杉本 昌隆(すぎもと まさたか、1968年11月13日 - )は、将棋棋士。棋士番号197。愛知県名古屋市出身[1]。板谷進九段門下[1]。日本将棋連盟非常勤理事(2012年 - 2014年・2021年 - )[2]。
棋歴
棋風
振り飛車党の棋士として知られ、特に四間飛車・中飛車[3]を得意とする。板谷一門は、「振り飛車はよくない」、「若いうちは居飛車でいきなさい」という考え方の一門であった[7]。杉本は奨励会に入った(1980年入会[1])当初、居飛車党であったが、2年間6級のままであったことと、自分の武器は体力だと知ったことから、振り飛車党に転じた[8]。
杉本の振り飛車は奨励会時代から定評があり、先に四段に上がった村山聖は「全振り飛車党の中で唯一の本格正統派」「メチャクチャ格調が高い」[9]と評していた。また、共に第七回三段リーグを戦った藤井猛は、当時三段リーグにおいて振り飛車党が苦戦を強いられていた状況を踏まえ居飛車も指せるようになっていた方がよいのでは、と迷っていたところ、杉本が振り飛車を中心に指しこなしてプロになったのを見て「勇気づけられ」、翌期は振り飛車一本で臨み15勝3敗の好成績を残してプロ入りを果たした[10]。
小林健二と共に藤井システム以前の非常にシステム化された振り飛車定跡を整備した功績がある[注 4]。
人物
- 名古屋市を中心に、主として東海地方で熱心に普及に努め、地元では非常に人気が高い棋士である。
- 相振り飛車・端歩位取り穴熊といったあまり定跡化が進んでいない分野の著作が多い。
- 2012年6月8日、日本将棋連盟非常勤理事に就任、1期2年務めた[2]。2021年から非常勤理事に再就任。
- 2021年からは大阪府のマルエー食糧のテレビCMイメージキャラクターに起用され、同社は将棋大会へのスポンサードも行っている[11]。
- アマチュア時代には、同じ板谷門下(ただし板谷進の父親・板谷四郎の弟子)である大村和久に世話になっていた。杉本も朝日新聞の連載コラムの中で、大村について「アマチュア時代の自分の師匠」と語っている[12]。
- 第8期銀河戦予選(1999年6月10日、対青木清六段戦)で午前の対局開始を午後と勘違いし不戦敗。「対局日の朝にホテルで午後対局に備えていたところ、職員からの電話で不戦敗を告げられ血の気が引きました」と後に明かしている[13]。
弟子
棋士となった弟子
名前 |
四段昇段日 |
段位、主な活躍
|
藤井聡太 |
2016年10月1日
|
九段、竜王4期、名人2期、他タイトル通算26期、A級在籍3期、棋戦優勝10回
|
齊藤裕也 |
2022年10月1日
|
四段
|
(2024年12月13日現在)
- 藤井聡太は奨励会三段リーグ在籍1期で史上最年少14歳の四段プロ入り。齊藤裕也は三段リーグ入りが24歳と遅かったがリーグ1期で四段プロ入りしている。
- 2015年のインタビューで、当時奨励会二段の藤井聡太について「彼がもし棋士になれなかったら、私は責任をとって引退しなければといった思い」と覚悟を語っている[14]。
女流棋士となった弟子
名前 |
女流プロ入り日 |
段位、主な活躍
|
室田伊緒 |
2005年10月1日
|
女流三段
|
中澤沙耶 |
2015年4月1日
|
女流二段、棋戦優勝1
|
今井絢 |
2023年2月1日
|
女流初段
|
(2024年7月13日現在)
- 室田伊緒は女流育成会を制度上最短となる1年2期在籍で女流2級プロ入りしている。
- 2008年度前期のNHK将棋講座では、杉本が講師、室田がアシスタントを務めた。師弟での講座は、番組史上初。
昇段履歴
- 1980年10月01日 : 6級 = 奨励会入会
- 1983年06月01日 : 5級
- 1983年09月01日 : 4級
- 1984年02月01日 : 3級
- 1984年05月01日 : 2級
- 1984年09月01日 : 1級
- 1985年02月10日 : 初段
- 1985年07月10日 : 二段
- 1986年12月20日 : 三段(現行の三段リーグ発足前に昇段)
- 1987年00月00日 : 三段(第1回奨励会三段リーグ<1987年度前期>からリーグ参加)
- 1990年10月01日 : 四段(第7回奨励会三段リーグ成績2位) = プロ入り
- 1995年12月06日 : 五段(勝数規定 /公式戦100勝、)
- 2000年07月11日 : 六段(勝数規定 /五段昇段後公式戦120勝、)
- 2006年02月10日 : 七段(勝数規定 /六段昇段後公式戦150勝、)
- 2019年02月22日 : 八段(勝数規定 /七段昇段後公式戦190勝、)[15]
主な成績
非公式戦優勝
在籍クラス
年度別成績
公式棋戦成績
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
1990
|
14 |
6 |
8 |
0.4286 |
[18]
|
1990 (小計)
|
14 |
6 |
8 |
|
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
1991
|
37 |
20 |
17 |
0.5405 |
[19]
|
1992
|
42 |
25 |
17 |
0.5952 |
[20]
|
1993
|
34 |
17 |
17 |
0.5000 |
[21]
|
1994
|
36 |
20 |
16 |
0.5556 |
[22]
|
1995
|
35 |
18 |
17 |
0.5143 |
[23]
|
1996
|
31 |
17 |
14 |
0.5484 |
[24]
|
1997
|
46 |
35 |
11 |
0.7609 |
[25]
|
1998
|
42 |
27 |
15 |
0.6429 |
[26]
|
1999
|
48 |
27 |
21 |
0.5625 |
[27]
|
2000
|
42 |
30 |
12 |
0.7143 |
[28]
|
1991-2000 (小計)
|
383 |
236 |
147 |
|
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2001
|
51 |
36 |
15 |
0.7059 |
[29]
|
2002
|
49 |
33 |
16 |
0.6735 |
[30]
|
2003
|
42 |
25 |
17 |
0.5952 |
[31]
|
2004
|
33 |
15 |
18 |
0.4545 |
[32]
|
2005
|
37 |
22 |
15 |
0.5946 |
[33]
|
2006
|
32 |
21 |
11 |
0.6563 |
[34]
|
2007
|
32 |
17 |
15 |
0.5313 |
[35]
|
2008
|
31 |
15 |
16 |
0.4839 |
[36]
|
2009
|
31 |
12 |
19 |
0.3871 |
[37]
|
2010
|
32 |
13 |
19 |
0.4063 |
[38]
|
2001-2010 (小計)
|
370 |
209 |
161 |
|
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2011
|
32 |
18 |
14 |
0.5625 |
[39]
|
2012
|
34 |
15 |
19 |
0.4412 |
[40]
|
2013
|
26 |
14 |
12 |
0.5385 |
[41]
|
2014
|
28 |
11 |
17 |
0.3929 |
[42]
|
2015
|
31 |
12 |
19 |
0.3871 |
[43]
|
2016
|
30 |
17 |
13 |
0.5667 |
[44]
|
2017
|
25 |
9 |
16 |
0.3600 |
[45]
|
2018
|
27 |
16 |
11 |
0.5926 |
[46]
|
2019
|
33 |
18 |
15 |
0.5455 |
[47]
|
2020
|
31 |
12 |
19 |
0.3871 |
[48]
|
2011-2020 (小計)
|
297 |
142 |
155 |
|
|
年度 |
対局数 |
勝数 |
負数 |
勝率 |
(出典)
|
2021
|
26 |
11 |
15 |
0.4231 |
[49]
|
2022
|
25 |
8 |
17 |
0.3200 |
[50]
|
2023
|
32 |
10 |
22 |
0.3125 |
[51]
|
2021-2023 (小計)
|
83 |
29 |
54 |
|
|
通算
|
1157 |
622 |
535 |
0.5376 |
[52]
|
2023年度まで
|
棋歴・表彰等
将棋大賞
- 第48回(2020年度):東京将棋記者会賞[55]
主な著書
- 相振り革命(1995年1月、毎日コミュニケーションズ)
- 杉本流四間飛車―封殺!居飛車穴熊 (1998年12月、毎日コミュニケーションズ)
- 新相振り革命(2000年11月、毎日コミュニケーションズ)
- 将棋必勝シリーズ 中飛車戦法―居飛車穴熊を撃退する!(2002年9月、創元社)
- 新相振り革命(MYCOM将棋文庫SP)(2004年11月、毎日コミュニケーションズ、ISBN 4-8399-1672-1)
- 杉本流四間飛車の定跡(2003年12月、創元社、ISBN 4-422-75089-5)
- 杉本流端歩位取り穴熊(2004年4月、毎日コミュニケーションズ)
- 新相振り革命―相振り飛車の教科書(2004年11月、毎日コミュニケーションズ)
- 相振り革命3(2005年5月、毎日コミュニケーションズ)
- 杉本昌隆の振り飛車破り(2007年2月、毎日コミュニケーションズ、ISBN 978-4-8399-2303-7)
- 相振り革命最先端 (2008年6月、マイナビ)
- 杉本昌隆の振り飛車ナビゲーション (2009年1月、NHK出版)
- 相振りレボリューション (2010年11月、マイナビ)
- 相振り飛車の教科書 (2013年5月、マイナビ)
- 対振り革命 中飛車左穴熊 (2014年6月、マイナビ)
- 必修! 相振り戦の絶対手筋105 (2015年4月、マイナビ)
- 速効! 振り飛車の絶対手筋105 (2015年12月、マイナビ)
- 振り飛車最前線 ゴキゲン中飛車VS超速▲4六銀戦法 (2016年9月、マイナビ)
- これが決定版! 相中飛車徹底ガイド (2017年10月、マイナビ)
- 弟子・藤井聡太の学び方(2018年2月、PHP研究所、ISBN 978-4569837437)
- 将棋・究極の勝ち方 入玉の極意 (2018年9月、マイナビ)
- 角交換相振り飛車 徹底ガイド (2019年9月、マイナビ)
- 天才少年棋士を育てた杉本師匠! 将棋の「しょ」の字も知らない私を、将棋ができるようにしてください!! (2019年9月、ソレイユ出版)
- 悔しがる力(2020年1月、PHP研究所)
- 弟子・藤井聡太が教えてくれた99のこと(2022年12月、PHP研究所)
- 師匠はつらいよ 藤井聡太のいる日常(2023年6月、文藝春秋)
- 藤井聡太は、こう考える(2023年9月、PHP研究所)
連載
- 杉本昌隆八段の棋道愛楽(朝日新聞、2020年3月 - )※不定期連載
- 師匠はつらいよ(週刊文春、2021年7月 - )
脚注
注釈
出典
関連項目
外部リンク
日本将棋連盟所属棋士 ( 現役棋士 および 2024年度引退棋士) |
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タイトル 保持者 【九段 6名】 【七段 1名】 |
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九段 【26名】 | |
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八段 【34名】 | |
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七段 【44名】 | |
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六段 【28名】 | |
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五段 【20名】 | |
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四段 【15名】 | |
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2024年度 引退棋士 |
- 九段 青野照市 (2024年6月13日 引退)
- 八段 室岡克彦 (2024年6月18日 引退)
- 八段 中座真 (2024年6月19日 引退)
- 七段 伊奈祐介 (2024年5月10日 引退)
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現役棋士 全174名(2025年1月16日時点、日本将棋連盟所属) / △は2024年度の昇段 / 引退棋士の()は引退日 / 詳細は将棋棋士一覧を参照 |
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竜王 | |
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1組 【 ▼降級 4名 】 | |
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2組
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3組
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4組
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5組
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【在籍 31名(棋士30名・奨励会員1名) / 定員 32名 (欠員1) 】
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6組 【 △昇級 5名 】 |
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次期から出場 |
- 2025年4月昇段者(2-3名)
- 2025年10月昇段者(2-3名)
- (いずれも第39期からの出場)
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★挑戦者 / △次期昇級 / ▼次期降級 / 初 初参加棋士(棋士として初参加) / 詳細については将棋棋士の在籍クラスを参照。 |
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名人 | |
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A級 | |
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B級1組 | |
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B級2組 | |
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C級1組 | |
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C級2組 | |
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フリー クラス
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| 宣言 | |
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棋戦限定 出場 | |
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2024年度 引退者 |
- 伊奈祐介 (2024年5月10日 引退)
- 青野照市 (2024年6月13日 引退)
- 室岡克彦 (2024年6月18日 引退)
- 中座真 (2024年6月19日 引退)
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次期から の出場者
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フリークラスからの昇級者 | |
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2024年10月1日昇段者 | |
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先頭の数字は順位(名人、フリークラス以外)/ フリークラスの数字は在籍可能残り年数(2024年度開始時点) B級2組 - C級2組の * は降級点の数(B級2組・C級1組は降級点2回で降級、C級2組は降級点3回で降級) 詳細については将棋棋士の在籍クラスを参照 |
将棋大賞 |
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1980年代 | |
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1990年代 | |
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2000年代 | |
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2010年代 | |
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2020年代 | |
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第8回(1982年)より創設 |
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