『八百八町夢日記』(はっぴゃくやちょうゆめにっき)は、日本テレビ系にて1989年10月10日から1990年10月2日、1991年10月8日から1992年9月15日にかけて毎週火曜日20:00 - 20:54に放送された時代劇シリーズ。製作はユニオン映画。第1シリーズ第10話までの副題は「隠密奉行とねずみ小僧」。同局で放送された『長七郎江戸日記』の第2シリーズ後に当作の第1シリーズ、長七郎江戸日記の第3シリーズ後に当作の第2シリーズがそれぞれ放送された。
主演は実在した町奉行・榊原忠之を演じる里見浩太朗と鼠小僧を演じる風間杜夫。主題歌(エンディング曲)は第1シリーズ・第2シリーズとも里見が歌っている。作中では相馬大作事件・仙石騒動など、忠之が実際に関与した天保時代の事件も取り上げられた(スペシャル版の「みちのく忠臣蔵」が相馬大作事件、「国盗り夢物語」が仙石騒動を扱っている)。
作品解説
あらすじ
天保年間・1830年代、江戸の町を騒がせた義賊・鼠小僧次郎吉が江戸北町奉行・榊原主計頭(かずえのかみ)忠之の指揮によって捕らえられ、公衆の面前で処刑された。しかしこれは信頼できる手駒を欲していた榊原の策で、次郎吉は処刑されていなかった。榊原は次郎吉に、江戸の町にはびこる犯罪に対して隠密捜査を行うことを約束させる。浪人や役者などに変装する榊原と、三郎三(さぶろうざ)と名を変え絵双紙屋として振る舞う次郎吉の2人は、協力して捜査を続けていくことになる。
『長七郎江戸日記』が徳川の血筋で悪党達を圧倒する『水戸黄門』型の勧善懲悪ものだったのに対し、当作では町奉行が自ら隠密捜査をするという『遠山の金さん』型の勧善懲悪ものとなっている。
オープニング
- 第1シリーズの初回スペシャルは「時に天保3年・1832年5月5日、希代(稀代)の共闘・鼠小僧もかくて捕らえられた。だが、それは終わりではなかった。一つの壮大な物語の始まりだったのである。」というナレーションである。また、第2シリーズの初回スペシャルは「天保年間、世に蔓延る悪に向かって二人の男が挑戦状を叩きつけた。時の北町奉行・榊原主計頭忠之と鈴ヶ森で処刑されたはずのねずみ小僧次郎吉である。」というナレーションである。この2つの回以外の第1シリーズ第11話から第14話と次郎吉が登場しなかった第15話から第19話を除き、「天保年間(・1830年代)、世に蔓延る悪に向かって二人の男が挑戦状を叩きつけた。時の北町奉行・榊原主計頭忠之と榊原の手で処刑されたはずのねずみ小僧次郎吉である。」というナレーションが入る。
- ※第1シリーズでは1830年代が省略される回がある。また、第1シリーズでは1830年代を「せんはっぴゃくさんじゅうねんだい」、第2シリーズでは「いっせんはっぴゃくさんじゅうねんだい」とそれぞれ読んでいる。
物語の流れ
小料理屋の女将・おりん(第1シリーズ)・おつや(第2シリーズ)と次郎吉が犯罪者の身辺を捜索し、小料理屋で榊原に報告する。その報告を受けた榊原が浪人・榊夢之介として犯罪者の仲間になったふりをしてさらに詳細な情報を探る。捜査において夢之介は内部者に不審がられて襲われたりその不信を解くために町奉行の手先(事情を知る観音寺や八田)と戦うが、その際に「夢」と書かれた鉄扇を用いる。
証拠を掴んだ後、榊原は町奉行としての捕り物の正装で犯罪者グループの黒幕の屋敷へ単身で乗り込む。黒幕達が部屋で会話しているところへ榊原の声が響き、誰何する黒幕達に向かって「北町奉行・榊原主計頭忠之。」と名乗る。
悪事を追及された黒幕達はシラを切るが、榊原は「いい加減にしねぇか、悪党ども!」の台詞とともに鉄扇を黒幕に投げつける(その際、黒幕や悪徳商人が鉄扇で髷を切られてざんばら髪になることが多い)[2]。また、いきなり部屋のロウソクや誘拐した人質を斬ろうとする悪党の手や顔などに鉄扇を投げつけるパターンもある。鉄扇に書かれた「夢」で榊夢之介であることに気付いた黒幕達を、榊原は「人の命を弄んだ貴様らに、もはや見る夢は無いのだ。神妙に縛につけ!(もしくは「観念せい!」)」と一喝するが、それでも襲いかかろうとする悪党に「関わり無き者は去れ!さもなくば…斬る![3]」と決め台詞を吐く(黒幕の部下、家中であるが悪事に加担しなかった者、金銭で雇われた浪人などがこの時点で退散・または途中で退散する場合もある)。
悪党や黒幕共を成敗した後、第1シリーズでは成敗されず退散しようとする悪人(主に悪徳商人や悪医者など)を捕縛し(全員成敗する場合もある)、第2シリーズではスペシャル以外は全員成敗する大団円となる。なお、奉行といえど直接手を下せない大物は、後日若年寄などから切腹などが申し渡される。
劇中音楽
劇中の音楽は、かつて川村栄二が担当した同じ日本テレビ系の銭形平次(風間杜夫版)、五稜郭からの流用もある。また、劇中音楽は『闇を斬る!大江戸犯科帳』でも流用された。
劇伴BGM・効果音
劇伴BGM・効果音では一部『水戸黄門』『大岡越前』『江戸を斬る』『雪姫隠密道中記』『遠山の金さん』『長七郎江戸日記』『あばれ八州御用旅』と同じものが使用されている。
登場人物
第1シリーズでは小料理屋「はの字」の女将・おりん(中原理恵)、第2シリーズでは同じく小料理屋「えんま」の女将・おつや(中田喜子)の店が、榊原・次郎吉の打ち合わせの場所となり、場合によって(女性にしか入れない場所など)おりんやおつやも隠密捜査に加わる。この3人の関係を知る者は他に町奉行所の与力で口うるさい観音寺伝蔵(長門裕之)と少々抜けてはいるが正義感にあふれる若き同心・八田真四郎(船越栄一郎)、それに小料理屋の板前で第1シリーズではおりんに惚れている元盗賊の平吉(森川正太)、若年寄・林備前守(佐藤慶)、第2シリーズではおつやの父でやはり元盗賊の五郎八(名古屋章)のみである。次郎吉の恋女房お初(未來貴子)も3人の関係を知らなかった。
スタッフ
第1シリーズ
1989年10月10日 - 1990年10月2日(全34話+スペシャル4話)
初回スペシャル「夢を追って」(1989年10月10日)
年末スペシャル「一千両の大勝負」(1989年12月26日)
春季期首スペシャル「天保鬼ヶ島」(1990年4月3日)
最終回スペシャル「おりん無惨!今蘇る関ヶ原の戦い」(1990年10月2日)
第2シリーズ
1991年10月8日 - 1992年9月15日(全34話+スペシャル2話)
初回スペシャル「みちのく忠臣蔵」(1991年10月8日)
春スペシャル「国盗り夢物語」(1992年3月24日)
キャスト
両シリーズ出演
- 北町奉行。普段は「榊夢之介」としてムシリに黒の着流しの浪人姿で「はの字」・「えんま」にやって来る。お松・お杉からは親の代から貧乏な浪人暮らしで道場破りや用心棒、風来坊で生活している浪人と思わせている。第1シリーズでは火薬のエキスパート(第2話)、女形役者(第3話)、上方商人(第5話)、新内流し(第7話)、お尋ね者(第10話)、博打(第13話、第19話)、「ねの字」凶賊の一味(第14話)、渡世人(第15話)、三河田原藩士(第17話)、神田で仏具商を営む萬屋(第18話)、板前(第20話)、能役者(第22話)、高輪の口入れ屋(第23話)、加賀の廻船問屋・榊屋のせがれ(第24話)、?(第28話)、旗本の次男坊風(第29話)、第2シリーズでは中乗り(第3話)、医者・佑庵(第4話)、松花堂の番頭(第8話)、品の良い年寄り[4](第12話)、大坂の鴻池の大旦那[5](第14話)、江戸の闇の世界を仕切っている男(第16話)、御家人(第18話)、飾り職人(第22話)、蘭方医崩れ(第30話)に変装している。
- 上述しているように榊原は実在の人物であり、主計頭(かずえのかみ)も実際に授与された官位。また、鼠小僧の裁きを行った史実もある。当該リンクも参照されたい。
- 北町同心。設定年齢25歳。正義感があるのだが、ドジを踏んだり、意気込みばかりで空回りしてたりと何かと冴えないが、やるときはやるタイプ。榊原の隠密捜査にボヤクときがある。祖母と暮らしており母親は病死、父親も北町同心で心臓が悪く病死したと思われていたが、第1シリーズ第17話で毒薬を飲まされていたことが発覚し、榊原に仇を討たせてもらった。第2シリーズでは見習い同心の木崎と共にえんまを訪れた際に夢之助と鉢合わせする度にあたふたさせらせている(同心達は北町奉行の榊原の顔を知っているので誤魔化しようがないため)。
- 観音寺伝蔵(かんのんじ でんぞう):長門裕之(第1シリーズSP-1「夢を追って」、第2話~SP-4「おりん無惨!今蘇る関が原の戦い」、第2シリーズSP-1「みちのく忠臣蔵」~第7話、第9話~第22話、第25話~第34話)
- 内与力。いつも榊原の隠密捜査を心配しており、やたらと八田を怒鳴っているが部下思い。妻とは死別しており、娘がいる(第1シリーズ第22話)。
- ねずみ小僧/ねずみ小僧次郎吉(- じろきち)(第2シリーズでの表記):風間杜夫(第1シリーズSP-1「夢を追って」~第14話、第16話(回想シーン)、第20話~SP-4「おりん無惨!今蘇る関が原の戦い」、第2シリーズ)
- 義賊。榊原に実力を買われて「三郎三」として人形町で絵草子屋かぶき屋を営む。義賊であることに誇りを持ち、第1シリーズ第2話では、人名救助のためとはいえ殺人を犯してしまい深く落ち込むことがあり、以来「殺生だけはしない」と心に誓っていたが、「おりん無残」(第1シリーズSP-4)で誓いを破りおりんを死に追いやった刺客を自ら手にかけた。第1シリーズ第14話で両親を殺された娘を親戚がいる長崎まで送るため、しばらく江戸を離れていた(これは風間のスケジュールの関係も絡んでいた)。第2シリーズからはSP-1「みちのく忠臣蔵」でお初の死後、孔雀長屋に引っ越す。また、第1シリーズ・第2シリーズとも皆から「三郎三」や「三の字」と呼ばれている。
- 八田はな(はった はな):風見章子(第1シリーズSP-1「夢を追って」、第17話、第2シリーズ第15話ほか複数回出演)
- 真四郎の祖母で、彼の唯一の親族。
第1シリーズ出演
- 両国「はの字」の女将。同心だった父親の秋山(小笠原弘)を盗賊に殺されるが、榊原に仇を討たせてもらった恩から仲間になる。捜査の際は黒の着物を着用するが、第3話では青装束で人質となっていたお初を救出していた。最終回スペシャルで大奥への潜入捜査を行った際に刺客の刃を受け、三郎三と平吉に救出されるも息を引き取る。
- 平吉:森川正太(SP-1「夢を追って」~第6話、第8話~SP-2「一千両の大勝負」、第12話~SP-4「おりん無惨!今蘇る関が原の戦い」)
- 「はの字」の板前。唐獅子の甚兵衛配下の元盗賊。おりんに惚れているため、夢之介や三郎三を目の敵にして罠を仕掛けたりするが、成功することはなかった。第14話でかつての盗賊仲間が強盗殺人を犯していることを知り、独自の調査をしていたときに偶然にも隠密捜査をしていた榊原を目撃したことがきっかけで、三郎三の正体を知った後は仲間になる。
- 「はの字」の店員。設定年齢19歳。父親は漁師だったが、13歳のときに行方不明となり、弟と妹を養うために江戸へ来た(第23話)。平吉と独特の掛け合いをしたりする。
- お初:未來貴子(第1シリーズSP-1「夢を追って」~第11話、第13話~第14話、第16話、第20話、SP-3「天保鬼ヶ島」~第24話、第27話~第29話、第32話~第33話、SP-4「おりん無惨!今蘇る関が原の戦い」、第2シリーズSP-1「みちのく忠臣蔵」)
- 次郎吉の女房。第1シリーズSP-1「夢を追って」で次郎吉と祝言を挙げ、絵草子屋かぶき屋を営む。次郎吉を深く愛しており、第2話では捜査に協力したことがある。第2シリーズSP-1「みちのく忠臣蔵」で津軽藩と南部藩の騒動を利用していた黒幕たちによって殺される。
- 中塚:左右田一平(SP-1「夢を追って」、SP-2「一千両の大勝負」)
- 北町奉行所同心。スペシャル二作品のみ登場。
- 林備前守:佐藤慶(SP-1「夢を追って」、SP-2「一千両の大勝負」、SP-3「天保鬼ヶ島」、SP-4「おりん無惨!今蘇る関が原の戦い」)
- 榊原の上役の若年寄。スペシャルのみ登場。
第2シリーズ出演
- おつや:中田喜子(SP-1「みちのく忠臣蔵」~第8話、第10話、第12話、第14話~第15話、第17話~第34話)
- 五郎八の娘。母の病気を治したい一心から恋仲だった清吉を振って米問屋の御曹司の元に嫁ぐも、半年後にその御曹司は病死。家に戻された後「えんま」の女将となる。父同様、榊原に情けをかけられ仲間になる。
- 「えんま」で働く女中。上総の出身で故郷に大勢の兄弟がいる(第12話)。五郎八、おつやの隠密行動に協力することもあるが、彼らと夢之介たちの裏の関係は一切知らない。
- 深川「えんま」の板前兼主人。元大工だったが、妻の病気を治したい一心から甚左の手下の盗賊となり、榊原に情けをかけられたことから密偵として働く。涙もろい。
- 木崎:高橋浩二朗(第4話、第8話、第19話、SP-2、第24話、第27話)
- 北町奉行所の見習い同心。八田の部下。
- 五郎八が盗賊だった頃の頭。「とっつぁん」と呼ばれるほどの義賊で義理がたい。千里眼の持ち主でもあり、五郎八が盗賊から足を洗ったことや榊原の密偵となっていることも見抜くほど。最終話で凶賊・五月雨の紋蔵一味に捕えられ、拷問の末に息を引き取った。
主題歌
どちらも里見浩太朗が歌い、両シリーズのオープニングテーマも主題歌をアレンジしたショート&インストゥルメンタルバージョンである
第1シリーズ
- 恋草子(ワーナーパイオニア)
第2シリーズ
- 夢がたり(ソニー・ミュージックエンタテインメント)
放送リスト
※第1シリーズはクレジットタイトルにゲストの役名が記載されないため、第1シリーズのゲストの役名は当て字(役名の記述は間違っている可能性あり)。
第1シリーズ
第2シリーズ
特記事項
- オープニングの表題は第1シリーズが白、第2シリーズが黄色の文字で表記された。第1シリーズ第10話までは八百八町夢日記の下部に「隠密奉行とねずみ小僧」と表記されたが、次の第11話からは「隠密奉行とねずみ小僧」の表記がなくなっている。またオープニングテーマ前に榊原と次郎吉の紹介コメントも第1シリーズ第11話から第14話と三郎三が登場しなかった第15話から第19話は省略されている。
- 1975年10月5日から1976年3月28日まで日本テレビ系で毎週日曜日21:00 - 21:54に放送された『十手無用 九丁堀事件帖』(東映制作、高橋英樹主演)の主人公の名前も「榊夢之介」であるが、双方の作品に関連性は全く無い。ただし、名前の引用の事実があったか否かは不明。
- 2007年にエスピーオーからスペシャル版を除くレギュラー放送でのエピソードを収録した20枚組のボックスDVDが、2009年にはエムスリイエンタテインメントからDVD-BOX2タイトルがそれぞれ発売されたが、いずれも収録話全て一部のシーンがカットされ次回予告も収録されていない不完全な形での収録である。発売元のエスピーオー、エムスリイエンタテインメント共DVD化するにあたって使用されたプリントの出所等については言及されていない。
- BS日テレで2014年12月24日から2015年9月9日まで月曜から金曜の18:00 - 18:54にニュープリントリマスターで放送された。(2016年10月11日から2017年1月24日まで2度目の再放送が行われた。)(『長七郎江戸日記』と交互に再放送が行われた。)2019年1月29日から5月9日の月曜から金曜の10:00 - 10:54に3度目の再放送が行われた。なお、第1シリーズ第13話が欠番扱いとされている。また、その後も4度目(2021年4月5日から10月4日の月曜から金曜の18:00 - 18:55)・5度目(2024年7月17日 - 10月25日の月曜から金曜の12:00 - 12:55)と断続的に再放送が行われている。
脚注
- ^ オープニングナレーションより。なお、設定上、物語は天保3年から始まっており、第2シリーズ第23話はナレーションで天保5年の出来事と語られている。
- ^ なお、第1シリーズ第31話「夏の嵐」では、黒幕が生きている時点で有罪確定なので、黒幕が「下々と関わらない管理職に何がわかる!」と言うのに対し、「これを見ろ!」と鉄扇を投げつけ、榊夢之介として町の者と交わっていることを告げる変則系になっている。
- ^ その場にいる者全員が明確に悪事に加担している場合は、「悔い改める者は去れ!(第1シリーズ)神妙に縛につけ!(第2シリーズ)さもなくば…斬る!」になる。
- ^ 格好は水戸黄門の水戸光圀風。
- ^ 格好は第12話の髭無しの年寄り。
- ^ EDクレジットでは塩谷俊と表記。
関連項目
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