第94回天皇杯全日本サッカー選手権大会(だい94かい てんのうはいぜんにほんサッカーせんしゅけんたいかい)は、2014年(平成26年)7月5日から2014年12月13日まで開催された天皇杯全日本サッカー選手権大会である。
ガンバ大阪が5年ぶり4回目の優勝を果たし、2000年の鹿島アントラーズ以来史上2チーム目の国内タイトル三冠を達成した。
2013年11月14日の日本サッカー協会 (JFA) 理事会に於いて日程等の審議が行われてスケジュールが確定[1]、2014年3月13日のJFA理事会に於いて開催規程と運営要項の変更が話し合われてレギュレーションが確定し[2]、2014年5月19日に大会実施概要が公表された[3]。
レギュレーションの大きな変更点としては、2014年からのJ3リーグ (J3) 発足に伴うシードチーム配分の変更が挙げられる。具体的には、従来の「日本フットボールリーグ (JFL) シード枠」(JFL前期終了時点での1位チーム)に代わり、「前回大会のアマチュアカテゴリー最優秀成績チーム」にシード権が与えられることになった[2]。なお、本年より創設されたJ3リーグ所属12チームに対して本大会へのシード権は付与されず、アマチュアシード枠で出場するAC長野パルセイロとJ3リーグ戦限定で参加しているJリーグ・アンダー22選抜を除く10チームが各都県の予選に参加し、FC町田ゼルビアおよびSC相模原以外の8チームが当該各県予選で優勝し本大会に出場した。
また、決勝戦については、それまで長年にわたって決勝の会場となっていた国立霞ヶ丘競技場陸上競技場が、2019年ラグビーワールドカップ、及び2020年夏季オリンピックに向けた国立競技場への施設建て替え工事(2015年10月解体完了)に伴い使用できなくなることから、「3万人以上収容のキャパシティーを有するスタジアム」での開催を念頭に決勝戦の主管団体を公募したところ、東京都サッカー協会(東京スタジアム (味の素スタジアム))、大阪府サッカー協会(長居陸上競技場(ヤンマースタジアム長居))、神奈川県サッカー協会(横浜国際総合競技場(日産スタジアム))から応募があった。この3会場について、10月31日に天皇杯実施委員会にて実施委員16名による投票を行った結果、東京スタジアムと横浜国際が7票で同票となったが、「FIFAワールドカップ決勝、FIFAクラブワールドカップ決勝の開催実績が多かった」との実施委員長裁定により横浜国際が天皇杯決勝の会場に推薦され、理事会で承認された[1][4]。決勝戦が国立霞ヶ丘陸上競技場以外で開催されるのは、第46回大会以来48大会ぶりとなる。また、決勝の日程についても、恒例の「元日決勝」から12月に前倒しされている(詳細後述)。
なお、次回の第95回(2015年度)からは、第2種(高校生・ユース)のチームの出場資格が廃止され、第2種チームの出場は今大会に出場した3チーム(モンテディオ山形ユース、山梨学院大学附属高校、徳島市立高校)がひとまず最後となった[5]。
優勝したガンバ大阪にはAFCチャンピオンズリーグ2015への出場権が与えられた。
AFCアジアカップ2015が2015年1月9日に開幕することから、日本代表の準備期間を確保するために12月中に大会を終えることになり、決勝戦については恒例となった「元日決勝」から12月13日に前倒しされた[1][4]。元日に決勝戦を行わないのは、第47回大会以来47大会ぶりとなる[6]。また、決勝戦の日程前倒しと同時に、準決勝までがJリーグのリーグ戦日程と重なることを踏まえて準々決勝以降の日程間隔も見直された結果、全体の日程も8月開幕となった前回大会よりさらに1ヶ月半前倒しの7月開幕となった。なお、北海道代表は6月中に決定することができない[7] ため、北海道代表の関わる1回戦・2回戦は別の日に開催された。
日程見直しの結果、準決勝もこれまでと異なる「平日ナイトゲーム、2試合同時開催」(従前は日中の2試合時差開催)となったこともあり、総合テレビとラジオ第1放送での中継は行われなかった(BS1でマルチチャンネル放送を実施)。
前回(第93回大会)・前々回(第92回大会)は3回戦終了後に組み合わせの再抽選が行われたが、今大会ではラウンド16[注 1](4回戦)終了後に決定することになっている[3]。
上記の日程は、レギュレーション発表時点の予定に基づいたが、ラウンド16(4回戦)については予備日の対象となるチーム(J2勢およびナビスコカップ準々決勝進出チーム)の関係する試合が8試合中7試合となった結果、本来日程であった9月6日には開催されず、1試合のみ9月7日に開催されることになった。同様の理由で、準々決勝も本来日程であった10月12日には開催されず、1試合のみ10月11日に開催されることになった。
以下の「出場回数」についてはJFAの公式記録に基づくが、基本的には「前身となるチーム(クラブ化前の実業団チーム、など)からの通算回数」としている。ただし、一部に例外もある。
2014年のJリーグ ディビジョン1所属の全18チーム。
2014年のJリーグ ディビジョン2所属の全22チーム。
前回大会の本大会に出場したアマチュアカテゴリーのチーム(J1・J2シード以外の48チーム)の中で最も成績が優秀だったチーム
埼玉県代表は3月30日に[10]、千葉・静岡・愛知・香川の4県代表は6月28日[11] に、5県と北海道・群馬県を除く40都府県の代表は6月29日に[12]、群馬県代表は7月6日に[13]、北海道代表は7月19日に[14] 決定した。
準々決勝の抽選は2014年9月16日に日本サッカー協会ビル(JFAハウス)内日本サッカーミュージアムにて行われた。抽選方法としては前回大会を踏襲しているが、一部変更点がある。
ドロワーは日本サッカー協会会長の大仁邦彌、天皇杯実行委員会委員長の佐々木一樹、スルガ銀行代表取締役社長兼CEOの岡野光喜、ゲストドロワーとして名波浩と田中誠[15]。
なお、今回の抽選会の模様の中継は前年までのNHK BS1ではなく、スカパー!にて「天皇杯ベスト8抽選会〜ラウンド16ハイライト〜」として放送された(無料放送を実施)。ゲストは準々決勝に進出したギラヴァンツ北九州監督の柱谷幸一と、解説の水沼貴史・秋田豊。番組進行担当は中村義昭[16]。
決勝に勝ち進んだのは、2012年・第92回大会以来の決勝進出で、2009年・第89回大会以来5年ぶりの優勝を目指すガンバ大阪と、クラブ初のタイトルを目指すモンテディオ山形の2チーム[17]。G大阪はJ1復帰初年度で優勝を果たし、ナビスコカップと合わせて2014年シーズンの3冠を目指す。一方の山形はJ2では6位ながらもJ1昇格プレーオフを制してJ1昇格を決め、勢いを持続したまま決勝に臨むことになった。J2クラブの決勝進出は、J2勢同士の対戦となった2011年・第91回大会以来3大会ぶり、東北勢の決勝進出は、1933年・第13回大会に出場した仙台サッカークラブ以来81年ぶりとなる[18]。
試合は前半4分、G大阪自陣前からGK東口順昭のフリーキックをFWパトリックが頭で落とし、FW宇佐美貴史が胸トラップからボレーシュート。一旦は山形GK山岸範宏がはじき返すが、こぼれ球に宇佐美自らが詰めて右足で押し込み、G大阪が序盤早々に先制点を挙げる[19]。前半22分には山形のコーナーキックのこぼれ球を宇佐美が奪ってドリブルで持ち上がりカウンター攻撃からパトリックにラストパス、これをパトリックが落ち着いて決め、G大阪が前半のうちに2点を挙げる[19]。
躍進の立役者となったFW川西翔太を契約上の関係で[注 3]、MFキム・ボムヨンを出場停止で欠いた上で2点のビハインドという苦しい展開となった山形は、後半開始からDF舩津徹也を投入して守備を修正、後半15分にはFW林陵平を投入して運動量をさらに上げる作戦に出る。すると後半17分、攻撃参加していたDF石川竜也のクロスボールをMF松岡亮輔が反らし、MFロメロ・フランクが決めて山形が1点を返す[19]。その後も足の止まったG大阪に対して猛攻を仕掛ける山形だったが、逆に後半40分、山形DF山田拓巳が足を攣らせて一時ピッチを離れ守備が乱れた隙に、G大阪MF倉田秋からMF遠藤保仁を経由してゴール正面のFW宇佐美にラストパス。これを宇佐美が豪快に振り抜くと、シュートは山形DF當間建文の足に当たりながらもそのままゴールイン、ダメ押しの3点目を奪われる[19][21]。
試合はそのまま終了。G大阪が3-1で山形を下し、5大会ぶり4度目の優勝。史上2チーム目となるリーグ戦・ナビスコカップ・天皇杯の国内主要タイトル三冠を達成した[19]。これに伴い、優勝チームに第2代表としての出場権が与えられるAFCチャンピオンズリーグ2015はリーグ戦2位の浦和レッズが第2代表に、リーグ戦3位の鹿島アントラーズが第3代表に繰り上がり(以上本戦からの出場)、リーグ戦4位の柏レイソルが新たに第4代表(プレーオフからの出場)としての出場権を獲得した[22][23]。
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