RX(アールエックス、Lexus RX)は、トヨタ自動車が展開する高級車ブランド「レクサス」が販売する大型高級クロスオーバーSUVである。
「高級セダンの乗り心地と快適性を兼ね備えたSUV」として開発され、1997年に発表された。「高級クロスオーバーSUV」という新たなジャンルを開拓した先駆的モデルであり、後に世界中のメーカーから数多くの追随モデルが発売されることとなった。また、2005年には高級クロスオーバーSUVとしては世界初となるハイブリッドモデルがラインナップに追加された。
初代と2代目モデルは、日本国内のみ「トヨタ・ハリアー」の名称で販売された。「RX」の日本市場への投入は2009年発売の3代目モデルからである。なお、ハリアーは2013年発売の3代目以降、RXとは異なる独立車種として展開されている。
1998年3月の発売直後から北米市場で爆発的な人気モデルとなり、その後5年間の販売台数は約37万台にも上った。品質と信頼性は極めて高く、JDパワーなどの市場調査評価でもカテゴリーのトップに評価されることが多かった。
生産はトヨタ自動車九州が担当。搭載エンジンは3,000 ccのV型6気筒(1MZ-FE)。駆動方式はAWDとFFの両方が設定された。ATのみの設定で、レザーシート・本木目パネル・7スピーカーのJBLサウンドシステムなどが標準装備されていた。オプションではナカミチの「プレミアムカスタマイズサウンドシステム」が選択できた。
2003年にモデルチェンジ。初期にはV型6気筒 3.3Lエンジン(3MZ-FE型)を搭載し「RX330」の名称であったが、後に新開発の3.5Lエンジン(2GR-FE)へ置き換え、名称も「RX350」に変更された。先代同様、AWDモデルとFFモデルの両方が設定されている。
特に北米市場での人気が非常に高く、トヨタ自動車九州のみでは生産が追いつかないほどであったため、2003年9月からはカナダ・オンタリオ州ケンブリッジにあるTMMC社でも生産が始まった。TMMCでは後述のハイブリッドモデルを除く北米向けRXの7-8割程度を生産している。
V型6気筒エンジンと電気モーターとを組み合わせるハイブリッド仕様「RX400h」が、北米では2005年、ヨーロッパとアジアでは2006年から発売された。高級クロスオーバーSUVとしては世界初のハイブリッド車である。
2007年(平成19年)の東京モーターショーにて3代目RXのコンセプトカーである「LF-Xh」が発表され、同年11月19日にLAオートショーにて正式発表された。なお、本モデルの発売を機に日本市場でも「レクサス・RX」として販売される予定であることが先だって2006年時点でトヨタ自動車から発表されていた[1]。日本国内では2009年(平成21年)1月19日に発表、RX350は同日より販売開始、ハイブリッドモデルのRX450hは同年4月に発売。月間目標販売台数は650台と発表された。先代に引き続き日本だけでなくカナダのTMMCでも生産される。
発売当初のラインナップはガソリンエンジンの「RX350」とハイブリッドモデルの「RX450h」で、両車ともにV型6気筒3.5 Lエンジンを搭載。2010年(平成22年)8月には、直列4気筒2.7 Lエンジンを搭載する「RX270」も追加された。
RX350が搭載するV型6気筒エンジンは280 psの「2GR-FE」型が採用された。同型のエンジンはトヨタエスティマ、ブレイド、ヴァンガード、マークXジオ、アルファード、ヴェルファイア各車の3.5 Lモデルに搭載されているが、RXは世界60カ国で販売する予定のため、ガソリンの硫黄分が多い国々でも安定した性能を発揮するために選択された[2]。ハイブリッド仕様のRX450hには、排気量こそRX350と同一だがレクサスでは初となるアトキンソンサイクルエンジン(2GR-FXE型)を採用。ハイブリッドシステムとの調和を図るとともに、排気熱再循環システムと大容量クールドEGRがヒーターの効率向上や燃費の一層の向上に貢献している。また、「EVモード」が新たに設定され、低速ではモーターのみで走行することも可能となった。AWDモデルにおいて後輪はプロペラシャフトを介さずモーター単体のみで駆動させるシステムは2代目と共通である。
装備面の大きな特徴として、パソコンのマウス感覚でカーナビゲーションシステムを操作できる「リモートタッチ」や、速度やナビなどの情報をフロントガラス下部に表示する「ヘッドアップディスプレイ(RX450hに標準装備、RX350・RX270はオプション)」などのレクサス初採用となるものが挙げられる。
ハイブリッド車には、LS600hに続いて2車種目となるLEDヘッドランプやヘッドアップディスプレイが標準装備となるほか、専用のフロントバンパーやボディカラー(クォーツホワイトクリスタルシャイン)が用意されるなど、ガソリン車と装備の差別化が図られている。
グレード展開は標準仕様と「Version S」、「Version L」、「Version L・Air suspension」の4グレード構成となっている。ただし、RX270については「Version L・Air suspension」の設定がなく、駆動方式もFFのみとなる。RX450h・RX350については「Version L・Air suspension」を除き駆動方式にFFを選択できる。発売当時はRX450hの駆動方式はE-Fourのみだった。
「Version S」は、19インチタイヤとホイール、専用のサスペンションチューニングが与えられたスポーティーモデルで、より車重のあるRX450h(AWDモデルのみ)についてはLSやGSと同じくアクティブスタビライザーも標準装備される。これらの装備のうち、19インチタイヤとホイールは他のグレードでもオプション設定されている。ただし「Version S」のホイールとは異なり、メッキ仕上げではない。また、アクティブスタビライザーはRX450hの標準仕様と「Version L」にもオプション設定されている。なお、19インチタイヤとホイールが装着された輸入CUV/SUVはすでに存在するが、国産ではRXが初めてである(なお、後にトヨタランドクルーザー200が一部グレードでLX570と同じく20インチサイズのアルミホイール&タイヤを装備している)。
「Version L」は、ベンチレーション機能やクッション長可変機能がついたセミアニリン本革シートや本木目パネル、パワーバックドア、後席サイドエアバッグなどを標準装備したラグジュアリーモデル。これらのうち、セミアニリン本革シートを除く装備については全車にオプションで設定される。
「Version L・Air suspension」は「Version L」にエアサスペンションが追加された最上級グレードで、3段階の車高に調整できるほか、荷物の出し入れの時に約3cm車高を下げる機能が備わっている。
4代目は「レクサス」ブランドを体現するコアモデルの一つとして、「RXでありながら、RXを超えていく」をコンセプトに開発された[5]。
日本仕様のラインナップは、直列4気筒2.0Lターボを搭載する「RX200t」(2017年12月より「RX300」に改称)、V型6気筒3.5Lハイブリッドシステムを搭載する「RX450h」の2タイプ。
エクステリアでは、スピンドルグリルの切り返し位置を高く置き、薄くシャープなアッパー部と分厚いロア部を対比させ、鋭さと力強さを両立。リヤは、フードから始まるサイドの立体の流れを、リヤコンビネーションランプ内側で切り返すスピンドル形状とし、ディフューザーなどのパーツと相まって、力強いスタンスを表現した。また、右左折の際、LEDランプが内側から外側へ流れるように光る「LEDシーケンシャルターンシグナルランプ」を採用した。
なお、ボディサイズは先代モデルと比較して、全長を120mm、全幅は10mm、全高を20mmそれぞれ拡大。また、ホイールベースは50mm延長された[6]。また、2017年12月には、リアドア以降のボディを延長することでサードシートを追加し7人乗り仕様とした「RX450hL」を追加した。
インテリアでは、12.3インチワイドディスプレイや、大型フルカラーヘッドアップディスプレイなどを採用したディスプレイゾーンと、両サイドにENTERボタンを追加するなど操作性に配慮したリモートタッチなどの操作機能を集約したオペレーションゾーンを明快に分離し、運転に集中できる環境を追求。また、センタークラスターやエアコンレジスターなどの機能部位には硬質な素材を、人の手が触れる部分には柔らかで上質な素材をそれぞれ配し、機能の違いを素材感で表現している。さらに、センターコンソールのオーナメントパネルに、新規開発のレーザーカット本杢を採用するなど、加飾意匠にも先進性と質感を追求している。
パワーユニットは、新設定の「RX200t」に直列4気筒2.0Lターボエンジン「8AR-FTS」型を搭載。最適な燃焼効率を実現する直噴技術「D-4ST」を採用するとともに、ツインスクロールターボチャージャーと可変角を拡大したDual VVT-iW[注 1]を組み合わせている。先代モデルの「RX270」が搭載していた直列4気筒2.7Lエンジン「1AR-FE」型に対して、最高出力/最大トルクは37kW(50PS)/ 98N・m(10.0kgf・m)それぞれ向上した。トランスミッションは6 Super ECT(スーパーインテリジェント6速オートマチック)を組み合わせている。
RX450hは、エンジンを先代モデルが搭載した「2GR-FXE」型から「2GR-FXS」型に換装。アトキンソンサイクルを採用するとともに、燃料供給装置を筒内直噴+ポート燃料噴射装置D-4S[注 2]に変更し、排気冷却を強化したシリンダヘッドなどの最新技術と組み合わせ、出力性能を向上。モーターも先代モデルの「4JM」型から新形式の「6JM」型に変更した。システム最高出力は313PS(230kW)と、先代比10kW(14PS)向上し、燃費も改善された。
なお、V型6気筒3.5Lエンジンを搭載する「RX350」は日本市場では廃止されたが、北米を中心とした海外市場では継続設定されている。
駆動方式は、2WD(前輪駆動)とAWD(4輪駆動)を設定。「RX200t」は、先代モデルのアクティブトルクコントロールAWDに替わり、前後輪のトルク配分を100:0から50:50まで自動的にコントロールするダイナミックトルクコントロールAWDを採用。また、「RX450h」は、先代モデルと同様、リヤモーターとして「2FM」型を搭載し後輪を駆動する「E-Four(電気式AWDシステム)」を採用している。
走行性能では、フロントプラットフォームの構造を変更。エンジンマウントの配置をエンジンの重心に対してより近い位置でボディに懸架することで、エンジンの動きを抑制し操舵応答性の向上を図った。また、フロントサスペンションの構造変更、およびフロントスタビライザーの大径化によりロール剛性を高めることでフラットな車両姿勢を実現。同時に、フロント・リヤサスペンションのばね剛性を適正化し、前後のバランスをとり直すことで、乗り心地を向上を図っている。バックドアなどの開口部にはレーザースクリューウェルディングや構造用接着剤などを用いてボディ剛性を強化。「F SPORT」はNAVI・AI-AVSを標準装備するとともに、専用チューニングを施したほか、「RX450h F SPORT」には電動アクティブスタビライザーも標準装備し、旋回時のロールを抑えている。
安全装備では、予防安全パッケージ「Lexus Safety System +」を全車に標準装備。プリクラッシュセーフティシステム(歩行者検知機能付衝突回避支援タイプ)、車線維持をサポートするレーンキーピングアシスト、ロー・ハイビームを自動で切り替えるオートマチックハイビーム、先行車との車間距離を保ちながら追従走行するレーダークルーズコントロール(全車速追従機能付)をパッケージ化し、安全運転支援の強化を図った。 また、ITS専用周波数(760MHz)による路車間・車車間通信を活用した安全運転支援システム「ITS Connect」(全車にメーカーオプション)、アクセルの踏み間違いや踏み過ぎなどで起こる衝突を緩和するインテリジェントクリアランスソナー、さらに駐車時に左右後方から接近してくる車両と衝突の危険性がある場合、自動的にブレーキ制御するリヤクロストラフィックオートブレーキをレクサスとして初採用し、予防安全機能を強化した[注 3]。
リヤシートは、先代モデルよりレッグスペースを広げ、電動でリクライニングが可能な後席パワーシートや、後席シートヒーターなどの機能を追加設定することで快適性を強化した(「version L」に標準装備、「F SPORT」にセットでメーカーオプション)。また、LEXUSエンブレムに手をかざすとバックドアが開くタッチレスパワーバックドア(挟み込み防止機能・停止位置メモリー機能付)をレクサスとして初採用(全車に標準装備)。さらに、前方と後方のサイドウインドウの固定ガラスを拡大し、右左折時や駐車の際の死角を低減している。
5代目はV型6気筒が廃止され、ベースエンジンが歴代初の全車直列4気筒となった。
発売当初、日本仕様はガソリン車「RX350」、RXでは初となるプラグインハイブリッド車「RX450h+」、ガソリン車と同じエンジンをベースとしたターボハイブリッド車「RX500h」の3つがラインナップされた。2023年7月にはプラグインハイブリッド車と同じエンジンをベースとしたハイブリッド車「RX350h」が追加された。4代目モデルの「RX450hL」に相当する7人乗り仕様は廃止され、2WDは「RX350」と「RX350h」の設定となった。
RX350はパワートレインが刷新され、TNGAによるエンジン技術をベースに、高効率のツインスクロールターボ、センター直噴システム、DCモーター制御の可変冷却システムを採用した2.4L直噴ターボエンジンT24A-FTS型へ換装。オートマチックトランスミッションはエンジンの換装に合わせて8速に多段化された「Direct Shift-8AT」となった。AWD車はシーンに応じて前後の駆動トルク配分を75:25~50:50までの間で適切に制御する電子制御フルタイムAWDシステムが採用された。
RX450h+も同様に4代目のハイブリッドモデルからパワートレインが刷新されており、エンジンは2.5L直列4気筒のA25A-FXS型へ換装され、駆動用電池は大容量リチウムイオン電池セルを採用し、総電力量18.1kWの電池パックを搭載するとともに、エアコン冷媒を利用した電池冷却システムや低温時に作動する電池昇温システムを採用。パワーコントロールユニットは従来内蔵されていたDC/DCコンバーターを別体化して後席下に配置し、代わりに昇圧コンバーターを追加したことで高出力化と小型化を両立している。走行モードはモーターのみの単体走行を行うEVモードを通常モードとして設定しているほか、モーター走行を基本としてアクセルを大きく踏み込んだ時など瞬間的にパワーが必要なときにエンジンを始動するAUTO EV/HVモード、システムの状態によりエンジンの始動・停止を行うことで電池残量を温存するHVモード、駆動用電池残量が低下した際にスイッチ操作によりエンジンで発電した電気をバッテリーに充電することで外部充電を行わなくても再びEV走行が可能になるセルフチャージモードを備えている。右側に備わっている充電リッドは指で容易に開けられるプッシュオープンとし、インレットを照らす照明を備え、オーナー以外の第三者が駐車時に充電リッドを開けられたり、充電コネクターが取り外されるなどを防ぐため、充電リッドロックシステムや充電コネクターロックシステムを採用している。また、充電リッドにヴィークルパワーコネクターを差し込むことで外部への給電が可能なAC外部給電システムも備わり、これとは別にアクセサリーコンセントを利用した非常時給電システムも搭載されている。
RX500hは、RX350と同じ2.4L直噴ターボエンジンT24A-FTS型に、リアモーターにはRX450h+用よりも出力・トルク共に高く、水冷式によりドライ路での旋回時でもフルタイムAWD並みの前後駆動力配分を実現させる「eAxle」が搭載され、AWDシステムはモーター駆動式の「DIRECT4」が採用される。
2023年7月に追加されたRX350hは、RX450h+とエンジンやフロントモーターが共通であるが、2WD車とAWD車が設定されており、AWD車はリアモーターも「RX450h+」と同型が採用され、前後駆動力配分を100:0~20:80までの間で緻密な制御が行われる電気式AWDシステム「E-Four」が採用されている。
外観は「スピンドルグリル」からメッキ枠が外された「スピンドルボディ」が採用され、マーク下端までボディカラー同色とすることでボディとグリルの融合を図った「シームレスグリル」を採用。リアデザインは2代目NXや4代目LXに次いでの採用となる「L E X U S」のバラ文字ロゴとなり、フルLEDリアコンビネーションランプに組み込む形でボディサイドまで回り込んだ一文字ランプの上部中央に配置された。
このモデル以降、ほかの次世代LEXUSモデル(第1弾モデルのNXや第2弾モデルのLX等)と同様に紙カタログではギャラリーのStyles、グレードや装備・スペックのみの掲載をしているSelections、簡易的な掲載のLexus Dealer Optionの3部構成になり詳細などはホームページで見る形式になった。(一部内容などの掲載変更ではSelectionsとLexus Dealer Optionの掲載のみ変更を行うことにより、Stylesのみ継続で使用できるのでカーボンニュートラルへの取り組み紙資源使用削減によるCO2排出削減効果につながる。)
欧州レクサス車両開発部門の支援のもと、『NPO MOTO-CP』がRX400hで2005年のニュルブルクリンク24時間レースに参戦。ドライバーはマーク・ドゥエス/武田架奈美/菊池靖/後藤比東至で、序盤にクラッシュを喫したものの、S1環境クラス13位/総合79位で完走を果たした[21]。なおこれは同レース史上初のハイブリッドカーの参戦であり、トヨタ史上初のクロスオーバーSUVの同レース参戦にもなった。
「RX」は「Radiant Crossover」(Radiant=光り輝く、晴れやかな Crossover=交差を意味するX)に由来。
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