『長崎犯科帳』(ながさきはんかちょう)は、日本テレビでは1975年4月6日から同年9月28日まで毎週日曜日21時から21時55分に放映されたテレビ時代劇。全26話。
後年、同じスタッフ、主演、脚本などにより、同名で舞台劇として上演された。
テレビ版
あらすじ
江戸末期・文化年間の長崎に主人公・平松忠四郎が新しい長崎奉行として着任する。その長崎とは、わずか一年ごとに交代する奉行より、金という力を持った少数の豪商達が実権を握る町。歴代の長崎奉行は商人と結託し、彼らが非合法なやり口で自らを肥え太らせるのを黙認、その見返りの賄賂で私腹を肥やしてきた。
今回やってきた平松忠四郎もまた例外ではなく、菓子「カステイラ」という名目で贈られた小判を喜んで受け取る、酒好き女好きな男だった。今度の奉行も『また金でどうとでもなる男(いわゆる「昼行灯(ひるあんどん)」)』と見て安心する町年寄たち。しかし昼行灯は忠四郎の仮面であり、蘭学医・良順らと共に許せぬ悪人を闇に始末していく彼らは、「闇奉行」と呼ばれた。
特徴
本作には長崎奉行所の判決文集『犯科帳(長崎犯科帳)』をもとに制作したストーリーがあり、長崎の郷土史家の森永種夫(『犯科帳 長崎奉行の記録』岩波新書などを著す)が資料提供者としてクレジットされている。
江戸時代、特殊な地域であった長崎が舞台とあって、従来の時代劇では見られない、カステラ、オランダ凧(長崎ハタ)、コーヒー、マルセイユ版タロットカード、チェスなどといった道具が登場し、台詞には長崎弁(肥筑方言)が盛り込まれていた。
登場人物
- 平松忠四郎(萬屋錦之介)
- 石高は八百石。前職の山田奉行時代にはろくに詮議所にも顔を出さず、無能な奉行と評されていた。長崎奉行にして闇奉行。指をパチンと鳴らす癖がある。悪徳商人らからの賄賂を平気で受け取り、その受け取った金を闇奉行としての悪人狩りの資金に当てるという、ある意味では非常に合理的な男。闇奉行として活躍する時には白の着流し、白い宗十郎頭巾で顔を隠して(昼間は黒を用いる)いるが、その姿でも指を鳴らす癖はそのままのため、悪人の中にはその正体に気づいてから殺される者が少なくない。残る悪人がその回のボス辺りになると自ら覆面を引き下ろし、素顔を見せてからボスや手下を斬る(この手法は、『破れ奉行』の速水右近にも用いられている)。
- 文武に秀でており剣の腕は柳生新陰流の達人。新し物好きな性格なためか短銃も良く使う。良順を呼び出す時には凧を上げて合図にしていた。また仲間であるはずの三次とお文に対して、影では「女や下郎」と呼び、物語後半になるまで自分の正体を明かさず信用もしなかった。
- 木暮良順(田中邦衛)
- 蘭学医。だらしない面もあるが医者としては誠実で、腕も確か。シーボルトの門下であるという。自分と同業である医者の悪事を許しておけず、殺害した。その手口を忠四郎に見破られ、忠四郎を手伝うはめになった。初めは闇奉行としての彼を嫌々手伝っていたが、段々と仲間意識を強めていった。おぎんといい仲。殺しの時には、メスでこめかみや額を刺す他、手裏剣の様に投げて相手の急所を刺す。放映開始時は良純と表示されていたが、途中から良順に変更されている。
- 三次(火野正平)
- 丸山の妓夫太郎(=客引き。牛太郎とも)で通称は出島の三次。初め良順から「オレの用心棒だ」と説明されていた闇奉行を、上述の指を鳴らす癖から“正体は長崎奉行の平松では?”と疑いを持ち探ろうとしたことがある。
- 商人や武士などが、己の強いのをいいことに弱者をいたぶり踏みにじるのを強く憎んでおり、闇奉行の仲間になることに非常に積極的だった。18話で忠四郎に命を救われてその正体を知ってからは忠四郎に心酔した。釵(さい)で殴ったり急所を刺す。
- おぎん(磯村みどり)
- 居酒屋「せいろむ」の女将。子供の頃に見た象の優しげな目がいたく気に入り、間夫を持つなら象に似た目をした男が良いと思っている。おぎんの基準では、忠四郎の目が象に似た目らしい。居酒屋の名「せいろむ」もその象の故郷の地名からとった。
- お文(杉本美樹)
- 闇奉行のメンバー中では唯一の長崎弁使い。序盤は造花の花束を短剣に変える手品を敵に見せ、その剣で急所を刺していたが、その後は最初から短剣で戦うようになった。
- 加田宇太郎(新克利)
- 長崎奉行所同心。切れ者とは言いがたいが、奉行所と商人の癒着を嫌う真面目な人柄の人物。そのため忠四郎が賄賂を受け取るのにはイヤな顔を見せる。そういう真面目さが好まれてか忠四郎からはウタさんと親しく呼ばれていたが、遊廓に御供をさせられたり凧を作らされたりとかなり振り回されてもいる。
- 猪俣安兵衛(高峰圭二)
- 長崎奉行所同心。
- 三島与五郎(御木本伸介)
- 長崎奉行所与力。杓子定規な堅物で、融通が利かない。忠四郎との初対面の後、長崎会所頭取・福島六左衛門に「全くもって、たわけ奉行で」と印象を伝えるなど、忠四郎に好感を持ってはいないが、職務には忠実。出演は第16話までだが、劇中、退場についての説明はされない。
- 沢田一馬(太田博之)
- 長崎奉行所通詞。
ナレーター:城達也
スタッフ
- 企画:梅谷茂(日本テレビ)
- プロデューサー:加藤教夫(日本テレビ)、中岡潔治(中村プロダクション)、中島正幸(ユニオン映画)
- 音楽:矢野誠(選曲:鈴木清司)
- オープニング・タイトルバック監督:実相寺昭雄
- 協力:中村プロダクション
- 脚本:放映リスト参照。
- 監督:放映リスト参照。
- 資料提供:森永種夫
- 製作著作:ユニオン映画
放映リスト
放映年月日は日本テレビのもの。
前後番組
日本テレビ系 日曜21:00 - 21:55枠 |
前番組 |
番組名 |
次番組 |
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長崎犯科帳
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舞台版
- 『長崎犯科帳 オランダ坂の決闘』(吉例第十二回萬屋錦之介特別公演、歌舞伎座、1976年)
- 『長崎犯科帳』(地方巡演、1992年)
テレビドラマ版では名前のみの登場だった長崎会所頭取・福島六左衛門が長崎奉行・平松忠四郎の敵役として登場し、クライマックスで対決するという物語になっている。
スタッフ
配役
外部リンク
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1966年7月 - 1969年10月(第1期) (海外作品→国産作品) |
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1970年10月 - 1971年12月(第2期) (国産作品) |
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1972年4月 - 1972年10月(第3期) (国産作品) |
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1973年4月 - 1983年9月(第4期) (国産時代劇) |
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1985年4月 - 1987年9月(第5期) (国産刑事ドラマ) |
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