土佐くろしお鉄道株式会社 (とさくろしおてつどう、英 : Tosa Kuroshio Tetsudo Co.,Ltd. )は、高知県 で鉄道 事業を行っている第三セクター 方式の鉄道事業者 である。本社は高知県四万十市 の中村駅 に、登記上の本店は同県高知市 の高知県庁 に構える。
概要
高知県と沿線自治体で株式の9割以上を保有する自治体主導の第三セクター鉄道 会社である。国鉄再建法 の施行により工事が凍結された日本鉄道建設公団 建設線の宿毛線 及び阿佐西線(阿佐線〈ごめん・なはり線〉 として開業)を引き受けるために設立されたが、後に第3次特定地方交通線 に指定された中村線 の運営も引き受けることとなった。
沿革
役員
社長
路線
四万十くろしおライン[ 8]
中村線 : 窪川 - 中村(43.0km・第一種鉄道事業 )
宿毛線 : 宿毛 - 中村(23.6km・第一種鉄道事業)
駅ナンバリング の頭文字は、上記2路線とも「土佐くろしお鉄道」(T osa K uroshio)からTK
ごめん・なはり線
阿佐線 : 後免 - 奈半利(42.7km・第一種鉄道事業)
駅ナンバリングの頭文字は、愛称名の「ごめん・なはり線」(Gomen-Nahari)からGN
「四万十くろしおライン」(中村線・宿毛線)と「ごめん・なはり線」(阿佐線)は起点駅基準で約75 km 離れており、両線区を直通運転する定期列車は存在せず、車両の転属なども一切行われていない。両線で直通運転が行われた例は2002年のごめん・なはり線開業時に運行された団体専用列車と、2017年11月に宿毛線開業20周年とごめん・なはり線開業15周年を記念して運行された宿毛 - 奈半利間の直通列車の例がある[ 15] [ 16] [ 17] 。
利用状況
年間の利用状況は以下の通り(全路線の合計)。
年度
輸送人員 (千人)
平均通過人員 (人/日)
出典
定期券
定期外利用者
合計
2012
1,172
830
2,002
961
2013
1,207
803
2,009
963
2014
1,161
755
1,916
907
2015
1,122
788
1,910
902
2016
1,093
780
1,873
907
2017
1,070
791
1,861
908
2018
1,072
739
1,812
874
2019
1,046
720
1,767
848
[ 18]
2020
964
460
1,424
634
[ 19]
2021
1,005
471
1,476
658
[ 20]
2022
1,020
553
1,573
745
[ 21]
車両
海岸沿いの区間が多いことから防錆対策として、全車両ともステンレス 車体となっている。オールステンレス車両 は車両価格が高価なため、第三セクター鉄道の気動車 に採用される例は少なく、土佐くろしお鉄道以外では智頭急行 (特急車のみ)・伊勢鉄道 ・井原鉄道 ・阿佐海岸鉄道 (ASA-101 のみ)・若桜鉄道 (WT3301 のみ)・えちごトキめき鉄道 [ 22] のみとなっている。
車両は普通列車用も含めて全車がトイレ つきである。
四万十くろしおライン(中村線・宿毛線)用
土佐くろしお鉄道2700系2780(土讃線 襟野々-佐川間、2021年12月27日)
土佐くろしお鉄道TKT-8000形8001 トンボ(中村駅、2010年5月27日)
土佐くろしお鉄道TKT-8000形8021 宝くじ号(窪川駅、2007年9月2日)
現有車両
2700系
2020年 に導入[ 23] 。2両編成1本が在籍する。保守・管理は四国旅客鉄道 (JR四国)に委託しており高知運転所 に常駐する。
TKT-8000形
1988年(昭和63年)の中村線転換開業に際して5両、1997年(平成9年)宿毛線開業時に2両、その後1999年(平成11年)に1両が投入された気動車である[ 24] [ 25] [ 26] 。開業時に投入された5両とそれ以外ではエンジン などが異なり[ 27] 、最初の5両では新潟鐵工所製6H13AS (DMF13HS) ディーゼルエンジン を183 kW (250 PS )に設定して、のちに製造された3両では新潟鐵工所製DMF13HZ を242 kW(330 PS)に設定して採用した[ 28] 。全車正面貫通式、両運転台、トイレ あり[ 29] で、各車両に愛称がつけられている[ 24] [ 25] [ 26] 。最後に製造された1両以外はセミクロスシート [ 29] 、最後の1両はお座敷車としても使用できるイベント対応のロングシートである[ 30] 。2011年 (平成23年)3月にイベント対応車を除く7両の外装が沿線自治体のラッピングに変更されている[ 31] 。
過去の車両
2000系
1990年にJR四国2000系が登場し、相互直通運転が開始されたことに伴い、車両使用料 の調整のためにJR保有車とほぼ同一仕様で新製した車両である。JR四国車との差異は、車番の十位が3であることと、2030の運転台側に電気連結器が残存(JR保有車からは撤去)していることである。運用管理全般をJR四国に委託しており、高知運転所 に所属していた。2000年 にJR四国が土讃線に設定した「アンパンマン列車 (ブルー)」が好評を博したため、翌2001年 に土佐くろしお鉄道保有車4両にもラッピングを施し、「アンパンマン列車(ピンク)」とした。当初はJR四国車と共通で1両単位の運用を組んでいたが、「アンパンマン列車」となった後は全4両で1編成を組んだ編成単位の運用を行うようになった。なお、土讃線の「アンパンマン列車」は2009年 9月頃にリニューアルされ、JR四国車が「グリーン」、土佐くろしお鉄道保有車が「オレンジ」になり、後述の通り引退するまでその姿で運用された。「アンパンマン列車」のラッピングがされる前は、全車の側窓下に土佐くろしお鉄道のロゴマークのステッカーが、先頭車側面(トイレ部分)に「国民休暇県高知」のマーク(高知県の地形に県鳥であるヤイロチョウ のイラストが描かれたもの)が貼られていた。2700系によるアンパンマン列車の運行開始により、2020年 7月18日 の運転を最後にJR四国車の「グリーン」とともに引退した[ 32] 。
ごめん・なはり線(阿佐線)用
土佐くろしお鉄道阿佐線用9640形9(土佐大津駅、2010年5月27日)
土佐くろしお鉄道阿佐線用9640形2S(後免町駅、2010年5月27日)
現有車両
9640形
ごめん・なはり線開業に先立ち、2002年(平成14年)3月から製造された気動車である[ 33] [ 34] [ 35] 。形式名「9640」は「くろしお」にちなんだものである[ 36] 。同年3月に特別仕様車2両(9640-1S、2S)、一般車8両(9640-3 - 10)が製造[ 33] され、予備車確保のため2005年(平成17年)に1両(9640-11)が追加されている[ 37] 。第三セクター鉄道 では製造者が準備した標準仕様に近いものを採用する事例が多かった[ 38] が、9640形は車体寸法、材質などが製造者の標準仕様と異なり、2002年(平成14年)製造の10両は5両ずつ富士重工業 と新潟鐵工所 に発注されている[ 35] [ 39] [ 40] 。路線バス 、乗用車 などの既存交通機関との対抗上JR四国高知駅 への乗り入れは必須と判断され、JR四国1000形 と連結運転可能な性能をもっている[ 41] 。全車エンジン などの走行装置は共通で、小松製作所 製SA6D140-H-1ディーゼルエンジン を331 kW (450 PS )に設定して採用した[ 41] [ 42] [ 43] 。全車21 m 級のステンレス 製車体、正面貫通式、両運転台、トイレ あり[ 39] [ 40] [ 44] だが、特別仕様車2両(1S、2S)は鯨 をイメージした流線型の先頭部をもち[ 36] 、海側をオープンデッキ式の通路とした構造で、座席は転換クロスシート 、一般車(3 - 10)は通常の平妻の車体で車内は後免寄りがロングシート、奈半利寄りが転換クロスシート[ 40] 、2005年(平成17年)製の1両(11)はお座敷車として使用可能で、平妻車体、車内はロングシートとなっている[ 36] 。開業時から高知駅乗入、JR四国1000形との併結運転が行われているほか、2019年3月改正まで土讃線 土佐山田駅 まで乗り入れる運用にも使用されていた[ 40] 。特別仕様車のうち1両(9640-2S)とお座敷対応の1両(9640-11)は日本宝くじ協会 の助成を受けた宝くじ号 [ 40] [ 45] で、9640-11には「手のひらを太陽に 号」の愛称がつけられている[ 45] 。
運賃
大人普通旅客運賃 (小児半額・10円未満切り上げ)。2019年10月1日改定[ 46] [ 47] 。
四万十くろしおライン(中村線・宿毛線)
キロ程
運賃(円)
初乗り3km
170
4 - 6
210
7 - 9
260
10 - 12
340
13 - 15
410
16 - 18
480
19 - 21
550
22 - 24
630
25 - 27
710
28 - 30
780
31 - 35
880
36 - 40
1,000
41 - 45
1,110
46 - 51
1,220
52 - 57
1,350
58 - 63
1,480
64 - 67
1,630
ごめん・なはり線(阿佐線)
キロ程
運賃(円)
初乗り6km
260
7 - 12
410
13 - 19
560
20 - 27
720
28 - 35
920
36 - 43
1,080
阿佐線内で、隣り合う駅までの運賃は、上の表にかかわらず210円である。
身体障害者手帳 、療育手帳 および精神障害者保健福祉手帳 の提示により運賃が割引になる。
料金
大人特急料金 (小児半額・10円未満切り上げ)。2019年10月1日改定[ 46] 。特急列車の普通車を利用の場合は乗車券・特急券が必要。
四万十くろしおライン(中村線・宿毛線)のみ
キロ程
指定席(円)
自由席(円)
初乗り25km
520
310
26 - 50
630
420
51 - 67
840
630
大人グリーン料金 (小児同額)。2019年10月1日改定[ 46] 。特急列車のグリーン車を利用の場合は乗車券・指定席特急券(この場合の料金は自由席特急券と同額)・グリーン券が必要。
四万十くろしおライン(中村線・宿毛線)のみ
全線均一840円。小児同額。
なお、2021年3月時点では、グリーン車を連結する列車は「あしずり 」15号・2号(窪川 - 中村間)のみとなっている。
また、ごめん・なはり線には定期特急列車の設定はされていないが、観光列車「志国土佐 時代の夜明けのものがたり 」の乗り入れに伴う特急料金は、中村線・宿毛線と同様の設定の料金が適用される。
脚注
参考文献
書籍
雑誌記事
『鉄道ピクトリアル 』通巻512号「新車年鑑1989年版」(1989年5月・電気車研究会 )
藤井 信夫・大幡 哲海・岸上 明彦「各社別車両情勢」 pp. 93-123
土佐くろしお鉄道(株)運輸部長 岡 泰弘「土佐くろしお鉄道 TKT-8000形」 pp. 197
「民鉄車両諸元表」 pp. 230-232
「竣工月日表」 pp. 232-242
『鉄道ピクトリアル』通巻658号「<特集> レールバス」(1998年9月・電気車研究会)
「第三セクター・私鉄向け 軽快気動車の発達 新潟鉄工所 NDC」 pp. 32-35
高嶋修一「第三セクター・私鉄向け軽快気動車の系譜」 pp. 42-55
『鉄道ピクトリアル』通巻660号「新車年鑑1998年版」(1998年10月・電気車研究会)
藤井信夫、大幡哲海、岸上明彦「各社別車両情勢」 pp. 83-100
『鉄道ピクトリアル』通巻692号「新車年鑑2000年版」(2000年10月・電気車研究会)
藤井 信夫、大幡 哲海、岸上 明彦「各社別車両情勢」 pp. 101-119
土佐くろしお鉄道(株)運輸車両課 林 治孝「土佐くろしお鉄道 TKT-8000形 3次車」 pp. 154
『鉄道ピクトリアル』通巻723号「鉄道車両年鑑2002年版」(2002年10月・電気車研究会)
『鉄道ピクトリアル』通巻738号「鉄道車両年鑑2003年版」(2003年10月・電気車研究会)
岸上 明彦「2002年度民鉄車両動向」 pp. 109-130
土佐くろしお鉄道(株)安芸運行本部運転車両課検修係 小松 和紀「土佐くろしお鉄道 ごめん・なはり線用9640形」 pp. 174-176
「民鉄車両諸元表」 pp. 180-183
『レイルマガジン 』通巻230号付録(2002年11月・ネコ・パブリッシング )
岡田誠一「民鉄・第三セクター鉄道 現有気動車ガイドブック2002」 pp. 1-32
『レイルマガジン』通巻250号(2004年7月・ネコ・パブリッシング)
寺田 祐一「私鉄・三セク気動車 141形式・585輌の今!」 pp. 4-50
『鉄道ピクトリアル』通巻767号「鉄道車両年鑑2005年版」(2005年10月・電気車研究会)
岸上 明彦「2004年度民鉄車両動向」 pp. 116-141
土佐くろしお鉄道(株)安芸運行本部運転車両課検修係 小松 和紀「土佐くろしお鉄道 ごめん・なはり線用9640形増備車(お座敷対応車)」 pp. 182-183
「民鉄車両諸元表」 pp. 186-191
「各社別新造・改造・廃車一覧」 pp. 214-239
『鉄道ピクトリアル』通巻855号「鉄道車両年鑑2011年版」(2011年10月・電気車研究会)
岸上 明彦「2010年度民鉄車両動向」 pp. 123-154
『鉄道ピクトリアル』通巻905号「【特集】 ディーゼルカー」(2015年7月・電気車研究会)
「近年における気動車の技術動向」 pp. 21-27
関連項目
外部リンク