LineageOS (リネージオーエス) はAndroidをベースとした、スマートフォンやタブレット用のフリーでオープンソースなオペレーティングシステムである。LineageOS Android DistributionやLineage (/ˈlɪn.i.ɪdʒ/) としても知られ、カスタムROMとして非常に人気が高かったCyanogenModの後継である。Cyanogen Inc.がCyanogenModの開発を中止しCyanogenModプロジェクトを支えたインフラを閉鎖した2016年12月に、LineageOSはCyanogenModからフォークされた[2][3]。LineageOSは2016年12月24日に公式に開始され、その日からGitHubでLineageOSのソースコードが利用可能となった[4]。
Cyanogen Inc.がCyanogenという名前の権利を保持しているため、このフォークではLineageOSへ改名することとなった[5]。
背景
CyanogenMod(しばしば "CM" と略される)はAndroidモバイルプラットフォームをベースとした、スマートフォンやタブレット用のオープンソースオペレーティングシステムとして非常に人気が高いものであった[6]。全CyanogenModユーザー中、ファームウェアの使用を報告していたのは一部のみであったが[7]、2015年3月23日の時点において、スマートフォンでCyanogenModを起動している人が5,000万人いることを指し示す報告もいくつか存在した[6][8]。CyanogenModは他のROMの開発者が出発点としてよく使用していた[要出典]。
2013年、創始者であるスティーブ・コンディックがCyanogen Inc.の名の元にベンチャーファンドを調達することで、CyanogenModプロジェクトの商用化が可能となった[9][10]。しかし彼の意見によるとCyanogen Inc.はCyanogenModプロジェクトの成功を生かせず、2016年にCEOの異動、オフィスやプロジェクトの閉鎖、サービスの停止など[11]の企業リストラの一環として、スティーブは自らの意思か解雇されたのかは不明だがCyanogen Inc.を去った[12][13]。オープンソースで人気のあったCyanogenModのコードそのものは、新しくLineageOSと名付けられて迅速にフォークされ、コミュニティの努力によってコミュニティプロジェクトとして開発が再開された。
CyanogenModからフォークされて誕生したLineageOSは、携帯デバイスベンダーが配布した公式ファームウェアにはない機能やオプションを提供した。CyanogenModがサポートしていた機能にはネイティブテーマ[14]、FLACオーディオコーデック、巨大なAPNリスト、プライバシーガード(アプリケーション毎に権限を管理するアプリケーション)、共通のインタフェースを介したテザリング、CPUのオーバークロックやその他のパフォーマンス強化、アンロック可能なブートローダーとルートアクセス、ソフトボタンと他の通知(Wi-Fi、Bluetooth、GPSなど)のプルダウンを切り替える「タブレット調整」、その他のインタフェースの拡張などがあり、後にこれらの大半はAndroidのソース自体へと統合された。開発者によるとCyanogenModにはスパイウェアやブロートウェアが含まれていないとのことである[15][16]。CyanogenModは公式のファームウェアリリースと比べ、性能や信頼性が向上しているとも言われていた[17]。
CyanogenModと異なり、root権限はファームウェアに初めから組み込まれることはなくなったがオプションとして提供されており、自由にインストールを行うことが可能である。また、このオプションをインストールした後から不要に成った場合にも削除することが可能である。
開発
LineageOSプロジェクトはCyanogenMod同様、多くのデバイス固有のメンテナによって開発されており、コードレビュープロセスにはGerritが使われる。LineageOSはCyanogenModにおける古いバージョニングのフォーマットも保持された(例を挙げると、Android 7.1に対応するLineageOSのバージョン番号は14.1である)。ビルドは週一のペースを基本としてリリースされ、LineageOSの秘密鍵で署名されている[19]。XDAの開発者の多くは、LineageOSの公式発表前に非公式なLineageOSのバージョンを既に開発していた[20]。
LineageOSの開発者は、"FlipFlap" と呼ばれるLineageOS用に特別に設計されたアプリを作成している。FlipFlapはカバーケースを裏返すために追加された機能をもたらす[21]。ビルドのリリースは早期に終了するが、開発は続けられているため自分でビルドすることによって最新のシステムを使用することができる。
また、バージョン19からはAOSPのバージョン管理規約に合わせるため、また、ユーザーにとって目立った価値をもたらさないという理由とブランディングの観点からサブバージョンを廃止し、19.0や19.1ではなく「LineageOS 19」となった。
バージョン履歴
LineageOSのバージョン |
対応するAndroidのバージョン |
初ビルドリリース日 |
最終ビルドリリース日
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サポート終了:13.0
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6.0.1 (Marshmallow)
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000000002016-12-20-00002016年12月20日(CyanogenMod) 000000002017-01-22-00002017年1月22日 (LineageOS)
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000000002018-02-11-00002018年2月11日
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サポート終了:14.1
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7.1.2 (Nougat)
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000000002016-11-09-00002016年11月9日 (CyanogenMod) 000000002017-01-22-00002017年1月22日 (LineageOS)
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000000002019-02-24-00002019年2月24日[22]
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サポート終了:15.1
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8.1.0 (Oreo)
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000000002018-02-26-00002018年2月26日
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000000002020-02-28-00002020年2月28日[23]
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サポート終了:16.0
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9.0.0 (Pie)
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000000002019-03-01-00002019年3月1日[24]
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000000002021-02-16-00002021年2月16日[25]
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サポート終了:17.1
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10 (Queen Cake)
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000000002020-04-01-00002020年4月1日[26]
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000000002022-02-16-00002022年2月16日[27]
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サポート終了:18.1
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11 (Red Velvet Cake)
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000000002021-04-01-00002021年4月1日[28]
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000000002024-03-05-00002024年3月5日[29]
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サポート終了:19
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12 (Snow Cone)
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000000002022-04-26-00002022年4月26日[30]
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000000002023-11-12-00002023年11月12日(Naturally)[31]
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サポート中:20
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13 (Tiramisu)
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000000002022-12-31-00002022年12月31日[32]
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(サポート中)
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現行バージョン:21
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14 (Upside Down Cake)
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000000002024-02-14-00002024年2月14日[33]
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(サポート中)
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凡例 サポート終了 サポート中 現行バージョン 最新プレビュー版 将来のリリース
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サポートされるデバイス
2020年5月1日現在、LineageOSはPixelやnexusなどをはじめGoogleによりリリースされたデバイスなどの127のデバイスを公式にサポートし、現在の開発ブランチに "nightly"や"weekly"や"monthly" という名で公式ビルドを提供している。ただし、自動化されたビルドインフラの負荷を軽減するため、数種類のデバイス用ビルドを週一のペースで、かつ週をずらしなからリリースすることが多い。LineageOSプロジェクトの始まった最初の二ヶ月間は、以前のCyanogenModインストールからのインプレースアップグレードを意図した実験ビルドも並行して作成された[34][35][36][37]。
関連項目
脚注
- ^ “LineageOS Downloads”. LineageOS. 28 January 2017閲覧。
- ^ Heater, Brian (24 December 2016). “After having its infrastructure shuttered, CyanogenMod will live on as Lineage”. TechCrunch. https://techcrunch.com/2016/12/24/lineage/ 26 December 2016閲覧。
- ^ “A fork in the road”. CyanogenMod (24 December 2016). 25 December 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。26 December 2016閲覧。
- ^ Burns, Chris (26 December 2016). “Why did CyanogenMod die? What is LineageOS? All the important details”. SlashGear. https://www.slashgear.com/why-did-cyanogenmod-die-what-is-lineageos-all-the-important-details-26468793/ 26 December 2016閲覧。
- ^ Levy, Nat (26 December 2016). “Open-source Lineage project rises from Cyanogen’s ashes as Android maker abruptly shuts down services”. GeekWire. http://www.geekwire.com/2016/open-source-lineage-project-rises-cyanogens-ashes-android-maker-abruptly-shuts-services/ 26 December 2016閲覧。
- ^ a b “Meet Cyanogen, The Startup That Wants To Steal Android From Google”. Forbes.com. Forbes. 16 April 2015閲覧。
- ^ Soyars, Chris (21 March 2011). “CM Stats explanation”. 4 June 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。27 October 2011閲覧。
- ^ CyanogenMod [@CyanogenMod] (2012年1月12日). "CyanogenMod just passed 1 million active users". X(旧Twitter)より2016年12月26日閲覧。
- ^ “Lineage Android Distribution”. LineageOS. 25 December 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。25 December 2016閲覧。
- ^ Reed, Brad (18 September 2013). “With $7 million in funding, Cyanogen aims to take on Windows Phone”. Boy Genius Report(英語版). http://bgr.com/2013/09/18/cyanogen-venture-funding-7-million-dollars/ 26 December 2016閲覧。
- ^ CyanogenMod [@CyanogenMod] (2016年12月25日). "UPDATE: As of this morning we have lost DNS and Gerrit is now offline — with little doubt as a reaction to our blog post yesterday. Goodbye". X(旧Twitter)より2016年12月26日閲覧。
- ^ Tal, Lior (30 November 2016). “Update on Cyanogen”. Cyanogen Inc.. 24 January 2017閲覧。
- ^ Ruddock, David (28 November 2016). “Cyanogen Inc. will shutter Seattle office by end of year, more layoffs happening, Kondik could be out”. Android Police. http://www.androidpolice.com/2016/11/28/cyanogen-inc-will-shutter-seattle-office-by-end-of-year-more-layoffs-happening-kondik-could-be-out 24 January 2017閲覧. "Kondik was removed from the company's board, allegedly"
- ^ “Themes Support”. CyanogenMod (19 February 2011). 21 October 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。30 September 2013閲覧。
- ^ “Maintenance Mode”. Computer-Howto (December 2011). 27 January 2013閲覧。
- ^ “Video: CyanogenMod founder Steve Kondik talks Android”. UnleashThePhones.com (6 July 2012). 5 February 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。27 January 2013閲覧。
- ^ “About”. CyanogenMod.org. 22 December 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。27 January 2013閲覧。
- ^ OS, Lineage. “Update & Build Prep”. lineageos.org. 2017年1月21日閲覧。
- ^ “LineageOS ROM Downloads and Build Status [Updated Daily [18/01/2017]”] (英語). LineageOS Downloads. (4 January 2017). http://www.lineageosdownloads.com/lineage-os-rom-downloads-build-status/ 18 January 2017閲覧。
- ^ “LineageOS/android_packages_apps_FlipFlap” (英語). GitHub. 18 January 2017閲覧。
- ^ “Prepare for 16.0 · LineageOS/hudson@b8cf202” (英語). GitHub. 2019年2月25日閲覧。
- ^ “RIP Oreo · LineageOS/hudson@4838aba” (英語). Github. 2020年4月2日閲覧。
- ^ “The real lineage-16.0 ship commit”. 2019年10月16日閲覧。
- ^ “Drop 16.0 · LineageOS/hudson@d1e170c” (英語). GitHub. 2021年2月19日閲覧。
- ^ “Changelog 24”. 2020年5月10日閲覧。
- ^ “Drop 17.1 · LineageOS/hudson@d1e170c” (英語). GitHub. 2022年5月22日閲覧。
- ^ “Changelog 25”. 2021年5月27日閲覧。
- ^ “Changelog 25”. 2024年3月12日閲覧。
- ^ “Changelog 26”. 2022年5月4日閲覧。
- ^ “don't leave gauguin alone..”. 2024年3月12日閲覧。
- ^ “Changelog 27”. 2022年12月31日閲覧。
- ^ “Changelog 27”. 2024年3月12日閲覧。
- ^ “Devices | LineageOS Wiki”. wiki.lineageos.org (8 March 2017). 9 March 2017閲覧。
- ^ “LineageOS Downloads”. 24 January 2017閲覧。
- ^ “Update & Build Prep” (英語). LineageOS. (20 January 2017). http://lineageos.org/Update-and-Build-Prep/ 24 January 2017閲覧。
- ^ Rigg, Jamie (24 January 2017). “The first builds of CyanogenMod successor LineageOS are out”. Engadget. https://www.engadget.com/2017/01/24/cyanogenmod-lineageos/ 24 January 2017閲覧。
外部リンク