「ドント・レット・ミー・ダウン 」(Don't Let Me Down )は、ビートルズ の楽曲である。1969年4月にシングル盤『ゲット・バック 』のB面曲として発売された。レノン=マッカートニー 名義となっているが、ジョン・レノン によって書かれた楽曲。1969年に行なわれたゲット・バック・セッション 中にレコーディングされた本作には、ビリー・プレストン がエレクトリックピアノ で参加しており、シングル盤には「ザ・ビートルズ・ウィズ・ビリー・プレストン」と表記されている[ 注釈 1] 。
背景・曲の構成
「ドント・レット・ミー・ダウン」は、レノンが後に妻となるオノ・ヨーコ に向けたラブソングとして書いた楽曲。ポール・マッカートニー は「ジョンはヨーコと一緒にいて、ヘロイン中毒で偏執病 に陥っていて危なかった。興奮したり、笑い出したり、密かに恐怖を感じていたこともあっただろう。『ドント・レット・ミー・ダウン』は、そんなジョンの心の叫びだった。ヨーコにそう言おうとしてたんだね。『ここから抜け出す。弱さをすべてさらけ出す。だから僕をがっかりさせないで』って…泣いて助けを求めていた」と語っている。
曲のキーはEメジャー で、ヴァース 、コーラス 、ブリッジは共に4拍子となっているが、ヴァースに移行する際に4分の5拍子に変わる。音楽学者のアラン・ポラック (英語版 ) は「ベース とリードギター で交互に入るヴァースでオクターブで演奏する対位法 のメロディは、ビートルズの作品でよく見られる、斬新なインストゥルメンタルのタッチの1つ」と述べている[ 7] 。
レコーディング・リリース
「ドント・レット・ミー・ダウン」は、1969年に行なわれたゲット・バック・セッション 中にレコーディングされ、複数のテイクが存在している。1969年1月28日にレコーディングされたテイクは、同年4月に発売された『ゲット・バック [ 注釈 2] 』のB面曲として発売された。B面曲ながら、Billboard Hot 100 で最高位35位を記録した[ 9] 。本作は1969年秋に発売が予定されていたアルバム『ゲット・バック』にも収録される予定となっていたが、同作は発売延期の末に未発表となった。その後フィル・スペクター によって再プロデュースされ、アルバム『レット・イット・ビー 』として発売されたが、本作は未収録となった。
1969年1月30日にアップル・レコード 本社の屋上で行われたビートルズ最後のライヴ「ルーフトップ・コンサート 」では2回演奏され、1回目の演奏が映画『レット・イット・ビー 』に収録され、2回の演奏と繋ぎ合わせた音源が2003年11月に発売された『レット・イット・ビー...ネイキッド 』に収録された。2015年に発売された映像作品『ザ・ビートルズ 1+ 』に収録されたミュージック・ビデオ は、ルーフトップ・コンサートでのライブ映像で構成されているが、音源は『レット・イット・ビー...ネイキッド』収録テイクが使用された[ 12] 。
1969年1月28日のテイクは、『ヘイ・ジュード 』、『ザ・ビートルズ1967年〜1970年 』、『パスト・マスターズ Vol.2 』、『モノ・マスターズ 』などのコンピレーション・アルバムにも収録されており、1988年に公開された『イマジン 』のサウンドトラック・アルバム にも収録された。
評価
『オールミュージック 』のリッチー・アンターバーガー (英語版 ) は「ビートルズの最も強力なラブソングの1つ」[ 13] と評していて、スティーヴン・トマス・アールワイン は「胸を締めつけるようなソウル」と評している[ 1] 。ジャーナリストのロイ・カー (英語版 ) とトニー・タイラー (英語版 ) は「苦悩の専門家ジョン・ウィンストン・オノ・レノンによる素晴らしいすすり泣き。今日まで最も過小評価されているビートルズの重要な曲の1つ」と評している。
クレジット
※出典
チャート成績
カバー・バージョン
脚注
注釈
^ プレストンは、ビートルズのレコーディングに参加した多くの演奏者の中で唯一公式にクレジットされたプレイヤーである。
^ 「ゲット・バック」も、同じく1969年1月28日にレコーディングされた楽曲である。
出典
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^ Kot, Greg (2003年11月17日). “Let it be, Paul ”. Chicago Tribune . Tribune Publishing. 2022年2月8日 閲覧。
^ Pollack, Alan W . “Notes on "Don't Let Me Down" ”. 2020年11月24日 閲覧。
^ a b “The Hot 100 Chart ”. Billboard (1969年5月24日). 2020年11月24日 閲覧。
^ “ビートルズのルーフトップ・ライヴ:バンド最後の公でのパフォーマンス ”. uDiscover . UNIVERSAL MUSIC JAPAN (2020年1月30日). 2020年11月26日 閲覧。
^ Unterberger, Richie . “Don't Let Me Down - The Beatles | Song Info ”. AllMusic . All Media Group. 2020年11月24日 閲覧。
^ "Ultratop.be – The Beatles with Billy Preston – Don't Let Me Down" (in French). Ultratop 50 . 2020年11月24日 閲覧。
^ “The Beatles Chart History (LyricFind Global) ”. Billboard . 2022年3月12日 閲覧。
^ Unterberger, Richie. Through the Morning, Through the Night - Dillard & Clark | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年11月24日 閲覧。
^ “Marcia Griffiths - Don't Let Me Down / What Happen Man - Harry J - Jamaica ”. 45cat . 2020年11月24日 閲覧。
^ Greene, Jo-Ann. Liquidator - Harry J All-Stars | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年11月24日 閲覧。
^ Hamilton, Andrew. Rough Edges - Ben E. King | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年11月24日 閲覧。
^ Viglione, Joe. It Looks Like Snow - Phoebe Snow | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年11月24日 閲覧。
^ “大物日本人アーティストが参加!レノン・トリビュート ”. ORICON NEWS . オリコン (2005年9月16日). 2021年2月10日 閲覧。
^ “ultratop.be - Ryan Paris - Don't Let Me Down ”. ultratop.be . 2020年11月24日 閲覧。
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^ “ジ・アグロライツ「UNLEASHED LIVE Vol.1」 | SIWI-171 ”. Billboard JAPAN . 阪神コンテンツリンク . 2020年11月24日 閲覧。
^ “【2014年グラミー特集】ポール・マッカートニー&リンゴ・スター、ザ・ビートルズのトリビュート公演でも共演 ”. BARKS . ジャパンミュージックネットワーク (2014年1月29日). 2022年7月6日 閲覧。
参考文献
Carr, Roy ; Tyler, Tony (1975). The Beatles: An Illustrated Record . New York: Harmony Books. ISBN 0-517-52045-1
Hal Leonard Publishing Corporation, ed (1993). The Beatles - Complete Scores . Milwaukee: Hal Leanord. ISBN 0-7935-1832-6
Lewisohn, Mark (1988). The Beatles Recording Sessions . New York: Harmony Books. ISBN 0-517-57066-1
Lewisohn, Mark (1996b). Anthology 3 (booklet). Apple Records .
MacDonald, Ian (2005). Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties (Second Revised ed.). London: Pimlico (Rand). ISBN 1-84413-828-3
Miles, Barry (1997). Paul McCartney: Many Years From Now . New York: Henry Holt and Company . ISBN 0-8050-5249-6 . https://archive.org/details/paulmccartneyman00mile
Sheff, David (2000). All We Are Saying: The Last Major Interview with John Lennon and Yoko Ono . New York: St. Martin's Press . ISBN 0-312-25464-4
Winn, John C. (2009). That Magic Feeling: The Beatles' Recorded Legacy, Volume Two, 1966-1970 . New York: Three Rivers Press. ISBN 978-0-307-45239-9
外部リンク
UK盤・US盤共通
1963年 1964年 1965年 1966年 1967年 1968年 1969年 1970年 1978年 1982年 1995年 1996年 2023年
UK盤 (パーロフォン /アップル )
US盤 (ヴィージェイ /スワン /トリー /キャピトル /アップル )
1963年 1964年 1965年 1966年 1970年 1976年
その他 (オデオン /パーロフォン /アップル )
1963年 1964年 1965年 1966年 1968年 1969年 1970年 1972年 1978年 1981年