又吉直樹
又吉 直樹(またよし なおき、1980年〈昭和55年〉6月2日 - )は、日本のお笑いタレント、小説家、俳優。お笑いコンビ・ピースのボケ担当。相方は綾部祐二。 大阪府寝屋川市出身。吉本興業(東京本社)所属。身長164 cm、体重58 kg、血液型B型。第153回芥川龍之介賞受賞。北陽高校(現・関西大学北陽高校)卒業。サッカーインターハイ大阪府元代表。 来歴大阪府寝屋川市で、4歳年上と3歳年上の姉の下に生まれる。父は沖縄県名護市、母は鹿児島県奄美群島加計呂麻島の出身[1][2]。比較的貧しい家庭で育ち、家族で焼肉店に食事に行っても「焼肉2枚でお腹一杯だから」と母や祖父が無理をして子供たちに食事を譲り、子供たちもそれを分かっていて親に「お茶漬けでお腹一杯」と食事を譲る、といった生活をしていた。親がクリスチャンだったため、幼少時は教会学校に通っていた[3]。 小学生の頃から(寝屋川市立啓明小学校)サッカーを始めた。後のお笑い芸人志望、 文筆家、文化人となる物書き能力の現れは、小学4年の時、中学へ行った姉たちへの教室内コントの台本を、毎週1回書き上げていた所に見られる。中学校は寝屋川市立第五中学校に通い、高校時代は関西の強豪である北陽高校(現在の関西大学北陽高等学校)サッカー部に所属[4]。利き足が左足であるため、左のウィングバックをやっていた。3年生の時は副キャプテンも務め[5]、また大阪府代表としてインターハイにも出場している[6][7]。寝屋川市立第五中学校の同級生には難波横山がいた。1999年(平成11年)にNSC東京校の5期生として入学。大阪府出身でありながら東京NSCに入学した理由は、高校サッカー部の監督が吉本興業にも顔の利く人物であり、大学推薦を断ってお笑いの道を目指していることが判明するのを恐れたためである[8]。お見送り芸人しんいちとは同じ高校の出身でサッカー部の後輩でもある。 2003年(平成15年)夏まで中学校時代からの仲でもある原偉大[注 1]と「線香花火」というコンビで活動。M-1グランプリ2002では準決勝に進出するほど実力を認められていたものの、程なくして解散。その後はトリオを組む予定だったが、同期で仲の良かった綾部祐二に強引に誘われる形でピースを結成し、現在に至る。 2015年(平成27年)自身が書いた小説『火花』で新人小説家の登竜門・芥川賞を受賞。お笑い芸人での受賞者としては、史上初の快挙となった[11]。会見では異例づくめで通常15分ほどで終了するところ、メディアからの希望で急きょ又吉のために2度目の会見が開かれ、トータルで2時間ほどの長丁場となった[12]。 芥川賞受賞をきっかけに、文化人としてもメディアの注目を浴び単体での活動が多くなっていく。同年、GQ Men of the Year 2015を受賞[13]。2016年4月から日本テレビ系『NEWS ZERO』の月1回の新キャスターに就任[14]。 一方、ピースとしての活動は芥川賞受賞をきっかけに減少し、又吉の活躍の陰で存在感が薄くなった綾部がタレントとしての拠点をニューヨークに移した。これに伴い、コンビ活動は2017年4月以降休止しているが、現在もピンの芸人・タレント・文化人としてメディアに登場する際は「ピース 又吉直樹」の名義を使用する。芸人としての活動は主にコント作家として継続しており、ライブ「実験の夜」、ユニットコント「さよなら、絶景雑技団」、YouTubeチャンネル「渦」の主宰として、かつて共同生活をしていた児玉智洋(サルゴリラ)、向井慧(パンサー)をはじめ、ライスや好井まさお(井下好井)など仲の良い後輩たちとともに活動している。 2020年3月6日、ねやがわPR大使に就任[15]。 2021年3月7日、東京大学と吉本興業の共同によって「笑う東大、学ぶ吉本プロジェクト『東大吉本対話』」と銘打って行われるオンライン特別講義シリーズの第一弾「言葉力が世界を変える?」において、東京大学佐藤健二副学長(専門:歴史社会学、メディア論)と組んで「言葉の力」をテーマにした対談を行い、その模様がネット配信された[16]。 人物世間一般的には物静かで温厚というイメージが強いが、相方の綾部やもっとも親交の深い大悟(千鳥)によれば、とても頑固で筋の通らないことにはすぐ怒る性格である[17]。後輩のしずるはかなりの負けず嫌いという一面も語っている[18]。 2016年に放送された『雨上がり決死隊のトーク番組 アメトーーク!』の中で、嫌いなものとしてみんなで食べる「鍋」を挙げている。理由は「多人数で食べる時に気を使う料理」だからで、本人曰く「周りに気を使うあまりメインの肉を食べることができず、野菜ばかりを食べてしまう」とのこと。さらに、アクにも言及し恐ろしいものだと述べた。そして、多人数で食べる際に鍋奉行はからかわれるので悲しい存在だと述べ、「鍋マエストロ」「鍋パフォーマー」と呼べばポジティブな存在になると語った[19]。 趣味趣味は散歩と読書と音楽鑑賞。通算3,000冊以上の本と2,800枚以上のCDを持っている。活字が躍りだす夢を見るほどの読書家。好きな作家として、太宰治[20]、京極夏彦、坂口安吾、芥川龍之介、古井由吉[21][7]、中村文則、田丸雅智等を挙げている。「太宰治ナイト」「松尾芭蕉ナイト」などのイベントを主催している[22]。また同人誌即売会「文学フリマ」に足を運ぶこともある[23]。携帯の待受け画面は太宰治(昔は正岡子規だったこともある)で、以前に三鷹市下連雀の築60年以上の風呂なしアパートに住んでいた時期があったが、過去に読んだことのある「太宰の家から吉祥寺への行き方」と同じであったため三鷹図書館で詳細に調べてみると、その住所が太宰家の旧住所にあたることが判明した[24]。 また、太宰治とはもう1つ不思議な縁があり、沖縄に住む祖母の家が大塚製薬から販売されている『MATCH』のCMのロケ地として使われた事を親から知り、パソコンで大塚製薬のホームページから観たところ、手越祐也演じる主人公は太宰治の『走れメロス』をモチーフとしており、『又吉』の表札が『太宰』になっていた。家の中も玄関も又吉の祖母の家であり、CM製作者側も、又吉の祖母の家とは知らず撮影したという。 影響を受けた芸人はダウンタウン、間寛平。ダウンタウンに関しては太宰治以上に衝撃を受け、両者は似ていると思い「ダウンタウンさんには思春期の頃、とんでもない影響を受けたと思います」と語っている[25]。 創作活動の原点となるほど影響を受けたという吉田拓郎を最も好きなミュージシャンとして挙げており[26][27][28][29]、そのほかにも友部正人、くるり、遠藤賢司、サンボマスター、真心ブラザーズ、ハンバート ハンバート、凛として時雨等を挙げている[30][31][32]。なお、凛として時雨のフロントマン・TKのソロプロジェクトである「TK from 凛として時雨」の4thアルバム『彩脳』の収録曲「copy light」では作詞の監修を行い、同曲のミュージックビデオにも出演している[33]。 しばしばひとりで寺社参拝をしている。神保町に神保町花月が開設される前から同地に足しげく通っており、現在でも古本屋巡りなどをしている。過去に1度古本屋の店主などと並び「神保町の10人」に選ばれたことがある[34]。 容姿・ファッション髪型は肩に掛かる程度の長髪でワンレングス。パーマをかけてウェーブを出している。普段は長髪を頭頂部もしくは後頭部で括っている。ピース結成当初は短髪で、現在の髪型に落ち着いたのは2008年頃である。 プライベートでは、和服を着ることがある。古着を含む服が好きで、2010年(平成22年)よしもとオシャレ芸人ランキング男性芸人部門では第2位、2011年では第1位にランキングされ、ドン小西から褒められるなど、東京吉本若手のオシャレ番長的扱いを受けている[35]。特に好きなファッションブランドはフラボア[36]。 LLRの伊藤智博が、神保町花月公演「月見草」の脚本を書くにあたって死神のことを調べた際、「死神と呼ばれる著名人一覧」に又吉の名前があるのを発見した。また、その一覧にはハリセンボンの箕輪はるかも名を連ねていたが、「又吉から死神の鎌を譲り受けた」というエピソードが添えられていた。また、そのような容姿であることからオール巨人に薬物乱用を疑われたこともある[37]。 2015年、第28回日本メガネベストドレッサー賞・芸能人部門(男性)を受賞[38]。 雑誌の表紙モデルを務めた経験がある。
作家活動線香花火としてデビューして2年経った頃、吉本興業の広報誌『マンスリーよしもと』で若手芸人がコラムを書いて競い合うというコーナーで、文章を書くこととなった。それが初めて活字になった原稿だった。当初は10回優勝したら単独連載誌面を貰えるという話だったが、10回優勝しても扱いは変わらなかった。この連載は同誌が『マンスリーよしもとPLUS』にリニューアルするまで続いたが、最後まで無報酬だった[39]。この連載は後に『東京百景』として出版される。 プロの作家や演出家が芝居を作り、芸人が演じるというコンセプトの神保町花月の劇場に出演しており、そのピース主催の初公演の際、準備不足から大失敗に終わる。もう二度とやりたくないと思い劇場側と何度か押し問答があった末、自分で脚本を書くことを勧められ『凛』(2007年12月)という芝居を書いた(2019年2月に映画化)。神保町花月で初めて、出演者が自ら脚本を書いた公演となった。その他に、『誰ソ彼』(2008年5月・6月)、『ある風景』(2009年7月)、『咆号』(2010年8月)という芝居を書いている。それまで文章はずっと携帯電話のメール機能を使って書いていたが、芝居を書く途中からパソコンを導入した[40]。 2009年6月、知人の構成作家の紹介で知り合ったせきしろと共著で自由律俳句集『カキフライが無いなら来なかった』を刊行。これが又吉にとって、初の書籍となった[41]。当時のピースはまだ全国的な知名度を得ているほどではなかったが、自由律俳句への取り組みや「太宰ナイト」の開催などにより、文学好きの変わった芸人がいるという評判が文壇に届き始める[要出典]。同時期に西加奈子の短編集『炎上する君』の帯を書いてほしいという依頼を受けたり、中村文則と話す機会を得るなど、他ジャンルの才能豊かな人たちが自身の表現を面白いと評価してくれたことが大きな自信になった[42]。2010年12月、続編である『まさかジープで来るとは』を発表。2011年11月、初めての単著『第2図書係補佐』を刊行。これは、2006年3月に出来たヨシモト∞ホールに置かれていたフリーペーパー『Y∞H!』で連載されていたものを文庫オリジナルという形で出版したものである[43]。2012年には俳人の堀本裕樹とともに雑誌『すばる』で『ササる俳句 笑う俳句』を連載、それに加筆、書き下ろし原稿を加えたものが、2015年に『芸人と俳人』として、集英社より刊行された。 『マンスリーよしもと』、『Y∞H!』での連載をきっかけに、他の媒体からも執筆の依頼を受けるようになった。初めての依頼は、松尾スズキ責任編集の雑誌『hon-nin』で2007年6月より始まったコラム「大至急本人を!」だった。2009年9月、『マンスリーよしもと』が『マンスリーよしもとPLUS』にリニューアルされ、エッセイ「東京百景」を連載開始。『マンスリーよしもとPLUS』が2013年4月に休刊となったため、短時間で文章を書き下ろし、2013年8月に書籍化された[44]。 2010年4月、単行本『MAGIC BOYS 〜マジシャンたちの肖像〜』に短編処女小説「夕暮れひとりぼっち」が掲載された[45]。 EXITの兼近大樹は又吉の本を読んだ事が切っ掛けでお笑い芸人を目指した。後に作家デビューしている。 『火花』2015年1月7日、『文學界』2月号に初の中篇小説『火花』(230枚)を発表し純文学デビュー[46]。又吉の作品の掲載効果により『文學界』2月号の累計部数は発売2日後で4万部に達する。同誌が1933年の創刊以来初となる重版がかかるほどの話題作となる[47]。同年3月11日、文藝春秋より『火花』の単行本が発売。発売直後から版を重ね、3月16日時点で計35万部に達した[48]。カバーは25歳の画家・西川美穂が2011年に描いた作品「イマスカ」。これは又吉が一目見るなり気に入り、採用された[49]。3月14日、TBS『王様のブランチ』のブックランキングコーナーの特集に出演し、本作について「共感できなくても芸人の世界を理解してほしい。」と語っている[50]。 4月22日、第28回三島由紀夫賞候補に挙げられた[51]。5月14日に行われた選考会では、受賞作『私の恋人』(上田岳弘)との決選投票に持ち込まれたが、3対2で敗れて受賞を逃した[52]。選考委員の辻原登は、「落ちるはずのない作品が落ちた。2作受賞でも良かった」と述べている[53]。 6月19日、第153回芥川龍之介賞の候補に挙げられる[55]。7月16日、本職「お笑いタレント」として初の芥川賞を受賞した[56]。 単行本の累計発行部数は239万部を突破した[57]。村上龍の『限りなく透明に近いブルー』を抜き、芥川賞受賞作品として歴代第1位[58]、文藝春秋刊行物として歴代第2位の単行本部数となった[59]。また、電子書籍版は10万ダウンロードを突破し、文藝春秋刊行物として歴代第1位となった[60]。 芥川賞受賞作2作品を全文掲載し、受賞者インタビューや選考委員の選評も掲載される『文藝春秋』9月特別号(8月7日発売)の発行部数は110万3000部[61][62] で、綿矢りさ『蹴りたい背中』、金原ひとみ『蛇にピアス』の掲載された2004年3月号の118万5000部に次ぐ、同誌の歴代第2位の記録となった[63]。 8月21日に芥川賞贈呈式が開催され、あいさつでは執筆活動と芸人の両立について「どっちが上ではなく両方必要」と述べた[64]。 8月27日、有料動画配信のNetflixと吉本興業によって映像化されることが明らかになる[65]。2016年にNetflixによって独占配信される。 又吉は、出身校の関西大学北陽高等学校(大阪市)のサッカー部に、芥川賞の賞金100万円で製作したユニホームを寄贈した[66]。 Yahoo!検索大賞 2015では、パーソンカテゴリーの作家部門賞を受賞し、カルチャーカテゴリーの小説部門賞では「火花」が受賞した[67]。 出演コンビでの出演歴についてはピース (お笑いコンビ)を参照。 テレビこれまでのレギュラー番組
特別番組
テレビドラマ
配信ドラマ
ドキュメンタリー
ラジオ
映画
舞台
CM
単独ライブ→コンビでの出演歴についてはピース (お笑いコンビ)を参照
MV
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推薦・解説等
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舞台DVD
個展
題字
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脚注注釈出典
参考文献
関連項目外部リンク
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