広尾線(ひろおせん)は、かつて日本国有鉄道(国鉄)が運営していた鉄道路線(地方交通線)。北海道帯広市の帯広駅で根室本線から分岐し、十勝平野を南下して広尾郡広尾町の広尾駅に至る路線であった。
国鉄再建法の制定により1984年に第2次特定地方交通線に指定され、国鉄分割民営化直前の1987年2月2日に全線廃止となった。
路線データ
運行形態
廃止前年の1986年11月1日改正時点では、全線通しの普通列車のみが6往復設定されていた[4]。
鉄道による観光輸送が全盛期であった1962年7月1日に、夏季(9月2日まで)運行の臨時準急「ひろお」1往復が全線で設定され、1965年まで毎年運行された(途中停車は大樹駅)。1966年は士幌線の糠平駅と広尾駅の間を結ぶ形(広尾線内は「ひろお」、士幌線内は「しほろ」)で、8月の2週間運行された。1967年からは糠平・広尾間を臨時急行「大平原」として運行され、広尾ではこれに接続する国鉄バスも増発された。「大平原」はいずれも鉄道としては盲腸線であるローカル線を結んで走るという、珍しい運行形態であった。1975年の夏は広尾線内のみの運行となり、その年限りで廃止となっている。
- 臨時急行「大平原」停車駅(1969年9月時点)
- 広尾 - 大樹 - 帯広 - 士幌 - 上士幌 - 糠平
歴史
改正鉄道敷設法別表第133号に規定する「膽振國苫小牧ヨリ鵡川、日高國浦河、十勝國廣尾ヲ經テ帶廣ニ至ル鐵道」の一部であり、1929年から1932年にかけて帯広 - 広尾間が開業した。西側の区間は、2つの軽便鉄道を買収して延長した日高本線として1935年に様似まで開業したが、様似 - 広尾間は未開業に終わり、国鉄バス襟裳線(現在はジェイ・アール北海道バス・日勝線)がその間を結んでいた。1980年に国鉄再建法が成立すると、第2次特定地方交通線に指定され、国鉄分割民営化直前の1987年2月に廃止された。
国鉄広尾線時代に愛国駅 - 幸福駅間の切符が「愛の国から幸福へ」として人気となり、一連の縁起切符ブームの火付け役となった。1981年度の営業成績は、80%がこの切符の売り上げとなった。廃止後は、当路線の代行バスを運行している十勝バス(詳細後述)が引き続き硬券乗車券を発売している。なお当路線では「新生駅 - 大樹駅」の切符を求める人もいた。
駅一覧
- 駅・事業者・所在地などの名称は、広尾線廃止時点のもの。
- 全駅北海道に所在。
廃線後
代替バス
広尾線廃止後は、十勝バスが代替バスの運行を開始した[11]。廃止前から十勝バスは並行する路線を運行していたが[11]、拡充する形で早朝・深夜の増発、快速便や区間便、道路事情の関係でルートから外れる依田・北愛国経由などの系統も設定されたり、転換交付金による新車も投入された[11]。その後は中型車の運行や、系統の統合(依田・北愛国経由は廃止)や減便を実施しているが、モータリゼーションの更なる進行や、沿線の過疎化の影響で、乗車率は低迷しており、2006年に国土交通省北海道運輸局が公表した「高額補助金交付路線」に名を連ねた。
2017年11月4日現在、帯広駅バスターミナル - 広尾間に平日14往復、休日10往復が運行されている。このほか、沿線の通学客用に下りは帯広市バスターミナル→大正小学校前間の区間便が1本、上りは更別南3線・中札内小学校前・大正→三条高校開西病院前・大谷高校前・緑陽高校前間の区間便が、それぞれ1本運行されている(区間便は、学校登校日のみ運行)[13]。
遺構
2018年現在、廃線から四半世紀以上経過するが、待合室のみの駅を含む旧駅舎が4駅(愛国、幸福、忠類、大樹)残存しており、記念公園(愛国、幸福、忠類)になっているものや、他目的に転用されたもの(大樹)などがあるが、営業当時の面影を残している。
脚注
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 今尾恵介監修『日本鉄道旅行地図帳』1号 北海道、新潮社、2008年、p.40
- ^ a b c d e f g h 宮脇俊三編著『鉄道廃線跡を歩く』IV、JTB、1997年、p.201
- ^ 元は第一、第二札内川橋梁があった。
- ^ 『交通公社の時刻表』1986年12月号、日本交通公社、p.518
- ^ 「鉄道省告示第216・217号」『官報』1929年10月26日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 「鉄道省告示第253・254号」『官報』1930年10月3日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ 「鉄道省告示第428・429号」『官報』1932年10月28日(国立国会図書館デジタルコレクション)
- ^ a b c 大樹町史編さん委員会 編『大樹町史』大樹町、1969年3月30日、464頁。doi:10.11501/9539029。https://dl.ndl.go.jp/pid/9539029。2023年6月4日閲覧。
- ^ 池田光雅『鉄道総合年表1972-93』中央書院、1993年、p.34
- ^ 池田光雅『鉄道総合年表1972-93』中央書院、1993年、pp.84,98
- ^ a b c d 『鉄道ジャーナル』第21巻第7号、鉄道ジャーナル社、1987年6月、98頁。
- ^ 『日本鉄道旅行地図帳』 1号 北海道、今尾恵介(監修)、新潮社、2008年5月、16、40頁。ISBN 9784107900197。
- ^ 北海道・十勝・帯広 平成28年11月26日改正 十勝バス時刻表No.6 (PDF) - 十勝バス
関連項目
- 中札内美術村 - 旧広尾線の枕木が遊歩道に使用されている。
- 芹洋子 - 『愛の国から幸福へ』という曲を歌った歌手
- やまがたすみこ - 『幸福駅』という曲を作詞・作曲し歌唱したシンガーソングライター
外部リンク
|
---|
第1次廃止対象路線 | |
---|
第2次廃止対象路線 | |
---|
第3次廃止対象路線 | |
---|