1位を獲得し続けた上[5]、2019-2020年の日本カー・オブ・ザ・イヤーも受賞した。2019年の世界販売台数ランキングでは3位につけ、1位争い常連のフォード・Fシリーズをも脅かす勢いである[6]。2020年にはシリーズ累計1000万台に到達している。
3S-FE型 2L 直4 135ps/18.5kg・m
1989年10月に開催された東京モーターショーにRAV-FOURとして出展し、4年後の1993年10月に開催された東京モーターショーにプロトタイプが披露された後、1994年5月に発表された。
カローラ、セリカなどのコンポーネンツを流用しながらも、フロアパネルは独自に起こされ、リアサスペンションも鍛造リンクを用いた仮想球面支持の専用品となるなど、オン・オフ両面の性能追求のため、惜しみなく技術が投入されることとなった。
パワートレーンは直列4気筒 2.0L 3S-FE型 ガソリンエンジンとトランスミッションを横置きに搭載し、ドライブトレーンには日本車では数少ないベベルギア式のセンターデフを持つ本格的なフルタイム4WDである。
CMキャラクターには木村拓哉が起用され、本来RVに興味のない若い女性層にも売れた。
1995年4月には、ホイールベースを延長し、居住性と利便性を向上させた5ドアモデル「RAV4 V」(ラヴフォーファイブ)が追加された。
1996年8月にマイナーチェンジを実施し、スポーツエンジンである 3S-GE型 を搭載した3ナンバーボディのスポーツモデルTypeG、3ドアソフトトップ(前席は標準型にも設定されていた脱着式パネルサンルーフで、Bピラー以降が幌のもの。いすゞ・ミューと同じタイプ)も追加された。1998年8月には平成10年アイドリング規制に適合。
シティユースを目的とした車ではあるものの、余裕のある最低地上高や優秀な4WD性能、及びボディ下部が破損しにくい樹脂プロテクターで覆われていることなどから、プライベートで足回りのチューニングを施しオフロードで力を発揮させるユーザーや、全日本オフロードトライアルのシリーズ戦に出場する選手も登場。また、この4輪独立サスペンションは、オンロードでは乗用車と変わらない操縦安定性と快適性をも提供する。RAV4をベースとした電気自動車のRAV4 EVも後にフリート販売された。
変わったバリエーションとしては、「パーソナルセレクション」という、ボディカラーの配色、内装色を指定された色の中から自由に選べるオプションがあった。初期の頃には迷彩パターンや、Bピラーとルーフ一部をロールケージのように塗り分けるパターンもあったが、後期型以降は、メインの外板×バンパーやアンダーパネル×内装色の組み合わせを選ぶシステムに落ち着いた。
2000年4月[7]に生産終了。在庫対応分のみの販売となる。
2000年5月に2代目と入れ替わる形で販売を終了した。
2000年5月に登場。海外戦略を重視したために、同年のジュネーブモーターショーで海外先行デビューした。3か月後の8月にフルモデルチェンジしたカローラ系のコンポーネンツを使用するが、フロアパネルは先代同様に専用設計となっている。エンジンは2WD用に1ZZ-FE(1.8L)と、4WD用に1AZ-FSE(2.0L直噴)が設定されている。グレードは下からX、X-G、エアロスポーツ、ワイドスポーツの4つでそれぞれに4ATと5MTが組み合わされていたが、2003年8月のマイナーチェンジ時にエアロスポーツ、及び各MT仕様が廃止された。
当モデルは、先代の弱点であった室内空間の貧弱さを克服する方策としてボディサイズを拡大し、全モデルで3ナンバーボディサイズとなった(それでも他社製の同クラスSUVに比べると小型であった)。また、先代モデルが3ドアモデルメインの開発であったことに対し、当モデルではより居住空間に優れた5ドアモデルメインの開発が行われた。内外装の質向上も著しく、よりシティユースを志向したモデルであると言える。しかし、日本国内でのSUVブームの沈静化もあり、最終的に良好なセールスを記録するには至らなかった。反面、欧米では非常に人気が高く、輸出仕様には本革シートを装備したモデルや、ディーゼルターボやガソリンターボエンジンを搭載したモデルも存在している。
2000年に制定された低排出ガス車認定制度における認定車第1号であり、最初に同ステッカーをつけた車種でもある。
2005年10月[8]に生産終了。在庫対応分のみの販売となる。
2005年11月に3代目と入れ替わる形で販売終了。
2005年11月14日に登場。国内目標月間販売台数は2000台。2006年1月から海外販売を開始し、グローバルでの目標年間販売台数は30万台。
同年のフランクフルトモーターショーでお披露目された。トヨタの「MCプラットフォーム」を進化させた「新MCプラットフォーム」を初めて採用した車種である。エンジンは上郷・下山両工場製の2AZ-FE(2.4L)のみ。全モデルでCVTのみの設定となる。4WD性能はこれまでのセンターデフ+ビスカスカップリング式フルタイム4WDではなく、電子制御式4WDに変更された。
当モデルは、先代モデルに比べてさらにボディサイズが拡大され、海外市場をより強く意識した設計とされている。また、初代から設定されていた3ドアモデルが廃止され、5ドアモデルのみの設定となるが、海外向け(欧州・アフリカ・南米の一部以外)のモデルには荷室などを延長したロングボディがあり、ドア枚数こそ変わらないものの、これまで通りロングとショートの2種類のボディタイプを持つ。ロングボディ仕様は、日本国内でも2007年8月から派生車種「ヴァンガード」として投入された。なお、ロングタイプでは3列シートも選択可能で、エンジンは3.5L V6(北米、豪州等のみ)エンジンも用意されていた。
欧州向けや南米・アフリカ向けの一部は日本と同じサイズのショートボディであり、4WDモデルのみの設定である。また他の地域ではみられない、1AZ-FE(2.0L)および2AD-FTV(2.2Lディーゼル、135ps)、2AD-FHV(2.2Lディーゼル、180ps)エンジンを搭載したモデルも存在した。なお、ディーゼルエンジンと組み合わされるトランスミッションは6MTのみである。また、欧州向け右ハンドル車(主にイギリス向け)は、豊田自動織機のみでの製造となっている。
日本仕様はネッツ店専売車種であるため、フロントエンブレムにはトヨタマークではなく“N”をかたどったエンブレムが採用された。ネッツ店での専売化により、従来型までのサブネーム「J」及び「L」は消滅した。なお、カローラ店とネッツ店で併売されていたクルーガーは、当車の発売に合わせカローラ店専売モデルとなったが、2007年6月に後継車ヴァンガードの発売を機に消滅した。発売当時のグレード構成は下からX、G、スポーツの3種。
生産工場はトヨタ自動車田原工場、及び豊田自動織機長草工場、中国・天津の一汽豐田天津工場である。
2012年11月開催のロサンゼルス・モーターショーにてワールドプレミア、翌2013年1月より北米市場に、また欧州市場には同年3月に投入された[11][12]。韓国においても2013年中盤に販売を開始。日本での生産工場は高岡工場と豊田自動織機長草工場の2か所。
なお、日本では2013年11月に当車のプラットフォームを使用した兄弟車である3代目ハリアーが導入されたこと、当時は国内でのSUVの人気が現在の様に爆発的ではなかったこと等から投入は見送られた(この時期、初代RAV4からのライバル車であるホンダ・CR-Vも、5代目投入までの2年半にわたり日本市場から撤退している。)。
北米仕様のエンジンは2.5Lとなり、トランスミッションは4速ATから6速ATに変更された。欧州仕様は先代同様の2.0Lガソリン、2.2Lディーゼルに加え、新開発の2.0Lディーゼルを搭載する。
2015年のマイナーチェンジで、オーリスに似た近年のトヨタのデザインアイコンである「キーンルック」をフロントに採用すると共に、カムリやハリアーと同じ2AR-FXE型2500cc直4ハイブリッドユニットを搭載したモデルも追加された。
世界的な売上は好調で、2016年、2017年と世界のSUV販売台数1位となっている[13]。
ちなみに本モデルの18インチアルミホイールは日本向けのU60系ハリアーの特別仕様車に流用設定されていた。
5代目は、北米市場でおいて2018年11月に発表、ガソリン車は同年12月より販売を開始したほか、ハイブリッド車は2019年3月下発売された[14]。日本での生産工場は高岡工場と豊田自動織機長草工場の2か所。
「TNGA」に基づく「GA-Kプラットフォーム」の採用に加え、パワートレインを刷新。トヨタが「ダイナミックフォース エンジン」と呼ぶ新世代2.5L直噴ガソリンエンジン(北米仕様A25A-FKS、最高出力は203hp)に、「Direct Shift-8AT」を組み合わせた(北米仕様)ほか、新型2.5Lハイブリッドシステム(THS II)が搭載される。日本仕様は、2.0LのM20A-FKSエンジン+CVT、ハイブリッド仕様の2種が導入された。
また2.0Lのガソリン車のうち、「Adventure」「G "Z package"」グレードには新開発の「ダイナミックトルクベクタリングAWD」を採用。走行状況に応じてリヤのトルクを左右独立で制御する「トルクベクタリング機構」に加え、前後輪の車輪軸に採用した世界初の「ラチェット式ドグクラッチ」により、2WD走行時に、後輪に動力を伝達させる駆動系の回転を停止させて損失を低減し、燃費向上を目的とした「ディスコネクト機構」を採用。また、ハイブリッド車に採用する電気式AWDシステム「E-Four」は、電気で駆動する後輪の全体トルクが先代(4代目)比1.3倍に向上したほか、走行状態に応じて適切に後輪にトルクを配分する新制御を採用した[15]。
2020年6月にはプラグインハイブリッドモデルのRAV4 PHVが導入された。ハイブリッド車に採用されている「THS II」をベースにしたプラグインハイブリッドシステム「THS II Plug-in」が採用され、フロントモーターを変更して高出力化したことでシステム最高出力を225kW(306PS)に向上させ、瞬時の加減速も可能。大容量リチウムイオンバッテリーを車体中央の床下に配置し、低重心化と重量バランスの最適化を行った。また、AC100V・1500Wの外部給電機能が標準装備されており、ラゲージ内に備わっているアクセサリーコンセントに加え、付属のヴィークルパワーコネクターを車両後方右側の普通充電インレットに差し込むことで外部給電用コンセントとして使用可能になる。給電モードはバッテリーのみを使用するEV給電モードとバッテリー残量が所定値を下回るとエンジンが起動するHV給電モードの2種類が設定される。なお、2022年10月の一部改良によりRAV4へ統合され、プラグインハイブリッド車専用グレードとなる「Z」として設定された。
日本仕様では、WLTCモードにおける燃料消費率並びに排出ガスに対応しており、ガソリン車・ハイブリッド車・プラグインハイブリッド車(旧RAV4 PHV)問わず全車で「平成30年排出ガス基準75%低減レベル(☆☆☆☆☆)」認定を取得している(ハイブリッド車ではJC08モードでの燃料消費率も併記されている)。
1995年に開催された、世界初のEV専門ラリー「第一回スカンジナビア・エレクトリック・カー・レース」にRAV4が出場。ニッケル水素電池と20kWのモーターでコンバートEVにしたこのRAV4は見事に総合優勝を飾った。またこのラリーで得たデータが、のちのプリウスのハイブリッド開発に活かされている。
EV仕様のRAV4はその後も1996年から2003年まで生産され、1998年のモンテカルロのEVラリーや、2015年のパイクスピーク・ヒルクライムにも登場した[29]。
00年代のダカール・ラリーではベルギーのプライベーターにより、トヨタのV型8気筒エンジンやディーゼルエンジンを搭載した、RAV4の改造車やプロトタイプが複数台参戦した[30][31]。
4代目では、ラリー仕様の前輪駆動のRAV4がTRD USAによって開発されており、複数の北米ラリーの二輪駆動部門に参戦。オートマティックトランスミッションとテイン製ダンパーを装着し、かつてセリカとタコマでパイクスピーク・ヒルクライムを連覇したロッド・ミレンの息子、ライアン・ミレンがドライブしている。2016年にはラリー・アメリカでフォード・フィエスタなどを相手に3勝を挙げクラス2位に入る活躍を見せた[32]。また2017年には新たに誕生したARAナショナル・チャンピオンシップの二輪駆動部門にも参戦、開幕から4連勝して初年度のクラスチャンピオンを獲得した[33]。
初代と2代目は、トヨタカローラ店系列で「RAV4L」、ネッツ店(旧・トヨタオート店)系列で「RAV4J」として販売された。3代目はネッツ店専売となり車名も「RAV4」に統一された。5代目ではネッツ店に加え、2代目以来となるカローラ店での取扱を再開した。
なお、東京都では、ネッツ店系のネッツトヨタ東都とネッツトヨタ多摩、カローラ店系のトヨタ西東京カローラに加え、2019年4月にトヨタ東京販売ホールディングスと同社傘下の販売会社4社(東京トヨタ自動車・東京トヨペット・トヨタ東京カローラ・ネッツトヨタ東京)の統合により発足したトヨタモビリティ東京でも取り扱われるため、都内全てのトヨタディーラーでの購入が可能である。
また、2020年5月1日に、東京都を除く全ての地域で全車種併売化されたことに伴いトヨタ店とトヨペット店での取扱が開始された。
「Recreational Active Vehicle 4Wheel Drive」の頭文字。「アウトドアでもアーバンシーンでも見て乗って楽しいクルマ」の意味が込められていた[1]。またRAV4LのLはLiberty、RAV4JのJはJoyfulを表す[34]。
2019年4月に発売された5代目は「Robust Accurate Vehicle with 4 Wheel Drive」の頭文字(バクロニム)に変更。英語で「SUVらしい力強さと、使用性へのきめ細やかな配慮を兼ね備えた4WD」の意味が込められている[35][1]。
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