『星獣戦隊ギンガマン』(せいじゅうせんたいギンガマン)は、1998年2月22日から1999年2月14日まで、テレビ朝日系列で毎週日曜7時30分 - 8時に全50話が放送された、東映制作の特撮テレビドラマ、および作中で主人公たちが変身するヒーローの名称。
ストーリー面ではSF要素が強い前作『電磁戦隊メガレンジャー』から、本作品では星を守る怪獣・星獣と大自然の力アースと共に生きる民族の戦士を主役にしたファンタジー要素の強い作品に一転[出典 1]。空想上や野生の動物をモチーフにしたヒーローのデザインやアクション、日常の舞台が乗馬クラブで移動手段も馬、カントリー調の番組内の字幕・テロップなど「自然」を前面に押し出し、またマンネリ化打破と原点回帰を意識してシリアスなストーリーになっている[注釈 1]。東映プロデューサーの髙寺成紀は、前2作では従来型の作品の打破を目指していたが、作品を通じてヒーローとしてシンプルで原初的なものが求められていることを実感し、王道路線としたことを語っている[2]。その一方で、怪獣とそれを成立させるための設定である宇宙が強く意識されたキャラクター傾向となっている[3]。
一方で、ルーティンに甘んじない姿勢も引き続き図られている[2]。1990年代以降主流となっていた「○○レンジャー」ではなく、「○○マン」の名前が採用されているが[2]、企画段階では『ガオレンジャー』も案の一つとして挙げられていた。この「ガオレンジャー」は最有力の候補とされていたが、企画当時に放映されていたアニメ『勇者王ガオガイガー』とタイトルが類似していることから見送られた[6]。当時のCD新譜情報では、主題歌の発売予定に「星獣戦隊バイオレンジャー(仮)」と告知されていた[7]。
当時は巨大戦において2号ロボとの合体、もしくは主役ロボの交代が定番化していた中で、あえて1号ロボに当たるギンガイオーがサポートロボと合体や主役交代もせずにパワーアップに留めるという路線が貫かれている。企画の最初期には「合体する巨大ロボは一切出さない」、すなわち5人のヒーローとそのパートナーである星獣たちのみで戦う、というそれまでのフォーマットを捨てたアイディアも出されていた[6][2]が、このアイディアに基づく展開は序盤の数話のみに留まっている。ロボット玩具とは別に星獣のソフビフィギュアも発売されたが、これについて当時バンダイ担当者の野中剛は平成ウルトラシリーズの影響があったことを述べている[8]。
敵組織のバルバンには各幹部ごとに1つの軍団が形成され、『仮面の忍者 赤影』を意識する形で1クールごとに各軍団が交代する手法がとられている[9][10]。デザイン作業に際しては当初、4つの軍団を統一したイメージで描いたものもあったが、各軍団の個性をより強調したいというプロデューサーの髙寺成紀の意向[11]から、各軍団とも明確に異なる方向性を示す形に落ち着いている。一方で、最初から全軍団が存在しているため、幹部の退場により戦力が下がっているように見られないようダイタニクスの復活という縦軸も設けられた[10][注釈 2]。
これまでの戦隊ではバイクや車などの乗り物が移動手段として使用されていたが、本作品では初めて動物(馬)を利用している点も特徴のひとつとして数えられる[8][注釈 3]。馬が神経質な動物であることから、撮影の数週間前から日常的にマスクなどの馬具を付けて慣れさせたり、元々の乗り手が騎乗して撮影する都合上、それ専用に視界がより広く取られたマスクや腿の内側に当たる部分を補強したスーツを特注するなど、撮影に際しては大変な手間がかけられた[6][8]。
玩具展開においては、スーパー戦隊シリーズとしては1991年以来途絶えていた「超合金」ブランドが「DX超合金 星獣合体ギンガイオー」にて復活し[8][13]、CMソングも通常版とは別に、歌詞に「超合金」のフレーズを織り込んだバージョン[注釈 4]が作られているなど、「超合金」ブランドの復活が強くアピールされている。この「DXギンガイオー」は久々の超合金ブランドでの発売ということもあり、試作段階において度重なる改修が行われたことから[注釈 5]、発売日が当初の予定よりも遅れている[6][8]。また『恐竜戦隊ジュウレンジャー』以来となる限定ブラックバージョンも発売され、以降の作品でも限定カラーバージョンの発売が恒例となった[8][15]。
銀河を荒らし星々を食い尽くす宇宙海賊バルバン。3,000年前地球を襲った彼らは、地球の自然から与えられる星を守る力・アースを持つ戦士たちと、銀河の平和を守るために戦う神秘の動物・星獣によって海底に封印された。しかし、海底地震の影響で封印が破れ、彼らは現代に復活する。
そのころ、かつてバルバンを封印して、アースを体得し自然とともに暮らす人々の故郷・ギンガの森では戦士の証・星獣剣を受け継ぐアースの戦士の継承式が執り行われていた。第133代目の戦士として選ばれたのはヒュウガ・ハヤテ・ゴウキ・ヒカル・サヤの5人。その式の途中で、かつての戦士の子孫に報復すべくバルバンが襲撃してきた。彼らはバルバンを迎え撃つがヒュウガはゼイハブに敗れ、地割れの中に姿を消してしまう。しかし地割れに飲み込まれる寸前、ヒュウガは星獣剣を実弟・リョウマに託す。リョウマは兄に代わり新たな戦士となり、他の4人とともに伝説の戦士・ギンガマンへと転生し、バルバンを撃退する。
しかし、ヒュウガの死を悲しむ暇もなく、再びバルバンが森を襲う。長老オーギはギンガの森の力を悪用されないため、5人の戦士にバルバン討伐を託し、自らも含めた住人ごと森を封印。石化したギンガの森は湖の底へ沈み、5人は生まれ育った森を出ることになる。
そして母艦である強大な魔獣ダイタニクス復活を目論むバルバンは、復活のエネルギーとして伝説のエネルギーであるギンガの光を欲し、行動を開始。5人はリョウマがたまたま知り合った少年・青山勇太の父の紹介で乗馬クラブの従業員となり、バルバン復活を知って彼らの元に現れたギンガレオンをリーダーとする五星獣とともに、地球を滅ぼそうとするバルバンに立ち向かう。
星を守る力・アースを持つ人間と星獣が隠れ住むギンガの森の若者たちに受け継がれる、勇気ある者にのみ許された伝説の戦士の称号[16]。3,000年前にバルバンを封印したギンガの森の戦士たちから始まり、現代のギンガマンは133代目にあたる。
代々のギンガマンには戦士の証として星獣剣が受け継がれ、星獣に授けられた戦士の腕輪・ギンガブレスでギンガ転生(変身)する。変身前でもアースによる大自然の力を操り、戦いに備えて鍛えた身体能力で戦うことができる。戦闘時は獣のような腰を落とした姿勢で走るのが特徴である[17][注釈 6]。
名乗りの口上は、「銀河を貫く伝説の刃 星獣戦隊ギンガマン」[20]。名乗り時に地面を叩くのも特徴である[17]。基本的には5人で名乗るが、最終章と『ギンガマンVSメガレンジャー』はヒュウガを含めた6人で名乗っている。
技名の多くは、サブタイトルと同じく「○○の××」となっている[10]。
ギンガマンと2代目黒騎士は転生前も含め、アースを利用した技が使える。アースに必要なのは強さだけでなく、命を守る優しさである。
宇宙の惑星が自らを守るために生み出した神秘の動物[27]。ギンガマンのパートナーでもある5体の星獣は、3,000年前の宇宙海賊との戦いの際地球に降り立って、ギンガの森の戦士の中から大自然の力・アースの優れた使い手を選び出し、ギンガブレスと星獣剣を与えて、初代ギンガマンとした。現代においては、5大星獣以外の星獣、重星獣と鋼星獣も登場し、ギンガマンと共に戦う。共通の能力として、敵に居場所を察知されないようにする結界を張ることが出来る。
5大星獣は第二章から登場。パートナーのギンガマンを体に乗せることでアースを増幅して使うことができ、より強力な攻撃を行える。また人語は話せないが理解することはでき、ギンガマンとは会話ができる。第六章でタグレドーの毒ガスを取り込み石化してしまったが、続く第七章にてギンガマンの持つ自在剣・機刃をアンテナにして、故郷の星からエネルギーを注ぐという命がけの方法により復活を果たし、同時に銀星獣への銀河大転生とギンガイオーへの合体という二つの能力も新たに会得した[27]。有機的なデザインの星獣とは対照的に、銀星獣は全身が超合金ギンセイ鋼の装甲で覆われ、獣型ロボットに近いメカニカルなフォルムへと変化している。またこの形態ではギンガマンをパイロットとして内部に搭乗させることも可能となっており、操縦は立った状態でコックピット内の操縦盤にセットされた機刃を介して行われる。
『救急戦隊ゴーゴーファイブVSギンガマン』ではグランドクロスの影響で仮死状態にあったが、ヒュウガの炎のたてがみを通じてアースを注がれて復活した。
ギガライノスとギガフェニックスの分離状態の乗り物型星獣。ギガバイタスに格納・運搬される。
ギガライノスに合体する車型分身獣。
ギガフェニックスに合体する飛行マシン型分身獣。
第二十九章から登場。元はバルバンに滅ぼされた星の星獣であり、石化して宇宙を漂っていたところをビズネラに捕らえられ戦闘兵器として改造された姿で、ビズネラがバルバンに売りつける[注釈 34]ため地球に持ち込んだ。登場した当初はビズネラと魔人バルキバルキの持つ操縦機[注釈 35]によって操られ、ギンガマンと敵対していたが、星を守る正義の心は改造されても残っており、第三十章においてギンガマンと星獣たちの懸命の呼びかけで正義の心を取り戻す。その際に頭部の形状と胸の装甲も変化した。
基本的には各々専用の武器を使うがお互いに交換して使うことも可能。合体する前後と必殺武器を使う一瞬だけ、かつての姿が確認できる。兵器たちが翼をばたつかせたり、車輪を動かしたりと生物的な挙動を見せる。
『星獣戦隊ギンガマンVSメガレンジャー』ではゲルマディクスとの戦いでギガライノスとギガフェニックスが爆発してしまう。
宇宙を荒らしまわる魔人海賊団。荒くれ無敵城で魔獣ダイタニクスを操り、海賊船としている。
3,000年前に地球に襲来し、初代のギンガマンと星獣たちの活躍で封印の石によって石化されて地球の海底に封印された。しかし、海底地震で封印の石が砕けたことで復活。以降は、どこかの海上で浮島状態となったダイタニックを拠点に、未だ目覚めぬダイタニクスの復活を目指し、4人の行動隊長が率いる4軍団が様々な作戦を行う。
ブクラテスと途中参加のビズネラを除き、主要メンバーたちは海に由来した名前が付けられている。海賊旗は長いフックと一本の短いサーベルを交差させて作った円の中にエイリアンのドクロが描かれたものである。
後日談の『星獣戦隊ギンガマンVSメガレンジャー』では封印を解かれ復活したグレゴリ艦長の手によって、ゼイハブとシェリンダ、4人の行動隊長たちが復活し、バルバンの復活を目論み、ギンガマンとメガレンジャーに戦いを挑む。
各キャラクターの身長・体重などの設定はない[106]。
主演した若手で、後に数々の作品で個性的な演技を見せたリョウマ役の前原一輝や、元モデルで本作品が俳優デビューだったゴウキ役の照英らは、作品終了後にイケメン俳優の先駆けとして注目をあびた。
またヒュウガ役は『忍者戦隊カクレンジャー』でサスケ / ニンジャレッド役を務めた小川輝晃が演じている。東映プロデューサーの髙寺は、前作でも追加戦士にヒーローOBを起用したことが好評であったことを受けたものであると述べている[2]。一方、小川自身は、メインライターの小林靖子が『カクレンジャー』のファンであったことを起用の理由に挙げている[130]。
また、ギンガグリーンと抗争を繰り広げる女幹部シェリンダには、セクシー系Vシネマを中心に活動していた水谷ケイが、ギンガマンの協力者の絵本作家・青山晴彦には元チェッカーズの高杢禎彦がそれぞれ起用された。
敵組織バルバンの声優陣も、ゼイハブ役の柴田秀勝を始め、サンバッシュ役の檜山修之、ブドー役の林一夫、バットバス役の渡部猛など、過去の戦隊作品で幹部級のキャラクターを演じた人物が多数キャスティングされる形となった。
ゲスト登場人物においても、後半から登場するゴウキの恋敵である岸本俊介には『激走戦隊カーレンジャー』で陣内恭介 / レッドレーサー役を務めた岸祐二を起用。
直近の作品で廃されていたナレーションが復活。戦隊シリーズ初参加の若本規夫が担当した。オープニングナレーションや劇中の要所で挿入されたほか、第七章以降のアイキャッチでの「ギンガマン」のコール、第四十三章の英語によるオープニングナレーションも若本によるものである。
ギンガレッド役の高岩成二は、本作品から『未来戦隊タイムレンジャー』まで3年間連続でレッド役を担当した[18]。
また、これまで女性キャラクターを演じてきた蜂須賀祐一が本作品で初めて男性キャラクターをレギュラー担当した[132][133]。
ブドーおよびビズネラを担当した福沢博文は、ブドー退場からビズネラ登場までの間に映画『ガメラ3 邪神覚醒』に出演した[134]。
プロデューサーである髙寺成紀を筆頭に、メインライターに小林靖子、パイロット監督には田﨑竜太と当時新進気鋭のスタッフがメインスタッフに名前を連ねた[5][注釈 52]。また演出陣では辻野正人や長石多可男は前作より引き続きの参加だが、本作品では新たに小中肇と諸田敏が演出陣に名を連ねた[注釈 53]。
キャラクターデザインでは、バルバンの4軍団に対してデザイナーも4人の名前がクレジットされているが、担当は特に軍団別に割り振られているわけではなく[158]、ゼイハブを始めとするレギュラーキャラクターは前作より続投となる野崎明が担当、ゲスト怪人に当たる魔人についても野崎と下条美治の両名によるデザインが大半を占めている。
長年スーパー戦隊シリーズでチーフカメラマンを務めたいのくままさおが本作品の第四十七章を最後にスーパー戦隊シリーズより離脱、松村文雄にバトンタッチする形となった。これに関連して、1998年暮れには雑誌『宇宙船』の誌上で卒業記念インタビューを行っている。また本作品の後半では、松村と並んでこれ以降のスーパー戦隊シリーズのカメラマンを長く務めることになる大沢信吾が戦隊シリーズのカメラマンとしてデビューしている。
主題歌・劇伴音楽はともに佐橋俊彦が担当。佐橋は「音楽的な大きな区分として、ギンガマンをウエスタン、敵・バルバンをクラシック、ギンガマンの故郷・ギンガの森をファンタジーを意識した民族音楽とした」と語っており[73][159]、それぞれの劇伴に反映されている。黒騎士はウシがモチーフであることからスパニッシュとなっている[73]。また、『カーレンジャー』での反省から全体のバランスを計算しての作曲ができたとしている[160][161]。
本作品でも前作と同様、オープニングとエンディングは別シングルとして発売され、挿入歌のほとんどもシングルが初出であった。劇伴集3枚がリリースされた他、新録セリフ入りミニCDアルバム2種(「星獣戦隊ギンガマン〜おはなしコロちゃんパック〜」「星獣戦隊ギンガマン〜クイズコロちゃんパック〜」)も発売された。これらのミニドラマにはギンガマン5人の他に勇太が登場しているが、ヒュウガやバルバンは登場していない。
売上面では、メガレンジャーの総売上74億円から93億円、うち玩具売上が48億円から56億円[165]と上昇した。
全編通して、放送回のカウントは「第(話数)章」、サブタイトルのフォーマットは「○○の××」で統一[10]。これを考案したプロデューサー補の若松豪は、シンプルかつ大仰な感じを出したかったと述べている[10]。
登場怪人のリンク先は、関連書籍にて明言されているもののみ、モチーフとなった事物に充てている[166]。
特記のない限り、いずれも発売元は東映ビデオ。
各作品における詳細はそれぞれの項目を参照。
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