常盤 新平(ときわ しんぺい、1931年〈昭和6年〉3月1日 - 2013年〈平成25年〉1月22日)は、日本の作家・翻訳家・アメリカ文化研究者。別名に、大原寿人(おおはらとしひと)。
生い立ちと学歴
岩手県水沢市(現・奥州市)生まれ。母親は福島県の出身[1]。税務署員だった父親の転勤に伴って生後半年で水沢を離れ、山形県長井町、宮城県石巻市と転居した[2]。小学校時代に仙台市に落ち着き、高校卒業までを同地で過ごした[2]。宮城県仙台第二高等学校を経て、早稲田大学第一文学部英文科卒。同大学院修了。
経歴
編集者として
早川書房に入社。1961年には新雑誌「ホリディ」の編集長になるが1号のみの発行となる。都筑道夫、生島治郎の後任として、ミステリー小説誌 『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』(日本版)の三代目編集長を、1963年(昭和38年)から6年間務めた。ただし、常盤はミステリはそれほど好きではなかったので、デイモン・ラニアンやリング・ラードナーら、雑誌「ニューヨーカー」系のユーモア小説なども、よく掲載していた。また星新一のアメリカの一コマ漫画紹介エッセイ「進化した猿たち」を連載させた。
また、その間の1964年(昭和39年)には、海外の文学作品や、スパイ小説、冒険小説などを紹介するシリーズ「ハカヤワ・ノヴェルズ」を創刊し、その最初の作としてジョン・ル・カレの『寒い国から帰ってきたスパイ』を刊行。以降も話題作を紹介し、人気シリーズとした(現在は、大半の作品が「ハヤカワ文庫NV」に収録されている)。1969年(昭和44年)、『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』誌の編集長を各務三郎に譲り、その後は早川書房の「SF以外のすべての分野の編集局長」となるが、社内抗争のため、同年に退社した[3]。
作家、山口瞳を師とあおぎ、山口の著作からセレクトした本を刊行している。
文筆家として
早川書房を退社してフリーの文筆生活へ。アメリカの雑誌「ニューヨーカー」の黄金時代の作品や、20世紀の文学、ニュー・ジャーナリズムの作品を翻訳して日本に紹介する翻訳家、そしてアメリカの雑誌や人物を紹介するエッセイスト、さらに作家として知られるようになった。
1979年(昭和54年)から川本三郎、青山南とともに編集委員として『ハッピーエンド通信』を刊行。
1986年(昭和61年)には、アメリカにあこがれペーパーバックを読みあさり、翻訳の勉強にいそしむ大学院時代の自身を描いた自伝的小説、『遠いアメリカ』が、第96回直木賞を受賞した。
その他の活動
競馬好きとしても知られ、競馬についてのアンソロジーを編んでいる。さらに、将棋好きでもあり、将棋を愛する作家、ジャーナリスト、観戦記者たちの団体「将棋ペンクラブ」が与える賞、「将棋ペンクラブ大賞」の選考委員を1996年から2005年までつとめた。
1997年1月30日、藤岡信勝、西尾幹二らによって「新しい歴史教科書をつくる会」が設立されると[4][5]、各界著名人が賛意を表し、同年6月6日時点の賛同者は204人を数えた。常盤もその中に名を連ねた[6]。
私生活
一度の離婚を経て、再婚し[7]、東京都町田市つくし野に暮らした[7][8]。
2013年(平成25年)1月22日、肺炎のため東京都町田市の病院で死去[9]。81歳没。
著書
- 『名探偵ピンカートン』(岩崎書店) 1969
- 『アメリカ黄金時代 禁酒法とジャズ・エイジ』(新書館) 1972
- 『アメリカが見える窓』(冬樹社) 1979 のち徳間文庫
- 『はじまりはジャズ・エイジ』(講談社) 1979 のち講談社文庫
- 『アメリカの編集者たち』(集英社) 1980 のち新潮文庫
- 『マフィア経由アメリカ行』(冬樹社) 1980 のち徳間文庫
- 『ブックス&マガジンズ アメリカ出版界通信』(サイマル出版会) 1981
- 『アメリカンジャズエイジ』(集英社文庫) 1981
- 『雨あがりの街』(筑摩書房) 1981 のち文春文庫
- 『彼女のアメリカ』(新潮社) 1981
- 『コラムで読むアメリカ』(大和書房) 1981 のち旺文社文庫
- 『酒場の時代 1920年代のアメリカ風俗』(サントリー) 1981 のち文春文庫
- 『アメリカン・ベストセラーズ 常盤新平せれくと書評』(PHP研究所) 1982 のち旺文社文庫
- 『ニューヨーク五番街物語』(冬樹社) 1982 のち集英社文庫
- 『グラスの中の街』(筑摩書房) 1983
- 『グラスの中の街』(文藝春秋) 1987 のち文春文庫
- 『プロ野球遠めがね』(文藝春秋) 1983
- 『ニューヨーク紳士録』(弥生書房) 1983 のち講談社文庫
- 『ニューヨークの女たち』(大和文庫) 1984
- 『晴れた日のニューヨーク』(PHP研究所) 1984 のち旺文社文庫
- 『ベースボール・グラフィティ』(講談社) 1984 のち講談社文庫
- 『高説低聴 常盤新平インタビュー集』(講談社) 1984
- 『川明かりの街』(筑摩書房) 1986 のち文春文庫
- 『アメリカン・ゴシップnow』(講談社) 1986 のち『ザ・ニューヨーク・アイ・ラヴ』に改題(講談社文庫)
- 『アメリカン・マガジンの世紀』(筑摩書房) 1986
- 『遠いアメリカ』(講談社) 1986 のち講談社文庫、小学館
- 『キミと歩くマンハッタン』(講談社) 1988
- 『彼女の夕暮れの街』(実業之日本社) 1989
- 『そうではあるけれど、上を向いて』(講談社) 1989
- 『アメリカン・マガジンの女たち』(大和書房) 1989
- 『ニューヨークの女たち』(ダイワアート) 1989
- 『ニューヨーク知ったかぶり 魅惑の都市の読み解き方』(ダイヤモンド社) 1989
- 『罪人なる我等のために 長篇小説』(文藝春秋) 1989
- 『聖ルカ街、六月の雨』(講談社) 1989 のち講談社文庫
- 『ペイパーバック・ライフ』(新潮社) 1990
- 『マフィアの噺』(文藝春秋) 1990 のち文春文庫
- 『いつもハーシーの板チョコ』(実業之日本社) 1991
- 『恋貧乏』(東京書籍) 1991
- 『熱愛者』(祥伝社) 1991
- 『小さなアメリカ』(PHP研究所) 1991
- 『新緑の風にゆられて』(講談社) 1992
- 『旅する気分』(東京書籍) 1992
- 『うつむきながら、とぼとぼと』(読売新聞社) 1992
- 『片隅の人たち』(福武書店) 1992 のち中公文庫 2021
- 『ファーザーズ・イメージ』(毎日新聞社) 1992 のち講談社文庫
- 『熱い焙じ茶』(筑摩書房) 1993
- 『頬をつたう涙』(徳間書店) 1993 のち徳間文庫
- 『街の風景』(毎日新聞社) 1993
- 『親父橋の町』(双葉社) 1993
- 『熱愛者ふたたび』(祥伝社) 1993
- 『門灯が眼ににじむ』(作品社) 1993
- 『夕空晴れて』(TBSブリタニカ) 1994
- 『東京の小さな喫茶店』(世界文化社) 1994
- 『池波正太郎を読む』(潮出版社) 1994 のち『快読解読池波正太郎』に改題(小学館文庫)
- 『彼女の夕暮れの街』(講談社) 1994 のち講談社文庫
- 『雪の降る夜に』(東京書籍) 1995
- 『冬ごもり 東京平井物語』(祥伝社) 1996
- 『ニューヨーク遥かに』(集英社) 1996
- 『ベストパートナー 「夫婦」という名の他人』(講談社) 1996
- 『スコッチ街道』(白水社) 1997
- 『シチリア・地中海の風に吹かれて』(日本放送出版協会) 1997
- 『グレニッチ・ヴィレッジ物語』(翔泳社) 1997
- 『わさびの花』(実業之日本社) 1997
- 『光る風』(徳間書店) 1998
- 『ちょっと町へ あの町で通った店がある忘れることのできない人がいる…』(経済界) 1998
- 『森と湖の館 日光金谷ホテルの百二十年』(潮出版社) 1998
- 『姿子』(祥伝社) 1998
- 『おとなの流儀』(マガジンハウス) 1998
- 『「ニューヨーカー」の時代』(白水社) 1999
- 『天命を待ちながら』(大村書店) 1999
- 『風の姿』(講談社) 1999
- 『威張ってはいかんよ 新・おとなの流儀』(マガジンハウス) 2000
- 『窓の向うのアメリカ』(恒文社21) 2001
- 『山の上ホテル物語』(白水社) 2002 のちUブックス
- 『ニューヨークの古本屋』(白水社) 2004
- 『国立の先生 山口瞳を読もう』(柏艪舎) 2007
- 『私の好きな時代小説』(晶文社) 2008
- 『東京の小さな喫茶店・再訪』(リブロアルテ) 2008
- 『時代小説の江戸・東京を歩く』(日本経済新聞出版社) 2011
- 『銀座旅日記』(筑摩書房、ちくま文庫) 2011
- 『池波正太郎の東京・下町を歩く』(ベストセラーズ、ベスト新書) 2012
- 『たまかな暮し』(白水社) 2012
- 『池波正太郎の江戸東京を歩く』(ベストセラーズ、ベスト新書) 2012
- 『明日の友を数えれば』(幻戯書房) 2012.12
- 『私の「ニューヨーカー」グラフィティ』(幻戯書房) 2013.10
- 『東京の片隅』(幻戯書房) 2013.11
- 『いつもの旅先』(幻戯書房) 2014.1
- 『酒場の風景』(幻戯書房) 2016.4
- 『翻訳出版編集後記』(幻戯書房) 2016.6
編纂
- 『五分間ハード・ボイルド』(日本文芸社) 1965
- 『ニューヨーカー短篇集』1 - 3(早川書房) 1969
- 『マドモアゼル傑作集』(角川書店) 1970
- 『ヴェトナム以後のアメリカ ヘビー・ピープル123』(常盤新平・川本三郎・青山南共同編集、ニューミュージック・マガジン社) 1979
- 『アメリカ雑誌全カタログ』(常盤新平・川本三郎・青山南共同編集、冬樹社) 1980
- 『ニューヨーク読本』(福武文庫) 1986
- 『競馬を読もう』(福武文庫) 1990
- 『酒場』(作品社、日本の名随筆 別巻4) 1991
翻訳
脚注
外部リンク
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1930年代 - 1950年代(第1回 - 第42回) |
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1940年代 |
- 第11回 堤千代『小指』他/河内仙介『軍事郵便』
- 第12回 村上元三『上総風土記』他
- 第13回 木村荘十『雲南守備兵』
- 第14回 該当作品なし
- 第15回 該当作品なし
- 第16回 田岡典夫『強情いちご』他/神崎武雄『寛容』他
- 第17回 山本周五郎『日本婦道記』(受賞辞退)
- 第18回 森荘已池『山畠』『蛾と笹舟』
- 第19回 岡田誠三『ニューギニヤ山岳戦』
- 第20回 該当作品なし
- 第21回 富田常雄『面』『刺青』他
- 第22回 山田克郎『海の廃園』
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1960年代 - 1970年代(第43回 - 第82回) |
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1980年代 - 1990年代(第83回 - 第122回) |
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2000年代 - 2010年代(第123回 - 第162回) |
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2020年代 - 2030年代(第163回 - ) |
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