ヴォクシー(VOXY)は、トヨタ自動車が販売しているミニバン型乗用車である。製造はトヨタ車体富士松工場が担当している。
「ライトエース・ノア」の後継車として姉妹車の「ノア」(旧タウンエース・ノア)と同時に発売された。カローラ店向けのノアとは対照的にドレスアップ的要素の強い印象を持つ一方で、ノア同様スライドドアを両側に設けている。
当初は電子制御式4速オートマチック(ECT-iE)8人乗りのみであったが、2004年のマイナーチェンジでCVT(無段変速機)、5人乗りグレードが導入された。
初代から現在まで直列4気筒2.0L自然吸気のエンジンで、前輪駆動モデルと四輪駆動モデルが設定されている。
初代は1AZ-FSEを搭載。トヨタの直噴システムであるD-4を採用しており、前期型では希薄燃焼(リーンバーン)を利用するものであったが、後期型ではCVTの採用とあわせて基本的に理想空燃比で燃焼を行うストイキD-4に改められており、排ガスレベルを低減している。
2代目前期はZSグレードのみバルブマチック機構の3ZR-FAE、他は3ZR-FEを搭載したが、後期では全グレード3ZR-FAEとなった(両エンジンともに直列4気筒2.0L自然吸気)。
ノア同様、2代目までアナログセンターメーター、3代目からはオーソドックスなアナログメーターを採用している。全モデル水温計は非搭載。
基本的に日本国内専用車であるが、左ハンドル車も受注生産車扱いで販売されている。
3代目はヴォクシーとノアの発売に遅れてトヨタ店・トヨペット店向けの姉妹車「エスクァイア」が登場。これによりポルテ&スペイド同様、実質的な全店併売車種となった。その後、3兄弟とも全店併売となり、3兄弟のグレード体系が整理された際、ノーマルタイプをノアに集約し、エアロモデルの展開となった。
エスクァイアは1代限りで販売終了となったことで、4代目は発売当初、ノアとの2兄弟車種に戻ったが、2022年8月にノアが4代目ランディとしてスズキへOEM供給を開始したことで、メーカーを跨ぎながらも3兄弟体制が復活した。
エクステリアは3代目ノアとの共通のデザインコンセプトである「EMOTIONAL BOX」を掲げ、車外からでも室内の広さがわかる力強いハコ(箱)とし、ネッツ店専売車種専用エンブレムをより強調させ、同社のLクラスミニバンであるヴェルファイアにも通じるヘッドランプと連続する上下2段構成のフロントグリルを採用して独特の美意識を徹底した"毒気"のあるカッコ良さを追求した。
通常モデルは5ナンバーサイズのままであったが、2代目に引き続いてエアロ仕様(3ナンバー登録)の「ZS」を設定し、迫力のあるフロントフェイスの意匠と低重心のワイドボディを専用フロントフェンダーパーツで強調した。なお、リアワイパーの位置が2代目までのバックドアガラス下からバックドアガラス上部へ移動した。
外観のコンセプトは”父になっても自分のスタイルを貫きたい。「カッコいい」を諦めない。”
インテリアはダッシュパネルより後方のボディ骨格を一新した低床フラットフロアの採用により全高を2代目に比べて25mm低くしながら、室内高が60mm高くなったことで広い室内空間とステップがない乗り込みによる乗降性の向上を実現したほか、荷室フロアも60mm低くするとともにサードシートをの収納構造を工夫したことで荷室空間の使い勝手を高めた。低床フラットフロア化に合わせてサスペンション構造も変更したことで旋回時のロールやクルマのムダな動きを抑えた。これにより、揺れが少ないフラットな乗り心地や安定感がある操舵安定性を実現した。
メカニズムでは、プリウス(3代目以降)などに搭載されている1.8Lアトキンソンサイクルエンジンである2ZR-FXE型にモーターを組み合わせたリダクション機構付THS IIを採用したハイブリッド車を新設定。ガソリン車は先代同様、2.0Lの3ZR-FAE型を採用するが、バルブマチックの改良が行われたほか、一部グレードを除く全車にアイドリングストップシステムが搭載され、トランスミッションもアイドリングストップシステムと協調制御する電動オイルポンプと運転状況に応じてエネルギー消費を最適化する2ポート型オイルポンプを備えたことでクラストップレベルの変速比幅を実現した「Super CVT-i」を採用して燃費を向上し、ハイブリッド車のみならず、ガソリン車(「X"C Package"」及び車両重量1650㎏以下の「X」の4WD車を除く)も「平成27年度燃費基準+20%」を達成した(ハイブリッド車は「平成32年度燃費基準+20%」も達成[注 7])。
グレード体系はガソリン車は「X」・「V」・「ZS」の3グレードに整理された。「X」には、ヘッドランプをハロゲンにダウングレードし、フォグランプやアイドリングストップシステムなどの一部装備を簡略化した廉価版の「C Package」も用意された。ハイブリッド車は「HYBRID X」と「HYBRID V」が用意される。なお、初代~2代目に設定されていた「TRANS-X」に相当する5人乗り仕様は非設定である。
4代目はTNGAに基づくGA-Cプラットフォームを採用。先代まで、ボディサイズは基本的に全幅1,700mm以内の5ナンバーサイズ(2代目、3代目のエアロ系グレードはエアロパーツの装着により3ナンバーサイズ)であったが、当代は歴代で初めて5ナンバーモデルが存在せず、全グレードが全幅1,730mmの3ナンバーサイズとなった。
ハイブリッド車は、エンジンは先代の2ZR-FXE型を踏襲するものの、電動モジュールが刷新され、モーターやバッテリーの高出力化並びにシステムを高効率化。また、3代目では設定されていなかったハイブリッド車の四輪駆動モデルはリアモーターを搭載した電気式四輪駆動「E-Four」として新規設定されたが、ヴォクシー用はモーター出力の向上により4WD作動領域や後輪へのトルク配分が拡大され、コーナリング中の前後輪トルク配分を制御することで操縦安定性を高めた改良型が採用された。
ガソリン車はエンジンを2.0LダイナミックフォースエンジンであるM20A-FKS型に、CVTは10速シーケンシャルシフトマチックを備えた「Direct Shift-CVT」にそれぞれ変更。なお、ガソリン車は排出ガス性能の向上により、「平成30年排出ガス基準75%低減レベル(☆☆☆☆☆)」認定が新たに取得された。
予防安全パッケージ「Toyota Safety Sense」は最新化され、プリクラッシュセーフティの検知範囲を自動二輪車(昼)にも拡大するとともに、トヨタ車で初となる交差点で交差する車両や自動二輪車も検知が可能となったほか、歩行者の横断や飛び出しの発生予知など、運転状況に応じたリスクの先読みを行うことで、歩行者・自転車・駐車車両に近づきすぎないようにステアリングやブレーキ操作をサポートするとともに、先行車両や前方のカーブに対して減速操作のサポートも行うトヨタ車初の「プロアクティブドライビングアシスト」を追加。障害物の有無にかかわらず、アクセルの踏み間違いを検知すると加速抑制を行う「プラスサポート」に対応した(販売店装着オプション)。さらに、高度運転支援技術「Toyota Teammate(トヨタ チームメイト)」が新たに導入(メーカーオプション設定)され、2代目アクアやヤリスに採用されている「アドバンストパーク」は前向き駐車にも対応した改良型となり、ハイブリッド車はドライバーがスマートキーを携帯時に車外から専用アプリをインストールしたスマートフォンを操作して駐車や出庫を可能にするリモート機能をトヨタ車で初搭載。併せて、自動車専用道路の運転において、渋滞時にレーダークルーズコントロールとレーントレーシングアシスト作動中にドライバーが前を向いているなど一定の条件を満たしたときに作動し、認知・判断・操作を支援することでより注意を払った安全運転を可能にするトヨタ車初の「アドバンストドライブ(渋滞時支援)」が備わった。
乗降性も改善され、左右のBピラーにロングアシストグリップを備えるとともに、パワースライドドアの開閉と連動して助手席側ドアの下部からステップが展開・格納するユニバーサルステップがメーカーオプション設定されたほか、キーを携帯している状態であればフロント下部に足を出し入れするだけでスライドドアが自動開閉する「ハンズフリーデュアルパワースライドドア」をパッケージオプションとして設定された。バックドアには、世界初となる任意の角度で停止を可能とする「フリーストップバックドア」が採用され、パワーバックドア装着車にはトヨタ車で初となる両側のリアクォーターパネル内にスイッチが設置され、車両の横に立った状態で開閉操作が可能となった。
トヨタでは2020年4月の販売チャネル統合以降、兄弟車を中心に車種整理が進んでおり、現にヴォクシーの祖先たるライトエースもタウンエースと統合されるなどしてきていたが、当代も引き続きノアとともにフルモデルチェンジを受ける形となった。デザインはノアのエアロモデルと差別化されており、薄くなったアッパー部と分厚いスクエア形状のロア部を組み合わせた立体構成のフロントフェイスとなり、フロントやリアのランプ類も特徴的なデザインとなった。当代ではノアの相当グレードに対し7万円高の価格設定になっている。
福祉改造車両「ウェルキャブ」では、車いす仕様車、サイドリフトアップチルトシート装着車、助手席リフトアップチルトシート車の3種類を用意。このうち、車いす仕様車のタイプI及びタイプII(サードシート付)、サイドリフトアップチルトシート装着車は型式指定とすることで持ち込み登録の手間が省かれ、納車までの期間が短縮される。車いす仕様車は乗車から固定までの一連の動作をシンプル化する新機構が採用され、架装部分の価格見直しも行われた。タイプIIについては、型式指定のサードシート付に加え、新モデルとして助手席リフトアップチルトシートを標準装備した持ち込み登録のサードシート付+助手席リフトアップチルトシートが設定された。ベースグレードは型式登録車種・持ち込み登録車種共に「S-G」のみで、型式登録車種の「S-G"車いす仕様車タイプI(車いす1名仕様)"」と「S-G"サイドリフトアップチルトシート装着車"」にはハイブリッド車(2WDのみ)も設定される。なお、3代目ではノーマルタイプに設定されていたウェルジョインは本代では設定されず、ノアのみの設定となった。
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