青春18きっぷ(せいしゅんじゅうはちきっぷ)は、旅客鉄道会社全線(JR線)の普通列車・快速列車が利用できる、販売および使用期間限定の特別企画乗車券である。
本項では前身の青春18のびのびきっぷ、2016年から発売された青春18きっぷ北海道新幹線オプション券についても述べる。
概要
日本国有鉄道(国鉄)旅客局が運賃増収策の一環として企画し、1982年(昭和57年)3月1日に「青春18のびのびきっぷ」として発売。1983年(昭和58年)春季発売分から現名称に改称した。
主に学生などの春季・夏季・冬季休暇期間を利用期間として発売され、原則として特急(新幹線を含む)・急行を除く旅客鉄道会社全線の普通列車など、運賃のみで乗車できる列車に乗車することができる[2]。
2024年(令和6年)冬季の販売価格は、5日間用で12,050円、3日間用で10,000円[3]。なお12,050円は、2024年夏季発売分と同額である[4]。主として学生向けの商品として企画されたが、利用者の年齢制限はなく、小児運賃の設定もない。
JRホテルグループの予約センターに宿泊を申し込み、当日現地で青春18きっぷを提示すると、ホテル宿泊料金の割引等が受けられる[4]などの特典が一部に設けられている(関連商品参照)。
「青春18きっぷ」の名称の由来については、当時国鉄旅客局長だった須田寬により、青少年・学生をイメージした「青春」と、その象徴的な年齢で「末広がりの8」にも通じる「18」を組み合わせたと、後年に須田が説明している[5]。ただし、若年層以外は利用できないわけではなく、持参人は誰でも使える。国鉄分割民営化後、JR各社を代表して東日本旅客鉄道(JR東日本)が1994年(平成6年)に商標登録(商標登録番号第3007644号)を行った。
利用規定
発売期間・利用期間
利用期間は首都圏や西日本の学生がおおむね長期休暇(春休み・夏休み・冬休み)に入る期間で、その開始約10日前から終了日の10日前まで発売される。通常、毎年2月に1年間の発売予定を発表する[注 1]が、2024年1月は例年とは異なり春季分のみ発表し[10]、6月18日に夏季分を発表した[11]。
以下は、2024年夏季までの発売・利用期間。
秋季には設定されていないが、類似したシステムをもつ秋の乗り放題パス(2012年から[12][13]。2011年までは鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ)が発売されている。
効力
2024年冬季分にて大規模な変更が行われたため、その前後について別個に記述する。なお歴史節に記載の通り、この変更は同年10月時点で試験的なものと位置付けられており、2025年春季分以降については2024年冬季時点では未定となっている[14]。
2024年冬季分での規定
「3日間用」と「5日間用」の2種類を発売し、それぞれ購入時に指定した利用開始日から連続した3日間または5日間利用できる[3]。
有効期間内であれば乗り降りが自由で、有効期間の最終日に関しては利用区間にかかわらず最終列車まで利用可能である。なお終夜運転などを行う場合は通常ダイヤの最終列車までとなる。自動改札機が利用可能である。1枚のきっぷを複数人で利用することはできず、同一行程でも1人1枚のきっぷが必要となる[3]。
利用開始日の変更(1回限り可)と払いもどし(220円の払いもどし手数料必要)は、有効期間開始日前または有効期間内で未使用の場合に限り取扱箇所で行える。ただし、「3日間用」と「5日間用」相互の有効日数の変更はできない[3]。
発売期間は11月26日 - 1月6日(5日用)・8日(3日用)で、発売期間内では利用開始日の1カ月前から購入が可能となっている。利用期間については従来からの変更はない[3]。
2024年夏季までの規定
2024年夏季分までは利用期間中の任意の日に5回まで利用できる券であり、5回分は一度に連続して使用しなくてもよく、利用期間内であれば別々の日に1回ずつ使うことができた。また、1枚を複数人で同時に使うこともでき、その場合は同一日に人数分の回数を使用するというシステムだった。複数人で利用する場合は全員が同時に改札を通過する必要があった[2]が、1995年までは5回分の券片がそれぞれ分かれていたため、別々での通過も可能だった。
1枚で5回使える様式となってからは、1枚の券面に5箇所ある乗車日記入欄への改札印の押印等による日付の記載により使用開始を示す方式を採用しており、各回とも最初に乗車する際に、有人駅の場合は有人改札の駅員が、無人駅においては乗車した列車の車掌(ワンマン運転の場合は、停車中に車掌業務を行う運転士)が乗車印と日付を記入する形態で、自動改札機は利用できなかった。
1回分は乗車日当日限り有効で、0時から24時までの間有効とされていた。日付をまたいで運転する列車については、0時を過ぎて最初に停車する駅まで有効(0時をまたいで停車している列車はその停車駅まで有効)であった。なおこれは「乗降可能な駅」のことであり、通過扱いとなる運転停車を行う駅はこれに該当しない[注 2]。ただし、東京および大阪近郊の電車特定区間では0時を過ぎても、終電まで有効である。このとき、乗車日の24時(翌日0時)以降、終電までに電車特定区間の駅と区間外の駅との間を乗車する場合は、電車特定区間の境界の駅と区間外の降車駅との間で有効な乗車券などが必要となる[注 3]。
払いもどしは、利用期間内で5回とも未使用の場合に限り取扱箇所で行えた(払いもどし手数料が必要)[4]。ただし利用期間が終了した後は未使用でも払いもどしは受けられなかった。また使用開始後の列車の運休や遅れの場合であっても一度使用開始した回(日)の取消しはできず、払いもどしおよび利用期間の延長もできなかった。利用期間が終了したきっぷは5回使用していなくても無効となり、次の利用期間にまたがって使用することはできなかった。
利用できる路線・列車
旅客鉄道会社(JR旅客6社)が運営する全ての在来線における普通列車の普通車自由席が利用できる。どの経路であっても、どの駅での乗降も可能。
追加料金を支払えば利用できるもの
普通列車であれば、別に料金を支払うことで以下に示す座席種別を利用できる。
列車以外で利用できるもの
列車でないもののうち、以下のものに乗車・乗船可能である。
特例
特急列車を利用できる特例
特例により普通乗車券のみで特急列車の普通車に乗車できる区間の対象席種は、2024年現在、いずれも青春18きっぷのみで利用できる。
- 区間や設定時期については上記の当該記事を参照。なお、奥羽本線の新青森駅 - 青森駅間は当初青春18きっぷについてはこの特例が適用されなかったが、2012年夏季発売分より[8][9]利用可能となった。
- 対象の席種以外を利用する場合や、特例区間外発着で利用する場合については全乗車区間の乗車券・特急券などが必要となる。特例区間の境界地点までの乗車券および特急券と青春18きっぷを所持して特例区間外から乗車し、そのまま特例区間内へ乗り通すことはできない[4]。
第三セクター鉄道の列車を利用できる特例
接続していたJR線が新幹線の開業により並行在来線として経営分離・第三セクター化されたことでJR在来線との接続がなくなったJR線について、その路線の起点の駅につながる一部の第三セクター鉄道区間の普通列車を通過利用できる特例がある。あくまで「通過利用」であるため、いずれもJR線との接続駅以外の第三セクター鉄道区間内の駅では途中下車できない。途中下車した場合は、乗車した第三セクター鉄道全区間分の運賃を別途支払う必要がある。
なお利用規定には「当日中に」[注 5]「JR線からの経由乗車で」[注 6]「JR線へ通過利用する場合」[注 7]、すなわち発駅、着駅がいずれもJRの在来線の駅である必要がある[注 8]と明記されており、特例区間のみ乗車して接続するJR線に乗車しない場合[注 9]や、特例区間外まで乗車する場合は乗車した第三セクター鉄道全区間分の運賃が必要となる[28]。
青い森鉄道線
八戸駅 - 野辺地駅 - 青森駅間を通過利用できる。ただし八戸、野辺地、青森の各駅で途中下車できる。青森駅を経由する通過利用のほか、八戸線(八戸駅を除く)と大湊線(野辺地駅を除く)の駅間を移動する際に、八戸駅 - 野辺地駅間のみを通過利用することもできる[注 10]。
2010年12月4日に東北本線の青森駅 - 八戸駅間がJR東日本から青い森鉄道に経営分離された際、大湊線と八戸線は他のJR在来線との接続がなくなったため制定された。
あいの風とやま鉄道線・IRいしかわ鉄道線
富山駅 - 高岡駅間または富山駅 - 津幡駅間を通過利用できる。ただし富山、高岡、津幡の各駅で途中下車できる。また、ライナー券を別に購入すれば「あいの風ライナー」に乗車できる。ただし、氷見線または城端線(ともに高岡駅を除く)と七尾線(津幡駅を除く)の駅間を移動する際に、高岡駅 - 津幡駅間のみを通過利用することはできない[注 10]。
現行の特例は2024年3月16日に改められたもので、氷見線、城端線、七尾線の各路線が、高岡駅において氷見線と城端線が相互に接続する以外に他のJR在来線との接続が無いため制定されている[10]。
もともとは、2015年3月14日に北陸本線の市振駅 - 倶利伽羅駅間がJR西日本からあいの風とやま鉄道に、倶利伽羅駅 - 金沢駅間がIRいしかわ鉄道にそれぞれ経営分離された際に設定されたものである。この時点では、あいの風とやま鉄道線の富山駅 - 高岡駅間およびIRいしかわ鉄道線の津幡駅 - 金沢駅間を通過利用できる特例であった[6]。その後、2024年に北陸本線の金沢駅 - 大聖寺駅間もIRいしかわ鉄道に経営分離されたため、あいの風とやま鉄道線とIRいしかわ鉄道線の特例が統合され、津幡駅 - 金沢駅間は青春18きっぷでは利用できなくなった。
ハピラインふくい線
越前花堂駅 - 敦賀駅間を通過利用できる。ただし、越前花堂駅、敦賀駅で途中下車できる[37][10]。
2024年3月16日に北陸本線の大聖寺駅 - 敦賀駅間がJR西日本からハピラインふくいに経営分離された際、越美北線は他のJR在来線との接続がなくなったため制定された。
使用できない路線・列車
特別急行列車(新幹線を含む)・急行列車には、上記の特例区間を除いて一切乗車できない(乗車券としての効力をもたない)。利用する場合には、該当する区間の特急券または急行券と乗車券が必要となる。
発売開始以来、JR線以外の会社線(私鉄・公営鉄道・第三セクター等の路線)では原則として使用することができず、JR線と会社線とを直通運転する列車を利用する場合でも会社線内の乗車区間についてはその区間に有効な乗車券類が別に必要となる。なお、えちごトキめき鉄道および肥薩おれんじ鉄道では、有効な青春18きっぷを提示することを条件として発売する企画乗車券が設定されている(後述)。
JRの子会社・関連会社・出資会社が運営する各路線(東京モノレール、東京臨海高速鉄道、JR東海交通事業、嵯峨野観光鉄道、JR九州高速船)、およびJRバス各線も利用できない。
- 井原鉄道井原線清音駅-総社駅間(JR西日本との共用区間、JR西日本が第1種鉄道事業者)では、井原鉄道によって運行される車両は井原鉄道線とみなされるため乗車できない。
- かつての国鉄バス、およびJR直営時代のJRバス(両者とも「自動車線」と呼称され、青春18きっぷの券面に除外路線として表記されていた)も利用できなかった。ただし、JR東日本直営の自動車線である気仙沼線・大船渡線BRTは上述の通り例外として利用可能である。
- JR西日本宮島フェリーは2009年以降JR西日本とは別会社となっているが、上述の通り例外として利用可能である。
- 日田彦山線BRTはJR九州バスの運営となっているが、上述の通り例外として利用可能である。
岩手県北自動車の106急行バスは、先述した徳島バスや四万十交通と同様にJR線(山田線)との共通乗車制度をとっているが、青春18きっぷを含む企画乗車券では利用できない[38]。
青春18きっぷ北海道新幹線オプション券
2016年より、青春18きっぷとの同時利用に限り有効である青春18きっぷ北海道新幹線オプション券が、青春18きっぷと同じ利用期間で設定されている[7]。
発売額は2019年夏季発売分までは2,300円[30]、2019年冬季から2024年夏季発売分までは2,490円[11]、2024年冬季発売分からは4,500円である[3]。
2016年3月26日の北海道新幹線開業まで、蟹田駅 - 木古内駅間は特例により普通乗車券のみで特急列車の普通車に乗車できる区間として特急「白鳥」「スーパー白鳥」の普通車自由席に青春18きっぷのみで乗車できたが、開業後は海峡線(在来線)の定期旅客列車が全廃され、江差線は道南いさりび鉄道へ移管されたことから、本券が設定された[7]。
2024年夏季までは北海道新幹線の利用可能区間は奥津軽いまべつ駅[注 11] - 木古内駅間だったが、同年冬季分から新青森駅 - 木古内駅間に変更された[3]。
効力
青春18きっぷと併用することで、以下の区間をそれぞれ片道1回利用できる。有効期間は1日で購入時に指定する。双方の利用行程が連続しており同日であることが必要。木古内駅では途中下車ができる[3]。
歴史
5券片時代の券面(
1987年夏季、JR東日本発行)
マルス端末(L型端末)から発行された券(
1991年夏季、JR東海発行。上は表紙
JR発足20周年を記念し8,000円で発売された
2007年春季の青春18きっぷ
5券片時代の青春18きっぷの1券片(
1995年、日本旅行発行)
概要節の通り、青春18きっぷは国鉄の増収策の一環として企画された。当時、国鉄内部では利用者層を青少年(学生)・中年(社会人・主婦)・老年と分けた場合、中年男性は出張などで長距離の利用が多いものの、それ以外の年齢層では比較的短距離の利用が多いと分析していた。
そこで、それらの層にも長距離の利用を勧めるためのトクトクきっぷを発売することとなった。老年向けには「フルムーン夫婦グリーンパス」を発売していた。また中年女性向けには1983年から「ナイスミディパス」を発売した。
青少年向けには、1982年から青春18きっぷの前身にあたる青春18のびのびきっぷが発売された。「青春18」とある通り、青少年(学生)を主な発売対象としたきっぷであったが、開始当時から年齢制限はなかった。当時国鉄には、長距離区間を運転する普通列車が数多く存在し、民営化後のような合理化が進展しておらず、学校の長期休暇期間中、主要路線の普通列車はしばしば各地で長大編成の輸送力を持て余していた。そのような既存列車の輸送力を活用しながら、新たな需要を喚起することで、増収が狙われたのである。
1982年春季の発売当初は1日券3枚と2日券1枚(共に青い地紋)のセットで、価格は8,000円であった。また青少年の利用を意識して、バッグなどに貼付できるシール状の「青春18ワッペン」が付属していた。利用期間は3月1日から5月31日までで、ゴールデンウィークも含まれた。
同年夏季用から1日券4枚と2日券1枚のセットで10,000円となった。利用期間は7月20日から9月20日まで。当初は冬季の設定はなかった。
1983年春季から、青春18のびのびきっぷは青春18きっぷに改称された。春季の利用期間は2月20日から4月10日までとなった。
1984年夏季用から1日券5枚となった。きっぷ全体での使用可能日数が1日短縮され、価格は10,000円のままであった。また、1984年から冬季用が発売された。冬季の利用期間は12月10日から翌年1月20日まで(2009年冬季用まで続く)。
1985年から夏季用の利用期間は7月20日から9月10日までとなった。
1986年冬季に価格が11,000円に改定された。
1989年夏季より消費税が導入(同年4月1日、税率3%)されたことを受けて11,300円に改定された。
1993年から春季用の利用期間は3月1日から4月10日までとなった。
1996年春季より、5回(人)分を1枚の券片にまとめた様式となった。複数人数で同時に使用する場合、前述したように、全員が同じ行程で移動しなければならないという条件付きになった。種村直樹は、以前より旅行会社が上乗せして1枚ずつバラ売りしていたと自著の「種村直樹の新汽車旅相談室 トクトクきっぷ篇」で述べている。
JRの旅客営業規則において、旅行開始後の乗車券を他人から譲り受けて使用すると乗車券は無効(不正乗車)になることが定められているが、青春18きっぷについては、5枚つづりであったことに鑑み、5枚のきっぷをJRの都合によって1枚にまとめただけで各回の効力は独立しており、1回目のみを使用しても2回目以降は旅行開始前であると、一部書籍では説明されている[40]。しかし、1回目の旅行開始できっぷ全体について旅行開始後となり、1回目の使用者とは別の人が譲り受けて2回目以降を使用するのは不正乗車とする意見もある[41]。「複数人数の場合は同一行程」の条件の解釈に差異があると言えるが、1枚になった理由についてJRから公式の発表はない。
1997年夏季から消費税の税率変更(同年4月1日、税率5%)に伴い、価格が11,500円に改定された。
2004年冬季から、普通・快速列車のグリーン車自由席に限り、グリーン券を別に購入することで利用できるようになった。同年10月のダイヤ改正に伴って実施されたJR東日本におけるグリーン車の制度変更によるものである。
2007年にはJR各社が発足20周年を迎えたのを記念し、春季のみJR発足20周年・青春18きっぷが発売開始時の価格と同じ8,000円(乗車できる列車・回数などは通常のものと同じ)で発売された[42]。
当乗車券の発売・利用期間は1993年から2009年まで固定されていたが、2010年から冬季の発売期間が12月1日 - 31日、利用期間が12月10日 - 翌年1月10日と最終日が共に10日間前倒しされて短縮となり、また東北本線の八戸駅 - 青森駅間の青い森鉄道への移管を受けて、通過特例(#第三セクター鉄道の列車を利用できる特例)が初めて設けられた。
2014年夏季から消費税の税率変更(同年4月1日、税率8%)に伴い、価格が11,850円に改定された。
2019年冬季から消費税の税率変更(同年10月1日、税率10%)に伴い、価格が12,050円に改定された。
2024年夏季は発売が従来の7月1日開始から7月10日開始に9日間後ろ倒しされた。利用期間は変更がない[11]。
同年冬季には、それまでの「1枚(セット)を複数人で利用できる」「期間内の任意の日に利用開始可能」というシステムが改められ、購入時に指定した利用開始日から1人につき1枚を利用する形のきっぷとなった。また、有効期間が5日間用のものに加え、新たに3日間用のものも設定されるとともに、24時を過ぎても最終列車まで利用できるようになった[3]。この変更については、複数人での利用が減少傾向にあることを踏まえた試験的なものと位置付けており、翌年以降に同様の仕様とするかは未定としている[14]。
夜間の長距離移動
青春18きっぷは利用日の0時になると有効となるため、夜間の長距離移動については、当きっぷ発売以前から運行されていた夜行普通列車に加え、1980年代後半以降に全国各地で「ムーンライト」など、当きっぷでも利用可能な夜行列車が運行されてきた。しかし、2000年10月に紀勢本線で廃止されたのを最後に、夜行普通列車は消滅した。2005年以降は「ムーンライト」についても次第に運行されなくなる列車が増え、2009年春のダイヤ改正で「ムーンライトえちご」および「ムーンライトながら」が臨時化されたことにより、定期運行が無くなった。両列車は臨時列車として運行が続けられたが「ムーンライトえちご」は2014年春季を最後に設定されておらず、「ムーンライトながら」も2020年春季を最後に運行されないまま2021年に運行終了が発表された。
発売枚数
2000年代における販売枚数は、JR東日本によると、前半から中盤は毎年25万枚から30万枚で、2007年は35万枚以上の販売実績があった[44]。朝日新聞コラムの引用によると、JR全体では2013年度67万枚となっている。その後も発売枚数は伸びており、JR全体では2015年度は71万枚で、70万枚を超えたのは2009年度以来となった[45][信頼性要検証]。
常備券
青春18きっぷがマルス端末による発売に切り替わった後も、一部駅の窓口では、赤い地紋の用紙に印刷された常備券での発売が行われ、鉄道ファンの間で赤券と呼ばれた。常備券とマルス端末発行の券で効力は同等であるが、希少性、あるいは風情やノスタルジアがあるとしてファンの間で人気があり、遠方から常備券を扱う駅まで購入のために訪れる者や、現金書留での発売対応を行っていた駅もあった。みどりの窓口が設置されていない駅で発売された事例が多いが、高松駅(JR四国)などの例外もあった。
最後まで発売していたJR西日本・JR四国が2016年(平成28年)冬季をもって取り扱いを終了し、廃止された[46]。
発売箇所
JR各社のみどりの窓口や一部のきっぷうりば、旅行会社などで発売されている。また、JR各社の指定席券売機(一部の設置駅を除く)でも発売されている。
関連商品
エリア限定版の類似の企画乗車券
JR各社が自社の管轄内限定で在来線の普通列車普通車自由席(種類によっては特急普通車自由席も)が乗り放題となる類似のフリーきっぷを発売している。
- 北海道&東日本パス - JR北海道とJR東日本が共同で発売しており、両社と青い森鉄道・IGRいわて銀河鉄道・北越急行の各鉄道線の普通列車普通車自由席とJR東日本BRTが連続する7日間乗り放題となる企画乗車券。別料金による列車の座席利用や特急列車の特例区間のルールは青春18きっぷと同じであったり発売・利用期間は青春18きっぷと類似するが、急行列車は急行券を別途購入すると普通車自由席に乗車でき、座席指定券・グリーン券・寝台券の追加でそれぞれの設備を利用できるほか[注 14]、旧東北本線の第三セクター路線内も自由に乗降可能となり、また北海道新幹線の新青森駅 - 新函館北斗駅間の普通車立席を特定特急券の別途購入で利用できる。一方で道南いさりび鉄道線は一切利用できない。この他、小児向け価格が設定されている点などが異なる。
- 北海道&東日本パス北海道線特急オプション券 - 上記と別に購入し、併用することで1日に限り北海道新幹線の普通車立席とJR北海道の特急自由席が乗り放題となっていた。2023年度に発売終了。
- 北海道フリーパス - JR北海道が発売しており、同社の全在来線の普通・急行・特急列車の普通車自由席とジェイ・アール北海道バス一般路線バス全線が連続する7日間乗り放題になる。また、種別を問わず、普通車指定席は最大6回まで、7回目以降は別途指定席料金で利用でき、特急グリーン車はグリーン料金と特急料金の別途支払いにより利用できる。一方で道南いさりび鉄道線と北海道新幹線は一切利用できない。発売・利用期間は通年だが一部利用できない期間がある。
- 休日おでかけパス - JR東日本が発売しており、同社の東京都内全線と、隣接6県(神奈川県・埼玉県・千葉県・栃木県・茨城県・山梨県)の一部路線が、土休日、大型連休(4月29日 - 5月5日)、夏休み期間(7月20日 - 8月31日)、年末年始(12月29日 - 1月3日)において普通列車普通車に1日乗り放題となる企画乗車券。特急(東北・上越新幹線含む)・急行列車は特急券や急行券の別途購入により、指定席・グリーン車は、座席指定券・グリーン券の別途購入により利用できる。
- JR東海が、静岡地区・名古屋地区の同社のそれぞれの在来線において、土休日および年末年始(12月30日 - 1月3日)に普通列車普通車自由席に1日乗り放題となる企画乗車券を地区別に発売している。路線は企画乗車券別に以下の通り。
- JR東海&16私鉄 乗り鉄☆たびきっぷ - JR東海在来線全線と接続する私鉄16社(一部の会社は路線等の制限あり)が連続する土休日の2日間(多客期は利用制限あり)乗り放題となる。特急列車も特急券購入により利用できる。東海道新幹線の熱海駅 - 米原駅間も別途特急券を購入すると「ひかり」「こだま」に限り4回まで利用可能。
- 四国フリーきっぷ - JR四国が発売しており、同社全線と土佐くろしお鉄道窪川 - 若井間の普通・特急列車の自由席に使用開始日からの連続する3日間乗り放題となる。徳島バスの一部区間の特例は青春18きっぷと同様。発売・利用期間は通年。
青春18きっぷ利用者向けの企画乗車券
青春18きっぷ発売時期にあわせて、以下の事業者では企画乗車券の発売や割引サービスなどを実施している。
- おれんじ18フリーきっぷ(肥薩おれんじ鉄道)[47] - 青春18きっぷを呈示すると、2,100円(通常の「おれんじ1日フリー切符」は2,800円)で全線の乗降が自由となる乗車券を発売している。
- トキ鉄18きっぷ(えちごトキめき鉄道)[48] - 大人1000円。利用可能期間は18きっぷ利用可能期間と同じで発売当日限り有効。妙高はねうまラインと日本海ひすいラインの普通・快速列車に乗車可能。別途特急券を購入すれば特急列車に乗車可能。
上記のほか、ジェイアール四国バスが運行する高速バスなんごくエクスプレスでは青春18きっぷの呈示により1回乗車あたり1000円でのバス利用が可能。なお割引の適用は「1回目の利用開始後の当日から5回目の利用日、5回利用していなければ購入期の最終利用可能日」の間で、この条件を満たせば当日の改札印がなくても利用できる[49]。
過去には北近畿タンゴ鉄道が、2007年春から2009年1月までの間、青春18きっぷを呈示すると全線の乗降が自由となる「KTR青春フリーきっぷ」を500円で発売していた。また関釜フェリー[50]では、青春18きっぷを呈示すると割引となる。
パロディ商品
- 青春28きっぷ(いすみ鉄道)[51][52] - いすみ鉄道全線の列車(急行・準急を含む)を1人で2回もしくは2人で1回利用可能な乗車券[52]。2017年3月19日より発売された。名称は同社のキハ28形にちなむもので、デザインは先述した常備券の青春18きっぷを彷彿とさせるものになっている。
- どっちノリノリいせてつきっぷ(伊勢鉄道)[53][54] - 2021年3月中の全ての土・日曜日に伊勢鉄道全線で、普通列車・快速列車に自由に乗り降りできる。大人用は1枚1000円で1000枚、小学生用は1枚500円で300枚限定。発売期間は2021年3月1日から同年3月28日までで、無くなり次第終了であった。
書籍など
青春18きっぷを活用する方法などを記した書籍は多数出版されている。多くはルールの解説や便利な列車の紹介、モデルコースの案内などで構成されている[44]。
脚注・出典
注釈
- ^ ただし北陸新幹線金沢駅開業を控えた2015年度は前年12月に[6]、北海道新幹線開業を控えた2016年度は1月に発表した[7]。また、1年間をまとめて発表することについては、青森駅 - 新青森駅間の特急列車乗車時の取り扱いが変更になった2012年度など例外もある[8][9]。
- ^ 例えば、2009年に廃止になった快速「ムーンライト九州」は日付変更前に厚狭駅を出発し、日付変更後に広島駅で運転停車していたが、岡山駅までは乗降できなかったので同駅まで有効とされていた。
- ^ このことから、特に夜行列車を利用する旅客にとって(前日夜に乗車してから日付が変わるまでの区間において)青春18きっぷを2回分使用したほうが得か否かは、その列車が0時を過ぎて最初に停車する駅によって左右された。例えば2007年のダイヤ改正において、下り「ムーンライトながら」(2009年3月ダイヤ改正から臨時列車化、2020年夏以降は運休、2021年3月改正で運行再開することなく廃止)の日付変更駅は横浜駅から小田原駅へと大きく移動した。
- ^ Suicaを利用した「グリーン車Suicaシステム」も可能。
- ^ この文言は2024年冬季から追加された[3][27]。
- ^ この文言は2024年度から追加された[10][4]。このため、JR各社のウェブサイトで例示される青森駅 - 大湊線の駅(下北駅または大湊駅)間のみを利用する場合における青い森鉄道線の利用が、2023年では利用可能と掲載されていたものが[28]、2024年時点では利用不可能と変わっている[27]。
- ^ この「JR線へ」の有無が年度により微妙に異なり、2018年度までは第三セクター鉄道3社とも単に「通過利用」という表現[29]、2019年度から2021年度までは青い森鉄道のみ「通過利用」、他の2社は「JR線へ通過利用」の表現[30][31]、2022年度以降は3社とも「JR線へ通過利用」となっている[32]。
- ^ 青い森鉄道[33]およびあいの風とやま鉄道[34](2024年6 - 7月に回答内容が変更された[35])による回答では「発駅、着駅いずれもJRの在来線の駅である必要があります」としている。
- ^ あいの風とやま鉄道による回答では、高岡駅 - 富山駅間のみの乗車は不可としているが、富山駅 - 高岡駅 - 氷見駅と乗車する場合に高岡駅で途中下車することは可能(再入場後に接続するJR線に乗車しているため、高岡駅での途中下車は「特例区間のみの乗車」とならない)としていた[36]。2024年6 - 7月に回答内容が変更された[34]。
- ^ a b 使用条件として、青い森鉄道線は「新青森以遠(弘前方面)または油川以遠(蟹田方面)・大湊線(野辺地駅除く)・八戸線(八戸駅除く)の各駅間を移動する際に」利用できるが、あいの風とやま鉄道線は「西富山以遠(婦中鵜坂方面)と氷見線・城端線の駅(高岡駅除く)または七尾線(津幡駅除く)との駅を移動する際に」、IRいしかわ鉄道線は「西富山以遠(婦中鵜坂方面)と七尾線の駅(津幡駅除く)とを移動する際に」利用可能であり、氷見線または城端線の駅と七尾線の駅相互間では利用できない[4]。
- ^ 在来線の接続駅は津軽線の津軽二股駅であった[7]。
- ^ 2024年冬季分から変更された。あわせて購入時に使用日を指定することになった。また北海道新幹線の利用可能区間では自動改札機を利用できるようになった[3]。
- ^ この区間では2024年現在、全ての定期列車が全車指定席である。
- ^ ただし、2024年現在本券の利用可能区間内に定期運行する急行列車は存在しない。
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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