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苫小牧市(とまこまいし)は、北海道中南部(道央地方)の胆振総合振興局にある市。計量特定市。
寛政12年(1800年)に蝦夷地の警備と開拓のため八王子千人同心が勇武津(勇払)に入植。過酷な自然条件などにより4年で土地を離れるも苫小牧の礎となる[1]。1873年(明治6年)に開拓使が勇払郡出張所を苫細(苫小牧)に移転。これを苫小牧の開基としている。もとは苫小牧村として広い地域を占めたが、数次の分村をへて境域を縮小し、大正7年から苫小牧町となる[注釈 1]。
豊富な水と木材資源に恵まれていた苫小牧には明治43年に竣工した王子製紙会社の工場をはじめとして製紙業が進出。その後、石炭を機能的に流通させるために「勇払築港論」が提唱され[3]、苫小牧に工業港の必要性が認められて1951年(昭和26年)に起工。1963年(昭和38年)に世界初の内陸掘込港湾となる苫小牧港(西港)が開港。1980年(昭和55年)には東港が開港。札幌都市圏に最も近い太平洋岸の港であり、新千歳空港にも近接している利便性から北海道工業地域を代表する工業都市・港湾都市になった。苫小牧港の内航取扱貨物量は日本一の取扱量となっている[4]。苫小牧東部地域(苫東)には世界最大級の地上タンク方式による石油備蓄施設がある[5]。
苫小牧市はホッキ貝(ウバガイ)の漁獲量日本一を誇り[6]、2002年(平成14年)には「市の貝」として制定された。苫小牧市の水道水は厚生省(現・厚生労働省)の「おいしい水研究会」が選んだ「全国の水道水がおいしい都市ベスト32」に入選している[7]。また、スポーツを通じた健康づくりとまちづくりにも積極的であり、1966年(昭和41年)には日本国内初となる「スポーツ都市宣言」をしている[8]。1995年(平成7年)からは「スポーツマスター制度」を実施し、苫小牧に縁があり国内外のスポーツ分野で活躍した者の功績と栄誉を称えるとともに、市民のスポーツ活動への講師や指導を依頼する制度であり、全国の自治体で初めて採り入れている[9]。
かつて苫小牧川が流れる一帯を「マコマイ」(アイヌ語で「山奥に入っていく川」)と呼んでいた[注釈 2]。さらに、沼のあった旧樽前山神社付近をアイヌ語で沼の意味がある「ト」の字をつけて「ト・マコマイ」と呼んでおり、これが「苫小牧」の語源になったという説や[11]、「マコマイ」川の旧河道・河口を指す「トゥマコマイ tu-makomai」(現在の苫小牧市立病院南300 m地点)を語源とする説もある。
文献上の初出は、松浦武四郎の「初航蝦夷日記」中に出てくる「トフマコマフ」とする地名。その後、1869年(明治2年)に勇払郡を統治した高知藩がカタカナで「トマコマイ」と表記しさまざまな漢字か当てられたが[12]、1873年(明治6年)2月に「苫細」と漢字表記される。同年、札幌本道が開通すると開拓使出張所が勇払から移転。駅逓所が設けられることになり、東京開拓使出張所(実質的な開拓使の最高決定機関)が駅名の検討を開始。地名の苫細が「苫小牧」となり、同年11月8日の太政官布告第三六四号にて確定した。しかし、この変更は勇払郡開拓使出張所(地元)に伝わっておらず、翌年、別の公文書にて苫小牧が使われていたことから変更されていたことが発覚。東京出張所に変更を求めたが認められなかった[13]。苫小牧郵便取扱所(後の苫小牧郵便局)の文書によると、1874年(明治7年)8月20日に字名を「苫細」から「苫小牧」に改めたという。一般的に「牧」は「まい」とは読まないので「苫小枚」(木+攵)とすべきところだが、開拓使東京出張所庶務課の小牧昌業が「細」を「小枚」と修正する際に誤って、書き慣れている自分の名字の「小牧」(牜+攵)を記入してしまったという説がある。
市域は東西39.9 km、南北23.6 kmに渡り、面積は561.61 km2である。市街地は東西に広がっている[11]。千歳市との境には溶岩円頂丘(ドーム)を持った三重式火山の樽前山(活火山)があり、市東部には日本初のバードサンクチュアリに指定され[14]、国の鳥獣保護区やラムサール条約登録湿地にも指定されているウトナイ湖があるなど[15]、近郊には希少な自然が残されている。樽前山を含む周辺一帯は支笏洞爺国立公園の区域となっている[16]。
太平洋に面しているため太平洋側気候、海洋性気候で夏は涼しく、冬は北海道の中では比較的温和で積雪量も少ない地域となっている。年間の平均降雪量は145 cmと札幌市(479cm)の約3分の1である[17]。1日の最深積雪量は1968年(昭和43年)2月20日の47 cm[18]、1年の年間降雪量は2005年(平成17年)の245 cmとなっている[18]。1942年(昭和17年)の観測開始以来の最低気温は1945年(昭和20年)1月18日の-21.3℃[18]、1961年以降では1977年(昭和52年)2月2日の-20.9℃、2000年代に入ってからは2000年(平成12年)1月26日の-19.2℃が最も低い気温である。観測開始以来の最高気温は2007年(平成19年)8月15日の35.5℃である[18]。2014年(平成26年)9月11日には、発達した低気圧の影響により初めて大雨の「特別警報」が発表された[19]。
人口は16万人を超え、札幌市・旭川市・函館市に次ぐ道内4番目の人口規模となっている。1980年(昭和55年)には胆振支庁(現在の胆振総合振興局)所在地である室蘭市の人口を、2004年(平成16年)には帯広市の人口を上回った。また、2018年(平成30年)には釧路市の人口を上回り、1970年(昭和45年)に当時の道内人口順位4番目であった小樽市と5番目であった釧路市の順位が変動して以来48年ぶりに道内人口の4番目が入れ替わった[23]。
2015年国勢調査によれば、以下の集落は調査時点で人口0人の消滅集落となっている[24]。
「苫小牧の歴史」参照[25]
わたしたちは、樽前山のふもと、水鳥が舞い、太平洋の潮かおる勇払原野に、たくましくひらけた苫小牧の市民です。 わたしたちは、豊かな自然と大きな可能性にみちたこのまちを愛し、健やかな市民としてあゆむために、この憲章を定めます。 あたたかい心でまちを つつみましょう 学びあいつくるよろこびを そだてましょう 花と木のかおりでまちを みたしましょう さわやかな笑顔できまりを まもりましょう 生き生きとくらす力を のばしましょう — 昭和60年9月27日制定[35]
わたしたちは、樽前山のふもと、水鳥が舞い、太平洋の潮かおる勇払原野に、たくましくひらけた苫小牧の市民です。
わたしたちは、豊かな自然と大きな可能性にみちたこのまちを愛し、健やかな市民としてあゆむために、この憲章を定めます。
都市宣言
[37]
[38]
特殊法人(特殊会社)のうち、NTT東日本、JR北海道、日本たばこ産業、日本郵便の支社・支店・駅・郵便局等については省略している。
苫小牧市は第二次産業の割合が高く、工業のまちになっている[52]。1910年(明治43年)に王子製紙苫小牧工場が操業開始して以来、製紙業などの素材型産業を主力に発展してきた[52]。1963年(昭和38年)の苫小牧港(西港)開港後、非鉄金属、自動車産業、化学工業など多様な企業が立地しており、産業港湾都市や北日本の流通拠点になっている[52]。
「国際拠点港湾」であり「中核国際港湾」になっている苫小牧港は、フェリー、RO-RO船、コンテナ船など多くの航路を有しており、港湾取扱貨物量は全国4位(平成27年)[53]、内航取扱貨物量においては日本一の取扱量になっている[4]。北海道内の港湾取扱貨物量の約50 %を占めており(平成25年)[54]、製造品出荷額は北海道内で第1位になっている[55]。2002年(平成14年)には室蘭港とともに静脈物流のリサイクルポート指定港湾「総合静脈物流拠点港」(リサイクルポート)に一次指定された[56]。2011年(平成23年)には「開発埠頭フェリーターミナル」・「北ふ頭緑地」・「漁港地区」のエリアが「みなとオアシス」に登録されている[57]。
「市内商店街一覧」参照[58]
「商業の歩み」など参照[59][60][61]
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2006年(平成18年)に「FMとまこまい」(仮称)と、市内でミニFMを放送している「ゆのみラヂオ」がコミュニティFMの開局準備を進めていることが報道されたが[82]、どちらも開局にむけての具体的な動きは進んでいなかった[83]。
その後、2019年(令和元年)12月22日、「FMとまこまい実行委員会」が設立され[84]、2020年(令和2年)7月5日にはYouTubeによる「テスト放送」を開始した。さらに、2021年(令和3年)11月30日には苫小牧市王子町で法人を設立(とまこまいコミュニティ放送株式会社)、2022年(令和4年)9月30日には苫小牧市大町に移転、2023年(令和5年)3月31日に予備免許が交付され、同年夏の開局を目指している[85][86]。そして、2023年(令和5年)9月1日正午に開局した。
沼ノ端−白老間の28.7 kmは「日本一長い鉄道直線区間」になっている。
小型車の初乗り上限運賃は550円。中型車の初乗り上限運賃は570円(いずれも距離制)[96]。
ゴルフ場
苫小牧市が認定している特産品がある[112]。
また、苫小牧市は味の大王の「とまこまいカレーラーメン」(カレーラーメン)を、文化庁の「100年フード」に申請し、認定されている[113]。
苫小牧市は1966年(昭和41年)に「スポーツ都市宣言」を行い[8]、スポーツを通したまちづくりを積極的に行っている。市内にはスケートリンクを備えたスケートセンターが複数箇所あり、スケートやアイスホッケーが盛んとなっている。市内には子どもから大人まで多くのアイスホッケーチームがあり[114]、市内ではアイスホッケーの試合が、年間およそ40大会600試合行われている[115]。市内に本拠地を構え『アジアリーグアイスホッケー』参加チームであるレッドイーグルス北海道は、前身の王子製紙アイスホッケー部時代に『第3回全日本アイスホッケー選手権大会』で初優勝、『日本アイスホッケーリーグ』では通算13回、『アジアリーグアイスホッケー』では2度優勝している実績がある[116]。また、『全国高等学校アイスホッケー競技選手権大会』(インターハイ)では、駒澤大学附属苫小牧高等学校が1994年(平成6年)から2002年(平成14年)まで大会9連覇、2004年(平成16年)から2008年(平成20年)まで大会5連覇をするなど30回優勝しており、北海道苫小牧東高等学校が10回、北海道苫小牧工業高等学校が7回優勝している[117]。女子では『全日本女子アイスホッケー選手権大会』最多優勝記録を持つ道路建設ペリグリンも苫小牧を拠点に活動しており、強豪チームが揃っている。
野球においては、駒大苫小牧高校が『全国高等学校野球選手権大会』(夏の甲子園)の『第86回大会』(2004年)・『第87回大会』(2005年)で大会2連覇を果たし[118]、東北以北の高等学校で唯一甲子園大会優勝校の経歴を持っている(しかし、2022年に行われた、第104回全国高校野球選手権大会で、仙台育英学園高等学校(宮城)が優勝したため、東北以北の甲子園大会優勝校は2校になった)。2005年(平成17年)は甲子園大会に加えて『第60回国民体育大会』(晴れの国岡山国体)と『第36回明治神宮野球大会』でも優勝し、史上初の3冠を達成している。また、『第88回大会』(2006年)では準優勝している。社会人ではかつて王子製紙苫小牧硬式野球部が存在し「北海道5強」の一角をなしていたが、王子製紙春日井に統合された。
1995年からの「スポーツマスター」制度では市内の学校や実業団に所属した苫小牧に深い縁を持つ著名なスポーツ選手をマスターに認定し1人につき年に市主催事業で1回・派遣事業2回まで実技指導や講演会に招聘する事が可能となっている。これまで1995年に引木孝夫(アイスホッケー)・鈴木秀太(バスケットボール)・高沢秀昭(野球)、1996年に山中宏美(スピードスケート)、2000年に本間貞樹(アイスホッケー)、2016年に佐藤久佳が認定され、このうち引木・鈴木・山中は活動を終えている[119]。
アイスホッケー
野球
サッカー
「名誉市民紹介」参照[120]
2010年(平成22年)に市内の中学校で「将来の市長になろう」というテーマで模擬市長選挙が行なわれ、その中の1つに「『とま☆キャラプロジェクト』というキャラクターを使ってまちおこしをしよう」というものがあり、これが市長の目に留まった[122]。そこで、キャラクターの図案を市内の小中学生で構成され、2011年(平成23年)1月に開かれた「第24回苫小牧市子ども会議」で4案作成した図案から最終的に1案を決定し、キャラクターの名称も「とまチョップ」に決まった[122]。「子ども会議」で提案された原案を基に3候補を市内の小中学校や公共施設、夏のイベント『とまこまい港まつり』会場で市民投票によって選びキャラクターが決定した[123]。投票結果は同年8月31日の市長記者会見にて発表し、投票総数37,170票のうち20,470票を獲得したキャラクターが、苫小牧市公式キャラクター「とまチョップ」として決定した[122]。
2011年(平成23年)に「とまこまいフィルムコミッション」が設立され、ロケーション撮影誘致に向けた取組みを行っている[124]。
行政
産業
観光
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太字斜体は、振興局所在地。
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