この項目では、日本最東端の島について説明しています。母島列島 の姉島 の南側沖にある小島の南鳥島については「姉島 」をご覧ください。
日本最南端の島「沖ノ鳥島 」とは異なります。
南鳥島鉱山 所在地 所在地 東京都小笠原村 国 日本 生産 産出物 燐鉱(グアノ) 生産量 年間600トン(大正初期) 歴史 開山 1903年 閉山 昭和初期? 所有者 企業 水谷新六 → 南鳥島合資会社 → 全国肥料株式会社 取得時期 1903年(水谷による採掘開始) プロジェクト:地球科学 /Portal:地球科学
南鳥島 (みなみとりしま)は、東京都 小笠原村 小笠原諸島 の島 。本州 から1,800km 離れた日本国 の最東端[ 2] 。日本列島の東側に南北に走る日本海溝 を隔てた唯一の島である。現在は一般住民(民間人 )はいないが、防衛省 (海上自衛隊 )、国土交通省 (関東地方整備局 、気象庁 )の職員が常駐している。一般人は立入禁止 で、観光 目的で訪問することはできない。常駐職員以外は調査、取材 、受注作業(役務)目的での立入りとなる。また、島内に医師 も医療施設もなく、食中毒 を起こすと命の危険があるため、魚 を釣って 食べることは禁止されている。
日本国の島では唯一、他の島と排他的経済水域 を接していない島でもある。マーカス島 、マルカス島 (マーカスとう、マルカスとう、英 : Marcus Island )[ 3] とも呼ばれる。本島と沖縄県与那国町のトゥイシ [ 注 1] の間が、日本国の施政権のおよぶ領土 間で最長の大圏距離 を取ることができる地点である(約3,144 km[ 注 2] )。
地勢
気候
降水量(青、右軸)と気温(赤、左軸)
ケッペンの気候区分 でいうサバナ気候 (Aw) に属する[ 4] 。月平均気温2月21.8°C - 7月28.5°C 、年間平均25.8°C と温暖。降水量 は日本国内では少なめである。日本では南西諸島 と南鳥島を含む小笠原諸島 のそれぞれ一部が熱帯 に属しているが、南西諸島はアジア大陸 からの距離が近いため寒候期(10 - 3月)にはシベリア気団 の大きな影響を受ける。同じ熱帯でも、南西諸島南部(石垣島 、西表島 、与那国島 、宮古島 など)は年中降水量が多いので、熱帯雨林気候 (Af) に属する。これに対して、南鳥島は大陸からの距離が遠いため年間の気温差が小さいが、日平均気温年較差 が約6.7°C あり、寒候期には北極 方面からの寒気の影響があることを示している。極値は、最低気温が1976年 2月10日 13.8°C 、最高気温が1951年 7月17日 35.6°C 。積雪記録はない。また、南鳥島はアメダス 、気象官署をあわせた気象庁の観測所における11月、12月、1月の国内最高気温記録を保持している(それぞれ1953年 11月4日 の34.2°C 、1952年 12月5日 の31.6°C 、1954年 1月7日 および2021年 1月9日 の29.7°C )。
小笠原村南鳥島(南鳥島気象観測所、標高7m)の気候
月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
年
最高気温記録 °C (°F )
29.7 (85.5)
29.0 (84.2)
30.2 (86.4)
31.9 (89.4)
34.0 (93.2)
35.0 (95)
35.6 (96.1)
34.7 (94.5)
35.3 (95.5)
33.5 (92.3)
34.2 (93.6)
31.6 (88.9)
35.6 (96.1)
平均最高気温 °C (°F )
24.6 (76.3)
24.3 (75.7)
25.3 (77.5)
27.1 (80.8)
29.0 (84.2)
31.0 (87.8)
31.3 (88.3)
31.0 (87.8)
30.9 (87.6)
30.2 (86.4)
28.7 (83.7)
26.7 (80.1)
28.3 (82.9)
日平均気温 °C (°F )
22.4 (72.3)
21.8 (71.2)
22.5 (72.5)
24.3 (75.7)
26.1 (79)
28.0 (82.4)
28.5 (83.3)
28.4 (83.1)
28.5 (83.3)
27.9 (82.2)
26.5 (79.7)
24.5 (76.1)
25.8 (78.4)
平均最低気温 °C (°F )
20.3 (68.5)
19.6 (67.3)
20.4 (68.7)
22.3 (72.1)
24.1 (75.4)
25.8 (78.4)
26.1 (79)
26.1 (79)
26.4 (79.5)
25.9 (78.6)
24.7 (76.5)
22.6 (72.7)
23.7 (74.7)
最低気温記録 °C (°F )
13.9 (57)
13.8 (56.8)
14.2 (57.6)
16.4 (61.5)
19.1 (66.4)
20.0 (68)
21.6 (70.9)
21.8 (71.2)
21.7 (71.1)
20.8 (69.4)
19.2 (66.6)
16.7 (62.1)
13.8 (56.8)
降水量 mm (inch)
69.7 (2.744)
43.4 (1.709)
56.0 (2.205)
59.6 (2.346)
100.6 (3.961)
44.3 (1.744)
139.8 (5.504)
177.1 (6.972)
94.8 (3.732)
89.6 (3.528)
83.0 (3.268)
90.8 (3.575)
1,052.8 (41.449)
平均降水日数 (≥0.5 mm)
10.9
8.5
8.1
7.8
9.3
7.2
14.8
16.7
14.1
12.7
10.4
11.8
132.7
% 湿度
70
70
74
79
79
77
77
79
79
78
76
74
76
平均月間日照時間
170.8
179.4
222.3
240.2
275.1
311.2
276.3
248.1
254.6
250.8
211.0
182.3
2,821.7
出典:気象庁 (平均値:1991年-2020年、極値:1951年-現在)[ 5] [ 6]
地形
一辺が約2キロメートル の三角形 の平坦な島であり、国土地理院 が公表する全国都道府県市区町村別面積調 によれば、2024年7月1日時点の面積は1.47平方キロメートル [ 1] で、最高地点の標高 は9メートル [ 8] 。島の周囲はサンゴ礁 で浅くなっているが、潮流 が速く泳ぐのは危険である。この海域は北西太平洋海盆 に含まれ、島の周囲は深い海に囲まれており、他のどの陸地からも1,000キロメートル以上離れている。サンゴ礁の外側は水深 1,000メートルの断崖となる。
日本の島としては唯一日本海溝 の東側にあり、日本で唯一太平洋プレート 上にある。日本最東端の電子基準点 が存在し、この電子基準点は日本で唯一太平洋プレート上にあることからプレート運動の監視に重要な意義を持っている[ 9] 。
南鳥島は、プレート運動による動きとして、西北西方向に移動しているが、2011年 に発生した東北地方太平洋沖地震 以降、移動速度が約1割(8センチメートル /年→8.8センチメートル/年)加速している(2014年 の時点)との研究が2015年 に発表された[ 10] 。
人間史
南鳥島への空襲(1943年8月31日)
南鳥島に配備されていた九五式軽戦車 と九四式六輪自動貨車 。(1945年)
1543年、スペイン 東洋艦隊のベルナンド・デ・ラ・トーレ(Bernando de la Torre)による探検航海中に南鳥島が初めて発見されたとされる[ 11] 。1864年、ハワイ のミッション船「モーニング・スター」が南鳥島を確認[ 12] 。記録が確かなのはこれが最初であるという[ 13] 。1874年にはアメリカ の測量船「Tuscarora」が、1880年にはフランス 軍艦「Eclai-leu」が島の位置を測量 している[ 13] 。また、1860年ごろ、アメリカ人 宣教師 がマーカス島と命名した[ 12] 。1889年、アメリカ商船 「ワーレン」の船長ローズヒルが島に上陸した[ 12] 。この人物は後に日本との間で問題を引き起こすこととなる。
1885年、イギリス 帆船 「ナット」が島に打ち寄せられた際に日本人乗組員が島に上陸した[ 12] 。また、1886年(または1883年[ 13] )には、コンシロウー商会のイギリス船「エター」から信崎常太郎(信岡常太郎とするものもある)という日本人が上陸したという[ 14] 。他に、静岡県 の斎藤清左衛門が、島を1879年に視認し、1893年には上陸したと主張している[ 14] 。
1896年12月3日に水谷新六 が南鳥島を発見し、水谷は島でのアホウドリ 捕獲事業を開始した[ 14] 。翌年、水谷は島嶼発見届を提出し、島は1898年7月24日付の東京府 告第58号で南鳥島として日本の領土に編入[ 15] 。東京府小笠原島庁所管とされた[ 16] 。南鳥島の借地権をめぐって水谷と斎藤清左衛門との間で争いがあったが、同年、南鳥島は水谷に10年間貸し付けられることとなった[ 17] 。
生物
ヤモリ科 の一種であるミナミトリシマヤモリ が生息していたが、1952年以降生息が確認されておらず、個体群は消滅したと考えられている[ 27] 。なお、標準和名 にはミナミトリシマとあるがこの島の固有種ではなく、ミクロネシア 方面から流木などに乗って分布を広げたものと考えられている。
人体に有害な寄生虫 を持つ外来種 アフリカマイマイ が多数生息する。
島内の施設と交通
施設
高層気象観測のため気球にGPSゾンデ を吊るして飛ばす様子
一般市民の定住者はなく、飛行場施設を管理する海上自衛隊 硫黄島航空基地隊 の南鳥島航空派遣隊 (約10名)や気象庁 南鳥島気象観測所(約10名)、関東地方整備局 南鳥島港湾保全管理所(3名)の職員が交代で常駐する[ 28] [ 29] 。南鳥島航空基地 があり、気象通報 の観測地でもある。アマチュア局 は気象庁の社団局JD1YAAがあり[ 30] 、来島者の個人局が運用することもある。かつては海上保安庁の社団局JD1YBJもあった。
往来・補給のために1,370メートルの滑走路 があり、島の一辺の方向に平行である[ 28] 。島の南側に船の波止場 があるが、浅いサンゴ礁 に阻まれて大型船は接岸できないため、大型船は沖合いに停泊し、そこから船積みの小型ボート で島に荷揚げを行っている[ 31] 。このため、2010年度より泊地および岸壁 工事が行われており、2022年度に完成予定である[ 32] 。
太平洋戦争 の際に、上陸戦 を想定して島を要塞 化していたため、その時代の戦車 や大砲 の残骸などが残る。アメリカ軍 による空襲はあったものの、上陸・戦闘は起きなかった。かつては、アメリカ沿岸警備隊 が電波航法施設ロランC局 を運用していた。1993年に海上保安庁 千葉ロランセンターが業務を引き継ぎ、213メートルのアンテナ から1.8MW の送信出力でロランパルスを発射していたが、GPS の普及でロランを使用する船舶が減少したため、2009年12月1日午前に廃止された[ 33] 。
交通
島に駐在する職員の交代などのため航空自衛隊 のC-130H が月に一度、海上自衛隊のC-130Rが週に一度、硫黄島 を経由して食料の補給や荷物の逓送のために飛来する。海上自衛隊のUS-2 や航空自衛隊のC-1 が利用されることもある。交代の職員もこれらの飛行機を利用する。日本郵便株式会社 が「交通困難地 」[ 34] に指定しているため、郵便番号 「100-2100」(小笠原村の父島 ・母島 以外の〈一覧に掲載がない〉地域の番号[ 35] )と南鳥島の住所を記載しても郵便物 は届かない。これは各社宅配便 も同様である。このため、郵便 および宅配便の利用はできない。
所要時間はC-130が厚木基地 からの直行で約3時間半である[ 36] 。
海上自衛隊が2014年 まで運用していたYS-11M では、厚木基地から硫黄島を経由して約7時間かかり、絶海の孤島 で周囲に緊急着陸 が可能な飛行場が存在せず、何らかの理由で着陸ができないと帰路に燃料不足の懸念があることから、確実に着陸可能である状況でのみ運航を行っていた[ 37] 。
作家 の池澤夏樹 が南鳥島に行きたいと要望し、補給船に乗って1日だけ上陸して、その際の状況を「南鳥島特別航路」に書いた。
通信・放送
2014年 では公衆電話 か手紙 のみであった通信手段も、2020年 時点ではソフトバンク の携帯電話 がどうにか使用できるようになっている。 インターネット に接続する際は携帯回線 を利用しないといけない。衛星電話 も利用できる[ 38] 。テレビ はあるが地上波 放送を受信することはできず、BS放送 のみ視聴可能で、中には休暇の際にDVD を大量購入する人もいた[ 39] [ 40] 。
希土類
日本の排他的経済水域 。右端に離れた円が南鳥島周辺。 日本単独のEEZ
周辺国との係争区域
2012年6月28日、東京大学 の加藤泰浩ら研究チームは当地付近の海底 5,600メートルにおいて、日本で消費する約230年分に相当する希土類 (レア・アース)を発見したと発表。日本の排他的経済水域である南鳥島沖の海底の泥に、希土類の中でも特に希少でハイブリッド車 (HV) の電動機 などに使われるジスプロシウム が、国内消費量の約400年分あるという推定がなされた[ 41] 。これにより、掘削技術を提供している三井海洋開発 と共同で深海底 からの泥の回収技術の開発を目指す[ 42] 。
2013年3月21日、海洋研究開発機構 と東京大学の研究チームは、深海底黒泥中には最高で中国鉱山の30倍超の高濃度希土類があることが判明したと発表。この調査で、同大学の加藤泰浩は「230年分以上、数百年分埋蔵している可能性がある」と話している。なお、陸上の希土類鉱山で問題になる放射性トリウム は深海底黒泥中には含まれていなかった。
世界の希土類の現在の主な輸出国である中華人民共和国 は、日本による2013年の当地域の希土類に関する報道について、「我が国を煽り立て、牽制(けんせい)することが目的だった可能性がある」とした[ 43] 。アドバンストマテリアルジャパン 社長の中村繁夫は、南鳥島の希土類採掘は経済合理性に欠けており、一連の報道は単なる牽制目的なのではないかと述べた[ 44] 。
経済産業省 は2013年度から3年間、南鳥島周辺の排他的経済水域内において、希土類を含む海底堆積物の分布状況を調査して評価を行い、商用化に向けた技術開発も行っている[ 45] 。
2020年7月、JOGMEC が南鳥島南方の排他的経済水域内の水深約930メートルにおいて世界で初めてコバルトリッチクラスト の掘削試験を実施し、649キログラム を回収した。掘削試験をした拓洋第5海山平頂部には、日本の年間消費量の約88年分のコバルト 、約12年分のニッケル の存在が期待されている[ 46] 。
2022年11月、中国による海洋進出や台湾 への軍事侵攻などの地政学的リスク の高まり、経済安全保障 の観点から、2022年度第2次補正予算 案に採掘に向けた関連経費を盛り込む方針が示された。2023年度に採掘法確立に向けた技術開発に着手し、5年以内の試掘を目指す方針である。
ギャラリー
日本最東端の碑
兵器の残骸。2020年7月撮影。
植生
脚注
注釈
^ 与那国島 の附属岩。与那国島西崎との距離のほうがわずかに短いが、こちらとの距離も約3,144 kmである。
^ 地理院地図 の計測機能(GRS80 地球楕円体 面上の測地線 長)による。
^ 以下の数値は資料不足値の為未記載「1963(22.6),1964-1967(測定値なし),1968(26.7),2006(25.4),2008(25.9)」
^ 以下の数値は資料不足値の為未記載「1963(24.7),1964-1967(測定値なし),1968(29.2),2006(28.2),2008(28.6)」
^ 以下の数値は資料不足値の為未記載「1963(31.7),1964-1967(測定値なし),1968(32.6),2006(34.7),2008(33.9)」
^ 以下の数値は資料不足値の為未記載「1963(19.6),1956,1964-1967(測定値なし),1968(23.3),2006(20.3),2008(20.9)」
^ 以下の数値は資料不足値の為未記載「1963(20.8),1964-1967(測定値なし),1968(24.4),2006(23.4),2008(23.6)」
^ 以下の数値は資料不足値の未記載「1963(15.1),1956,1964-1967(測定値なし),1968(19.3),2006(16.8),2008(17.6)」
^ 以下の数値は資料不足値の為未記載「1963(25.9),1956,1964-1967(測定値なし),1968(28.3),2006(27.7),2008(27.6)」
^ 以下の数値は資料不足値の為未記載「1964~1967(記録なし),2006(75%)」
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
南鳥島 に関連するカテゴリがあります。
日本の極地
北端 南端 東端 西端
トゥイシ (与那国島北北西方の岩)
与那国島 ・西崎 (岩礁を除く)
大嶺崎(沖縄本島を本土とし、離島を除く)
神崎鼻 (沖縄県と離島を除く)