『名探偵コナン 業火の向日葵』(めいたんていコナン ごうかのひまわり)は、2015年4月18日に公開されたアニメ映画で、劇場版『名探偵コナン』シリーズの19作目[10]。上映時間は112分[1]。興行収入は44億8,000万円。 キャッチコピーは「華麗なる芸術的(アート)ミステリー!!」「お前に解けるか……この芸術が!!」[2][3][4][5][6][7][8]。
概要
監督は前作『異次元の狙撃手』から引き続き静野孔文が、脚本は『絶海の探偵』以来、2年ぶりに櫻井武晴が担当する。
本作では、怪盗キッドに加えてゴッホの絵画『ひまわり』が物語の重要な鍵を握るため、シリーズ初の「アートミステリー」と位置づけられている。
タイトルの漢字はそのまま読み、カタカナの当て字がない。劇場版においてこのような例は第4作『瞳の中の暗殺者』以来15年ぶりのことで、第1作『時計じかけの摩天楼』、第3作『世紀末の魔術師』と合わせて4作目となった[注 1]。
怪盗キッドと彼を追う中森銀三が登場する映画は、『世紀末の魔術師』、第8作『銀翼の奇術師』、第10作『探偵たちの鎮魂歌』、第14作『天空の難破船』合わせて5作目となり[注 3]、本作では怪盗キッドの助手である寺井黄之助が劇場版に初登場する[注 4]。青年時代の寺井が描かれたのは、『名探偵コナン』および『まじっく快斗』の原作・アニメを含め初めて。他には、テレビアニメ537話 - 538話「怪盗キッドVS最強金庫」[注 5]に登場した登場した次郎吉のボディーガード・後藤善悟も劇場版初登場となった[注 6]。また、本作ではキッドがメインとなっていることもあり、5作目の登場となる中森警部は本作で初めてポスターに描かれた。一方、警視庁捜査一課の刑事たち(高木渉、佐藤美和子、白鳥任三郎、千葉和伸)は登場せず、ポスターに描かれている目暮十三だけは終盤に登場する。レギュラーメンバーで最初に登場するのは園子と次郎吉であり、コナン・探偵団は3分経ってから、蘭・小五郎は10分以上経ってからの登場である。また、阿笠博士も登場するが他作と比べて場面は少なく、ストーリーにも絡まなかった。
2014年1月27日に急死した永井一郎に代わり、富田耕生が鈴木次郎吉を引き継いだが[注 7]、2020年9月27日に富田も死去したため、富田が演じる次郎吉が登場する劇場版は本作のみとなった[注 8][注 9]。また、2018年8月13日に石塚運昇も死去したため、石塚が演じる中森警部が登場する劇場版は本作が最後となった[注 10]。
オープニングでは博士のアイテム紹介が省略されており、灰原と怪盗キッドの紹介のみにとどまっている。
本作は『ひまわり』関連ではあるが、全く別の事件の真相が明らかになっており、犯人は2人になっている。これは、日下ひろなり(くさか - 〈声 - 山寺宏一〉)の復讐計画を利用して秋吉美波子(あきよし みなこ〈声 - 榊原良子〉)が犯行を及んだ、第9作『水平線上の陰謀』を含めても唯一である。
エンドロールのキャストの順序が例年と違い、ストーリーに添った順になっている[注 11]他、エンドロールを締め括る「コナンの目」は本作以降から登場しない。また、エンドロールの終盤では、音響監督としてシリーズに携わり前年に亡くなった浦上靖夫が追悼されている。
本作では、後藤善悟が初登場した「怪盗キッドVS最強金庫」で使われた大金庫「鉄狸」が「鉄狸改」として改良型になった。このため、公開間近の2015年4月4日・11日に同エピソードが本放送枠で再放送された[12][13]。
ゲスト声優の榮倉奈々は、絵画鑑定士・宮台なつみ役で出演した[14]。主題歌はポルノグラフィティの「オー!リバル」[15][16]。3月30日には元KARAの知英もゲスト声優として発表された[17]。知英は声優に初挑戦することになった。なお、今作の一連の事件の犯人はなつみのため『異次元の狙撃手』に続き、ゲスト声優が演じたキャラクターが犯人となった[注 12]。
2014年12月26日に『金曜ロードSHOW!』枠で放送された『名探偵コナン 江戸川コナン失踪事件 〜史上最悪の2日間〜』ではエンディング後に本作の予告映像を放送し、2015年1月30日に『金曜ロードSHOW!』枠で地上波初放送された『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』と同年3月28日の『まじっく快斗1412』のCM内では、コナンとキッドによる同作の内容を踏まえたナレーションを付けた予告映像が放送された。
本作の公開と同日に放送されたテレビアニメ第774話「消えたムンクの叫び」は本作のプレストーリーとなっており[18][19]、鈴木次郎吉がアニメオリジナルに初登場した。
本作は2008年に公開された『戦慄の楽譜』に次ぎ、上映時間が2番目に長い作品である。
DVDとBlu-rayは2015年11月25日に発売された。また、近年のシリーズ同様、本作も小説版が小学館ジュニア文庫から2015年4月16日に発売されている[20][注 13]。
劇場版シリーズの定番となっているエンディング後の次回作の予告が今作でも放映された。エピローグ終了後に、酒場で酒の映像が映し出された後に、ジンと思われる声[注 14]による「キール、バーボン、まさかな…」というセリフとともに、次回作の製作が決定したという旨の字幕による予告が流れた。のちに次回作は、第13作『漆黒の追跡者』以来、劇場版で3作目の登場となる黒ずくめの組織がストーリーに大きく絡む『純黒の悪夢』であると発表された。本作以降、次作の予告にキーマンのセリフがあるという流れが続く。
2016年に開催された歴代映画19作品の人気投票で、今作は8位を獲得した[21]。
製作
5年連続で本シリーズの監督を務める静野孔文は、「コナンの劇場版を作る時は毎回自分に新たなチャレンジを課している」と話しており、今作では一つのシーンを距離や角度の異なる複数のカメラで同時に撮るという、海外のフィルム作りの手法が取り入れられている[22][23]。
この手法では1分間のシーンであっても3台のカメラを回していれば3分間の映像素材が生まれるため、それぞれのカメラの映像を組み合わせて1分間のシーンに落とし込んでいく[23]。静野曰く、映像素材が多いほど表現力が豊かな映画になっているとのことで、制作中には映像素材の合計が脚本の長さを超えて3時間に及んだこともあったという[23]。最終的にはエンタテイメント性を高めるため細かい箇所を削りながら1時間強の上映時間に収めていったといい、静野は「テンポのいいフィルムになったのでは」と語っている[22]。
アクションシーンにおいては、脚本段階ではざっくりとしか書かれていないため、監督、トムスの文芸部、絵コンテ担当者らがアイデアを出し合い、最も緊張感が出るような形に再構成されている[24]。例として、物語後半の舞台となっているレイクロック美術館では、出入口が両端にしかない1本の地下通路内でキッドがどう立ち回るかというプロットが用意されていたが、静野の「キッドには颯爽とハンググライダーで現れて欲しい」という考えから地下通路が無くなり、現在のデザイン及びシナリオに変更されている[25]。
また、観客の体感スピードをコントロールするため、ストーリー展開や登場人物の会話スピードが前作の約1.3倍の速さに調節されているほか[26]、効果音やセリフを重ねて臨場感を上げるなどの工夫が施されている[24]。
脚本
脚本を担当した櫻井武晴は、本作を「8割方僕の脚本じゃなかった」[27]と懐古し、「大人の事情があって、脚本のほとんどのミステリー要素が使えないという事態が起きてしまった」[28]と後のインタビューで明かしている。
監督の静野は本件について、実在する絵画を題材にしたことで、納品ぎりぎりまで修正指示が続いたと説明しており、「中でも大きかったのは、犯人が最後に自分の動機を言う部分を、削らなければいけなくなってしまったことですね。本当は、詳しく語られてたんですけど、それら全てを削ることになってしまった。櫻井さんには、ミステリーとして面白い部分がなくなってしまったことを詫びました。」[24]とコメントしている。
なお、櫻井は「当然、制作スタッフは大パニックになったんですけど、それでも静野さんは投げ出さず、アクションでつないで映画を完成させた。しかも前作を上回る好成績で。」と、この一件で見せた静野のプロ意識に敬意を表している[28]。
ストーリー
ニューヨーク・マンハッタンのオークションで、かつてゴッホが2番目に描き、第二次世界大戦時の芦屋空襲で焼失したとされる『ひまわり』の模写が出品された。その模写を3億ドルで落札したのは鈴木財閥の相談役である鈴木次郎吉だった。オークション終了後の記者会見で、次郎吉はゴッホの『ひまわり』を7つ全て集め、日本で「日本に憧れたひまわり展」を開催すると宣言し、『ひまわり』を守るための7人のサムライを紹介する。しかしその時、会場にキッドカードが撃ち込まれ、怪盗キッドが姿を現した。警備主任のチャーリーが追い詰めるも、キッドは閃光弾を放ち逃亡する。
次郎吉は突如その場に現れた工藤新一や鈴木園子及び7人のサムライ達を乗せて、ボーイング747の特別塗装機「サンフラワージェット」で『ひまわり』を羽田空港へ輸送する。しかし、空港到着間際に貨物室の外に仕掛けられた爆弾が爆発して『ひまわり』が機外に吹き飛ぶと同時に火災が発生し、サンフラワージェットは操縦が効かなくなり機内はパニックに陥る。同時に、『ひまわり』を抱えて羽田空港上空を飛ぶキッドを発見したコナンは追跡を開始し、空港ビルの上にキッドが何も持たずに立っているのを発見するが、取り逃してしまう。しかしながら、サンフラワージェットは辛うじて着陸に成功し空港のターミナルビルと衝突寸前で停止。ビルの屋上でキッドが隠した『ひまわり』も発見され、学芸員の鑑定で損傷無しと確認されたので、改良された次郎吉の金庫「鉄狸改」に保管されることになった。
飛行機の爆破がキッドの仕業ではないかと囁かれる中、園子は「キッドは人殺しをするような人じゃない」と否定するが、チャーリーは「キッドは目的のためなら手段を選ばないテロリストだ」と取り合おうとしない。一方、コナンはこれまでのキッドの手口との違いなどから、「何らかの事情による犯行」なのか、それとも「偽者のキッドによる犯行」なのか、と考えを巡らせる。
7人のサムライによる会議の日、毛利探偵事務所にキッドから新たな予告状が届く。その予告状を見た東 幸二は、三幅対の左側の最初の模写、つまり東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館(現・SOMPO美術館)にある『5枚目のひまわり』であると解読し、美術館へ向かう。偶然、同じ美術館に少年探偵団や阿笠博士と一緒に来ていたコナンも、新たな予告状の存在を知って7人のサムライ達と合流し、狙われていると分かった『ひまわり』を金庫の中に避難させるため、急遽運び出すことになった。ところが館内に潜入していたキッドに『ひまわり』を奪われ、代わりに美術館館長宛ての『ひまわり』を100億円で譲るとのメッセージだけが残された。
次郎吉はキッドに100億円を支払い取引をすることを決めるが、取引時刻になると同時に取引場所であるホテルの部屋の窓に仕掛けられた爆弾が爆発し、突入したコナンとチャーリーは無事に『5枚目のひまわり』を取り返すことには成功したものの、発見したキッドは取り逃してしまう。キッドの目的について、2枚目と5枚目の『ひまわり』以外は眼中に無いということ以外に何も掴めないまま、レイクロック美術館で「日本に憧れたひまわり展」が開幕する。しかし、館内に新一が居たという園子の発言をきっかけに、コナンが館内でキッドカードを発見したことでキッドの侵入に気づいた次郎吉は、7人のサムライと中森、後藤、蘭、園子、コナン、そして自分を含めた13人を除く客とスタッフを全員退館させるが、火災が発生する。2枚目と5枚目の『ひまわり』以外の無事を確認すると先述の13人も退館するが、残っていた2枚の『ひまわり』が気になったコナンが館内に戻ると、それを追うように蘭も館内に戻ってしまい、コナンと蘭、そして『ひまわり』が業火の危機に晒される。
美術館の外では、何者かからトランシーバーで指示を受けた後藤によって貯水タンクが爆破された上に、蘭とコナンが火災で今にも崩壊しそうな美術館の中にまだ残っていると分かり、騒然となっていた。そんな中、炎の燃え盛る美術館内では、ある人から依頼を受けて真犯人から『ひまわり』を守るために今回の一連の犯行に及んでいた、という巨大な宝石(=ビッグジュエル)しか狙わないはずのキッドの本当の狙いを見抜いたコナンが、キッドやそこへ駆け付けた蘭とともに協力し、無事に『ひまわり』を守り切ることに成功する。
非常時に7枚の『ひまわり』が自動的に集積されて来るはずの搬出口では、7人のサムライが集積されて来た『ひまわり』の枚数を数えていたが、全て数えても『ひまわり』が6枚しかないことに気付く。そこへ新一から連絡が入り、今回の『ひまわり』に関する一連の事件はキッドによる犯行ではなく、7人のサムライの1人である宮台なつみによるものだと告げ、彼女の動機と犯行に使われたトリックを暴く。全てを暴かれたなつみは目暮警部によって連行され、2枚目の『ひまわり』が無事であることも新一から告げられたが、一方で美術館内ではコナンと蘭が美術館の崩壊という窮地に陥ってしまい、何とか脱出する方法を思案する。そこでコナンは、ボール射出ベルトの花火ボールを蹴る方法を思い付き、辛くも脱出に成功する。
キッドは気絶している蘭をハンググライダーで運び出して川岸に横たえた後、近くの木陰に隠れていた。それから暫くして、園子やチャーリー達が蘭を発見し、まだ脱出して来ないコナンを蘭の傍らで待っている彼らとともに、キッドは隠れている木陰からそっとその様子を見守っていた。そして、コナンが『ひまわり』とともに川底から浮上して来る様子を見届けたキッドはその場を静かに立ち去ろうとするが、その時キッドの踏んだ小枝の音に気付いたチャーリーが、キッドの背後へ静かに近付きながら銃口を向け、キッドに今回の犯行の真意を問う。その問いに対してキッドは「ある依頼人の想い出を守るため」とだけ答え、チャーリーとお互いの誤解を解いてから姿をくらまして終幕を迎える。
登場人物
レギュラーキャラクター
- 江戸川 コナン(えどがわ コナン)
- 声 - 高山みなみ
- 本作の主人公。本来の姿は「東の高校生探偵」として名を馳せている工藤新一だが、黒ずくめの組織に飲まされた毒薬・APTX4869の副作用で小学生の姿になっている。
- 鈴木次郎吉が世界中から集めた各分野のエキスパート・「7人のサムライ」のオマケにして、実は過去の「キッドキラー」としての実績で次郎吉から本命の戦力と期待される。
- 毛利 蘭(もうり らん)
- 声 - 山崎和佳奈
- 本作のヒロイン。新一の幼馴染かつガールフレンドで、関東大会で優勝するほどの空手の達人。
- 爆弾の爆破で歪んだ防犯システム周辺の壁を素手で破壊する等、常人離れした強さを見せている。
- 毛利 小五郎(もうり こごろう)
- 声 - 小山力也
- 蘭の父親で「眠りの小五郎」の異名で有名な私立探偵。コナンの保護者。元警視庁捜査一課強行犯係の刑事。
- 次郎吉が集めた各分野のエキスパート・「7人のサムライ」の最後の1人に選ばれる。
- 怪盗キッド(かいとうキッド)
- 声 - 山口勝平
- 本作のキーパーソン。神出鬼没な大怪盗。コナンのライバルで、その正体を新一と知る数少ない人物の1人。
- 新一の姿に変装して鈴木財閥の関係者に接近し、コナンや蘭の危機も救う。
- 工藤 新一(くどう しんいち)
- 声 - 山口勝平
- コナンの本来の姿で高校生探偵。
- 新一としての登場は、蘭や小五郎たちとの電話での会話以外は殆どがキッドの変装である。
- 灰原 哀(はいばら あい)
- 声 - 林原めぐみ
- 元黒の組織の一員かつAPTX4869の開発者で、コナンの正体を新一と知る数少ない人物の1人。
- 展示された『ひまわり』を毎日鑑賞している和服の老婦人・ウメノと対話する。
- 本作は、少年探偵団との会話でのみだが、蘭のことを「蘭さん」と呼んでいる。
- 鈴木 園子(すずき そのこ)
- 声 - 松井菜桜子
- 蘭の同級生で親友。鈴木財閥の令嬢で、蘭や新一とは幼馴染でもある。
- サバサバした性格だが、本作では財閥の令嬢らしく振舞ってテレビ番組にも出演し、『ひまわり』の展示について堂々と世間に発表する。
- 阿笠 博士(あがさ ひろし)
- 声 - 緒方賢一
- コナンの正体を新一と知る数少ない人物の1人で、発明家。
- 目暮 十三(めぐれ じゅうぞう)
- 声 - 茶風林
- 警視庁刑事部捜査一課強行犯捜査三係の警部。
- 終盤で犯人の身柄の引き渡しに現れる。
- 吉田 歩美(よしだ あゆみ)、小嶋 元太(こじま げんた)、円谷 光彦(つぶらや みつひこ)
- 声 - 岩居由希子(歩美)、高木渉(元太)、大谷育江(光彦)
- 少年探偵団の3人。
- 中森 銀三(なかもり ぎんぞう)
- 声- 石塚運昇
- 警視庁捜査二課知能犯捜査係の警部。
- 怪盗キッド逮捕のために、これまで以上の目立った動きを見せる。また、後述の東幸二が関わったの事件の真相に1人でたどり着いた。
- 寺井 黄之助(じい こうのすけ)
- 声 - 陶山章央(青年時代)[注 15]
- 怪盗キッドのアシスタントをしている老執事。
- 変装してキッドをサポートする。また、ウメノと関係する戦時中のエピソードが判明する。
- 冒頭の解説で、実はキッド同様にコナンの正体を密かに新一と知っている数少ない1人でもある事が語られる。
- 後藤 善悟(ごとう ぜんご)
- 声 - 楠大典
- 鈴木次郎吉のボディーガード。
- レイクロック美術館のモニター操作と鉄狸改内部の最終チェックも担当する。
- 理由は最後で明らかになるが、レイクロック美術館へ『ひまわり』の鑑賞に来ていたウメノを見て、大粒の涙を流していた。
- 劇場版初登場であるが、実は別人の変装姿で、本人は未登場である。
- 鈴木 次郎吉(すずき じろきち)
- 声 - 富田耕生
- 鈴木財閥相談役。
- 『ひまわり』を3億ドルで落札し、世界各地から各分野のエキスパートをセキュリティー要員として集め、「7人のサムライ」を結成させる。
オリジナルキャラクター
犯人
- ユダ
- 次郎吉が競り落とした「2枚目の『ひまわり』」と、損保ジャパン日本興亜美術館にある「5枚目の『ひまわり』」の破壊を企む人物。7人のサムライの1人として活動しつつ、陰では先述の2枚のひまわりの葬り去るために暗躍する。
- 「2枚目の『ひまわり』」が積載されていた貨物室がある、飛行中のジェット機を爆破して墜落の危機にさらすなど、『ひまわり』を破壊するためなら、手段を選ばない。
- 「ユダ」は、キリストの12人の使途の一人で、キリストを裏切ったことから「裏切り者」の代名詞とされることが多い。キッドはこれを暗号に利用し、7人のサムライの中に裏切り者がいることを伝えようとした。
7人のサムライ
鈴木次郎吉が世界中から集めた「7人のサムライ」のメンバー。
各分野で活躍する超一流の精鋭揃いで、絵画関係のエキスパートも多い。7人目は毛利小五郎。
名前の由来は1954年公開の黒澤明監督の映画『七人の侍』からで、本編でも7人目の小五郎にキッドキラーの異名を持つコナンがオマケとして付くこととなり、それを見越した灰原が、コナンに「頑張ってね、『菊千代(きくちよ)』さん」とからかうシーンがある。
- 圭子 アンダーソン(けいこ アンダーソン)
- 声 - 榊原良子
- 企画担当のプロデューサー。世界中の『ひまわり』が揃う「日本に憧れたひまわり展」のプロデューサーとして、学芸員達の指揮を執るハーフの女性。
- 初対面のなつみに親しげに語りかけるなど、何かと気に掛ける描写が多い。久美子とも2人で話し合うなど女性メンバーとは打ち解けている。
- 7人のサムライの中では、チャーリーと同じく周囲の人間に対して警戒感を強めており、警備員に対しても自分達で運ぶと周囲から遠ざけている。結果的にこの警備員はキッドの変装であったため、判断能力の高さを証明した。
- 宮台 なつみ(みやだい なつみ)
- 声 - 榮倉奈々[14]
- 鑑定担当の絵画鑑定士。絵画の歴史に詳しく、正確かつ迅速に鑑定を行う。『ひまわり』については様々な学説を研究しており、深い愛着を持っている。
- 最初にキッドカードを発見して警察に報告し、『ひまわり』を自分の工房で鑑定した方が早いとの理由で持ち帰ることを提案したが、警備員の変装を解いたキッドの手で東と共に拘束されてしまう。解放後、彼女の発案により防犯カメラのカモフラージュも兼ねて、レイクロックのトンネル内に大量の向日葵を植える作戦を立て、キッドの動向を探っていく。
- 東 幸二(あずま こうじ)
- 声 - 磯部弘
- 修復担当の絵画修復士。2番目の『ひまわり』の模写の発見者。修復の他、絵画の保存管理も担当している。
- 羽田空港に到着後、怪盗キッドが隠していた『ひまわり』のチェックを行い、これ以上絵が放置させられていたらまずいことになっていたであろうという評価を下した。なつみと並んで『ひまわり』に触れることが最も多い人物である。
- 双子の兄・幸一は、自分と同じく美術関係に身を置く画商であり、兄弟で共に絵画に携わっていたが、2番目の模写を発見した後に拳銃で自殺を図っていたそうである。
- 岸 久美子(きし くみこ)
- 声 - ゆかな
- 演出担当の演出家。
- 容姿端麗な頭脳派として、美術界でその名を知られている。胸元の開いたセクシーな服を着こなすグラマーな美女。次郎吉が建てた鉄壁の警備で護られている難攻不落の美術館・レイクロックの展示システムを発案した。
- 発生したキッド事件にも積極的に関わり、途中から仲が良くなった圭子と相談しながら事件の謎を追及していく。エレベーターに遅れて乗ってきたコナンの肩に手を当て、優しく介抱していた。
- 石嶺 泰三(いしみね たいぞう)
- 声 - 宝亀克寿
- 運搬担当の運送家。
- 世界中にあらゆるものを迅速に運ぶ「チーター運送」の中でも、特に絵画の運搬のプロとして知られている。
- 7人のサムライの中では地味な存在だが、次郎吉から絵画の運搬指揮能力を高く評価されており、運搬作業を迅速に行なって小五郎や中森警部も安堵していた。圭子や久美子から何か手伝うことはないかと尋ねられ、絵を運ぶ作業を任せるなど、サムライのメンバーもある程度は信用している様子。一方、運搬に関係者以外の者が関わるのを嫌がる強い猜疑心()の持ち主でもある。
- チャーリー(Charlie)
- 声 - 咲野俊介
- ニューヨーク市警察の警部。
- 当初はアメリカで警備を担当していたが、キッドを追って来日する。
- 厳格な性格で正義感も強く、キッド逮捕に執念を燃やし、キッドを「目的のためなら手段を選ばないテロリスト」と非難して園子から嫌われる。一方で、子供に対しては偏見を抱かず、コナンの洞察力や俊敏性を観察して、キッドキラーとしての能力を確信し、コナンの後を追う形でキッドを追い詰める。
- 拳銃の所持を禁止されている日本で、警察仲間のマークに秘密裏に銃を用意させ、コナンから「もしそれを使うなら『簡単に奪っても良い命なんてない』ってことを覚えておいてね」と諭されるが、「『理想』を追い求めていると、いつか『現実』に裏切られるぞ」と返答している。
芦屋のひまわり関係者
- ウメノ
- 声 - 沢田敏子(現在)、皆口裕子(少女時代)
- 損保ジャパン日本興亜美術館に展示されている『ひまわり』を毎日鑑賞している和服の老婦人。
- 『ひまわり』に対して特別な思い入れがあり、当該美術館の作品を見て「これじゃない」と呟いている。そこで、原口館長からレイクロックの特別展に彼女を招待してほしいと頼まれた次郎吉は快諾している。たまたま出会った灰原に対し、コナンのことについて「見ているだけじゃいつかきっと後悔する」と老練な女性らしいアドバイスを送っている。
- 東 淸助(あずま きよすけ)
- 声 - 大川透
- 東幸二の祖父。
- 芦屋の邸宅で大工として住込みで働いていたが、自らや絵画が第二次世界大戦の戦火に巻き込まれることになってしまい、GHQに回収される前に、屋敷にあった『ひまわり』を隠そうとして亡くなった。絵は無事に隠され、後にアルルで発見されたことがニュースとなり、広く知れ渡ることになる。
その他の人物
- 原口 秀夫(はらぐち ひでお)
- 声 - 柴田秀勝
- 損保ジャパン日本興亜美術館の館長。
- 怪盗キッドとの取引のために個室で1人待機するも、あまりの暑さから飲料水を大量に飲んだことで、コナンは、その量の減り具合で外との気圧差に気が付いた。その後、札束が飛び交う現場に突入してきたチャーリーから銃を向けられたため、自分はキッドじゃないと慌てて否定していた。
- 実在する館長・原口秀夫の協力を得てモチーフにし、氏名・肩書きもそのまま登場させたキャラクターである[注 16]。
- スペシャリスト
- 声 - 梅津秀行
- ニューヨークのオークション会場に現れた、怪盗キッドを阻止するために集結したスペシャリストの1人。しかし、キッドに煙球を使用され、逃走を許してしまう。
- オークショニア
- 声 - 三戸耕三
- ニューヨークでオークションの進行役を務めていた眼鏡の男性。
- 鈴木次郎吉が高額で『ひまわり』を競り落としたため、驚愕の表情を見せていた。
- 司会者
- 声 - 小田敏充
- ニューヨークの記者会見で、次郎吉が『ひまわり』を落札したと発表した眼鏡の男性。
- 次郎吉が「七人のサムライ」を招集した、という突然の発表に驚いていた。
- 機長
- 声 - 松本大
- 競り落とした『ひまわり』を日本へ輸送するため、特別にチャーターされた飛行機の機長。
- 飛行機が羽田空港に激突しそうになるが、寸前で激突は回避された。
- 副機長
- 声 - 鳥海勝美
- 同飛行機の副機長。
- 羽田空港に激突しそうな飛行機を無事に着陸させようと、機長と共に機体を立て直すのに尽力し、寸前で激突を回避した。
- アナウンサー
- 声 - むたあきこ、倉田雅世
- ビルの壁面モニターで流れていたテレビ番組内で、飛行機爆破事件の経緯について解説した。
- また、ゲストで来た次郎吉と園子に、インタビューをしていた。
- キャスト
- 声 - 知英[17][注 17]
- レイクロック美術館で開催される「日本に憧れたひまわり展」の受付係として、特別招待されたコナン一行を美術館内に迎え入れる。
スタッフ
音楽
主題歌
- ポルノグラフィティ「オー!リバル」[30]
- 作詞 - 新藤晴一 / 作曲 - 岡野昭仁 / 編曲 - tasuku、Porno Graffitti
- コナンとキッドとのライバル対決を描いた本作の主題歌として書き下ろした曲であるため、曲のタイトルにある「リバル」とはフランス語[注 18]やスペイン語で「好敵手(ライバル)」という意味である[31][32]。
サウンドトラック
収録曲
映像ソフト
- DVD - 2015年11月25日発売(初回限定特別盤・同日発売)[33]
- BD - 2015年11月25日発売(初回限定特別盤・同日発売)[34]
プロモーション
本作では「KID STEAL PROJECT」と題し、怪盗キッドが映画公式サイト上や各メディアでカードによる犯行声明を出して、現実世界から様々なモノを盗んでいくというプロジェクトが展開された。
本作の題材である焼失したゴッホの「ひまわり」は、徳島県鳴門市の大塚国際美術館に再現展示されている。地元映画館の北島シネマサンシャインとのコラボで、美術館入館券の半券を左記の映画館へ持っていくと、特製コナンシールが先着でもらえる[35]。
2015年3月1日に鳥取砂丘コナン空港誕生を記念して行われたオープニングセレモニーでは、式典の真っ最中に怪盗キッドが声と映像で登場。空港内に設置されていた超巨大トリックアートを狙っていたことが判明し、場内は一時騒然となった。しかし、目当ての獲物ではなかったことにより、すぐさま返却され無事お披露目となった[36][37]。
2015年3月18日発売の『週刊少年サンデー』16号では、「怪盗キッドが表紙のロゴを盗んだ」という設定のもと、同誌の歴史上初めて表紙にロゴを冠さず発売された[38][39]。
2015年3月20日に、「業火の向日葵」×「NO MORE 映画泥棒」のスペシャルバージョンが公開されることが発表された。限定CMは本作公開日から使用されている[40]。
2015年4月8日には、田辺誠一が本作のメインビジュアルを模写にて描き下ろした作品を発表した[41]。
2015年4月11日からはKIDDY LAND原宿店にて、「怪盗キッドが店名から『DY』を盗んだ」という設定のもと「KID LAND」として一時的に営業を行っていた。また同時に店内では「名探偵コナンフェア」が催された[42][43]。
2015年4月11日以降、公開記念特番「榮倉奈々が解くキッドからの挑戦状!」が各局で随時放送された[44][45]。
本作公開日である2015年4月18日には、阪神甲子園球場での阪神タイガース対読売ジャイアンツ5回戦の試合前、キッドによる始球式が行われた[46]。
興行成績
全国349スクリーンで公開され、2015年4月18日と翌19日の初日2日間で観客動員数68万8,623人、興行収入8億7,476万2,300円となり、これは最終興行収入41億1,000万円の前作『異次元の狙撃手』との初動興行収入の対比で110.8%に及び、興行通信社の調査による映画観客動員ランキングでは初登場第2位となった[47][48][49][50][51]。また、ぴあの調査による初日満足度ランキングでは満足度91.0ポイントを獲得し第4位となっている[52]。
公開7日目にはシリーズ最速で観客動員数100万人を突破した[53]。
公開19日目には累計観客動員数が282万9,564人、興行収入が35億1,509万5,400円となり、この時点で初日2日間の映画観客動員ランキングでは首位を譲った同日公開の映画『ドラゴンボールZ 復活の「F」』の観客動員数と興行収入をともに上回った[54][55][56][57]。
公開37日目の5月24日には累計興収41億4,838万9,300円を記録。2013年公開の『絶海の探偵』、2014年公開の『異次元の狙撃手』に続き、3年連続でシリーズ最高興収を更新した[58][59][60][61][62][63]。
公開7週目には更にコラボ作品『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』の最終興行収入42億6,000万円を抜く42億6,652万7,900円を記録し、コラボ作品まで含めての最高記録を達成した[64]。最終興収は配給発表で44億8,000万円に達した[2]。
テレビ放送
回数 |
番組名(放送枠名) |
放送形態 |
放送日 |
放送時間(JST) |
放送分数 |
平均世帯視聴率 |
備考
|
1
|
金曜ロードSHOW!
|
本編ノーカット
|
2016年4月15日
|
21:00-23:14
|
134分
|
10.5% [65]
|
『純黒の悪夢』の公開を記念し、「2週連続コナン祭り」[66]の第2弾として、20分拡大枠でエンディングをカットした本編ノーカット版が地上波初放送された[67][注 19]。
|
脚注
注釈
- ^ もともとカタカナ表記の作品の例としては、第5作『天国へのカウントダウン』と第16作『11人目のストライカー』がある。
- ^ ただし、そのほとんどはルパン三世による変装で、本人登場は冒頭に黒羽快斗としてとラストのみ(台詞は前者はモノローグ、後者はルパンより先に標的を頂いた際の置き手紙「お先に失礼」を読み上げるのみで登場はしていない)
- ^ コラボレーション作品の『ルパン三世VS名探偵コナン THE MOVIE』を含めると6作目である[注 2]。
- ^ 台詞があるのは回想で登場する青年時代の寺井のみ。
- ^ 原作では、File.674「鉄狸」 - File.676「解錠」(単行本64巻File.11 - 65巻File.2)。
- ^ ただし寺井黄之助の変装であり、本人は登場していない。
- ^ テレビアニメにおいては「怪盗キッドVS京極真(前編)」から。
- ^ 富田が次郎吉を担当していた時期の劇場版第23作『紺青の拳』でも、園子が恋人の京極真のために次郎吉と電話で会話するシーンはあるが、描写上はスマホで次郎吉と話している園子の姿と台詞のみで、相手の次郎吉の姿や声は描かれておらず未登場な形となっている。
- ^ その後、テレビアニメから佐藤正治が引き継いだ[11]。
- ^ その後、第23作『紺青の拳』からは石井康嗣が引き継いだ。
- ^ 怪盗キッドが工藤新一より、中森警部が目暮警部より先など。なお、犯人役が最後に来るのは例年通りである。
- ^ 同作の犯人は、俳優の福士蒼汰が演じたケビン・ヨシノ
- ^ 映画本編では簡略化された、犯人が犯行を決意した動機が詳細に描かれている。
- ^ 声優のクレジット表記が無い。
- ^ 本作は普段の姿での台詞は無く、セリフは青年時代の声と変装時の声のみ。なお、普段の姿での声はテレビアニメにおける初登場となった「名探偵コナン」第219話で肝付兼太が演じ、同じく第356話でヘリパイロットに扮した時は秋元羊介が演じ、「まじっく快斗」では矢田耕司に交代となり、本作公開直前に放送された「まじっく快斗1412」から羽佐間道夫が担当している。ちなみに、青年時代とはいえ、コナンの映画作品で寺井が台詞ありで登場するのは、2022年現在、本作品のみである(寺井の協力を示唆する場面がなどは、他の作品にも存在している)。
- ^ このような事例は、それまでの原作・テレビアニメ・劇場版など歴代の『名探偵コナン』作品を通して、著名な各業界の関係者には稀に同様の協力を得た登場ケースもあるが、民間人では初となる。
- ^ 前作の赤星憲広と同様に途中参加の特別応援団として本作に参加している。
- ^ ゴッホが居住し、『ひまわり』を描いたアルルはフランスに所在する。
- ^ その前週の4月8日には第1作『時計じかけの摩天楼』が放送された[68]。
出典
関連項目
外部リンク
|
---|
テレビアニメ |
---|
1960年代 1970年代 | | |
---|
1980年代 | |
---|
1990年代 | |
---|
2000年代 | |
---|
2010年代 | |
---|
2020年代 | |
---|
特別番組 |
|
---|
|
|
劇場アニメ |
---|
1970年代 |
| |
---|
1980年代 |
|
---|
1990年代 |
|
---|
2000年代 |
|
---|
2010年代 | |
---|
2020年代 | |
---|
|
|
OVA |
---|
1980年代 |
| |
---|
1990年代 | |
---|
2000年代 | |
---|
2010年代 | |
---|
2020年代 | |
---|
|
|
|
|
カテゴリ |