プログレッシブ・メタル (英語 :Progressive Metal)は、ロック・ミュージック のジャンル のひとつ。略称 はプログレメタル (あるいはプログメタル )。あまり明確な定義 はないが、プログレッシブ・ロック とヘヴィメタル の要素を取り入れたサウンドで、1990年代 以降にひとつのジャンルとして確立された。
概要
そのサウンドは、プログレッシブ・ロックの持つ技巧的あるいは幻想的な音楽性と、ヘヴィメタル の持つハードで大胆な音楽性が合わさったもの。ヘヴィメタルの要素がベースになっているが、長大な楽曲、変拍子 、転調 、シンセサイザー の多用、コンセプト 性を持ったアルバム構成など、プログレッシブ・ロックの特徴も取り入れられている。
ピンク・フロイド 、キング・クリムゾン 、ジェネシス 、イエス などのプログレッシブ・ロック勢と、アイアン・メイデン 、ジューダス・プリースト 、メタリカ などのハード・ロック/ヘヴィメタル勢の双方から影響を受けてきたミュージシャンたちが、1980年代 後半になって本格的な音楽活動を始めたところに起因する。
代表的なバンドとしては、ドリーム・シアター 、クイーンズライク 、フェイツ・ウォーニング 、クリムゾン・グローリー、ペイン・オヴ・サルヴェイション などがあり、マーケットにおいてはドリーム・シアターらの躍進した90年代にプログレッシブ・メタルと呼ばれるタームが定着した。
プログレッシブ・メタルがジャンルとして確立される前から活動しているラッシュ は、プログレッシブ・メタルの起源であると考えられている。また、一部のネオクラシカルメタル やデスメタル 、ブラックメタル などには、メンバーが超絶技巧の持ち主であり、曲調もプログレッシブであるようなバンドが存在し[ 注 1] 、そのようなバンドはプログレッシブ・メタルであると解釈される。
日本においては1970年代 - 1980年代前半からシェラザード 、マンドレイク 、人間椅子 、筋肉少女帯 といったハードロック/ヘヴィメタルとプログレッシブ・ロック双方の要素を取り入れ独自の音楽性を展開したバンドが散見されプログレ・ハードと呼ばれた。またノヴェラ の元メンバーや彼らのフォロワーが結成したハードロック色の強いグループが一時期(アンダーグラウンドな)プログレ・シーンで次々と登場し、これらはノヴェラ系ジャパグレと呼ばれた。他に、クラシックの要素を大きく取り入れたX JAPAN がプログレッシブ・メタルであると解釈される。
歴史
ライブをするドリーム・シアター
プログレッシブ・ロックとヘヴィメタルを組み合わせるスタイルの登場は1960年代後半から1970年代初頭までさかのぼることができる。イギリス出身の最もヘヴィなプログレ・バンドのひとつ、ハイ・タイド [ 1] は、クリーム 、ブルー・チアー 、ジェフ・ベック・グループ といったメタルの元となったバンドの要素を自分たちのサウンドへと組み込んだ[ 2] 。キング・クリムゾンやラッシュらもメタルの要素を取り入れている[ 3] [ 4] 。他にそのような試みを行っていたバンドとしてはユーライア・ヒープ がいる[ 5] 。「Bastille Day」「Anthem」「By-Tor And The Snow Dog」「2112」「The Fountain of Lamneth」「Something for Nothing」などのラッシュの楽曲はプログレッシブ・メタルの最初期の例として見ることができる[ 6] 。ルシファーズ・フレンド やナイト・サン も早くからこのような音楽性を志向していたバンドのひとつである[ 7] 。だが、1980年代中頃までプログレッシブ・メタルがひとつのジャンルとして結実することはなかった。サイコティック・ワルツ、フェイツ・ウォーニング 、クイーンズライク 、クリムゾン・グローリー、ドリーム・シアター といったバンドはプログレッシブ・ロックの要素[ 注 2] を取り入れており、ジューダス・プリースト やブラック・サバス など[ 注 3] から影響を受けたメタルのスタイルと合体させた音楽性を完成させた。
フェイツ・ウォーニング、クイーンズライク、クリムゾン・グローリー、ドリーム・シアターの4つのバンドはこのジャンルをともに作り上げたとはいえ、サウンドはそれぞれ異なっている。クイーンズライクはこの中でも最もメロディに重きを置いたスタイルをとっている。彼らの発表したアルバム『オペレーション・マインドクライム』と『エンパイア 』はこのジャンルの中で最も商業的に成功した作品となり、シングル「Silent Lucidity」はビルボード・チャートで9位を獲得した。フェイツ・ウォーニングはこの中で最もアグレッシヴでヘヴィである。背景にはこの時代のスラッシュメタルと多くの共通項を持っていることもあるが、彼らがそもそもジューダス・プリーストやアイアン・メイデン の系譜に連なるヘヴィメタル・バンドとして始動したことも影響している。アルバム『パーフェクト・シンメトリー 』は従来のNWOBHM 的なサウンドの枠を抜け出し、ドリーム・シアターが後に広めることとなるプログレッシブ・メタルの基礎となるサウンドを作り上げた。ドリーム・シアターは伝統的なプログレッシブ・ロックから強い影響を受けており、メンバーの技術力で多くの聴衆を魅了した。クリムゾン・グローリーは2本の美しいリード・ギターがハーモニーを奏でる点が特徴である。彼らの作品『トランセンデンス』はこのジャンル内でも出色の出来であり、プログレッシブ・メタルの傑作のひとつとして数えられることも多く、ケイジ 、トリオスフィア、ラプソディー・オブ・ファイア らに影響を与えた[ 8] [ 9] [ 10] [ 11] 。
主なバンド
アメリカ
イギリス
カナダ
スウェーデン
ドイツ
ノルウェー
日本
アンドラ
オーストラリア
オーストリア
バングラデシュ
ベラルーシ
ブラジル
チリ
コロンビア
デンマーク
フェロー諸島
フィンランド
フランス
ギリシャ
ハンガリー
インド
イラン
イスラエル
イタリア
オランダ
パキスタン
フィリピン
ポーランド
ルーマニア
ロシア
セルビア
スロベニア
スペイン
スロバキア
スイス
チュニジア
トルコ
多国籍
脚注
注釈
出典
^ Neate, Wilson. “High Tide - High Tide ”. Allmusic . 2011年10月10日 閲覧。
^ Neate, Wilson (1969年7月8日). “Sea Shanties - High Tide ”. Allmusic. 2011年10月10日 閲覧。
^ Buckley 2003, p. 477, "Opening with the cataclysmic heavy-metal of "21st Century Schizoid Man", and closing with the cathedral-sized title track, "
^ Buckley 2003, p. 749, "Rush were throwing off shackles of prog-rock and heavy metal, "
^ Thomas, Stephen. “Uriah Heep ”. Allmusic. 2011年10月10日 閲覧。
^ [1] Progressive rock reconsidered by Durrell S. Brown
^ Rivadavia, Eduardo (2006年12月21日). “Lucifer's Friend ”. Allmusic. 2011年10月10日 閲覧。
^ Rivadavia, Eduardo. “Transcendence - Crimson Glory ”. allmusic . Rovi Corporation. 2011年12月28日 閲覧。
^ Fabian De La Torre (2007-08). “El nuevo U.S. Metal Cage [The New US Metal. Cage]” (スペイン語). Metalica Fanzine (53): 32–34.
^ “Alex Staropoli ”. rhapsodyoffire.com . 2011年12月29日時点のオリジナル よりアーカイブ。2011年12月28日 閲覧。
^ “CRIMSON GLORY Preparing To Embark On 25th-Anniversary Tour ”. Blabbermouth.net . Roadrunner Records (2011年4月18日). 2011年4月18日 閲覧。 [リンク切れ ]