『シルクロード少年 ユート』(シルクロードしょうねん ユート)は、2006年9月16日から2007年3月24日まで、BS2(衛星アニメ劇場枠)で放送された日本のテレビアニメである。
2008年春からバップオンデマンドにて各話有料配信。全26話。3DCGで製作(ただし、一部の背景・解説のシーンは2D作画)。
2007年10月7日からNHK教育テレビで放送。NHK制作のアニメーションらしく、中国大陸にある古今東西の国々を舞台にした作品である。登場する国々は時代ごとの文明レベルや風習や建築学などが考察されているが、戦争や人間同士の争いといった一面も描かれている。そして登場人物の多くは身勝手かつ自己中心的な一面があり、それらを重々しく描くことはなく、軽快なコメディタッチで描くのも大きな特徴である。
表向きはこども向けアニメとなっているが、むしろこどもの登場人物は少ない。物語を動かしていくのも様々な大人達であり、夢追う故に悲壮感や孤独を背負い続ける大人達の物語である。仕事を通しての利益主義の追及や、仕事をする上で世間一般の普遍的な生き方を切り捨てなければならない決断など、およそ他のNHKアニメには見られない大人向けの一面も強い。
2006年度文化庁メディア芸術祭アニメーション部門審査員推薦作品。
家族旅行でシルクロードに来ていた21世紀の普通の少年・ユートは、青海湖のほとりで古い仏像を見つける。仏像はユートの目の前で輝きを放つ雪達磨大使像へと変わり、その奇跡に導かれるようにして謎の少女・春麗が出現する。ユートと春麗は奇跡を起こすといわれる雪達磨大使像を探しに24世紀からやって来たタイムトラベラー達の争いに巻き込まれ、タイムマシンのひとつ・バーバレラ号に乗って24世紀のエージェント・ラモーン達と共に過去のシルクロードへと旅立つ。
タキヒロムにより『comic B's-LOG』で2006年10月号から2008年3月号まで連載。
単行本第2巻は2007年9月発売予定だったが、2度の延期の末、2008年3月に340ページという大ボリュームで発売。内容に関してはアニメ版であった高度なストーリーテリングや伏線はほぼ削がれ、単なる宣伝漫画のようになっている。タキヒロムはアニメ版の優秀なスタッフによる高度な作品作りに対し、自身はただの絵を描く端くれものだと気が引ける思いを語っている。そのせいか後半に向かうにつれ完成度が著しく落ち、自身の力量では到底アニメ版には敵わないことから「開き直った」ともコメントしている。
戸梶圭太による小説版。アニメ版とは一変してダークファンタジー色が濃く、時間旅行に対する否定的な結論からもほぼアニメ版との関連性は無い別物である。しかし両作共にこどもの社会的コミュニティへの参加や、最終的に仏教的な考え方で完結するなど共通点もある。ショッキングな描写に富んだエンターテイメント性の高い一品である。グロテスクな描写だけでなくエロティックなシーンも多い(リンランが売春婦を装って兵士を倒す、ユートが老婆に強姦(未遂)されるなど)。
これらの刺激的なシーンのために本作品には寺田克也による挿絵などは一切無い。
また、ユートの生態時間が崩壊して乳児になってもアニメ版の場合精神はそのままであるが、小説版では精神も乳児になる。
24世紀の世界人口は60億から11億に減少し、生き残った人間は「アダチシティ」「ラズチャックシティ」という貧困層と富裕層の2極化された未来都市で生活している。なお、都市の外界は、人間が住めない劣悪な放射能汚染と細菌兵器によってアンデッドになった人々が徘徊し、人間の文明と呼べるものは存在しない。この混沌とした世界観は24世紀だけではなく、21世紀にも暗黒と危険に満ちた世界を示唆する表現がある。
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