HS(エイチエス、Lexus HS)は、トヨタ自動車が展開する高級車ブランド「レクサス」が販売していた4ドアセダン。トヨタ・アベンシスをベースにしており、レクサス初のハイブリッド専用車である。
2009年(平成21年)に登場。レクサスとしてはSUVの「GX」[注釈 1]以来の新車種であり、また同ブランドでは初となるハイブリッド専用車種である[注釈 2]。また日本で販売されるレクサス車としては初のFF方式の4ドアセダンとなる[注釈 3]。
海外ではアメリカのみで販売されていたが、販売不振により2012年1月をもってハワイ以外での販売は終了した。その後円高による輸出採算の悪化や、2011年にはより安価な「CT」の登場により販売不振が加速する結果となり、ハワイでの販売も2012年12月で終了したため、それ以後は完全な日本市場専用車種となった。
同じハイブリッドカーであるプリウスが2代目以降に採用したハッチバックの「トライアングルシルエット」ではなく、コンサバティブなノッチバックスタイルのセダンスタイルをとる。
ボディサイズは、DセグメントFRセダンである「IS」に近い大きさ[注釈 4]で、日本の大都市圏での取回しなどにも配慮したという。プラットフォームは、3代目プリウスやアベンシス、オーリスなどにも用いられている新MCプラットフォームを採用。リアサスペンションにはダブルウィッシュボーン式を採用した。
パワートレーンは、プリウスなどにも搭載される「リダクション機能付THS-II」を踏襲しており、143PS(105kW)・27.5kgf・m(270Nm)を発生する2JM型電気モーターやバッテリーも共通である。ガソリンエンジンはプリウスの1.8L(2ZR-FXE)から、2.4L(2AZ-FXE)へと変更され、パワフルで静粛性の高い走りと同時に、コンパクトカーの「ヴィッツ」をも凌ぐ23.0km/L(10・15モード)[注釈 5]という低燃費を実現した。また、日本のレクサス車としては初の直列4気筒エンジン搭載車、かつレギュラーガソリン対応車となった。
エクステリアデザインは、レクサス共通のデザインテーマ「L-finesse」に基づき、空力性能(Cd値=0.27)を実現。のち2013年に、フロントマスクはIS Fからレクサスのテーマデザインとして採用されたスピンドルグリル(糸巻き台形のグリル)に変化。またLS600hやRX450hに続き、LEDヘッドライトを採用した。
インテリアデザインは、視認性と操作性を両立するために、計器類やカーナビゲーションのディスプレイはダッシュボード付近に集中して設置されている。そのため、操作デバイスには「リモートタッチ」が採用され、マウスのように手元で操作することができる。インテリアの一部にはエコプラスチック[注釈 6]を採用するなどエコロジーに配慮されている。
後にトヨタブランドから発売された「SAI」は、HSの姉妹車にあたり、プラットフォームは勿論のこと、ハイブリッドシステムや車体の基本骨格、フロントドアなどの部材に至るまで多くが共通設計であった。SAIは日本国内専売車種として車体サイズが僅かに縮小されているほか、吸音材の違いにより車重も軽く、静粛性の差異や内外装の製造基準など、全般にはLEXUS車たる「HS250h」の方が高品質であった。
ただSAIはトヨタブランドでありながら、LEXUS車と同一の製造ライン(トヨタ自動車九州宮田工場)で生産され、他のトヨタ車と比較しても、眼に見えない処にコストをかけた、付加価値の高い商品に仕上がっており、クラウンに比肩する静粛性と、それに準じた内装、装備品を備えていた。
このため、価格の近接していたHSのエントリーモデルとSAIの最上級車種(G-Aパッケージ)とでは、価格の相違、装備品の充実度などから選択肢としての議論があった。もっとも、SAIにしても車輌サイズ(見栄え)と価格帯が万人受けすることがなかったため、販売面では苦戦を強いられ、HSよりも早々に販売を終了することとなった。最終的にはかつてのプログレやブレビスでもそうであったように、日本国内における「小さな高級車」の難しさを証明するかのような結果となった。
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