『テラフォーマーズ』(TERRA FORMARS)は、貴家悠(原作)、橘賢一(作画)による日本の漫画作品。略称は「テラフォ」[1]。
火星のテラフォーミング用に放たれたことで人型へと進化したゴキブリ「テラフォーマー」と、それを駆除するために特殊な手術を施された人間との戦いを描いたSF漫画。
2011年、『ミラクルジャンプ』(集英社)創刊号より連載を開始し、同年6号まで掲載された(第1部)。同年、『週刊ヤングジャンプ』(同社)27号(2011年6月16日発売)にて、『ミラクルジャンプ』版の22年前のエピソードである西暦2577年が舞台の、『テラフォーマーズ1』(TERRA FORMARS ONE)[注 1]が掲載された。
2012年、『週刊ヤングジャンプ』22・23合併号より新たに『ミラクルジャンプ』版の20年後である西暦2619年を舞台にした『TERRA FORMARS テラフォーマーズ』の連載が開始された(第2部)。
2013年版『このマンガがすごい!』オトコ編で1位、『全国書店員が選んだおすすめコミック2013』で2位を獲得した。2021年11月時点でシリーズ累計部数は2200万部を突破している[2]。
2014年にテレビアニメ化、OVA化[3]。2016年に実写映画化された[4]。
原作者・貴家悠の病気療養のため、ヤングジャンプ2017年15号より休載。2018年4月26日発売の21・22合併号より連載再開された[5]。その後、41号から49号にかけても貴家の体調不良により休載[6]。50号より連載再開されたが、52号での掲載をもって、しばらく休載することが発表された[7]。
2024年3月18日、ヤングジャンプ2024年18号から連載再開となることが発表された[8]。
本作品は26〜27世紀という未来が舞台だが、文明の進歩が停滞してしまっているという設定のため、人々の生活は21世紀とほぼ同じレベルの描写がされている。また、人口増加や資源の枯渇・貧富の格差などに多くの国が現代以上に深刻な問題を抱えている[注 2]。
便宜上、読み切り作品である『テラフォーマーズ1』も記載する。
艦長、副艦長を含む15人の若い男女で構成されている。全員が「火星の厳しい環境下での任務遂行」の名目で「バグズ手術」を受けている。構成員は金銭がない者が多く[9]、手術の成功率の低さゆえに多額の報酬と引き換えに手術を受けた者が多い。U-NASAから事前に言い渡されていた建前上の任務はゴキブリの駆除と清掃となっており、緊急時のためと事前に訓練を受けていた。作戦終了時の帰還生存者は2人。
乗組員は合計100名(内、幹部6人)で構成される[9]。前回のバグズ2号の面々同様、多額の報酬と引き換えに金や仕事がない者たちが流れ着いたケースが多いが、正規の軍人の他、A・Eウイルスに侵された身内や親しい人を救うために参加した者もいる。作戦終了時の帰還生存者は20人。
第一班は日本・アメリカ大陸出身者で構成される。
第二班は日本・アメリカ大陸出身者で構成される。
第三班はロシア・北欧出身者で構成される。謎の古代文明「ラハブ」を解明するというロシア独自の作戦を敢行するため、当初は第四班の作戦に協力する。しかし、第四班の想定以上に非道な行為から日米側に寝返り、第四班やテラフォーマーと熾烈な戦いを繰り広げた。
第四班は中国・アジア出身者で構成される。火星到着直後に班が全滅したと思われていたが、偽装死であった。生きていた彼らはアネックス1号を占拠し、裏切りがバレた後は他班と戦う。
第五班はドイツ・南米出身者で構成される。
第六班はヨーロッパ・アフリカ出身者で構成される。
作中の27世紀で強い権力を持っているのは日本、アメリカ、ロシア、中国、ドイツと新興国家ローマ連邦の6か国。以下の各国首脳陣がアネックス計画を指揮している。また、テラフォーマーやM.O.技術の存在は一般には秘匿されているため、各国首脳がテラフォーマー関連の原因で死亡したり重体になった場合、表向きには急死扱いにすることが互いに示し合わされている。
民間警備会社[17]で、作中の27世紀では日本第2位の規模を誇る。「個人から国家まで契約者の財産を力ずくで衛る」を信条に、法人・一般邸宅のセキュリティシステムや国内外の災害地域・戦闘地域のシステム開発を主な業務とするが、テラフォーマー対策を専門とする一般には知られていない「地球警護部」が存在する。創設者は蛭間一郎で、社名も彼の名にちなんだものである。
U-NASA本部にも極秘で救助艦「フロンティア・スピリット」を火星に派遣し、多くの乗組員を救助した。一部の社員はM.O.手術を受けており、日本政府から依頼を受けてテラフォーマーとの戦いを密かに繰り広げている。マーズ・ランキングに倣った「ジャパン・ランキング」を持つ社員が多く登場する。
下記の社員の他、アネックス1号の帰還者から燈、慶次、加奈子、八恵子、江莉佳が所属している。
2040年代ころから、M.O.手術とは全く異なるアプローチで「人間の品種改良」を行ってきた一族。容姿・能力・病気への抵抗力が優れた人間を配偶者にし続けていくことで、人間の持つ「全ての個性を兼ね備え」かつ「向上させている」。「ニュートン」姓の他、親戚として「スマイルズ」「ヴィンランド」「新界」などといった姓の人物が登場するが、人種・国籍・苗字すらこだわりはなく、「真のコスモポリタン」を自称している。2200年代からは一部の動物の持つ睡眠の特性(数瞬で睡眠を完了、体の一部だけ寝る)を得るなど、人間の限界を超え始める能力が備わるようになる。
第2部では何らかの思惑を持って火星のテラフォーマーらに情報をリークしたり、ローマ連邦大統領らを操ってアネックス計画に介入したりと暗躍していた。第3部ではテラフォーマー・中国軍上層部らと「最終目標の一つ手前の目的」の一致から本格的に結託し、互いの計画を進めていることから〈神肝達〉として危険視されている。
地球からテラフォーミングのために火星に放ったゴキブリが異常進化した生物の総称。地球人は主に「ゴキブリ」と呼ぶ。約2メートル以上の体長に筋骨隆々の体格、頭部から首の後ろにかけて生えたパンチパーマ状の頭髪という外見をしている。外見のデザインは「絶滅した原人」などを造形の参考にして描かれている[18][19]。痛覚こそないが、体内構造は人間に近く、脊椎を有し脳の形状や眼球も人間そっくりになっており、ゴキブリの形態的要素は甲皮、気門、触角、尾葉、羽くらいしか残されていない。人間に近い姿をしているものの、人間と異なり雄と雌の外見上の差異はほぼない。幼生も存在し、体長は成虫の腰の高さほどとなっている。
腕力が高く、薬で変身した乗組員も無防備ならば素手で簡単に破壊される。体も強靭で熱に強く、多糖類アミロースで出来た甲皮を全身の気門から入る酸素で直に燃焼させることで爆発的な運動量を得ているが、生命活動に必要な酸素は肺呼吸で得ている。身体のコントロールは胸部の『食道下神経節』『胸部神経節』に委ねられているため、呼吸および胸部の器官が無事ならば、首が切断されても活動できることがある。逆に言えば喉を潰すか胸部を破壊することで活動を止められる。
普段は「じょう」「じじょう」「じょうじ」「じょうじょう」といった音声でコミュニケーションを取る。なお、この言葉の起源はバグズ1号乗組員「ジョージ・スマイルズ」のこと[11]で、彼が名前を呼ばれているところを覚えて以後使用されるようになった。瀕死の際は「ギィ、ギィ」と鳴く。
脳も進化しており、知性を持っている。銃器や網、旗などを使用するほか、人間の機械の扱い方を理解し、初めて見るはずの高速脱出機を操縦することも可能とし、さらにバグズ1号のクルーの遺体から臓器を自力で移植するなどの医療行為すら行うなど急激な発達を見せている。前時代に中国宇宙軍が飛ばした火星探査機「大鲤鱼二三號(グレイトカープ23號)」や「バグズ1号」を修理して利用している。更にはなお、多くの個体が持っている石器製の棍棒は、武器ではなく岩に付いた苔を削ぎ取り食べるための食具[注 25]である。バグズ2号の遺したカイコガで養蚕を行い、布や食料としても利用している。2620年には組織化が進んでおり、階級や役割のようなものを与えられた個体が存在[20]し、身体に装飾具や衣装を身に付けた個体がテラフォーマーの部隊を統率している。また、カイコガという動物性タンパク質を摂取したことで、より巨大で筋肉質な肉体をした、両腕に紐を3本ずつ巻いている力士型テラフォーマー[21]という個体が複数存在する。人類の侵攻をさながらナイル川の氾濫の如く被害をもたらすが同時に新たな恵み(技術・物)をもたらすものと捉えて、人間をある意味では『神』のように信奉し、スキンヘッド型のテラフォーマーたちを頭目としている。
虫から人型に急激に進化したことで「免疫寛容臓(モザイク・オーガン、M.O.)」という臓器を獲得している。本来なら莫大な時間をかけて行われる進化が500年で起きたため体が急激に変化し、「ヒト」と「昆虫」ほどに離れたものを共存する手段として生まれた特殊な臓器である。そのため、異なる生物のDNAを組み込んでも体が許容するようになっており、人間側はこの臓器を活用することで「バグズ技術」「M.O.技術」を生み出した。一方でテラフォーマーたちはこの特性[20]を生かし、バグズ2号の乗組員の遺体から原始的な手術で能力を移植した「バグズ型テラフォーマー」[注 26]を誕生させる。後に、アネックス1号乗組員から能力を奪った個体「M.O.型テラフォーマー」が登場している。第2部終盤、テラフォーマーの地球侵攻が判明してからは地球に生息している生物から直接能力を移植した個体も多数登場している。
第3部ではM.O.型に加え、ベース生物と同化しほぼ同じ外見・能力を持つテラフォーマーも登場する。
第1部の終盤で卵鞘より新たに生まれた変異種。それまでのテラフォーマーと違い頭髪がない。並外れて知能が高く、不気味な笑顔を浮かべるなど表情が豊か。動作も素早く洗練されている。1日と経たず孵化し、孵化直後でも体長は旧型の成虫と変わらず、すぐさま人間に対し敵意をもって戦う。全てのテラフォーマーたちの統率者的な立場にある。額に、それぞれの個体によって異なる模様を持つ。統率者的個体が死亡すると、新たに進化したスキンヘッド型が誕生する。
第2部では『\・|・/』を頭目として高度な組織を築いていた。死亡してもすぐに新たに生まれてくるわけではないが、代替わりして何匹か登場している。
原作者の貴家悠は、当初は不良漫画を持ち込んだが、それを一読した編集者から「次は潜水艦か宇宙船か火星の漫画を描いてきて」と言われ、昔テレビ番組で見て覚えていた苔とゴキブリを用いた火星のテラフォーミング計画をSF漫画のアイデアとして選んだと言及している[18]。
またキャラクターを印象付けるために、初登場時と退場時の見せ方を常に意識している[23]。理由は初登場時はキャラクターを分かりやすく示さないと、覚えてもらえないためであり、退場時は勢いがないとその後のストーリーで忘れられてしまうためである[23]。
そして台詞に関しては「決め台詞」「ナレーション」「日常会話」を用意し、決め台詞は意味よりもキャラクターの感情を勢いよく表現することを重視、ナレーションは状況説明、日常会話はその中間になるように意識していると語る[23]。
作画の橘賢一は、キャラクターの武器などのデザインに関しては虫の複眼を例に挙げ、個性を取り入れつつも統一感を出すようにしていると語る[24]。また基となる生物の特徴に囚われすぎず、格好良さを優先している[24]。作画で最もこだわっているのはテラフォーマーの顔であり、人間に寄せすぎても、人間とは全く違いすぎても恐怖感がなくなるため、悩みながら描いていると語る[25]。
戦い場面に関して、貴家はどのキャラクターがなぜ強いのかを分かりやすくするために「体格」「(ベースとなる)生物」「使用武術」「武器」「性別」が重ならないようにして、それぞれのキャラクター独自の戦いになるように意識している[26]。これらの参考になるのは、梅澤春人の漫画『BØY』のハレルヤや荒木飛呂彦の漫画『ジョジョの奇妙な冒険』の空条承太郎であり、その際、戦い方を複雑にせず爽快感も重視していると語る[26]。
以上、作品全体としては、ボールを投げる際の手の形や火星の地形を例に挙げて、細かな箇所にも現実感を持つように制作されている[25]。そのためもあり、機械的な要素に関して、作中に登場する高速脱出機および対テラフォーマー発射式蟲取り網のメカニカルデザインとして、アニメーターの金世俊[27][28]や九頭龍のメカニカルデザインとして相馬洋がクレジットされている。
以下は本編の登場人物の火星に来る前のエピソードを題材にした作品。
また外伝作品に登場する技術として以下がある。
2014年からOVAとテレビアニメの2メディアで展開。なお、このアニメ版では作品英題名を『TERRAFORMARS』(「TERRA」と「FORMARS」にスペースを挟んでいない)としている。ナレーションは石井康嗣が担当する。
単行本1巻にあたる「バグズ2号編」が前後編のOVAとして制作され、2014年8月20日発売の単行本10巻OVA同梱版に前編「00-01 THE ENCOUNTER 既知との遭遇」が[30]、11月発売の単行本11巻OVA同梱版に後編「00-02 UNDEFEATED 敗れざる者たち」が同梱された[31]。
単行本2巻以降にあたる「アネックス1号編」をテレビアニメとして2014年9月より12月までTOKYO MX、朝日放送、CBCテレビ、テレ朝チャンネル1、BS11にて放送された。火星出発前のエピソードの幾つかが省略されているほか、テレビ放送版では一部シーンに自主規制処理が施されており、一部回はオリジナルバージョンを期間限定でネット配信した。
2015年8月には続編の制作が発表され[32]、2016年4月より6月まで『テラフォーマーズ リベンジ』(TERRAFORMARS REVENGE、以下第2期)のタイトルで放送された[33]。スタッフが大幅に入れ替えられており、OVA・第1期ではあまり見られなかったギャグ描写が加えられている。
単行本第21・22巻には、第3部「地球編」にあたるOVAが付属する[34]。
2期リベンジが、2020年6月1日にビビッドアーミーとコラボした。
『RADIO TERRAFORMARS 〜バグズ2号航海記録〜』が、2014年7月19日より音泉およびHiBiKi Radio Stationにて毎週土曜日配信された[41]。パーソナリティは細谷佳正(膝丸燈 役)。2014年9月27日からは、テレビアニメ放映開始に合わせ、番組タイトルが『RADIO TERRAFORMARS 〜アネックス1号航海日誌〜』へリニューアルされた。2015年3月28日をもって終了。
2016年3月31日から7月28日までは第2期の放送に合わせて『テラフォーマーズラジオ ヒゲとボインが地球を救う!』がHiBiKi Radio Stationにて毎週木曜日に配信された[42]。パーソナリティは木内秀信(小町小吉 役)とたかはし智秋(三条加奈子 役)。
「バグズ2号編」をベースとした実写映画が2016年4月29日に公開。『インターステラー』の製作チームと共に邦画としては初めてアイスランドで撮影が行われた[44]。
原作では各国が関わっていたバグズ計画は、日本が単独で秘密裏に行っていたという設定に変更された。それに伴い、バグズ2号乗組員も全員が日本人(ただしゴッド・リーは正確な出自が不明、連城マリアは密入国者)として再設定されている。
カッコ内は原作で同じ手術ベースのキャラクター。
『テラフォーマーズ / 新たなる希望』のタイトルで2016年4月24日よりdTVで配信された。映画の前日談で、小吉たちが火星行きメンバーに選ばれるまでの経緯を描く内容になっている。監督は山口義高。映画の監督を務める三池は監修という形で参加している[50]。
興行成績ランキングは7位(4月30日〜5月6日)→10位(5月7日〜5月13日)と推移して、以降10位以内から消えた(興行通信社調べ)[52][53]。日本における配給収入は5,512,622米ドル[54](公開初日である4月29日のレート1米ドル=106.3円で換算すると約5億8599万1719円)。
以下の出典は『集英社の本』(集英社)内のページ。書誌情報の発売日の出典としている。
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