カイティー文字(カイティーもじ)は、インド北部でかつて使われていたブラーフミー系文字。
デーヴァナーガリーと同じナーガリー系の文字だが、より筆記体的であり、グジャラーティー文字と同様、文字上部の横線(シローレーカー)を欠く。他のインドの文字と同様、左から右に書かれるアブギダに属する。
かつては北インドの主要な文字のひとつだったが、現在ではデーヴァナーガリーによって淘汰された。
概要
カイティー文字は初期ナーガリー文字から派生し、今のビハール州およびウッタル・プラデーシュ州東部で用いられた[2]。本来はカーヤスタ(英語版)という書記階級によって用いられる文字だった[3]。
カイティー文字はかつてボージュプリー語とマガヒー語を表記するのに用いられ、マイティリー語とアワディー語の表記に使用される文字のひとつでもあった。またビハールとベンガルの法廷ではウルドゥー語もこの文字で表記された。時には周辺のベンガル語やマールワーリー語をこの文字で表記することもあった[1]。
イギリス領インド帝国時代の1880年にはビハール政府の公式の文字となり、活字も鋳造されて公文書や教科書が印刷されたほか、キリスト教宣教師も使用した[1]。
20世紀なかばまでにデーヴァナーガリーの使用が拡大し、カイティー文字を含む北インドの地方文字の多くは衰退した[4]。
Unicode
2009年のUnicodeバージョン5.2で、追加多言語面のU+11080..U+110CFに追加された[5][6]。
Kaithi[7]
|
|
0 |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
A |
B |
C |
D |
E |
F
|
U+1108x
|
𑂀
|
𑂁
|
𑂂
|
𑂃
|
𑂄
|
𑂅
|
𑂆
|
𑂇
|
𑂈
|
𑂉
|
𑂊
|
𑂋
|
𑂌
|
𑂍
|
𑂎
|
𑂏
|
U+1109x
|
𑂐
|
𑂑
|
𑂒
|
𑂓
|
𑂔
|
𑂕
|
𑂖
|
𑂗
|
𑂘
|
𑂙
|
𑂚
|
𑂛
|
𑂜
|
𑂝
|
𑂞
|
𑂟
|
U+110Ax
|
𑂠
|
𑂡
|
𑂢
|
𑂣
|
𑂤
|
𑂥
|
𑂦
|
𑂧
|
𑂨
|
𑂩
|
𑂪
|
𑂫
|
𑂬
|
𑂭
|
𑂮
|
𑂯
|
U+110Bx
|
𑂰
|
𑂱
|
𑂲
|
𑂳
|
𑂴
|
𑂵
|
𑂶
|
𑂷
|
𑂸
|
𑂹
|
𑂺
|
𑂻
|
𑂼
|
|
𑂾
|
𑂿
|
U+110Cx
|
𑃀
|
𑃁
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
脚注
- ^ a b c Anshuman Pandey (2007-03-21), Proposal to Encode the Kaithi Script in Plane 1 of ISO/IEC 10646, https://unicode.org/L2/L2007/07199-kaithi.pdf
- ^ Masica (1993) p.143
- ^ 田中(1981) p.203
- ^ Masica (1993) p.144
- ^ Supported Scripts, Unicode, Inc., https://www.unicode.org/standard/supported.html
- ^ Unicode 5.2.0, Unicode, Inc., (2009-10-01), https://www.unicode.org/versions/Unicode5.2.0/
- ^ Kaithi, Unicode, Inc, https://www.unicode.org/charts/PDF/U11080.pdf
参考文献
- 田中敏雄 著「インド系文字の発展」、西田龍雄 編『世界の文字』大修館書店、1981年、181-210頁。
- Masica, Colin P (1993) [1991]. The Indo-Aryan languages (paperback ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521299446
外部リンク