ノア(NOAH)は、トヨタ自動車が販売しているミニバン型乗用車である。製造はトヨタ車体富士松工場が担当している。
先代モデル「タウンエースノア」「ライトエースノア」(「デルタワゴン」)の後輪駆動方式からイプサムのプラットフォームを活用した前輪駆動方式に転換して低床化し、スライドドアを後席左側だけではなく後席右側にも設け、またエアロパーツ装備が前提となるなど現代的な改良が計られている。また、窓を開けた状態でスライドドアを開けようとすると途中で止まる安全装置が機能する。
本モデルからタウンエース/ライトエースの名が外れ、トヨタカローラ店販売車種がこの「ノア」(旧タウンエース)、ネッツ店販売車種が「ヴォクシー」(旧ライトエース)と改名している。ダイハツ向け姉妹車は廃止された。
三角窓状の嵌め込み窓があり、ヴォクシー同様、2代目までセンターメーター、3代目からはオーソドックスなアナログメーターを採用している。なお2代目から香港とマカオでも販売がされている。
3代目ではノアとヴォクシーの発売に遅れてトヨタ店・トヨペット店向けの姉妹車「エスクァイア」が登場し、かつての「タウンエース3兄弟(タウンエース、ライトエース、マスターエース)」の構図が復活。トヨタとしては80-90年代にかけて展開された「マークII三兄弟」以来の3兄弟となる。これによりポルテ&スペイド同様、実質的な全店併売車種となった。その後、3兄弟ともに全店併売へ移行され、3兄弟のグレード体系が整理された際、ヴォクシーから5ナンバーのスタンダード仕様を引き継いだことで、3兄弟の中ではグレード体系が多いポジションとなった。
エスクァイアは1代限りで販売終了となったため、4代目は発売当初ヴォクシーとの2兄弟車種に戻ったものの、後にスズキへランディとしてOEM供給を開始。メーカーを跨ぎながらも3兄弟体制が復活した。
初代モデルが好評だったため、キープコンセプトでのフルモデルチェンジとなった。プラットフォームは先代のものを改良して引き続き使用し、センターメーターも引き続き採用されている。また、この2代目には、「バルブマチック[1]」という、新システムを採用したエンジンが初めてSiに搭載された。また、燃費性能も向上され、全車「平成22年度燃費基準+20%」を達成している(後に、2WD車と「Si」の4WD車は「平成22年度燃費基準+25%」達成)。ボディーサイズは、基本的に先代と同じく5ナンバーサイズを保っているが、Si, Sはワイド化されたフロントフェンダーとエアロパーツの装着によって全幅が1,720mmに拡大し、3ナンバー車となる。また、当モデルの3ナンバー車は渦巻き型のホーンが標準で装備されている。Siにはアイシスに続きトヨタのミニバンとしては2車種目となるパドルシフトが装着される。また、サードシートにはワンタッチで折り畳みから跳ね上げまでできる世界初の「ワンタッチスペースアップシート」を装備した。
路線バスとしての使用例もあり、岡山県内に本拠地を置く中鉄バスがコミュニティバス用に保有している。また、トヨタ自動車東日本の工場がある岩手県内に本拠地を置く岩手朝日テレビでは本車を(同局のラッピングが描かれた)ロケ車として保有している[要出典]。
当型は香港、マカオ、タイ、ブルネイ、マレーシア、シンガポールでエアロモデルとノーマルモデルの2グレード展開で販売されていた(形式はZRR7#Rとなっている)。
また、インドネシアにおいては、「NAV1」(ナブワン)の車名で2017年現在においても販売されている[3]。
エクステリアは、3代目ヴォクシーと共通のデザインコンセプト「EMOTIONAL BOX」を掲げ、車外からでも室内の広さがわかる力強いハコ(箱)とし、アンダーグリルと一体化した大型フロントグリルとヘッドランプの組み合わせにより、ワイド感とフロントマスクの厚みを持たせ、ミニバンの王道を行く"堂々感"を表現。また、2代目に引き続いてドレスアップ仕様(3ナンバー登録)の「Si」を設定し、迫力のあるフロントフェイスと低重心のワイドボディを専用フロントフェンダーパーツで強調させ、圧倒的な存在感を持たせた。なお、リアワイパーの位置が2代目までのバックドアガラスの下からバックドアガラス上部に移動された。
インテリアでは、ダッシュパネルより後方のボディ骨格を一新した低床フラットフロアの採用により、全高を2代目に比べて25mm低くしながら、室内高が60mm高くなったことで広い室内空間とステップがない乗り込みによる乗降性の向上を実現したほか、荷室フロアも60mm低くするとともにサードシートをの収納構造を工夫したことで、荷室空間の使い勝手を高めた。さらにサスペンション構造も変更され、旋回時のロールやクルマの無駄な動きを抑えることで、揺れが少ないフラットな乗り心地や、安定感がある操舵安定性を実現した。
また、3代目プリウスのものを移植した形の1.8Lミラーサイクルエンジンである2ZR-FXE型にモーターを組み合わせたリダクション機構付THS IIを採用したハイブリッド車を新設定。ガソリン車は先代に引き続き3ZR-FAE型を搭載するが、バルブマチックの改良を行ったほか、一部グレードを除く全車にアイドリングストップシステムを搭載。トランスミッションはアイドリングストップシステムと協調制御する電動オイルポンプと、運転状態に応じてエネルギー消費を最適化する2ポート型オイルポンプを備えたことで、クラストップレベルの変速比幅を実現した「Super CVT-i」の採用により燃費を向上し、ハイブリッド車のみならず、ガソリン車(「X"V Package"」及び車両重量1650kg以下の「X」の4WD車を除く)も「平成27年度燃費基準+20%」を達成した[注 6]。
グレード体系はガソリン車は「X」・「G」・「Si」の3グレードに整理され、「X」には、ヘッドランプをハロゲンにグレードダウンし、アイドリングストップシステムなどの一部装備を非装備化した廉価パッケージ「V Package」が用意されていた。ハイブリッド車は「HYBRID X」と「HYBRID G」が用意される。なお、初代・2代目ではリアに装着されていたグレードバッジがなくなり、初代~2代目まで設定されていた「YY」に相当する5人乗り仕様が設定されなくなった。
4代目はTNGAに基づいたGA-Cプラットフォームを採用。
パワートレインはハイブリッド車はエンジンは3代目から2ZR-FXE型を踏襲するものの、電動モジュールが刷新され、モーターやバッテリーの高出力化並びにシステムを高効率化。また、3代目では設定されていなかったハイブリッド車の四輪駆動モデルはリアモーターを搭載した電気式四輪駆動「E-Four」として新設定されたが、ノア用の「E-Four」はモーター出力の向上により4WD作動領域や後輪へのトルク配分が拡大され、コーナリング中の前後輪トルク配分を制御することで操縦安定性を高める改良型として採用された。ガソリン車はエンジンを2.0LダイナミックフォースエンジンであるM20A-FKS型に換装され、CVTは10速シーケンシャルシフトマチックを備えた「Direct Shift-CVT」に変更。なお、ガソリン車は排出ガス性能の向上により、「平成30年排出ガス基準75%低減レベル(☆☆☆☆☆)」認定が新たに取得された。
予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」は最新化され、プリクラッシュセーフティの検知範囲を自動二輪車(昼)にも拡大するとともに、トヨタ車で初となる交差点で交差する車両や自動二輪車も検知が可能となったほか、歩行者の横断や飛び出しの発生予知など、運転状況に応じたリスクの先読みを行うことで、歩行者・自転車・駐車車両に近づきすぎないようにステアリングやブレーキ操作をサポートするとともに、先行車両や前方のカーブに対して減速操作のサポートも行うトヨタ車初の「プロアクティブドライビングアシスト」を追加。障害物の有無にかかわらず、アクセルの踏み間違いを検知すると加速抑制を行う「プラスサポート」に対応した(販売店装着オプション)。さらに、高度運転支援技術「Toyota Teammate(トヨタ チームメイト)」が新たに導入(「X」を除く全車にメーカーオプション)され、2代目アクアやヤリスに採用されている「アドバンストパーク」は前向き駐車にも対応した改良型となり、ハイブリッド車はドライバーがスマートキーを携帯時に車外から専用アプリをインストールしたスマートフォンを操作して駐車や出庫を可能にするリモート機能をトヨタ車で初搭載。併せて、自動車専用道路の運転において、渋滞時にレーダークルーズコントロールとレーントレーシングアシスト作動中にドライバーが前を向いているなど一定の条件を満たしたときに作動し、認知・判断・操作を支援することでより注意を払った安全運転を可能にするトヨタ車初の「アドバンストドライブ(渋滞時支援)」が備わった。
乗降性も改善され、左右のBピラーにロングアシストグリップを備えるとともに、パワースライドドア装着車にはドア開閉と連動してドアの下部からステップが展開・格納するユニバーサルステップが設定(全車にメーカーオプション)されたほか、「X」を除く全車にはキーを携帯している状態であればフロント下部に足を出し入れするだけでスライドドアが自動開閉する「ハンズフリーデュアルパワースライドドア」をパッケージオプションとして設定された。バックドアには、世界初となる任意の角度で停止を可能とする「フリーストップバックドア」が採用され、パワーバックドア装着車にはトヨタ車で初となる両側のリアクォーターパネル内にスイッチが設置され、車両の横に立った状態で開閉操作が可能となった。
トヨタでは2020年4月の販売チャネル統合以降、兄弟車を中心に車種整理が進んでおり、現にノアの祖先たるタウンエースもライトエースと統合されるなどしてきていたが、当代も引き続きヴォクシーとともにフルモデルチェンジを受ける形となった。デザインはヴォクシーと差別化されており、フロントフェイスは3代目の2017年7月マイナーチェンジモデルで採用されていた面形状のフロントグリルを新意匠に変更の上引き継ぎ、スタンダード仕様はカラード(ボディカラー同色)+メッキモールに、エアロモデルはスモークメッキ+メッキとなる。また、3代目まではフロントに「Noah」の頭文字「N」をモチーフにした専用エンブレムが装着されていたが、当代では前身のタウンエースノア以来となるCIエンブレムを採用している。
3代目まで、ボディの基本は全幅1,700mm以内の5ナンバーサイズ(2代目、3代目のエアロ系グレードはエアロパーツの装着により3ナンバーサイズ)であったが、当代は歴代で初めて全グレードが全幅1,730mmの3ナンバーサイズとなり、5ナンバーのグレードが消滅した。
福祉改造車両「ウェルキャブ」は車いす仕様車、サイドリフトアップチルトシート装着車、ウェルジョイン、助手席リフトアップチルトシート車、ウェルジョイン+助手席リフトアップチルトシートの5種類を設定。このうち、車いす仕様車のタイプI及びタイプIIのサードシート付、サイドリフトアップチルトシート装着車、ウェルジョインは型式指定とすることで持ち込み登録の手間が省かれ、納車までの期間を短縮。車いす仕様車は乗車から固定までの一連の動作をシンプル化する新機構が採用され、架装部分の価格が見直された。タイプIIは型式登録のサードシート付に加え、持ち込み登録車種として、新設定となるサードシート付+助手席リフトアップチルトシートや、8ナンバー(特種用途自動車)登録となるサードシート無も設定。ウェルジョインは前述のユニバーサルステップが標準装備される。ベースグレードは型式登録車種・持ち込み登録車種共に「X」が基本となるが、車いす仕様車、サイドリフトアップチルトシート装着車、助手席リフトアップチルトシート車は「G」と「S-G」(「G」の車いす仕様車はタイプI(車いす1名仕様)のみ、「G」のサイドリフトアップチルトシート装着車はハイブリッド車のみ)にもラインナップされており、型式登録車種の車いす仕様車タイプI(車いす1名仕様)、サイドリフトアップチルトシート装着車、ウェルジョインにはハイブリッド車(2WDのみ)も設定される。
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