飯山線
飯山線 (いいやません)は、長野県 長野市 の豊野駅 から新潟県 長岡市 の越後川口駅 に至る、東日本旅客鉄道 (JR東日本)の鉄道路線 (地方交通線 )である。
概要
長野県北信地方 と新潟県中越地方 南部を結ぶ鉄道で、長野県内では千曲川 に沿い、新潟県内に入ると千曲川から名を変えた信濃川 に沿って日本有数の豪雪地域 を通る。沿線には野沢温泉 などの温泉地 やスキー場 が多い。
路線のほとんどが谷沿いの山間部を通るため、主に夏季は大雨による土砂災害 、冬季は大雪による雪崩 や除雪 作業等によりしばしば運休することがある。森宮野原駅 は1945年 (昭和 20年)2月に駅における最高積雪量7 m 85 cmを記録し、それを示す標柱が駅構内に建つ。ディーゼル機関車 導入前の除雪は、キマロキ編成 (機(キ) 関車・マ ックレー車[ 注 1] ・ロ ータリー車・機 関車)、ロキキマロキ編成(ロータリー車・機関車・機関車・マックレー車・ロータリー車・機関車)という特殊編成 によって行われた。
一時は廃止路線リスト候補 に挙げられたこともある赤字ローカル線 であるが、ピーク時の一定方向の輸送量が1時間あたり1,000人を超すこと、冬季の代替道路未整備や、地元住民の利便性などにより廃線は免れている。
北陸新幹線 が途中の飯山駅 を経由するため、飯山線から直通運転 しているしなの鉄道北しなの線 長野駅 - 豊野駅間および飯山線の豊野駅 - 飯山駅間が同新幹線と並行している(選択乗車 は不可)。2015年 (平成 27年)3月14日の北陸新幹線開業後、JR東日本の信越本線 だった長野駅 - 豊野駅間はしなの鉄道 に経営が移管されたが[ 3] 、豊野駅 - 飯山駅間は並行在来線 の概念とは異なることから引き続きJR東日本が運行し、長野駅 - 豊野駅間はJR東日本がしなの鉄道から運行業務を受託する方式で直通運転を実施している[ 注 2] 。
ラインカラー は黄緑 。
路線データ
豊野駅 - 森宮野原駅間は長野支社 、足滝駅 - 越後川口駅間は新潟支社 の管轄である。支社境界 標は森宮野原駅 - 足滝駅間の長野・新潟両県境 付近に設けられている。
歴史
豊野駅 - 十日町駅 間は私鉄 の飯山鉄道 (いいやまてつどう)によって、十日町駅 - 越後川口駅間は国有鉄道十日町線 (とおかまちせん)として開業した。両線は1929年に繋がって全通し、1944年に飯山鉄道が戦時買収 により国有化され、十日町線を含めて飯山線となった。自動車営業が残された飯山鉄道は、1945年 にバス 事業を中越自動車 (ただし松代-津南間を結ぶ外丸線のみ頸城鉄道自動車 )、ハイヤー 事業を魚沼タクシーにそれぞれ譲渡し解散した[ 5] 。
飯山鉄道
地元の有志により発起された飯山鉄道は1917年に鉄道免許状が下付されたが、資本金 50万円に対して建設費や車両購入費などでおよそ135万円かかるとされ、市町村の寄付を見込んでも50万円が不足していた。鉄道院 監督局は不足分を借入金で賄うことに危惧していたという。ところが沿線の信濃川に流入する中津川 に水力発電所 を計画していた信越電力 (東京電燈 と鈴木商店 の共同出資のちに東京電燈に合併)がその建設資材の輸送手段として飯山鉄道を利用するために出資することになり、株式の大半を保有することとなった[ 7] 。そして電源開発のため延長することになり、資本金を300万円に増資した。1921年に豊野駅 - 飯山駅間が開通してからは発電所建設資材運搬のため下流の新潟県境へ延伸していくことになった。
輸送・収支実績
年度
輸送人員(人)
貨物量(トン)
営業収入(円)
営業費(円)
営業益金(円)
その他益金(円)
その他損金(円)
支払利子(円)
政府補助金(円)
1921
62,057
8,871
35,959
49,317
▲ 13,358
1922
258,832
63,327
199,470
161,331
38,139
1923
413,129
79,851
299,577
219,318
80,259
雑損5,712
84,737
106,051
1924
465,883
37,608
246,638
222,819
23,819
雑損54
61,612
245,725
1925
487,730
38,926
255,427
194,429
60,998
27,112
243,076
1926
447,275
48,447
280,464
275,139
5,325
7,619
345,640
1927
470,093
40,094
279,403
318,907
▲ 39,504
雑損5,390
36,824
347,789
1928
504,119
34,745
270,248
359,790
▲ 89,542
118,988
350,651
1929
550,755
37,574
299,509
335,200
▲ 35,691
雑損10,907
154,638
354,201
1930
496,082
30,286
242,235
327,571
▲ 85,336
雑損5,617
169,720
355,167
1931
407,618
30,366
221,140
254,871
▲ 33,731
雑損2,925
155,379
273,515
1932
382,504
42,170
206,379
206,665
▲ 286
雑損371
154,793
216,545
1933
417,071
38,538
213,526
225,324
▲ 11,798
雑損2,328
152,404
161,007
1934
462,998
45,994
228,767
198,674
30,093
雑損922
144,413
173,021
1935
445,603
49,460
227,550
197,070
30,480
自動車231
雑損償却金60,528
127,592
177,920
1936
509,736
69,507
297,164
227,974
69,190
自動車業3,527
雑損償却金147,373
106,325
186,158
1937
677,251
150,768
468,675
396,401
72,274
自動車業21,126
自動車業2,490雑損償却金149,485
91,041
153,019
『鉄道省鉄道統計資料』『鉄道統計資料』『鉄道統計』各年度版
十日町線
1927年(昭和2年)
6月15日 :越後川口駅 - 越後岩沢駅間を十日町線 として新規開業、内ケ巻駅・越後岩沢の各駅を新設[ 20] 。
11月15日 :越後岩沢駅 - 十日町駅間を延伸開業、下条・魚沼中条・十日町の各駅を新設[ 21] 。
飯山線(飯山鉄道買収後)
運行形態
かつては、優等列車 として急行「野沢」「うおの」 などが運転されていたが、現在は普通列車 のみの運転である。キハ110系 気動車の投入が完了した1997年10月から戸狩野沢温泉駅 - 越後川口駅間の全定期列車 と長野駅 - 戸狩野沢温泉駅間の一部列車(主に日中)でワンマン運転 を実施している。また、キハ110系投入以前と比べ、約10分ほどのスピードアップが実現した。
列車は、利用状況を踏まえて1 - 4両編成で運行されている。このうち長野駅 - 戸狩野沢温泉駅間では最低2両編成での運行がされており、朝時間帯のみであるが4両での運転もある。逆に、戸狩野沢温泉駅以東では1両編成での運行がほとんどで、前述の4両編成も戸狩野沢温泉駅で2両を切り離す。なお、特に車両の組み合わせは決まっておらず、2両編成の列車でもキハ111・112形 の2両が使われるとは限らない。また、後述の臨時快速「おいこっと」の運用がない日には、おいこっと用の車両が通常の普通列車に使用されることもある。
全区間通しで運行される列車のほか、途中の飯山駅・戸狩野沢温泉駅・森宮野原駅・十日町駅を始発・終着駅とする区間運転が設定されている。
飯山駅以西で運行される列車は、全列車が豊野駅から、しなの鉄道北しなの線を経由して長野駅 まで直通運転している。長野駅 - 戸狩野沢温泉駅間は主に平日は長野県内の長野市 - 中野市 ・飯山市 との間、または飯山市内やその周辺との間で通勤・通学輸送等を担う役割が、休日は沿線の観光地・温泉地への観光客の利用がそれぞれある。このため利用客が比較的多く、飯山線の主要区間となっており、運転本数も最も多く設定されているが、それでもほとんどの時間帯で1時間から1時間半に1本程度である。長野駅 - 飯山駅間の区間列車は2014年3月時点では設定されていなかったが[ 47] 、2015年3月14日のダイヤ改正で長野駅発12時台に[ 48] 、2017年3月4日のダイヤ改正で長野駅発21時台に[ 49] 、いずれも戸狩野沢温泉駅折り返し列車の短縮で設定された。
森宮野原駅以北の新潟県側は十日町駅でおおむね運行系統 が分離されており、十日町駅で北越急行ほくほく線、越後川口駅で上越線との接続を重視したダイヤが編成されているほか、1日2往復、上越線経由で信越本線の長岡駅 まで直通する列車が朝時間帯に運転されている。
戸狩野沢温泉駅 - 越後川口駅間は1 - 3時間に1本程度で、4時間ほど運行されない時間帯がある。
全区間通しまたは長野駅 - 十日町駅(一部森宮野原駅)間で運転される列車は途中の戸狩野沢温泉駅にて車両の増結・切り離しが行われる場合がある。
なお、冬季には、首都圏方面などからスキー 客向けの臨時列車 「シュプール号 」が戸狩野沢温泉駅まで運行されていたが、1995年3月の運転を最後に信越本線黒姫駅 からのバス連絡だけになっていた(シュプール号は2005年度を最後に廃止)。ただし現在でもスキーブーム 時と比較すると少ないものの、飯山線でのスキー客の利用はある。
2014年 5月2日 からは、越後川口側からの観光列車として高田駅 - 十日町駅間に臨時快速 「越乃Shu*Kura 」が主に金曜日から日曜日および祝日に[ 50] 、2015年 4月4日 からは、長野側からの観光列車として長野駅 - 十日町駅間に臨時快速「おいこっと 」が土休日を中心に1日1往復運転されている[ 51] 。2015年3月14日からは、北陸新幹線開業に合わせ「越乃Shu*Kura」を上越妙高駅 発着に変更した[ 52] 。
準急・急行「うおの」「野沢」
飯山線には現在では特急・急行といった優等列車が設定されていないが、過去には「うおの」「野沢」という準急列車 ・急行列車 が存在した。各列車の概要は下記の通りである。
準急・急行「うおの」
準急・急行「野沢」
車両
定期列車で運用される(またはされた)車両は以下の通り。ここで述べている車両は全て気動車 である。
現在
キハ110系は1997年10月1日のダイヤ改正前から一部列車で導入[ 32] 、同改正で全列車がキハ110系での運転となった[ 32] 。主に、1997年3月の秋田新幹線 開業直前まで走っていた特急「秋田リレー号 」用の300番台からの改造編入車が充てられており、蛍光灯にカバーがついていたり、座席交換や塗装変更の跡も残っていたりするなど、他線区のキハ110系とは細かい部分で異なる仕様が見られる。また導入当初、キハ110系の一部の車両に、一部または全座席が千曲川(信濃川)の見える東側(長野県側のほぼ全域と新潟県側の一部)に向けられた展望車両「ふるさと」があり[ 32] 、普通列車として運用されていたが、のちに従来のキハ110系と同じ座席に交換され、さらに2014年に「おいこっと 」へと再改造された。
過去の使用車両
1991年にキハ40系、キハ58系、キハ52形の各車両は「飯山線色」として青とアイボリーホワイトで塗装、正面と側面には橙・山吹色・黄の三色ストライプが入り、側面窓下には「VOITURE AMITIÉ」というフランス語 (「友情の列車」の意[ 54] )が大きく表記された。文字は1995年頃までに消されたが、塗り分けはキハ110系に置き換えられる1997年[ 32] まで存続した。
2017年3月末に、信州ディスティネーションキャンペーン の一環としてこの「飯山線色」塗装を「VOITURE AMITIÉ」の表記入りで復刻したキハ110系2両が登場した[ 55] [ 54] 。
飯山鉄道時代の車両
国鉄に引き継がれた車両は蒸気機関車 6両、内燃動車 7両、客車 7両、貨車 28両である。
車両数の変遷
年度
蒸気機関車
内燃動車
客車
貨車
有蓋車
無蓋車
1921
3
2
9
10
1922
3
4
9
10
1923
7
9
9
10
1924
7
9
11
10
1925
7
9
16
10
1926-1927
7
9
18
17
1928-1930
9
12
18
17
1931-1935
9
5
12
18
17
1936
9
5
12
18
27
1937
9
7
12
19
32
『鉄道省鉄道統計資料』『鉄道統計資料』『鉄道統計』各年度版
駅一覧
便宜上、豊野側の全列車が直通する、しなの鉄道長野駅からの区間を記載。
累計営業キロは豊野駅からのもの。
全定期列車が普通列車で、全ての駅に停車。
臨時快速「おいこっと 」については列車記事を参照。
線路 … ||:複線、∨:ここより下は単線、◇・|:単線(◇は列車交換 可)
2023年度の時点で、JR東日本自社による乗車人員集計[ 56] の対象駅(北しなの線区間は他社線となるため対象外)は、豊野駅・信濃浅野駅・飯山駅・戸狩野沢温泉駅・信濃白鳥駅・平滝駅・横倉駅・森宮野原駅・津南駅・十日町駅・越後川口駅である。それ以外の駅は完全な無人駅 のため、集計対象から外されている。
利用状況
平均通過人員
各年度の平均通過人員 (人/日)は以下のとおりである。
年度
平均通過人員(人/日)
出典
全線
豊野 - 飯山
飯山 - 戸狩野沢温泉
戸狩野沢温泉 - 津南
津南 - 越後川口
2011年度(平成23年度)
735
2,229
863
159
419
[ 57]
2012年度(平成24年度)
755
2,248
850
170
453
2013年度(平成25年度)
770
2,301
871
163
466
2014年度(平成26年度)
704
2,093
779
154
431
2015年度(平成27年度)
676
1,959
638
158
456
2016年度(平成28年度)
646
1,858
600
156
441
[ 58]
2017年度(平成29年度)
607
1,777
541
124
421
2018年度(平成30年度)
598
1,725
543
126
421
2019年度(令和元年度)
576
1,696
503
106
405
2020年度(令和0 2年度)
491
1,444
416
77
359
2021年度(令和0 3年度)
477
1,438
406
63
342
[ 59]
2022年度(令和0 4年度)
488
1,445
410
76
355
2023年度(令和0 5年度)
477
1,398
414
84
342
[ 60]
収支・営業係数
各年度の収支 (運輸収入、営業費用)、営業係数 、収支率は以下のとおりである。▲はマイナス(赤字)を意味する。
なお、2019 - 2022年度(令和元 - 4年度)は2019年度(令和元年度)の平均通過人員が2,000人/日未満の線区が開示対象となっていたが、2023年度(令和5年度)は同年度の平均通過人員が2,000人/日未満の線区が開示対象となっている。
豊野駅 - 飯山駅間
年度
収支(百万円)
営業 係数 (円)
収支率
出典
運輸 収入
営業 費用
計
2019年度(令和元年度)
107
787
▲680
733
13.6%
[ 61]
2020年度(令和0 2年度)
80
839
▲758
1,037
9.6%
2021年度(令和0 3年度)
85
759
▲674
889
11.2%
[ 62]
2022年度(令和0 4年度)
91
828
▲737
905
11.0%
[ 63]
2023年度(令和0 5年度)
92
778
▲685
839
11.9%
[ 64]
飯山駅 - 戸狩野沢温泉駅間
年度
収支(百万円)
営業 係数 (円)
収支率
出典
運輸 収入
営業 費用
計
2019年度(令和元年度)
13
322
▲308
2,345
4.3%
[ 61]
2020年度(令和0 2年度)
10
344
▲334
3,423
2.9%
2021年度(令和0 3年度)
10
312
▲301
2,995
3.3%
[ 62]
2022年度(令和0 4年度)
11
340
▲329
3,029
3.3%
[ 63]
2023年度(令和0 5年度)
11
319
▲307
2,695
3.7%
[ 64]
戸狩野沢温泉駅 - 津南駅間
年度
収支(百万円)
営業 係数 (円)
収支率
出典
運輸 収入
営業 費用
計
2019年度(令和元年度)
10
880
▲869
8,258
1.2%
[ 61]
2020年度(令和0 2年度)
6
943
▲936
13,945
0.7%
2021年度(令和0 3年度)
5
869
▲863
14,839
0.7%
[ 62]
2022年度(令和0 4年度)
7
951
▲944
12,746
0.8%
[ 63]
2023年度(令和0 5年度)
8
899
▲891
10,316
1.0%
[ 64]
津南駅 - 越後川口駅間
年度
収支(百万円)
営業 係数 (円)
収支率
出典
運輸 収入
営業 費用
計
2019年度(令和元年度)
52
886
▲833
1,674
6.0%
[ 61]
2020年度(令和0 2年度)
38
918
▲879
2,380
4.2%
2021年度(令和0 3年度)
37
888
▲851
2,354
4.2%
[ 62]
2022年度(令和0 4年度)
42
978
▲935
2,299
4.3%
[ 63]
2023年度(令和0 5年度)
43
922
▲878
2,117
4.7%
[ 64]
脚注
注釈
^ かき寄せ雪かき車とも呼ぶ。線路沿いの雪壁を崩し雪を線路上にかき集めるための車両。
^ 同様の運行形態は花輪線 でもみることができる。
出典
参考文献
監修小林宇一郎・小西純一『信州の鉄道物語』信濃毎日新聞社、1987年
曽根悟 (監修)(著)、朝日新聞出版分冊百科編集部(編集)(編)「大糸線・飯山線・篠ノ井線・越後線・弥彦線」『週刊 歴史でめぐる鉄道全路線 国鉄・JR』第9号、朝日新聞出版 、2009年9月6日。
関連項目
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
飯山線 に関連するカテゴリがあります。
新幹線 東海道線 中央線 東北線 総武線 磐越線 奥羽線 羽越線 陸羽線 信越線
※在来線の通称線名は除外した。 △ 全区間を他社移管 ▽ 一部区間を他社移管 × 廃止
路線
車両基地
乗務員区所
*
関連企業・団体・人物