キセリ またはキセーリ またはキッセル (エストニア語 : kissell 、フィンランド語 : kiisseli 、ラトガリア語 :keiseļs、ラトビア語 : ķīselis 、リトアニア語 : kisielius 、ポーランド語 : kisiel 、ロシア語 : кисель 、kisél' 、ウクライナ語 : кисiль 、ベラルーシ語 : кісель 、kisél ') はとろみのあるフルーツ料理で、デザートまたは飲料として供される[ 1] [ 2] 。キセリはモルス のように甘くしたベリー類のジュースからなるが、コーンスターチ や馬鈴薯澱粉 、クズウコン などでとろみをつけてあり、赤ワイン や生のフルーツまたはドライフルーツ を加えることもある。デンマーク のロドグロド (rødgrød )、ドイツ のローテグリュッツェ (rote Grütze )とよく似ている。スウェーデン のブレアーゾッパ (blåbärssoppa ) もビルベリーを用いて同じように作る。
キセリは温製でも冷製でも供されるが、どちらも甘くしたクワルク やセモリナプディングが添えられる。キセリはパンケーキ に乗せたり、アイスクリーム と一緒に食べたりもする。デンプンを少なめにしたキセリは飲料として供され、ポーランド やロシア 、ウクライナ ではそちらの方が一般的である。寒い時期に東ヨーロッパ 諸国の家庭で作られることが多い[ 3] 。お湯で溶かすだけでOKな粉末タイプも販売されている[ 3] 。
語源
ベルゴロド でキセリを作っている様子。ラジヴィウ年代記 のミニアチュール より。
キセリの名前はスラブ語で「酸味」を意味するキスリ (ロシア語: кислый kisly ) に由来し、古いスラブ料理にあった発酵した穀物のカーシャ (オート麦のことが多かったがどんな穀物でもよく、エンドウ やレンズ豆 などの豆類も使われた) や弱いサワードウ のことを指した。キセリは、997年のキエフ・ルーシ のベルゴロド公 とペチェネグ の抗争を描いた年代記に初めて出てくる。ベルゴロドの食料が尽き飢餓が始まると、住民たちは老人のアドバイスに従って穀物屑でキセリを、最後に残ったハチミツ酒から甘い飲み物を作った。さらに見せかけだけの井戸を2つ掘り、それぞれの底に置いた木桶にキセリと飲み物を満たした。そして、住民たちはペチェネグの大使を街に招き入れ、大使の目の前で偽の井戸からキセリと飲み物を汲み上げてもてなした。大使は井戸から食物が出てくることに大いに驚き、それを聞いたペチェネグは、ルーシ人 達が大地で自らを養っていると恐れ、包囲を解くことを決めたという[ 4] 。
作り方
現在では、ポーランドの多くの家庭で伝統的な作り方ではなくインスタントミックスを使ってキセリを作っている。人気があるのはポーランドではイチゴ 、グースベリー 、ラズベリー 、ロシアではクランベリー 、サクランボ 、レッドカラント (フサスグリ) である。リトアニアではクランベリーのキセリ(リトアニア語 : spanguolių kisielius ) がクリスマス・イヴ の夜に食べる伝統的な食事 Kūčios で供される。フィンランドでは野山ですぐに見つかり手に入りやすいビルベリー や、プルーン 、アンズ 、イチゴでキセリを作る。とろみは加えるデンプンの量によって大きく変わるが、とろみが弱くスープのように飲みやすいものから、ゼリーのように固くスプーンで食べるものまである。ルバーブ を使うこともあるが、だいたいは酸味を和らげるためイチゴも加える。プルーンのキセリ (luumukiisseli ) は伝統的にライスプディングと共にクリスマスに食べる。ミルクのキセリ (maitokiisseli ) は砂糖を加えてバニラ で風味をつけた牛乳で作る。
文化において
ロシアのおとぎ話では、魅惑の国には「キセリの岸辺を流れるミルクの川」があると描かれる。この表現は、ロシア語で「豊かな生活」または「地上の楽園」を意味する熟語 になっている[ 5] 。
ポーランドとロシアでは、遠縁の者を指すのに「キセリの上に水7杯」(the seventh water on kissel) という言い回しがある[ 5] 。
ロシア民話ではベイン 編集の『ヴェルリオーカ』の中に豆のキセリの話が登場する。
脚注
^ The Oxford Companion to Food (2014, ISBN 019104072X ), page 446
^ Encyclopedia of Contemporary Russian Culture (2013, ISBN 1136787852 ), page 73
^ a b 『世界のホットドリンクレシピ』誠文堂新光社、2014年、pp.6-7
^ The Russian Primary Chronicle, Laurentian Text . Translated and edited by Samuel Hazzard Cross and Olgerd P. Sherbowitz-Wetzor. Cambridge, MA: The Mediaeval Academy of America, 1953, p.122. Kissel is translated as "porridge " in this edition.
^ a b Matt Trezza. Kissel . Russiapedia by RT.com
関連項目
外部リンク
レシピ