『CRIMSON』(クリムゾン)は、日本の歌手中森明菜の10枚目のスタジオ・アルバム。このアルバムは1986年12月24日にワーナー・パイオニアよりリリースされた (LP: L-12650, CT: LKF-8150, CD: 32XL-190)。
背景
『CRIMSON』は、中森にとって前作『不思議』に続く1986年発表の2枚目となるスタジオ・アルバムで、前作からおよそ4か月振りとなる同年12月24日にLP (L-12650) とコンパクトカセット (LKF-8150) とCD (32XL-190) の3形態で同時発売された通算10枚目にあたるスタジオ・アルバムである[6][3][7]。本作も『不思議』と同様にシングル楽曲は収録していない[8][9][7]。このアルバムタイトルのCRIMSONとは「深紅の」という意味を表し、オリコンは「それはサンセットの焼けた海と空の色、それはしっとり濡れた口唇の色、アフター・ファイブのドレスの色。」とタイトルイメージを解説している[1]。
このアルバムでは、小林明子と竹内まりやからそれぞれ5曲提供を受けた[10][11]。これは女性作家陣による女性的な温かみや、優美さをテーマにしたいとのコンセプトにより、小林と竹内に楽曲提供を依頼したものであった[1]。ディレクターの藤倉克己は本作について、「20歳すぎの女性が誰でも経験しそうな物語という事を意識しています。」と説明し、ニューヨークあるいは日本では例えるならば東急東横線の地域で暮らすオフィスレディをイメージしていると述べた[1]。
このアルバムのレコーディングは、1986年7月より開始された[1]。このアルバムに収録されている楽曲のうち、10曲目として配置された「ミック・ジャガーに微笑みを」を除き、全曲で歌唱法を統一している[1]。「ミック・ジャガーに微笑みを」についてディレクターの藤倉は、アルバム全体の中でこの楽曲のみ肌合いの異なるもので、どのようにしてアルバムに取り入れるかを取り組んだ末にSE処理を施し、「明菜が自分の部屋にいるような設定にして、カセットの中から流れてくる曲という設定にしたんです。」と解説している[1]。この部屋のSEは実際に中森の部屋で録音されたものであった[1]。なお、この曲のオリジナルバージョンは、1993年11月10日にリリースされた企画アルバム『AKINA』(CD: WPCL-770〜773)に収録されている。
発売後の翌年の1987年7月11日からは、本作を引っ提げた全国コンサート・ツアー『A HUNDRED days』が開催された[12][8]。また、本作収録曲は音楽番組でも披露され、1987年2月からマンスリー出演したフジテレビ系音楽番組『夜のヒットスタジオDELUXE』の1987年2月18日のマンスリー3週目で「約束」を、同年4月29日放送の同番組で「OH NO, OH YES!」を、また、同年5月20日放送の同番組で「ミック・ジャガーに微笑みを」を披露した[13][8]。中森がワーナーを離籍した後も、1993年3月31日に放送された『夜のヒットスタジオ・リターンズスペシャル』で本作収録の「駅」を披露した[14][13][8]。この「駅」は、2002年12月発売の中森のセルフカバー・ベスト・アルバム『Akina Nakamori〜歌姫ダブル・ディケイド』にて新録している[8][15][16]。
昨今のシティポップ、アナログ盤ブームで本作は再評価されて人気盤となっており、アナログ盤はプレミア価格で取り引きされている。
批評
『CDジャーナル』は本作について、女性シンガーとして相当な存在となった中森の安定感と際どさにより、ゆとりを持ってロックやジャズをして織りなされた作風は、気取りのない華やかな「シティ・ポップス」であったと指摘し、肯定的な評価をした[10]。オリコンは、「ミックジャガーに微笑を」を除く全曲の中森の歌唱について、フェミニンなソフトさと表現すべきか、「力を抜いた囁きにも似た歌い方に終始している。」と指摘し、前作『不思議』ではヴォーカルを過度に絞られたミキシングであったが、『CRIMSON』では歌唱は前面に出ているものの、「捉えどころのない浮遊感は前作に引き続き全体に流れている。」と批評した[1]。
評価
『CRIMSON』は、オリコン週間LP&TAPESチャートの1987年1月12日付で初登場し最高順位1位を記録し、翌週の1987年1月19日でも1位を獲得した[6][3]。1987年1月12日付が2週分の合算週であったことにより、通算では3週連続となる1位を獲得した[3]。メディア別では、LP盤が計23週にわたりランクインし、カセット盤が計22週に渡りランクイン、CD盤が計21週に渡ってオリコンチャートの100位以内にランクインしている[3]。1987年度のオリコン年間アルバムチャートでは、3位を記録した。また本作は、1987年12月31日に行われた第29回日本レコード大賞にて優秀アルバム賞を受賞した[5]。
収録曲
# | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 時間 |
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1. | 「MIND GAME」 | 許瑛子 | 小林明子 | 鷺巣詩郎 | |
2. | 「駅」 | 竹内まりや | 竹内まりや | 椎名和夫 | |
3. | 「約束」 | 竹内まりや | 竹内まりや | 椎名和夫 | |
4. | 「ピンク・シャンパン」 | 三浦徳子 | 小林明子 | 鷺巣詩郎 | |
5. | 「OH NO, OH YES!」 | 竹内まりや | 竹内まりや | 椎名和夫 | |
6. | 「エキゾティカ」 | 湯川れい子 | 小林明子 | 鷺巣詩郎 | |
7. | 「モザイクの城」 | FUMIKO | 小林明子 | 鷺巣詩郎 | |
8. | 「JEALOUS CANDLE」 | 吉元由美 | 小林明子 | 鷺巣詩郎 | |
9. | 「赤のエナメル」 | 竹内まりや | 竹内まりや | 椎名和夫 | |
10. | 「ミック・ジャガーに微笑みを」 | 竹内まりや | 竹内まりや | 椎名和夫 | |
合計時間: | |
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クレジット
『CRIMSON』のライナー・ノーツより[8]
リリース履歴
発売日 |
レーベル |
規格 |
品番 |
備考
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1986年12月24日 |
ワーナー・パイオニア |
LP |
L-12650 |
|
CT |
LKF-8150 |
|
CD |
32XL-190 |
|
1991年7月17日 |
ワーナーミュージック・ジャパン |
WPCL-421 |
廉価盤、紙帯[17]
|
1996年4月25日 |
WPC6-8191 |
音泉1500シリーズ、Q盤[10]
|
2006年6月21日 |
CD、デジタル・ダウンロード |
WPCL-10287 |
紙ジャケット仕様完全生産限定盤[11][2]
|
2006年7月26日 |
デジタル・ダウンロード |
N/A |
[18]
|
2012年8月22日 |
SACD/CDハイブリッド |
WPCL-11145 |
紙ジャケット仕様完全生産限定盤[19]
|
2014年1月29日 |
CD |
WPCL-11731 |
廉価盤、赤帯
|
2018年7月4日 |
LP |
WPJL-10094 |
高音質180g重量盤、初回生産限定
|
2023年5月1日 |
CD |
WPCL-13476/7 |
オリジナル・カラオケ付、2023ラッカーマスターサウンド
|
2023年8月5日 |
LP |
WPJL-10186 |
LPカラー盤(白)
|
WPJL-10187/8 |
高音質45回転、2LPカラー盤(赤&青)、ボーナス・トラック付
|
竹内まりやのセルフカバー
本作に楽曲提供した竹内まりやは、「駅」「OH NO, OH YES!」をセルフカバーし、共に1987年のアルバム『REQUEST』に収録している。また、前者は同年に「AFTER YEARS」とのカップリングでシングルカットしており[20]、後者は翌1988年のシングル「元気を出して」(これもセルフカバー)のB面に収録している。
「約束」のセルフカバーは、1994年にシングル「純愛ラプソディ」のカップリングとして収録された。後に『Denim』の初回限定盤と、ベスト・アルバム『Turntable』にも収録された。
なお、アルバム『Mariya's Songbook』の初回限定盤に、「ミック・ジャガーに微笑みを」の竹内によるデモ音源が収録されている。また、アルバム『VARIETY -30th Anniversary Edition-』のボーナストラックに「赤のエナメル」の竹内自身によるリズム隊と仮歌のみのテイクが収録されている。
これにより、提供全曲は、竹内まりやの作品内ですべてセルフカヴァー(一部オリジナル)で聴くことができる。
参照
外部リンク
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作品 · 公演 · 出演 · 受賞 |
シングル | |
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アルバム |
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スタジオ・アルバム | |
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カバー・アルバム | |
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EP | |
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ベスト・アルバム |
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ライブ・アルバム | |
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ボックス・セット | |
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ミュージック・ビデオ | |
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ライブ・ビデオ | |
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参加作品 | |
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カテゴリ |
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コンサート・ツアー | |
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単発コンサート | |
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関連記事 | |
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オリコン週間LPチャート第1位(1987年1月12日{合算週: 2週分} - 1月26日付、4週連続) オリコン週間LP&TAPESチャート第1位(1987年1月12日{合算週: 2週分} - 1月19日付、3週連続) |
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オリコン週間LP&TAPESチャート第1位(1987年) |
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