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サイケデリック・ロック (英 : Psychedelic rock )は、1960年代 後半に発生し流行したロック音楽 の派生ジャンル。主に、LSD などのドラッグ による幻覚 を、ロックとして再現した音楽のことを指す。
概要
最初にレコード として登場したのは1966年 とされる。アメリカ合衆国西海岸 に始まったサイケデリック・ムーブメント は、1967年に世界中を席巻した。1966年から1967年初めにかけて発売されたサイケデリック・ミュージック ないしサイケデリック・ロックのレコードの一覧は以下のとおり。
1966年
1967年
多くのアーティストたちがこのジャンルの楽曲を作った。グレイトフル・デッド [ 11] 、ジェファーソン・エアプレイン、クイックシルヴァー・メッセンジャー・サーヴィス [ 12] 。などが有名である。また英国ではプログレッシブ・ロック の代表的なバンドとしてUFOクラブなどでライブ活動したピンク・フロイド も、シド・バレット が在籍していた初期はアンダーグラウンドのサイケデリック・ロック・バンドだった。前述の「ホワイト・ラビット 」は、ロック評論家からはサイケ・ロックの典型と見做された[ 13] 。録音エンジニアとプロデューサーを務めるデヴィッド・ハッシンジャー (David Hassinger)は、ジェファーソン・エアプレインのセカンド・アルバム『シュールリアリスティック・ピロー 』や、1967年に担当したエレクトリック・プルーンズ (The Electric Prunes)の初期2枚のアルバムの収録時に目新しい機材である電子エコー、ジェットマシーン・エフェクター 等を持ち込み、実験音楽 手法からアレンジを行っている。既に人気ロック・バンドの地位を確立していたビートルズも、『リボルバー』[ 14] 、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド 』[ 15] 、『マジカル・ミステリー・ツアー 』、『イエロー・サブマリン 』でこのジャンルを代表する作品を作り、またローリング・ストーンズ も『サタニック・マジェスティーズ 』で同様の仕事をした[ 16] 。
現代美術 の世界では、フルクサス やアンディ・ウォーホル [ ※ 1] らによって、極彩色模様のスライド映写やライト・ショーなどがすでに行われ、サイケデリック・ロックのアーティストたちはこれを応用して取り入れている。ヒッピー 文化からのサイケ・ファッション、作家ケン・キージー の「アシッド・テスト 」などとの相互影響も大きかった。
ビートルズの「トゥモロー・ネバー・ノウズ 」などの楽曲は、テープレコーダーのマルチチャンネル化によりはじめて可能となった音楽である。電気楽器を主とした実験音楽と共鳴し、現代音楽 、前衛音楽 を巻き込み、大衆のポップミュージックに於いても大きな影響を与えた[ 17] 。
1956年からインドの古典音楽を西洋にもたらす活動を始めたシタール の名手ラヴィ・シャンカル はジャズミュージシャン等にインスピレーションを与え、1960年代半ばには若いロックミュージシャンの世代にも影響が及んだ。ビートルズによる1965年『ラバー・ソウル 』の「ノルウェーの森 」からシタールが広く知られるようになり、そのほかの民族楽器も用いられるようになった。
ステージではジャズのフリー・インプロヴィゼーション (即興演奏 )に影響され、ブルース 楽曲などを長々と演奏することが多かった。これはバーズやジェファーソン・エアプレインなどがフォークロック ・バンドで、そのメンバー達はフォーク・リヴァイヴァル に由来があり、歌詞に反戦運動など政治的メッセージが含まれることもあった。ステージ演奏で生まれた幻想的なアレンジをスタジオ録音で再現する試みの大半は失敗に終わったが、この錯誤は録音技術への挑戦とエフェクター の進化発展に大きく貢献した。おもに編曲(楽曲アレンジ)で斬新なアイデアを曲に取り入れたサイケデリック・ロックは、ハードロックとプログレッシブ・ロック のルーツの一つになった。
同時代東洋思想に共鳴した現代詩人アレン・ギンズバーグ [ ※ 2] ら文学者の音楽活動、ボブ・ディラン の詩、ビートルズが一時信奉した東洋思想や文学の影響を受けた、サイケデリック・ロックやアシッド・フォーク・ミュージシャンも現れた。
1980年代初期にはニュー・ウェイヴ からネオ・サイケデリック (Neo-Psychedelic)と呼ばれるバンド群が現れる。ドラッグの追体験ではなく、かつてのサイケデリック・ロックに影響され、このアレンジ表現をおもに幻想的な楽曲に取り入れた。ネオ・サイケにはザ・キュアー 、エコー&ザ・バニーメン 、ドリーム・シンジケート 、レイン・パレード の他に、初期U2 も含まれることがある。これ以降ファズ・ギターで演奏するもの、幽玄なアレンジで瞑想音楽的なものにたいして「サイケデリック・ロック」や「サイケデリック・ミュージック」といった呼称を用いる傾向が出てきた。
以降、ロックでのヘンドリックスのリードに続いて、サイケデリアはアフリカ系アメリカ人ミュージシャン、特にモータウン ・レーベルのスターに影響を与え始めた[ 18] 。このサイケデリック・ソウルは公民権運動 の影響を受けており、多くのサイケデリック・ロックよりも暗くて政治的な優位性を与えているが[ 18] 、ジェームス・ブラウン のファンク ・サウンドに基づいて、1968年ごろからスライ&ザ・ファミリー・ストーン [ ※ 3] やテンプテーションズ によって開拓された。彼らに続いてこのジャンルに参入したミュージシャンにはエドウィン・スター やアンディスピューテッド・トゥルースらがいる[ 18] 。ジョージ・クリントン によるファンカデリック とパーラメント らのアンサンブルは、1970年代後半には多くのファンク・バンドに影響を与えた[ 19] 。以降米国では40曲以上のシングルが発表(この内トップ10のヒットが3曲)され、アルバムでは3作がプラチナ・アルバム を記録した。サイケデリックロックは1960年代の終わりには流行に陰りが見え始めるがサイケデリックソウルは1970年代まで続き、1970年代初期に人気がピークに達し、1970年代後半にテイストが変化し始めて消滅した[ 21] 。サイケデリックなソウル・アーティストのテンプテーションズ、スライ&ザ・ファミリー・ストーンはファンクサウンドの曲を発表したが、1970年代後半にはファンクは失速気味になり、最終的にディスコ サウンドに取ってかわられてしまった[ 22] 。
サイケデリアを受け入れていた英国のミュージシャンやバンドの多くは、ピンク・フロイド、ソフト・マシーン 、イエス のメンバーなど、1970年代にプログレッシブ・ロックを生み出す。キング・クリムゾン のアルバム『クリムゾン・キングの宮殿 』(1969年)は、サイケデリアとプログレッシブ・ロックの重要なリンクと見なされている。ホークウインド などのバンドは1970年代までにサイケデリックでスペーシーな世界を維持していたが、後にサイケデリックな要素を失っていった。またソフト・マシーンやニュークリアス のようなバンドはロックにジャズを組み込み、コロシアム とともにジャズ・ロック の発展に貢献した[ 25] 。彼らがサイケデリックのルーツから離れたのと同様に、電子音楽実験に重点を置いたドイツのバンドのクラフトワーク 、タンジェリン・ドリーム 、カン 、ファウスト らの独特のプログレ音楽はエレクトロニック・ロック として知られ、英国のマスコミからはクラウトロック などと呼ばれた[ 26] 。1970年からポポル・ヴー によって開拓された電子シンセサイザー の採用は、ブライアン・イーノ [ ※ 4] のような人物の作品とともに、その後の電子ロックに大きな影響を与えた。
歪んだギターサウンド、長尺のソロを備えたサイケデリック・ロックとブルース・ロックの融合はハードロック の誕生のもとになったと見なされた。初期の大音量で反復的なサイケデリック・ロックを登場させたアメリカのバンドには、アンボイ・デュークス やステッペンウルフ らが含まれていた。英国では、ヤードバーズ の元ギタリストであるジェフ・ベック とジミー・ペイジ はそれぞれ、ジェフ・ベック・グループ とレッド・ツェッペリン を結成した[ 29] 。ジェフ・ベックはベック・ボガート&アピスの方が、よりハードなアルバムを発表した。ハードロックの初期のバンドは、ブラック・サバス 、ディープ・パープル 、フリー 、ユーライア・ヒープ などで、当初はサイケデリック・ロックの影響を受けたバンドとしてスタートした[ 29] 。マーク・ボラン は、サイケデリック・フォークデュオ、ティラノザウルス・レックスをT・レックス と改名してグラムロック のスターになった。1971年から、デヴィッド・ボウイ は初期のサイケデリックな仕事から、ジギー・スターダスト やペルソナを開発し、プロのメイクアップ、マイム、パフォーマンスの要素を彼の音楽に取り入れた[ 31] 。
1970年代末のポストパンク 時代に登場したネオ・サイケデリアに手を出したバンドもあったが、主にオルタナティヴ・ロック やインディー・ロック バンドに影響を与えるネオサイケは1960年代のサイケデリック・ロックのアプローチを取り入れていた[ 32] 。1980年代初頭の米国では、ロサンゼルスに拠点を置くペイズリー・アンダーグラウンド運動に参加したドリーム・シンジケート、レインパレードなどが活動していた [ 33] 。1980年代後半に始まったジャム・バンド の動きは、グレイトフル・デッド の即興演奏とサイケデリックな音楽スタイルの影響を受けていた [ 34] [ 35] 。バーモントのバンド、 フィッシュ は1990年代にかなりの熱心なファンを作り、1995年のジェリー・ガルシア の死後、グレイトフル・デッドの「後継者」と評された [ 36] [ 37] 。
1990年代に登場したストーナーロック は、サイケデリック・ロックとドゥームメタル の要素を組み合わせたが、エレクトリック・ベース や、エフェクターをかけたエレクトリック・ギター を特徴とし[ 38] 、くぐもったボーカル、ローファイなプロダクション[ 39] はカリフォルニアのバンドであるカイアス [ 40] やスリープ [ 41] によって開拓された。
サイケデリックな音楽に焦点を当てた現代のフェスティバルには、2008年に設立されたテキサス州のオースティン・サイク・フェスト[ 42] とリバプール・サイク・フェストがある[ 43] 。
主なアーティスト
1960年代及び1970年代
1980年代以降
脚注
注釈
出典
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関連項目
外部リンク