中京大学本源氏物語(ちゅうきょうだいがくほんげんじものがたり)とは、中京大学に所蔵されているために「中京大学本」と呼ばれる源氏物語の写本のこと。別本の本文を持つ5冊本源氏物語と河内本の本文を持つ「大島河内本源氏物語」とがある。
5冊本源氏物語
若菜上下、橋姫、総角、早蕨の5帖のみが現存し、別本の本文を持つ写本である。単に「中京大学本(源氏物語)」というときにはこちらの写本を指すことが多い[1][2]。この写本の本文は現在、天理大学天理図書館所蔵の「麦生本源氏物語」[3]及び「阿里莫本源氏物語」[4]に近く、青表紙本が主流となった室町時代末期から江戸時代以後に書写されたにもかかわらず、別本の本文を備えるという特異な写本のグループに属している。中でもこの内の一つ、「麦生本源氏物語」[注釈 1]と照らすと、中京大学本五冊のうち四冊は前者の一部を写した人物の筆跡と同一と見られるなどの点から、直接の書写か、または相前後して同一の本から書写された写本であると考えられている[要出典]。
翻刻
本写本単独での翻刻本は存在しないが、下記のように『中京大学図書館学紀要』に翻刻文が掲載されており、また『源氏物語別本集成』には校異が収録され、その本文を確認することができる。
河内本源氏物語
かつて三井合名会社理事の大島雅太郎[注釈 2]の旧蔵であった源氏物語の写本で、大島本の名称で知られ、『校異源氏物語』及び『源氏物語大成』に校異を収録し、河内本54冊の本文を備える[9][10]。この河内本の本文を持つ写本には、以下の呼称があり、これらも単に「中京大学本(源氏物語)」と呼ばれることがある[要出典]。
- 「大島河内本源氏物語」
- 「中京大学河内本源氏物語」
参考文献
本文の典拠。主な執筆者、編者の50音順。
- 伊藤鉄也 著、伊井春樹 編『源氏物語古写本における傍記異文の本行本文化について—天理図書館蔵麦生本「若紫」の場合—』 第3集、和泉書院〈古代中世文学研究論集〉、2001年、147-188頁。 ISBN 4-7576-0094-1。
- 岡嶌偉久子「中京大学図書館蔵『源氏物語』について -麦生本・阿里莫本との関係-」『中京大学図書館学紀要』第13号、1993年(平成5年)、28-44頁。
- 改版改題 岡嶌偉久子「第三章:中京大学図書館蔵源氏物語(五巻五冊本)―麦生本・阿里莫本との関係―」『源氏物語写本の書誌学的研究』おうふう、2010年(平成20年)5月、285-304頁。 ISBN 978-4-2730-3603-4
- 加藤洋介「中京大学図書館蔵 河内本源氏物語について」『中京大学図書館学紀要』第18号、1997年(平成9年)、10-19頁。
- 川瀬一馬「大島氏青谿書屋のこと」『書誌学』第29巻、日本書誌学会、東京、1982年4月、33-38頁、ISSN 0288-5905、CRID 1523106605550395776。
- 越野優子「阿里莫本源氏物語(天理大学附属天理図書館蔵)中の『雲隠六帖』について : 解題と若干の考察」『研究と資料』第85巻、研究と資料の会、2022年12月、1-9頁。
- 藤井日出子(著)、中京大学図書館(編)「若菜 上」『中京大学図書館学紀要』第20号、1999年3月、33-102頁、CRID 1520009410639292928。
- 藤井日出子(著)、中京大学図書館(編)「橋姫・早蕨」『中京大学図書館学紀要』第22号、中京大学図書館、2001年(平成13年)3月21日、1-46頁、NAID 110004645284。
- 藤井日出子(著)、中京大学国文学会(編)「源氏物語総角の巻の中京大本・阿里莫本の本文--匂宮・中の君像の造形をめぐって」『中京国文学』第21号、2002年(平成14年)、86-101頁。
- 藤井日出子(著)、中京大学図書館(編)「総角」『中京大学図書館学紀要』第23号、中京大学図書館、2002年(平成14年)5月31日、124-58頁、NAID 110004645745。
- 藤井日出子(著)、中京大学国際教養学部/中京大学国際教養学部論叢編集委員会(編)「右大臣と左大臣--中京大本・麦生本・阿里莫本における夕霧の官位表記をめぐって」『国際教養学部論叢』第2巻第1号(通号3号)、2009年(平成21年)、64-61頁。
脚注
注釈
- ^ 「麦生本源氏物語」の成立は、1546年(天文15年)か。
- ^ 大島雅太郎は「青谿書屋」(せいけいしょおく)と名づけたコレクションを築いた[8]。以下の資料を含む。
- 主題が源氏物語のもの
- その他
- 清少納言 詠『清少納言家集』(製作者不明、江戸時代初期)。文字資料(書写資料)、
- 源通具ほか 奉勅・編『新古今和歌集』上、下巻(山崎宗鑑 写、室町時代中期)。文字資料(書写資料)。
- 『とりかへはや物語』(製作者不明、製造年不明)。所蔵館1館
- 藤原惺窩 著『惺窩先生倭謌集』5巻(出版者不明、出版年不明)現存は2巻のみ。
- 同 著『惺窩文集』林道春、菅玄同 編。5巻、続3巻(出版者不明、序は1627年(寛永4年))。
- 巻第1-2、巻第3-5、続巻1-3。所蔵館1館
- 上田余斎阮秋 著『歌聖傳』([書写者不明]、[1---年])。文字資料(書写資料)。
- 南川維遷 著『閑散餘録』2巻(大森傳右衛門、西村平八ほか、1782年(天明2年))。所蔵館1館
- 北愼言 著『梅園日記』5巻(英大助ほか、出雲寺文次郎、秋田屋太右衛門 : 河内屋喜兵衛、1845年(弘化2年))。
出典
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