腰に赤いサッシュを巻いたキャプテン・キッド 。ハワード・パイル 著。1921年出版『カリブ海の海賊』から。
サッシュ (英語 : sash )は、主に儀礼的な場面で身体に着用するリボンや帯の一種。大きくて色鮮やかな布で、肩から反対側の腰へ斜めにかけて、あるいはベルトのように腰に巻いて着用される。腰に巻くサッシュは日常で着用されることもある。儀礼的なサッシュには、両肩から垂らし胸や腹部のあたりで交差して着用するV字状のタイプもある。
貴族と文民における使用
儀式用の軍服と赤いサッシュ(レジオンドヌール勲章)を身に着けるルイ・シャルル・ドルレアン (ヌムール公) 。1840年代。
ラテンアメリカ とアフリカ には、大統領綬 と呼ばれる特別なサッシュで大統領 権を示す国々もある。フランス とイタリア では、国旗を模したトリコロールのサッシュが、議員のような国家の公職者、地方の公的な地位にある者によって、公的な儀式の場で右肩にかける形で着用される。
16世紀以降、サッシュは公的な軍装の一部を形成している(バルドリック として知られるソードベルトと カマーバンド と比較せよ)。ヨーロッパ の王室 の多くでは、サッシュを王室の(もしくは軍人の)レガリア として着用している。レジオンドヌール勲章 のようないくつかの勲章は、サッシュを最も古いグレードの徽章の一部として包含している。同様にイタリアの武官は、儀礼的な場面で、明るい青色のサッシュを右肩にかけて着用する。
軍人、武官への使用
フランス外人部隊兵のパレード礼装。弾帯の下に巻いた青いサッシュは、かつて用いられていた青い毛布(ブーダン)を受け継いだもの。
サッシュはフランス陸軍 のいくつかの連隊 において軍事パレードのための服装において独特の特徴を持ったものになっている。腰回りに着用される暗い青色、あるいは赤色のものが、外国人部隊 、 スパフィー の シャズール・ダフリーク とティレルーズ のような軍団によって使用される[ 1] 。これらはフランス植民地統治下の北アフリカで独自に発展してきたものである。フランス領アルジェリア 或いはズアーブ ("ceinture de laine") の伝統においては、サッシュは長さは4m、幅は40cmである。歴史的にフランス・アフリカ軍 おいて、腰に巻くサッシュは、青のものはヨーロッパ本土の者に、赤は現地の者に使用されてきた[ 2] 。
1635年から1642年までの精巧に刺繍されたサッシュ。
南北戦争 のときに、暗紅色の絹のサッシュは士官を表すものであり、ウールの赤のサッシュは「常設のアメリカ陸軍 (Army Regulations of 1861 )」の下士官を表すものであった。アメリカ合衆国 の将軍は1917年 までバフ シルクのサッシュを着用していた。
アメリカ連合国陸軍 (南軍)では、サッシュの色が着用者の地位や軍団を表していた。例えば、金は騎兵、バーガンディ は歩兵 、黒はチャプレン 、赤は軍曹 、緑あるいは青は衛生兵 、灰色あるいはクリーム色は将軍 といった具合である。the West Point Band Drum Majorを除いて、今日ウェスト・ポイント の士官候補生 だけが、アメリカ合衆国陸軍において剣とサッシュを佩用する唯一の例となっており、唯一伝統を守っている[ 3] [ 4] 。
近代のイギリス陸軍 は、軍曹と歩兵連隊 より上の者は右肩に襷掛けにする緋色のサッシュの着用を維持している。おなじ暗紅色の絹のネットの腰に巻くサッシュは、緋色の軍装をまとった フット・ガーズ と暗青色の「第一種("Number 1")」軍装をまとった戦列歩兵 によって着用される。イギリス連邦 の陸軍もそれに倣っている。
現在の、インド とパキスタン の両国は広く、腰回りのサッシュを儀礼的な服装として使用している。その色も、連隊ないし兵科、着用されるターバンの色に合わせて、多様になっている。2色、それ以上の色が縦縞にサッシュに組み込まれたものが典型である。一方の端を緩くするか、装飾的な房飾りがついている。特徴的な連隊のサッシュの着用の実践は19世紀終わりまでさかのぼれる[ 5] 。
上記のものに加えて、他の近代陸軍が腰回りのサッシュを士官の儀礼的な制服として維持している。ノルウェー (暗赤色のサッシュ)、スウェーデン (黄色と青のサッシュ)、ギリシャ (明るい青色と白のサッシュ)、オランダ (オレンジ色のサッシュ)、ポルトガル (暗紅色のサッシュ)、スペイン (赤と金色のサッシュ)[ 6] など。
スペインのRegulares (スペイン領モロッコ で徴発したかつての植民地連隊を起源とする歩兵) は歴史的な腰回りのサッシュを全ての階級において維持し、その色は部隊によって多様化している[ 7] 。
1914年 まで、腰回りの独自の国の色のサッシュは、平時の階級を示すものとして、ドイツ帝国 、オーストリア=ハンガリー帝国 とロシア帝国 の陸軍で着用されていた。日本 の士官は1940年まで正装において使用していた[ 8] 。
サッシュに似たクロスベルト (サスペンダー )はオランダのDrum Majorsとイギリスとイギリス連邦の陸軍で使用されていた。これらの携帯は戦闘の栄誉の名を負うことを巻き込んでいた。
現代の市民文化での使用
2本のサッシュを着けたミス・ワールド 受賞者の張梓琳 。2007年。
儀礼的なV字型のサッシュを着けたスリナム の大統領デシ・ボーターセ 。
アメリカ合衆国では、サッシュはより多くの儀式的な用途に使用される一方で実用的な用途は減少してきた。ハイスクールの卒業式 におけるホームカミング パレード で使用されたり、ミスコンテスト で高成績の出場者に使用されたりする。
カナダ における手織りのサッシュ(ceintures fléchées 、あるいは大量に生産されていた街にちなんで "L'Assomption sash" とも呼ばれる)は、18世紀のイロコイ族 の使用していたベルトに由来する。このサッシュは、多用途に使える便利な道具として毛皮取引の場で利用され、取引先である北西部にも広まった。この時期に折り方はタイトになり、かつ4mを超える例もあるほどに大きくなり、よく着色された織り糸が用いられた。今日では、1837年のw:Lower Canada Rebellion Patriotesとメティ の人々の象徴となっている。
アイルランド 、特に北アイルランド では、サッシュはオレンジ勲章 の象徴である。オレンジ勲章のサッシュは、元来はイギリス軍によって着用されていた襷掛けの儀礼的なものであった。20世紀には、サッシュはV字の小さな首巻き(collarettes)に取って代わられたが、これらも一般に「サッシュ」と呼ばれつづけることとなった。このアイテムは'w:The Sash my Father Wore 'という歌で知られている。
サッシュはガールスカウト 、ボーイスカウト とミスコンテストの参加者によって着用されている。サッシュのバッジはスカウトの業績を示している。
サッシュは多くの国で外交官の制服(w:diplomatic uniform )に使用されている。
日本におけるサッシュに相当するものは「帯 」であり、着物や浴衣に使用される。また、ミス・コンテスト の受賞者に対して贈られる襷 のことを「サッシュ」と説明する場合[ 9] もある。
多くの近代の中国のマーシャルアーツの流派では、日本で見られる帯による段位制度を模倣し、様々な色のサッシュが使用されている。
勲章
サッシュは 大十字勲章 あるいは騎士団 勲章 のあるいは メリット勲章 の指標である。サッシュは通常、右肩から左臀部へと襷掛けに着用される。伝統的な法令によって、反対に左肩に着用するものもある。
青い大綬と星章を着けたケンブリッジ公ウィリアム王子 。
ガーターサッシュを着けた1720年代のガーター騎士。
左肩に着用するサッシュのある勲章
ヨーロッパ:
アジア:
マレーシア:
マレーシア 連邦
装飾
栄典
階級
綬
ソース
最も高貴で最も輝かしいマレーシア王室勲章 Darjah Kerabat Diraja Malaysia
DKM
Recipient
[ 20] [ 21]
最も高貴な王冠領勲章 Darjah Utama Seri Mahkota Negara
DMN
Recipient
[ 21] [ 22]
ケダ スルタン国
最も輝かしいケダ王室勲章 Darjah Kerabat Yang Amat Mulia Kedah
DK
Member
[ 23]
クランタン スルタン国
最も尊貴な クランタン王室勲章 (Al-Yunusi Star) Darjah Kerabat Yang Amat di-Hormati (Bintang al-Yunusi)
DK
Recipient
[ 24] [ 25]
ヌグリ・スンビラン スルタン国
最も輝かしい ヌグリ・スンビラン王室勲章 Darjah Kerabat Neegri Sembilan Yang Amat di-Mulia
DKNS
Member
[ 26]
ヌグリ・スンビラン勲章 - Darjah Negeri Sembilan
Darjah Tertinggi Negeri Sembilan
DTNS
Paramount
[ 27]
Darjah Mulia Negeri Sembilan
DMNS
Illustrious
パハン スルタン国
最も輝かしいパハン王室勲章 Darjah Kerabat Yang Maha Mulia Utama Kerabat di-Raja Pahang
DKP
Member (Ahli )
[ 28] [ 29]
最も尊貴なパハン王室インドラの王冠勲章 Darjah Kerabat Sri Indra Mahkota Pahang Yang Amat di-Hormati
DK I
Member 1st class
ペラ スルタン国
最も尊貴なペラ王室勲章 Darjah Kerabat di-Raja Yang Amat di-Hormati
DK
Member (Ahli )
(before 2001) (after 2001)
[ 30] [ 31] [ 32]
最も尊貴なペラ王室スルタン・アズラン・シャー勲章 Darjah Kerabat Sultan Azlan Shah Perak Yang Amat di-Hormati
DKSA
Superior class
[ 33] [ 34]
最も尊貴なアズラニー王室勲章 Darjah Yang Teramat Mulia Darjah Kerabat Azlanii
DKA I
Member First Class
[ 35]
プルリス スルタン国
最も尊貴な プルリス王室勲章 Darjah Kerabat di-Raja Perlis Yang Amat Amat di-Hormati
DKP
Recipient
[ 36]
最も尊貴なサイド・プトラ・ジャマルラリ勇敢王子プルリス王室勲章 Darjah Kerabat Perlis Baginda Tuanku Syed Putra Jamalullail Yang Amat Amat di-Hormati
DK
Recipient
[ 37]
セランゴール スルタン国
最も尊貴なセランゴール王室勲章 - Darjah Kerabat Selangor Yang Amat di-Hormati
Darjah Kerabat Selangor Pertama
DK I
First Class
[ 38] [ 39]
Darjah Kerabat Selangor Kedua
DK II
Second Class
[ 40]
トレンガヌ スルタン国
最も高貴なトレンガヌ王室至上勲章 (10/03/1981) Darjah Utama Kerabat di-Raja Terengganu Yang Amat di-Hormati
DKT
Member (Ahli )
[ 41]
最も傑出した トレンガヌ王室勲章 (19/06/1962) Darjah Kebesaran Kerabat Terengganu Yang Amat Mulia
DK I
Member 1st class Ahli Yang Pertama
[ 42]
現在の勲章のサッシュで分類された例
虹の順に分類された色 :
白
赤
橙
黄
緑
青
紫紺
紫
黒
出典
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^ The Royal Ark, Sultan Muhammad V's photograph
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^ Besar of Tampin and his wife wearing respectively the DTNS and the DMNS
^ Group photo : DKP & DK I : left shoulder - DK II : right shoulder
^ Sultanah wearing DK I
^ The Royal Ark, Sultan of Perak wearing former DK sash
^ Sultanah of Perak wearing former DK sash
^ Raja di Hilir wearing nowadays DK sash
^ Heir Apparent of Kedah wearing DKSA
^ Crown Princess of Kedah wearing DKSA
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^ Sultan with DKP
^ The Royal Ark, Sultan Sirajuddin
^ Sultan of Selangor's photograph
^ Selangor Official Website, DK I
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^ The Royal Ark, late Sultan Mahmud 's photograph and Sultan Mizan Zainal Abidin 's photograph
^ Photo of the Heir Apparent of Terengganu
参考文献
関連項目