『家政婦は見た!』(かせいふはみた)は、1983年から2008年までテレビ朝日系「土曜ワイド劇場」で放送されたテレビドラマシリーズである。全26回。大映テレビ制作。主演は市原悦子。
1997年10月9日から12月25日には、全12話(特別編を含む)の連続ドラマ版が放送された。
市原悦子演じる石崎秋子が「大沢家政婦紹介所」の家政婦として上流階級の華やかな暮らしぶりの家庭に派遣され、そこで繰り広げられる陰謀・騒動・醜聞を覗き見し、最後に自分が見聞した事柄を家族全員が集まる席で洗いざらいぶちまけて去っていくというのがおおまかなストーリーである。
秋子は刑事でも探偵でもなく市井の家政婦にすぎないことから、制作陣は「ドラマの形を借りた社会派ドキュメント」として差別化を図り、大映テレビ社員の集めた膨大な資料を元にして脚本が執筆された[1]。この結果、秋子が派遣される先の一家は放映当時の時事ネタ・スキャンダルをモデルにし、当時の世相に対する風刺とすることもあった[注 1]。脚本担当の柴英三郎は本作を「解決のないドラマ」であると述べ、「家政婦は暴くだけなんです。暴かれた相手は翌日からまた不敵な顔をして、元と同じ生活を送る。タイトルの通り、見るドラマで、裁くドラマではない」と語った[1]。プロデューサーの柳田博美は本作を「家政婦がリポーターを務めるワイドショー」と位置づけている[2]。こうした製作姿勢もあって、ミステリー作品の多い『土曜ワイド劇場』の放送作品でありながら、作中で殺人事件が起きることはない[注 2]。
1984年放送の第2作は『土曜ワイド劇場』の歴代最高視聴率である30.9%を記録し、同枠の終了までに破られることはなかった[1]。1988年には、一連のシリーズが評価され、第25回ギャラクシー賞・25周年特別賞・ユーモア賞を受賞している[3]。
ドラマの最後では、秋子が派遣先の暗部をぶちまけて契約を打ち切った後、自らも家政婦の領分を超えて派遣先に踏み入りすぎた報いを受け(病気や打撲などの負傷が多い)、次の派遣先の門前で「ごめんくださいませー」と叫ぶ(=次作への簡単な予告になっている)という一連の演出が恒例となっている[2]。ただし、連続ドラマ版では全編を通して報いと次の派遣先に行くシーンは描かれていない。
元々本シリーズは、松本清張の小説『熱い空気』を原作として、1983年7月2日に放映された『松本清張の熱い空気 家政婦は見た! 夫婦の秘密「焦げた」』(以降「第1作」と記述)をシリーズ化したものである。この第1作が非常に好評を博したことから、制作陣は清張サイドに『熱い空気』の続編を打診したが、清張は関与を拒んだ[1][4][注 3]。このため、第2作以降は副題の「家政婦は見た!」のみを引き継ぎ、主人公の名を変更した上で柴英三郎のオリジナル脚本で制作されることになった[1]。
清張が続編の製作を許可していたかについては、制作陣と清張サイドで主張に食い違いがある[2]。番組プロデューサーの塙淳一によると、清張は「後はオリジナルで好きなように作っていいよ」と快諾したという[1]。その一方で、清張サイドで映像化事業を担当していた林悦子は、続編の製作をこちらが明確に拒否したにもかかわらずテレビ局側が勝手に『家政婦は見た!』を製作したのだと主張している(清張サイドでも対応が話し合われたが、清張の意向で無視することに決めたという)[2]。
第1作では主人公の名前は「河野信子(こうののぶこ)」、勤め先は「協栄家政婦紹介所」であった。信子は派遣された上流家庭でその欺瞞ぶりを観察するだけでなく、その欺瞞ぶりを積極的に他の家族に知らせたり、子どもに悪事をそそのかしたりして、最終的に自分が勤めていた家庭を崩壊に導く悪女として描かれており、石崎秋子とはキャラクター付けに大きな違いがある。さらに、原作『熱い空気』の信子は陰険で孤独な社会的弱者として描かれているが、1983年版の信子はどこか身近で憎めないキャラクターに改変されており、この時点で既にキャラクター付けの違いが発生している[2]。なお、第1作時点で信子が己の行為の報いを受け、その結果受けた傷を抱えながら次の派遣先へ向かうシーンで終わることなど、後にシリーズ化された際のストーリーの一連の流れの原型が既に出来上がっている。
1997年10月9日から12月25日まで毎週木曜21:00 - 21:54(第1話・最終話は30分拡大の21:00 - 22:24)に、「木曜ドラマ」枠で全11話が放送された。
土曜ワイド劇場版とキャストが一部異なるほか、大沢家政婦紹介所の立地も土曜ワイド劇場版での2階建ての一軒家からマンションの一室へ変更された。ストーリーも土曜ワイド劇場版のような上流階級の暴露話ではなく、秋子が人生経験の豊かな家政婦として一般家庭の問題を解決していくという筋書きに変わっている[2]。
2009年から複数回BS朝日で再放送が行われたが、放送時間の制約から第1話・最終話は欠番となっていた。2019年3月1日からのBS朝日再放送では、これまで欠番扱いされていた第1話も放送枠を調整して放送された。最終話は欠番となった。
シリーズ開始20周年記念・第21作の番宣を兼ねた特番として、第21作の本放送当日である2003年2月22日にテレビ朝日系で放映された。「大沢家政婦紹介所の面々が石和温泉を観光する」という体裁を取った旅バラエティ番組で、市原・野村ら土曜ワイド劇場版のレギュラー出演陣の他、山田邦子・都はるみがゲスト出演した[6][7][8][9]。
日立製作所のハイビジョンテレビWoooの特設サイト「Wooo Special Site」のオリジナルコンテンツとして、2010年春から隔月で公開[10]。全3話。レギュラー出演者は土曜ワイド劇場版(第8作以降)と同じであり、坂田晃一によるテーマ曲も使用されている。
土曜ワイド劇場 / 連続ドラマ / 家政婦は見た!Woooも見た!
関東地区では、本シリーズや「土曜ワイド劇場」の節目に第1作が度々再放送された[注 13]。また、テレビ朝日・BS朝日・CSテレ朝チャンネルでは土曜ワイド劇場版が再放送され、特にテレビ朝日では祝日に第16作以降の再放送が行われていた。2012年1月2日には、テレビ朝日(関東ローカル)で6:00 - 10:50『家政婦は見た!祭り』として、土曜ワイド劇場版第25作・第26作の2本立てでの再放送が行われた。
市原悦子が2019年1月12日に死去したのに際し、テレビ朝日及びANN系列局は下記の通り追悼特別番組として再放送した(1月17日・1月18日は関東ローカル、1月19日・1月20日はANN系列フルネット24局ネット)。
また、BS朝日・BS朝日4Kでも1月18日(金)16:57 - 19:24に「追悼・市原悦子さん」と題し第26作を放送した。
※ 赤いシリーズ作品集は省略
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