バスにおける系統番号(けいとうばんごう)英語BusToplaceableSystem numberとは、バスの運行系統の案内上の区別のために付番されている番号である。バス事業者によっては行先番号/Destination number・路線番号/Route numberとも称する(詳細は「系統番号の呼称」節参照)。方向幕に経由地・行き先とともに併記し、バス停留所や車内、公式サイト等に掲示されている時刻表や路線図などにも記載することで、案内上の補助として使用する。
数字(番号)を使用せず英字などを用いる場合もあるが、本項ではそれらのケースについても記述する。
バスの運行においては、物理的ないし法的にバス車両が通行可能である限り、起点・経由地・終点を柔軟に設定することが可能で、そのため多数の経路パターンを設定することが可能である(鉄道には、線路上のみしか走行できないという制約があるため、経路の設定が限定されているのと対照的である)。こうしたバスの経路のパターンは、運行系統と呼ばれる。似た経路の運行系統を束ねたものを路線と言う。系統番号は、こうした運行系統ごとに番号を付することにより、利用者等に対する案内を簡明にするとともに、バス事業者における運行管理の容易化をも図るために設定されたものである。
仮に、運行系統(路線数)が多数あるにもかかわらず系統番号を付さないとすると、各々の運行系統を識別できるようにするために、バス車両の前面・側面などの方向幕にて、詳細に経由地を記載せねばならなくなる。こうした方法では、方向幕に多くの情報を記載せざるをえず、その文字数の多さから視認性に問題を生じたり、情報過多を招くことになる。
逆に、路線数が少なかったり、比較的分かりやすい路線網であれば、案内上でも行き先や経由地などで十分対応可能なため、系統番号を使用しないことがある。「系統番号を導入しない事業者」節を参照。
なお、複数事業者間でで同一区間に類似系統番号名を用いる例もある[1]。
全社的に系統番号を整備したのは、1949年11月の横浜市交通局が最初とされている[2]。以後、他社にも波及しているが、付番方法は事業者によって異なる。多くの事業者が乗り入れる地区では、事業者間で調整の上、付番法則を統一する例もある(後述の東京バス協会の例や、沖縄本島のバス路線など)。
数字(1〜3桁)のみで系統番号を表記するもので、日本以外でも、都市部のバスでは世界で一般的な方法である。
数字(アラビア数字)は万国共通であるため、案内が容易であるのが長所である。
反面、経由地などその系統固有の情報が読み取れないため、路線数が多くなってきた場合、0〜20番台は北方面、30〜40番台は南方面というように工夫を行っている場合がある。一例を挙げると、京阪宇治交通(会社解散)では1974年9月16日改正で系統番号を付番するようになったが、0〜10番台はくずは地区路線、60番台は京田辺地区路線、80番台は宇治地区路線の内宇治川線で使用するなどの原則を設けていた[3]。同社と合併した京阪バスや合併前に分社化した京阪宇治バス→京都京阪バスでも同原則をほぼ継承している。同様に、遠州鉄道では10の位に関しては方面別に時計回りに付番している。また、異なる地区の路線で、案内上支障がないと判断された場合は、同一事業者であっても同じ番号を使用することもある(神姫バス・遠鉄バスなど)。
数字の桁数については、統一する場合とそうでない場合がある。例えば東京都内の場合、2桁で統一されている(「1」は存在せず「01」と表記する)が、それ以外の地区では頭に0をつけないで「1」と表記する例もある。これは以下に述べる、数字のみでない場合も同様である。
また、系統番号というよりは行先番号という扱いで、行きと帰りで番号が異なる場合(アルピコ交通やことでんバス、岐阜乗合自動車の全て、福島交通や関東自動車・高槻市交通部・岡山電気軌道・長崎自動車の大半や近鉄バス・しずてつジャストラインの一部など)もある他、ターミナルを越えて別の系統に入るという意味合いでターミナル付近で番号が変わる場合(遠鉄バスの浜松駅通過系統など)、郊外から都心に乗り入れる路線が多数ある区間で、案内を簡略化するために、都心部で系統番号を統一したものとする例(西鉄バスの福岡市・久留米市中心部など)もある。
系統頭文字記号などを番号の前に配する方法である。
頭文字記号によって区別されるため、数字部分が同じであっても複数の系統に設定することが可能である。反面、頭文字記号にローマ字以外の文字を使用した場合、外国人の利用者への案内が困難、日本人でも漢字地名の読みが分からない可能性がある(ローマ字併記である程度は解消可能)。
東京バス協会では、1972年に島嶼部を除く東京都内の全バス路線について、事業者にかかわらず共通の付番法則を使用した系統番号の設定を行った際に、原則として系統頭文字記号と数字2桁(一部、不足する場合は3桁)という方法に統一されており、おおむね踏襲されている。また、都内乗り入れ事業者が都内以外の地区で系統番号を設定する際にもこの付番法則に準拠する場合が多い。ただしこれは強制力のあるものではない。
都内乗り入れ以外の周辺各県では必ずしもこの系統番号方式を使っているわけではなく、横浜市営バスのように数字のみとしていたり、京成バスのように2000年代後半まで都内関連路線以外には系統番号を記載していなかった例もある。
系統番号の頭文字記号は、東京駅なら「東」・横浜駅なら「横」と、おおむね起点となる駅やバスターミナルの頭文字(大抵漢字を使用)を使用することが一般的である。頭文字1文字では対応できない場合、頭文字以外の文字を使用したり(新宿駅で「宿」)、2文字以上とすることもある(新小岩駅が「新小」、ひばりヶ丘駅が「ひばり」、東京都庁ではCity Hallから「C・H」など)。また、番号が重複してしまう可能性がある場合や、方面ごとの案内を行う必要がある場合は、主要な運行街道名や主要な経由地の停留所名(都営バスでレインボーブリッジから「虹」、西東京バスで国道16号の「16号」や左入の「左」など[注釈 1]を使用することもある。相鉄バスでは路線の担当営業所を頭文字(浜、旭、綾)として使用しているほか、都営バスのように、都市新バス「都」、学バス「学」、深夜バス「深夜」といった路線の性格を示した文字を入れるものもある。
なお、都営バス等の高田馬場駅、関東バス等の高円寺駅、京王電鉄バスの高幡不動駅及び高尾駅、神奈川中央交通の高座渋谷駅は全て頭文字が「高」であるが、いずれも距離が離れており、このように案内上大きな支障がないと判断された場合は、同じ系統頭文字記号を重複使用するケースもある[注釈 2]。また、青梅駅では西東京バスが「青」、都営バスが「梅」を使用しており統一されていない。
また、東京バス協会式の系統番号の表示方法自体はほぼ統一して導入されたものの、その読みは事業者や営業所によって異なり、系統番号の表示をそのまま読む事業者(都営バスなど)と、系統番号頭文字の由来となった地名を読む事業者(神奈川中央交通、東急バスなど)がある。例えば東京駅発着の「東98」系統であれば、前者(都営バス)[注釈 3]は「ひがし、きゅうじゅうはち」と読むのに対し、後者(東急バス)は「とうきょう、きゅうじゅうはち」と読む。
路線に対する系統番号の振り方は各事業者の考え方によって異なっており、途中折返や若干の経由地の違い、関連路線などに同一の系統番号や枝番(甲・乙・丙・丁、折返し、-2など。詳細は後述)を振ってまとめる事業者(都営バス、小田急バスなど)と、途中折返などの全てに別の系統番号を振る事業者(神奈川中央交通など)も存在するため、同じ東京バス協会式とは言えども、付番法則の全てが完全に統一されている訳ではない。
一部事業者では、頭文字がある系統とない系統が並存する場合もある。
名古屋市営バスは、頭文字は2文字としている(元々駅名が1文字の栄・原、および例外で3文字の志段味は除く)。その上で幹線系統は先頭に「幹」を付けた上で1から、一般系統は11から付番している。頭文字は「曽根」(大曽根駅)、「小田」(上小田井駅)など駅名の先頭以外を取ったものや、「春田」・「有松」など名古屋市営地下鉄以外の駅名や地名から取られたものも存在する。なお、基幹バス・深夜バスなどは、別に付番している。現在[いつ?]のような系統番号を採用したのは1998年で、それまでは数字のみのものであった。
京都市営バスではブロック系統路線について「北」・「西」・「南」の頭文字が付いている[注釈 4]ほか、原谷線では「M」(マイクロバスの意)を記号として使用している。
とさでん交通[注釈 5]および県交北部交通は、2014年10月より系統番号制度を導入した[5]。同社では大多数のバスが、始発停留所からはりまや橋を経由し終点まで向かっており、はりまや橋を基準に大きく23のルートが存在している。それぞれのルートに英字1文字(I・O・Qを除いたA〜Z)を、更に終点停留所や経由地毎に数字1文字を振り分けることで、はりまや橋からの系統を「A1」や「K3」のように示している。先述の通りはりまや橋は経由地に過ぎず、バスははりまや橋までに辿りつくまでのルートと、はりまや橋を通過してからのルートの2つのルートを使って運行しているため、時刻表や方向幕では「D1‣K3」のように表記し、どういう経路を通ってどこに行くのかを明示している。なおはりまや橋を経由しないバスについては、英文字部分を始発停留所の文字からとった「ご」(後免町)、「な」(長浜営業所)などで表記し分別している。
とさでん交通に類似した方式として、遠鉄バスの浜松駅や磐田駅を経由する系統では駅を境として系統番号が別れており、例えば掛塚さなる台線であれば掛塚方面が「90」・「92」・「93」・「94」(現在[いつ?]廃止)・「96」・「97」でさなる台方面が「9」といった具合である。始発地側では始発側の系統番号が表示され駅の少し手前(路線によりおおむね駅の1〜4つ程度前)の停留所で系統番号が変更される(前述の掛塚さなる台線のさなる台方面→掛塚方面であればさなる台地区では「9」で浜松駅周辺より「90」・「92」・「93」・「94」・「96」・「97」となる)。ただし蒲小沢渡線と磐田市立病院福田線は行先番号方式を採用しており、始発地での時点から終点側の系統番号が表示される(例えば「31」・「32」・「33」磐田市立病院方面→「10」福田方面の場合磐田市立病院側の始発地から「10」の表示)。なお、磐田山の手線(現在[いつ?]は浜松駅を境に中ノ町磐田線と山の手医大線に路線分割)は浜松駅を境に山の手方面が「50」、磐田方面が「80」となっており、磐田駅をまたいで運行されるが磐田駅での系統番号の変更はない。かつては多数の路線で終日このように駅をまたいで系統番号が変更されて運行されていたが、現在[いつ?]はほとんどの便が駅折り返しに系統分割されており、駅をまたいで系統番号が変更される運行はラッシュ時間帯などの一部に残る程度である。
番号ではなく記号のみで区別する方法である。ローマ字は多くの国で使用されるため外国人対応が容易であり、日本以外の国でも採用例がある。
箱根登山バス・伊豆箱根バス・小田急箱根高速バス・沼津登山東海バスの4社では、2010年6月15日から箱根地区の路線に各社共通の系統記号を設定した上で車両に掲出し、路線図も各社共通の様式で作成した上で各停留所や案内所で掲出している[6]。
類似路線で系統番号を分けるほどの必要性がない場合や、番号だけでなく視覚的に方向の区別を案内する場合などに、系統番号の字の色や方向幕の地色を変えて表記することがある。系統番号を使用していない場合でも、色分けによる方法を用いている事業者はある。
事業者によっては、同じ番号内で区間便や、経路違い、末端で分かれるなどの区別を枝番を付けるなどの方法で対応する。
代表的なのは「22-1」「22-2」系統といったように、ハイフン付の数字を付けるものであるが、大阪シティバスなどで見られる「88A」「37A」号系統や西鉄バスで見られる行先番号「29N」「72C」番のようにアルファベットを付けるもの、西日本鉄道で「3-3N」番の様に枝番+アルファベットで表すもの、都営バスのように「甲・乙・丙・丁・折返・急行」などで区別するもの(錦13のように"甲・乙"を表示しない場合がある他、内部的に甲1・甲2のように更に細分化される場合がある)、京都市営バスのようにアルファベット・甲乙丙・「臨」「特」を付けるものなどもある。一方で、枝番を付けずに異なる番号にする場合や、枝番に相当する系統が便数が少なかったり、出入庫系統のときは番号なしにする場合も存在する。
遠鉄バスでは、8-33の様な系統がいくつか存在するが、これは8の33番目の枝番という意味ではなく、33の路線を市街地側で8の路線の経路に変更し、8の経路→33の行先、という意味合いで8-33とされている。なお、これらの系統は逆方向では市街地側の番号(この例では「8」)のみとなる。同社にはテクノ系統の頭を取った「46-テ」という系統も存在する。
熊本都市圏のバス各社(九州産交バス、産交バス、熊本電気鉄道、熊本バス、熊本都市バス)では、「M6-1」のように枝番を設けている。アルファベットは方角などによって振り分けられ、数字は主要経由地を、枝番で行先や主要経由地以降に通過する分岐を示している[9]。
上記のように事業者によって異なったり、インバウンド対応を進めるに当たり、日本国外からの利用者にも分かりやすくする必要性が出てきたことから、国土交通省は「乗合バスの運行系統のナンバリング等に関するガイドライン」を2018年に取りまとめた。ガイドラインは強制ではないが、新規採番や番号の改変の際には、準拠することが推奨されている[10]。
ガイドラインを要約すると、以下のようになる。
地方部を中心に、系統番号を導入していない事業者も存在する。ここでは小規模のバス事業者を割愛する。
前述のとおり、国のガイドラインに従う形で系統番号も2010年以降系統番号を導入する例が増え、中国地方の岡山県や広島県で多く導入された。
ヨーロッパのナンシー(フランス)、ストラスブール(フランス)、バーゼル(スイス)、チューリッヒ(スイス)、エジンバラ(イギリス)などの都市では、トラム・バスは乗車前にチケットを購入する方式がとられている[13]。そのため、停留所には自動券売機が設置されており、都心部では路線がわかりやすいように系統番号、行き先、到着までの時間などを表示する表示板が整備されている[13]。
ウィーンでは複数のバス会社が運輸連合(VOR)の下に路面電車や地下鉄と一緒の共通運賃制度をとっており、路面電車とバスのホームの共通化も進んでいる[1]。そのため系統番号も交通モードごとに地下鉄はU何番、バスは数字+末尾がAあるいはB、末尾のA、B無しは路面電車のように英文字で区別できるようになっている[1]。
ロンドンの市内バスマップ「Central London」(2006年6月版)は概要版マップとなっており全体は大まかな図で系統番号を並べているだけで、自分の乗る方向のバス停位置は各バス停に掲出されている拡大マップを見てもらう二段階の案内になっており、バスマップの見易さを保つと同時に事業者が路線変更時にもバスマップ改訂の手間を省けるようにしている[1]。
ソウルではソウル市政研究所が主体となり、バスを優先化する公共交通活性化の交通体系改編事業が実施され、複数バス事業者を準公営化する路線体系改編に合わせて、路線系統番号の振り方も最初の桁が出発地、次の桁が到着地の方位を表すよう1を北にして時計回りに8までの番号を振って統一した[1]。
この項目は、バスに関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(P:バス/PJバス)。
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