『源氏物語提要』(げんじものがたりていよう)は、今川範政による『源氏物語』の梗概書である。
概要
著者は今川範政(1364年-1433年)である。跋文に永享4年8月15日(1432年9月9日)の日付があるため、この時の成立であるとされているものの、8月15日という日付は実際の日付ではなく『源氏物語のおこり』などにみられる『源氏物語』の成立についての石山寺参詣伝説に基づく観念的な日付である可能性も指摘されている。最初に「発端」として『源氏物語』の成立事情について『源氏物語のおこり』等に見られる「選子内親王献上説」が記され、その後に各巻の梗概が記される。本文中の和歌は全て含まれ説明を加えられている。本書に含まれる注釈の内容には、時代的には本書より後の成立である一条兼良による『源氏物語』の注釈書である『花鳥余情』(1472年(文明4年)成立)と一致する説明が多い[1]。
伝本
本文は大きく流布本系統と異本系統とに分かれる。現存する伝本には6巻(稲賀敬二蔵本)のものや8巻のもの、10巻(天理図書館蔵本)のものなどがある。跋文によれば本書は全6巻であるとされているためこれが最も原形を保ったものだと考えられている。またこの「6」という巻数は『源氏物語』60巻説にもとづくものであると考えられている。
構成
最も原形を保つと考えられている6巻構成のものを記す。
翻刻
脚注
参考文献
- 稲賀敬二「注釈史から享受史へ-今川範政「源氏物語提要」の周辺」源氏物語探究会編『源氏物語の探究 第4輯』風間書房、1979年(昭和54年)4月。