石丸博也
石丸 博也(いしまる ひろや、1941年〈昭和16年〉2月12日[1][3][注 1] - )は、日本の元声優、元俳優、元ナレーター[4]。宮城県仙台市出身[1][3]。ぷろだくしょんバオバブ所属[5]。旧芸名は石出 博昭[6]。 経歴宮城県仙台市の青葉城の近く、広瀬川の清流のほとりで誕生[3]。5歳の時に千葉県に疎開する形で転居[1][3][6]。戦後に東京都と神奈川県横浜市で育つ[1][3][6]。 目黒区立第四中学校(現:目黒区立大鳥中学校)[3]、東京高等学校卒業[7]。芝浦工業大学工学部中退。 中学、高校時代は頭が悪く、大学へ行くために半年くらい予備校に行っていた[6]。しかし、学校の勉強がつまらなく、「エックスがどうした」、「カッコ2乗がなんだ」、「こんなものなんでやってるのかな」と、すごく疑問になってしまった[6]。一方、機械いじりが好きであり、大学受験ではエンジニアを目指して理工系を狙っていたが、失敗[3]。浪人中に映画文化が全盛期で、片岡千恵蔵、中村歌右衛門、石原裕次郎などが人気で「俺も役者になれねぇかなぁ、でも俺じゃ無理だよなあ」、「何かやってみよう」と調べたところ偶々目についた劇団ひまわりの研究生募集に「児童劇団なら、俺みたいなタイプでも入れてもらえるんじゃないだろうか」と応募したのが、芸能界入りのきっかけである[1][6][8]。その劇団で「芝居って面白いもんだな」というのを感じていた[6]。ある人物が「役者ってのは日常生活の再現なんだ」と述べており、石丸は「芝居だったら、たとえば1時間とか2時間で30年間の人生を演じるのが役者なんだ」、「そうか、そういう考え方ができるのは面白いな」と思った[6]。演技に関しては学芸会の経験のみだったため、同劇団の研究生になってしばらくは、人前で芝居をするどころか人前に出ることも恥ずかしくなり「役者をやめようか」と悩んでいた時期もあったという[8]。 最初の頃はエキストラに行かされており、当時の時給については、東宝が一番高かったという[6]。そうやって色々なところに遊びに行かせてもらい、日本テレビのテレビドラマ『夫婦百景』の第196回「スーダラ亭主と一等妻」の植木等の息子役で初めて名前のある役を演じる[6]。その現場には付き人だった小松政夫がいたという[6]。そんなことがあるうちに、「役者って日本の祭りの延長線で、お金がもらえる、こんな良い商売はないんじゃないか」と思ってしまった[6]。当時は予備校も行きながら活動していたが、芝居を始めたところ、勉強がバカバカしくなり退学してしまった[6]。親からもらっていた予備校のお金は、劇団の月謝として払っていた[6]。当初は『大江戸捜査網』などのテレビドラマや舞台に出演していたが、それだけでは食べていけず、マネージャーからアルバイトとして声の仕事を紹介され[1]、27歳ぐらいから声優としての活動を始める[8]。当時、暇になると『大江戸捜査網』のプロデューサーの元村武のところへ遊びに行っていた[6]。ある日、元村から「お前、どっちかに決めらんないのか?こんな調子だったら、両方ダメになっちゃうよ?」と言われており、そのひとことがなかったら、声優として活動する石丸はなかったと語る[6]。 声優としては、海外ドラマ『マニックス』で初レギュラーを獲得し、1972年にテレビアニメ『マジンガーZ』の主人公・兜甲児を演じた。 事務所は、劇団ひまわり、劇団太陽、JKプランニング(創立者 日景忠男)、青二プロダクションを経て、ぷろだくしょんバオバブへ所属[1]。 2023年、3月末日をもって引退[9]。理由に関しては石丸本人の「余力があるうちに引退しておきたい」という意向が強かったといい[注 2]、表立った発表や報道は行われず、同年4月20日に東京府中FMで放送された『ラジonジャッキー』にて、石丸と交友のある音響監督の市来満が関係各所に通達された所属事務所(ぷろだくしょんバオバブ)からの案内を読み上げる形で伝えた[11][12]。引退後も同事務所には籍を置いており、公式サイトにおけるプロフィールは4月以降、それまでの男性所属者一覧から「Archive(アーカイブ)」の欄に移動している[13][14]。 引退後の2024年、専属で吹き替えていたジャッキー・チェンを、複数の作品の追加収録および映画『ライド・オン』の日本語吹替版にて「限定復活」という形で担当した[15][16][17]。 人物・特色役に関しては、オーディションを受けると落ちることが多く指名で起用されることが多いという。青年から老人まで幅広い役を演じるが、持ち役の再演などで比較的若い役を演じる機会が多く、2010年には年相応の役が少なく若い演技をしなくてはならないことに難儀している一面も明かしている[18]。 かつては一連の明朗快活な青年ヒーローも演じていた[19]。 30歳の時に劇団の仲間の女性と結婚[3]。息子と娘がいる[1]。 顔出しはあまり好んでいない[20]。これは昔「声優は表に出るべきじゃない」と教えられたからだという[21]。そのため、2013年に公開された映画『ライジング・ドラゴン』では、人生初の舞台挨拶を行った[22]。なお、他の者が顔出し出演をすることへの抵抗はないという[20]。 ファンに向けての一言を求められた際に「好きなことだったら諦めないで続けてみろ」と答えている。また、自身が声優業を長年続けているのも「好きだから、それしかない」としている[23]。 趣味は野球、囲碁、麻雀、競馬、パチンコ。資格は普通自動車免許[5]。 エピソード兜甲児1972年以降、『マジンガーZ』の主人公・兜甲児を演じている。起用はオーディションでなく、当時の音響ディレクターである春日正伸の抜擢だったという[6][10]。 当初は演技の未熟さから春日に怒られることが多く、石丸は後に「それまでは(声優業を)バイトの感覚でやってたんだけど、(当作で)本当に慣れることができたみたい」と回想している[1][6]。なお、当時はよくトチるため、「トチマル」と現場で呼ばれていたという[23]。また、石丸自身はこの経験から「俺みたいな下手なやつでも頑張っていると上手くなる」と語っている[23]。共演した大竹宏は、「先輩がアドバイスしたら、それでまたあがっちゃってトチるから、あんまり教えないほうがかえって良かった」と話しており、やっと兜甲児らしくなったのは、4、5本目ぐらいからだったと語っている[24]。 『マジンガーZ』は視聴率20パーセントを越える大ヒット・アニメであったが、放映が始まってしばらく経ってから、ファンレターをくれるようになり、それで「これはヒットしているんだな」と感じることができた[10]。そのうちにファンクラブもでき、一時期は500人ぐらい会員がいた[10]。スタジオに収録に行くと、女の子が待っており、サインは書いたことなかったが「サインしてくれ」と言われたりなどしていたという[10]。 兜甲児は顔は2枚目だが、中身は3枚目で石丸は「2枚目半だ」、と思っていた[10]。あんまり2枚目は得意ではなく、自然と2枚目半になってしまったのかもしれないという[10]。 「ロケットパ〜ンチ!」、「光子力ビィ〜ム!」など技を出す時の叫び声も考えたことあった[10]。脚本を見ても、「ロケットパンチ」としか書いていないことから、「ロケ〜ットパンチ!」にすべきか、「ロケットパ〜ンチ!」にすべきか自分で考えて言っており、それで「ダメだ」と言われたこともなかったという[10]。 長期にわたり演じているが、後年には高齢によりかつての勢いが衰えてきていることを自覚しており交代を望んでいた。そのため、2009年のテレビアニメ『真マジンガー 衝撃! Z編』で赤羽根健治に交代した際は、安堵したという。[要出典]その後、2018年の劇場アニメ『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』では森久保祥太郎が兜甲児を演じ、自身は統合軍指令役として出演。収録の際に森久保から当時のことなどを聞かれたが、「もう忘れちゃったから、君が思うとおりにやりなよ」とエールを送っている[25]。その一方、以降も散発的に石丸が演じる機会は多い[注 3]。 ジャッキー・チェンとの関わりジャッキー・チェンの専属吹き替え声優(フィックス)としても知られている。ほぼすべての出演作品で吹き替えを担当していることから、「完全に一心同体」「もう一人のジャッキー」と評されることもある[26][27]。2019年には「同じ声優による同一俳優への吹き替え映画の最多数」としてギネス世界記録に認定された[28]。 初担当は、1981年に放送された『ドランクモンキー 酔拳』[29][30]。兜甲児と同じく、演出の春日正伸による指名だったという[6]。 石丸はジャッキーの魅力について「魅力もなにも、向こうはスターなんだからさ。本当のスターだよ。たいしたもんだよ。本当にすごい人だと思いますよ」と語っている[31]ほか「ジャッキーと共に成長してきた」とコメントしている[20]。演じる際はアクションシーンの声や叫びなども吹き替えることが多く、元(ジャッキー本人)に負けないよう力をこめて収録しているという[31][30]。 石丸とジャッキーは何度か対面している。初対面は1982年の『スネーキーモンキー 蛇拳』のアフレコスタジオ[21]で、当時公開されたばかりだった『ドラゴンロード』のPRで来日していたジャッキーが、石丸を表敬訪問する形だった。その後、1984年放送の『夜のヒットスタジオ』にジャッキーが歌手として出演した時は、石丸がジャッキーの応援で出演した[21]。ジャッキーは、2007年のインタビューで石丸について「彼は僕の表情までうまく吹き替えてくれている。これからもよろしくお願いします!」と絶賛し、大きな信頼を寄せていることを明かしている[32]。 「ラッシュアワー」シリーズの吹き替えで石丸のジャッキーと共演した山寺宏一は「石丸さんのジャッキーはFIXの中のFIXですから!」とその功績を讃え[注 4]、自身も幼少期に石丸の吹き替えたジャッキー作品をよく観ていたことから「こうやって(石丸のジャッキーと)ご一緒させていただけるとは思っていなかったので、すごく嬉しかったですね」と共演した際の喜びについて振り返っている[34]。 ジャッキーと石丸は多少の年齢差があり(石丸が13歳年上)、50代後半以降のジャッキー作品でのジャッキーはやりやすいと語っている[18][30][31]。 好きなジャッキー作品は「みんな好きだよ」と答えている[31]。その一方、ベスト1に『ゴージャス』、苦手な作品に『新宿インシデント』を挙げたこともある[22]。なお、一番思い入れの深い作品は『酔拳』だという[35]。 自身のキャリアについて、ジャッキーが長く活動するおかげで仕事をし続けることができているといい[9]、2014年には「この年になってくると、最後までやれるかなと思って心配になる」と不安を表しつつ「でも、ジャッキーに負けないように頑張ろうかと」と、今後もジャッキーの吹き替えを続けていきたい趣旨の発言をしている[35]。また、2009年ごろから禁煙しており、これについて「ま、ジャッキーの映画やってなかったら吸ってたかもしれないけどさ。(笑)」と語っている[30]。 2020年、「同じ声優による同一俳優への吹替え映画の最多数」としてギネス世界記録に認定された石丸は「これもジャッキー・チェンさんが命を懸けて長い間作品をつくり続けたおかげだ。これからも、体に十分気を付けて頑張ってください。僕も頑張ります!サンキュー、ジャッキー!」とコメントを発表。ジャッキーは「長い間、たくさんの作品で私の声の吹き替えをしていただきありがとうございます。引き続き石丸さんに私の吹き替えを続けていただけるよう、私も素晴らしい映画にたくさん出演し続けていきたいと思っています」とメッセージを贈り、石丸を祝福した[36]。 2023年の引退後も、ジャッキーの吹き替えだけは「限定復活」として複数の作品で続投している[注 5][15][37]。 その他出演作『トランスフォーマー』シリーズでは総司令官ロディマスコンボイを演じたが、当時は玩具が発売されていることを知らず、後年のインタビューで初めて知ったという[18]。 1971年のテレビドラマ『復讐の鬼探偵ロングストリート』では、ブルース・リーの吹き替えを一度だけ演じたことがある。 「今後吹き替えを担当してみたい俳優は誰か?」と質問された際にはエディ・マーフィを挙げていた[38]。 日本テレビの番組における視覚障害者のための解説放送(アイパートナー)を、1983年の『火曜サスペンス劇場』以来、2023年3月末で勇退するまで約40年にわたり担当した[9]。担当番組は、『24時間テレビ 「愛は地球を救う」』内のスペシャルドラマや『金曜ロードショー』、テレビアニメ『それいけ!アンパンマン』など[9]。解説時は「この番組の案内役、アイパートナーは私(わたくし)石丸博也でした」の発言でエンディングを飾っていたほか、『それいけ!アンパンマン』では内容に合わせた軽妙なナレーションをつけており、最後は「僕、石丸博也。次回もお楽しみにね!」などと発言していた。 後任石丸の引退前後、持ち役を引き継いだ人物は以下の通り。
この他に、本来石丸が吹き替えを担当する予定であった『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』のスプリンター役(原語版でジャッキーが演じた)は堀内賢雄が吹き替えを務めた。堀内によると同作は石丸の事務所に連絡した上で堀内にオファーが行ったといい、「少しでも(石丸を)意識してもらえれば」というディレクションもあったという[39]。 出演太字はメインキャラクター。 テレビアニメ
劇場アニメ
OVA
ゲーム
ドラマCD・カセット
吹き替え担当俳優ジャッキー・チェン出演映画では、以下の作品を担当(放送局バージョン違いなども含む)。通常では有名俳優のカメオ出演などの際には吹き替えはフィックスとは別の俳優・声優が担当することが多いが、石丸=ジャッキーは出番の長さにかかわらず、踏襲される場合が多い。テレビで放送される主演作は、初回放送時から全て石丸が担当し、一部のビデオ作品や通販番組の出演を除き劇場公開作品も同様に担当している。ジャッキーが声を演じたアニメ作品でも、日本語版で同じ役には石丸が配役される(ただし『レゴニンジャゴー ザ・ムービー』のウー先生役など、一部例外もある)。 テレビ音源が現存していないため、一部のソフト商品は個人の録画テープより収録している。1970、1980年代の作品に多く、劣悪な音質なものや初放送分よりも音源がカットされている作品も少なからず存在する。 バージョンについては、テレビで初公開されたものは初放送時のテレビ局名、ソフトで初公開されたものは初発売時の媒体で表記する。
映画
ドラマ
アニメ
人形劇
特撮
人形劇
舞台
ナレーション
テレビドラマ
その他の出演
玩具
脚注注釈
シリーズ一覧
出典
外部リンク |