ブラザー工業株式会社(ブラザーこうぎょう、英: BROTHER INDUSTRIES, LTD.)は、愛知県名古屋市瑞穂区に本社を置く日本の大手電機メーカー。主にプリンター(複合機)、ファクシミリ、ミシンなどを製造する。東証プライム・名証プレミア上場企業。
概要
社名は「沿革」節にあるとおり、安井兼吉が創業した「安井ミシン商会」を安井正義ら息子兄弟が継承した際に商号を変更した「安井ミシン兄弟商会」に由来し、この兄弟の英語であるBrotherを社名に採用している。
売上の90%近く(連結では75%)が日本国外であり、日本国内よりも北米やヨーロッパでブランド力が高い。特にSOHO向けの複合機、ファックスにおいては北米でトップシェアを占める。
日本でブランドイメージの強いミシンについては、家庭用・工業用ともに世界トップクラスのシェアである。ただし工業用については日本でのブラザー最大のライバルメーカーであるJUKIが世界でのシェア1位であるものの、日本での家庭用ミシンの市場が急激に縮小し、他のライバルミシンメーカーが軒並み凋落する中で、工業用ミシン最大のライバルであるJUKI(チップマウンターに進出して多角化)、家庭用最大のライバルであるジャノメ(産業用ロボットに進出して多角化)の日本3大大手ミシン会社ともに、多角化に成功したことが本業の堅持にもつながった。
1956年には、70ccオートバイ「ダーリン号」を販売した。しかし製造ラインが1959年の伊勢湾台風で水没したこともありオートバイ事業からは撤退した。また、かつては家電製品や楽器(電子オルガン)を発売していたこともあるが、1990年代までに撤退している。家電製品のうち洗濯機(ニックネームは「新珠」)、掃除機は自社生産で、テレビ、ビデオデッキは三菱電機からOEM供給を受けていた。1980年代には後述するタイプライターのノウハウを生かしたワードプロセッサ「ピコワード」も製造・販売していた。
1971年に、セントロニクス社と高速ドットプリンターを開発。国内の現金自動預け払い機(ATM)の3割のシェアを持つ。また、ラベルプリンターの創始者で、1988年に開発し世界シェア1位である。印刷面にラミネートが施される特許を持っている。当時ブラザー工業の社員だった酒井隆司と結城英治が中心に開発し、かつてテプラを製造しキングジムに供給していた。他にはモバイルプリンターなど、個性のあるプリンターを製造している。
タイプライターも世界シェア1位を誇り、1977年からのキーボード開発は高い評価を持ち、ブラザー製のIBM社のキーボードはプレミアも付いている。1993年のキーボード「コアラ」はパンタグラフ式キーボードとして世界で初めてノートパソコンに採用され、パンタグラフ式は現在、世界でノートPCの標準仕様となっている。
1987年に、NTT(東西分割前)とファックスを共同開発。日本国内ではNTTブランドで、日本以外では「ブラザーファクス」として展開され、7年連続全米第1位のシェアを獲得していた(1994年〜2000年)。ちなみに開発メーカーなのでブラザーのファックスの型番はFAX-××となっている。ファックス付複合機では、日本国内・全米ともに第1位のシェアを誇っていたが、近年ではキヤノン、ヒューレット・パッカードなどにシェアを奪われつつある。家庭用の留守番電話付きファックスを良品計画(無印良品)にOEM供給している。
独自の技術でレーザープリンター、インクジェットプリンターを製造できる企業ではあるが、特にレーザープリンターは各社とOEM契約を結び、各社とエンジンや本体を供給したりされたりしている。カラーレーザーエンジンも以前は他社からの供給品であったが、2007年より自社開発したタンデム方式のカラーエンジンを使用している。レーザープリンターは1987年開発。2000年にユーロでのシェアが第2位となる。小売りで全第1位シェアも持っている。
2003年にインクジェット式の複合機マイミーオを発売。ファックス付複合機では2010年現在日本シェア第1位となっている。初代のマイミーオに関しては「ソウチカクニン41」というヘッドに起因する不良が多発したため、修理対応を行った[2]。2008年冬に開催されたコミックマーケット(C75)において、マイミーオがらき☆すたとのコラボレーションで企業ブースに出展するなど、多方面にプロモーション活動を展開している[3][4]。
2004年に発売されたエンターテイメントロボット「イフボット」のデザインを手掛けたことから、イフボットの意匠権を所有している。そのため、翌2005年に行われた愛・地球博では、「夢みる山」のブラザーゾーン「モノづくり、ユメづくり Brother Output Fantasy」にて、イフボットを使用したショーを出展した。なお、イフボットの製造はフタバ産業、販売はビジネスデザイン研究所である。
子会社のエクシングにおいて、通信カラオケJOYSOUNDを製造・販売している。さらに2009年9月には、エクシングが同じく通信カラオケ大手のUGAを運営するBMBを買収することで、BMBの親会社であるUSENと合意した。
2008年に発表された新中期戦略「CS B2012」では、ブラザー工業が取り組む二つの新規事業として、ネットワークイメージングデバイス事業とネットワーク&コンテンツ事業を挙げており、ネットワークイメージングデバイス事業では2009年6月、電子ペーパー「ブラザー ドキュメントビューワ」を発売したほか、愛・地球博で初めて披露した網膜走査ディスプレイの小型化を成功させ、2010年に名称が「AiRScouter」に決定。2011年に実用化された[5]。また、ネットワーク&コンテンツ事業では次世代コンテンツ配信システム「Einy(アイニー)」を開発、2009年10月に子会社のエクシングが発売した通信カラオケ「CROSSO」の楽曲配信などに採用されている。
また、自動車部品やHDD製造用の工作機械であるタッピングセンターシリーズ、金型製作や部品加工用の工作機械であるワイヤ放電加工機(HS-70A)も製造している。
2011年、改築された名古屋市科学館のプラネタリウムドームのネーミングライツ(命名権)を取得し、プラネタリウムドームの名称を「Brother Earth (ブラザーアース)」とした[6]。
沿革
主要製品
家庭用ミシン・クラフト
- イノヴィスシリーズ(一般用ミシン、刺しゅう用ミシン)
- 職業用ミシン(直線ぬい専用ミシン、ロックミシン、カバーステッチ専用ミシン)
- カッティングマシン
- BEaaS(ラザーの業務用刺しゅうミシン専用のクラウドサービス[11]。株式会社ワークマンと共同開発[12])
- 家庭用編機(2004年11月24日をもって生産販売を終了した[13])
プリンティング機器
スタンプ作成機
電子ペーパー
マシナリー
- 工作機械(CNCタッピングセンター、SPEEDIO)
- 工業用ミシン
NEXIOシリーズ(IoT対応ミシン[16]/電子送り本縫ダイレクトドライブ、ダイレクトドライブプログラム式電子ミシン)
ネットワーク・アンド・コンテンツ
ドミノ事業
- コーディング・マーキング機器
- デジタル印刷機
- レーザーマーカ―
研究・製造拠点
- 瑞穂工場(名古屋市瑞穂区)
- 星崎工場(名古屋市南区)
- 港工場(名古屋市港区)
- 桃園工場(名古屋市瑞穂区)
- 刈谷工場(愛知県刈谷市)
- 技術開発センター(名古屋市瑞穂区)
- 物流センター(名古屋市南区)
海外拠点は以下の国にある。
関連会社
- ブラザーインターナショナル株式会社
- ブラザー販売株式会社
- 株式会社エクシング
- ブラザーロジテック株式会社
- ブラザー不動産株式会社
- 三重ブラザー精機株式会社
- ブラザーリビングサービス株式会社
- 株式会社ブラザーエンタープライズ
- 株式会社ビートップスタッフ
- ブラザーインダストリアルプリンティング株式会社(旧・株式会社ブラザーファイナンスジャパン)[17]
- 株式会社ニッセイ
- 昭和精機株式会社
- ドミノ・プリンティング・サイエンス
提供番組
2021年時点
過去
※同社が名古屋市に本社を置くことから、在京局のみならず、在名局の番組[注 5]にも提供している。
※現在、上記以外ではレギュラーの提供番組はなく、週替わり・期間限定でテレビ番組に提供する事が多い。このため、スポット枠中心にCMを流している。
CMに起用された有名人
- 菅原洋一 - ブラザー編機
- 新井晴美(現・晴み) - ミシン ペースセッター
- 岡田奈々 - 電子ミシン コンパルDX
- 太田裕美 - 電子オルガン エミリオン、かっこうE
- 水沢アキ - ブラザー編機、電子ミシン コンパルDX
- 小松辰雄 - ブラザーの家電品(夫人と共に出演。ナレーションはみのもんた)
- 巨砲丈士 - ブラザーの家電品(夫人と共に出演)
- 田崎潤 - 電子ミシン コンパルDX
- 藤谷美和子 - 電子レンジ 調宝さん
- 桂三枝(現・六代桂文枝) - 電子コンパルエース(コンパル奥さま大集合編)、コンピュータミシン コンパルα
- アン・ルイス - コンピュータミシン オーパス8
- 三浦友和 - ブラザー編機
- 野田圭一 - 電子ミシン コンパルDX(ナレーション)
- 松田聖子 - コンピュータミシン コンパルα-II
- 三田寛子 - 電子タイプライター、ピコワード(日本語ワードプロセッサ)
- 山崎浩子 - コンピュータミシン コンパルα
- 山田邦子 - コンピュータミシン Tendy
- 原沙知絵 - インクジェット複合機 MyMio
- 小泉里子 - インクジェット複合機 MyMio
- 小林麻央 - カラーレーザー複合機 JUSTIO、インクジェット複合機 MyMio
- 松下奈緒 - インクジェット複合機 MyMio、レーザー複合機・プリンターJUSTIO
- 梨奈カロリーナ - インクジェット複合機 MyMio
- あおい輝彦、山崎弘也(共に声) - インクジェット複合機 PRIVIO
- 中村勘九郎、中村七之助 - インクジェット複合機 PRIVIO
- 小島瑠璃子 - インクジェット複合機 PRIVIO
- 鮫島正樹 - オーブンレンジ グルメット500
- 寺嶋由芙 - ブラザー企業CM「JOYSOUNDはブラザー」篇[18]
- 黒嘉嘉 - 台湾におけるイメージキャラクター(品牌形象大使)(2020年 - )
テレビ番組
書籍
関連書籍
脚注
注釈
出典
参考文献
- 「ASCII 1982年12月号」第6巻第12号、株式会社アスキー出版、1982年12月1日。
関連項目
外部リンク
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- 1 1984年4月以降は複数社提供で継続
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