本項では、テレビ朝日系列の刑事ドラマ『相棒』のうち、season8からseason13までのエピソードについて解説する。
season8では、season7にて日本を離れた亀山薫(演:寺脇康文)に代わり、警察庁の上層部から特命係に送り込まれた神戸尊(演:及川光博)が右京の2代目相棒として行動を共にする[1]。同シーズンでは、右京に距離を置かれたりされるものの数々の事件を通して徐々に互いに歩み寄るようになり、最終話では尊が自分が特命係に送られた背景を理解したうえで、警察庁からの辞令を断り、自らの意志で特命係に残るという結末を迎える[2]。
season9放送中の2010年12月23日には劇場版第2作である『相棒 -劇場版II- 警視庁占拠! 特命係の一番長い夜』(以下:『劇場版II』)が公開され、その公開前日の2010年12月22日には、season9第9話「予兆」が放送され、劇場版での事件が起こる直前の模様が描かれる展開となり、さらに劇場版にて右京と複雑な関係にあった小野田公顕(演:岸部一徳)が殉職するという展開を迎えた。これに伴い、岸部は同シーズンを以て降板した[2]。続くseason9最終話では、小野田が生前取り組んでいたことの一端が明かされる[2]。また、season9は平均視聴率が20.4%と全シーズン最高の平均視聴率を記録しており、season9第16話『監察対象 杉下右京』では視聴率が23.7%を記録しており、(ビデオリサーチ関東地区調べ)こちらも全話中最高の視聴率を記録した[3]。
また、作中では、season9 第6話や同season 第10話のように他者の命の安全を一顧だにせず冷徹に正義と真実の追求をする右京と、相手の命の安全や立場を熟慮し、妥協の道を取ろうとする尊との間で、同じ強い正義感を持ち合わせながらも、信念の相違から度々対立する描写が成され、尊が右京の追求を上層部に掛け合ってまで無理矢理阻止させると言った行動を取ったり、右京と一芝居を打って、登場人物を油断させ、隙を見せた真犯人に迫るなど、亀山薫の代では見られなかった展開ややり取りを見せている。
season10第1話にて、長らく小料理屋『花の里』を切り盛りしてきた右京の元妻宮部たまき(演:益戸育江)が世界放浪の旅に出る事を理由に『花の里』を閉店、これに伴い益戸がseason10第1話をもって降板した。しばらくの間は、『花の里』でのやり取りの無い回が続いていたが、第12話にてかつて右京と薫に逮捕され、紆余曲折の末、刑期を終えて出所した月本幸子(演:鈴木杏樹)が三度登場、とある事件を機に右京に勧められる形で『花の里』の2代目女将となる[4]。これに伴い、鈴木がメインキャストとして登板することとなった[4]。最終話では尊に再び警察庁からの辞令が下り、警察庁長官官房付として異動が決まり、特命係を去っていった。
続くseason11で右京の3代目相棒として年の離れた甲斐享(演 :成宮寛貴)が右京自らの意思で引き抜かれる形で特命係に配属された[5]。
2013年3月には『トリオ・ザ・捜一』の一人である伊丹憲一(演:川原和久)を主人公としたシリーズ2作目のスピンオフ映画『相棒シリーズ X DAY』(以下:『X Day』)が公開されており、公開前に放送されたseason11の第17話「ビリー」[6]と第19話(最終回)「酒壺の蛇」[7]には『X Day』の主要キャラクターも登場している。
season12第1話では『トリオ・ザ・捜一』の最年長三浦信輔(演:大谷亮介)が犯人の襲撃で足を負傷し、後遺症を負った事を理由に警視庁を依願退職して去る。これに伴い、season12第1話をもって大谷が降板した。season12最終話では、小野田が生前に日本では施行されていなかった『証人保護プログラム』の違法適用させたことに端を発した事件が起こった。放送終了後の2014年4月26日には劇場版第3作目となる『相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ』が公開され、映画公開前にはNTTドコモが展開するdビデオで、2014年3月29日から4月19日までの期間、前日譚である『相棒 -劇場版III- 序章』が携帯動画ドラマが配信された[8]。また、『相棒 -劇場版III-』では神戸尊と甲斐享、新旧の右京の相棒同士が初の対面を果たしており、以降の劇場版やシーズンで尊が度々後任の相棒と対面する描写が成されるようになっている。
続くseason13では最終話にて享が「ダークナイト」と名乗り、警察の追及を逃れた犯罪者たちに制裁を与えていたことが判明し、懲戒免職という形で特命係を去る[9]。この影響で上司に当たる右京が責任を取る形で無期限謹慎が言い渡され、特命係の機能は完全にストップ、再始動は次回のseason14まで持ち越される事となった。なお、season11初回より享の実父である甲斐峯秋(演:石坂浩二)と、享の彼女の笛吹悦子(演:真飛聖)が登場する。season13初回より社美彌子(演:仲間由紀恵)が登場し、峯秋と共に特命係と度々関わっていく。この三人のうち、悦子役の真飛がseason13をもって降板した。
本シリーズにおいては引き続き実験的な内容の回もあった。 たとえば、season8第18話「右京、風邪をひく」では、時間を往復しながら物語が進行する内容であり、DVDおよびブルーレイ版には特典映像として「時系列再編集版」が収録されている[10]。続くseanson9第7話「9時から10時まで」では番組の放送時間に合わせて物語が進行するという仕掛けが施されているほか、同シーズンの第16話「監察対象 杉下右京」では登場人物たちの回想を通じて事件の真相が明らかになる内容である[10]。
season11第7話「幽霊屋敷」では、空き家にやってきた右京と享が庭の一角に土が掘り返された痕跡を見つけ、その痕跡を右京が犬のように土をかき出し、それに対して亨が「杉下さん、なんか怖い、怖い、怖い」と述べる場面がある[11]。この場面に関して水谷は以下のように述懐している。
スタッフもみんな笑っていました。犬かきは僕の思いつきで、昔、犬を飼っていたからできたんです。ナリが『怖い、怖い』と言ったのもアドリブです。台本には穴を掘るとしか書いてありません。時々、ああいうことをやりたくなるんですね — 水谷豊、[11]
また、season12第8話「待ちぼうけ」では、右京と享のそれぞれの休日を描きつつも、一つの事件へとつながっていく仕掛けが施されている[10]。
season8から日本の連続ドラマとしては初めて完全テープレス、ノンリニア編集の撮影・編集形態となった[12][13]。
season8 / season9 / season10 / season11 / season12 / season13
2013年10月にテレビ朝日が実施した人気投票「あなたが選ぶ『相棒セレクション』」(投票対象:pre season 〜 season11)においては、season10第10話「ピエロ」が1位を獲得した[235]。このエピソードは、ニュースサイト「ねとらぼ調査隊」による「『相棒』の元日スペシャルでもう一度観たい作品は?」(集計期間:2023年12月25日-12月31日)においても1位を獲得した[236]。このエピソードでは、バスジャック犯のピエロ役として当時ほぼ無名だった斎藤工が出演した[182]。斎藤は2022年に放送された『日曜日の初耳学』の中で、この役が自分にとってのターニングポイントだったと振り返っている[182]。斎藤は番組の中で当時の演技には反省点しか見つからないとしつつも、役柄や心情など様々なものが同期して個人的なベストだったとも語っており、司会の林修から称賛された際は、届く人には届くと気づかされたとも話している[182]。
2013年10月にテレビ朝日が実施した人気投票で7位を獲得した、season9第8話「ボーダーライン」[235]では、遺体で発見された派遣社員の男性(演:山本浩司)は雇い止めに遭い、住む場所を失い、現金が底をついたことで生活保護を受けようとするも、役所から申請を断られ、結婚を約束していた女性にも去られるという内容に、視聴者からは「救いがなくて重苦しい気持ちになった」という感想が寄せられた[237]。水谷は本エピソードに関して以下のように述べている。
この作品は結構話題になりましたね。台本ができあがったときにプロデューサーのみなさんから『暗すぎるんじゃないか』という声も上がりましたが、この世界は確実にある。そういう意味では、こういう作品が一本あってもいいということで、意見がまとまりました — 水谷豊、[238]
結果的に本エピソードによって水谷と脚本家の櫻井武晴は一般社団法人反貧困ネットワークが主催する「貧困ジャーナリズム大賞 2011」の大賞を受賞した[239]。
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