シャミセンガイ

シャミセンガイ
姫路市立水族館の「生きている化石展」で展示されたミドリシャミセンガイ Lingula anatina
分類
: 動物界 Animalia
: 腕足動物門 Brchiopoda
亜門 : 舌殻亜門 Linguliformea
: 舌殻綱 Lingulata
: 舌殻目 Lingulida
: シャミセンガイ科 Lingulidae
学名
Lingulidae Menke, 1828

シャミセンガイ(三味線貝、学名:Lingula)は、腕足動物門舌殻綱舌殻目(無穴目)シャミセンガイ科(リンギュラ科)の総称である[1][2][3][4]

あるいは狭義にはシャミセンガイ科の1種 Lingula jaspideaLingula rostrumシノニム、和名:ドングリシャミセンガイ[5])の和名ともされる[1][2]が、ここではシャミセンガイ科を扱う。

シャミセン「貝」という名で、貝殻様の殻を持つが、貝類ではない。

形態

尾には筋肉があるだけで、内臓はすべて殻の中に入っている。殻は二枚貝のように見えるが、二枚貝が左右に殻を持つのに対して、シャミセンガイは腹背に殻を持つ。殻をあけると、一対のバネのように巻き込まれた構造がある。これは触手冠と呼ばれ、その上に短い多数の触手が並び、そこに繊毛を持っていて、水中のデトリタスなどを集めて食べるための器官である。

特異な外観は、日本では三味線に例えられているが、中国ではモヤシに例えられて、命名されている。

「生きている化石」

太古から姿が変わっていない生きている化石の一つと言われることも多いが、実際には外形は似ているものの内部形態はかなり変化しており、生きた化石とは言いがたいという説もある。化石生物と現在のものとは別の科名や属名がつけられている。

2003年には、殻の形が大きく変化していることから、生きている化石であることは否定された[6]

生息地域

砂泥を行くミドリシャミセンガイ

温帯から熱帯の砂泥地に分布する。

日本では青森県以南に分布する。砂泥の中に縦穴を掘り、長い尾を下にして潜っている。

中国では、渤海湾以南に分布する。

台湾にも見られる。

生息数が減少しており、地域によっては絶滅が危惧されている。

モースによる研究

大森貝塚東京都大田区品川区)の発見者であるエドワード・S・モースは、明治10年にシャミセンガイの研究のために来日し、滞在する間におよそ一ヶ月の間江ノ島臨海実験所で研究をしており、その間にミドリシャミセンガイを500個体も捕獲した。

食用

日本における代表種、ミドリシャミセンガイL. anatina)は岡山県児島湾有明海で食用とされる。有明海ではメカジャ(女冠者)と呼ばれ、福岡県柳川市佐賀県佐賀市周辺でよく食用にされる。殻及び触手冠の内部の筋肉や内臓を食べる。味は二枚貝よりも濃厚で、甲殻類にも似た独特の旨みがある。

日本での料理としては、味噌汁、塩茹で、煮付けなどにすることが多い。

中国では広東省湛江市広西チワン族自治区北海市などで主に「海豆芽」(ハイドウヤー)などと称して炒め物にして食べられており、養殖の研究も行われている。

出典

  1. ^ a b 馬渡静夫 (1974), “シャミセンガイ”, in 相賀徹夫, 万有百科大辞典, 小学館 
  2. ^ a b 馬渡静夫 (1987), “シャミセンガイ”, in 相賀徹夫, 日本大百科全書, 小学館 
  3. ^ フランク・B・ギブニー, ed. (1993), “シャミセンガイ”, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 REFERENCE GUIDE, 第2版改訂版, ティービーエス・ブリタニカ 
  4. ^ 今島実 (2009), “シャミセンガイ”, in 下中直人, 世界大百科事典, 2009年改定新版, 平凡社 
  5. ^ 日本生物地理学会. “Lingula Bruguière 1791”. 2020年12月13日閲覧。
  6. ^ Emig, Christian C. (2003), “Proof that Lingula Brachiopoda is not a living-fossil, and emended diagnoses of the family Lingulidae”, Carnets de Geologie Letter 1: 1-8