国会(こっかい、英: National Diet)は、日本の立法府。衆議院(しゅうぎいん)および参議院(さんぎいん)から構成される両院制の議会である。国権の最高機関とされる(日本国憲法第41条、第42条)。
概要
日本国憲法において、国会は「国権の最高機関」であって、「国の唯一の立法機関」と位置づけられている(憲法41条)。また、「国民の代表機関」としての性格も有する(憲法43条1項)。
国会の議事が行われる国会議事堂の所在地は、東京都千代田区永田町1丁目7番1号。俗に国会ないし国会議員(衆議院議員・参議院議員)を指して「永田町」と呼ぶ。
国民の代表機関
国会は、衆議院(下院)及び参議院(上院)の両議院でこれを構成し(憲法42条)、両議院は「全国民を代表する選挙された議員」(国会議員。総選挙で選出される衆議院議員及び通常選挙で選出される参議院議員)でこれを組織する(憲法43条1項)。
国権の最高機関
日本国憲法は、国会を「国権の最高機関」と定める(憲法41条)。
ここで、「最高機関」の意味が問題となる。この点、憲法学説上は、政治的美称説が通説的見解と目されている。政治的美称説とは、国会が諸々の国家機関の中で主権者たる国民に次いで高い地位にあり、国民に代わって、国政全般にわたり、強い発言力をもつべきであることから、「最高機関」とは、国民を代表し、国政の中心に位置する重要な機関であるという点に着目して国会に付した政治的美称であるとする見解である。この見解は、憲法が権力分立制を採用していること、内閣による衆議院解散、違憲立法審査権の存在、司法権の独立などから、「最高機関」に特段の法的意味を認めない。この点について、より積極的な意味づけをなす見解もある。
- 統括機関説 - 国会は、国権の最高機関として内閣、裁判所の上位に君臨し、国政全般にわたって最終的な決定権を有する。
- 最高責任地位説 - 国会は、国権の最高機関として国民に対して国政全般の責任を負い、行政、司法作用を調整する。
国の唯一の立法機関
日本国憲法は、国会を「国の唯一の立法機関」と定める(憲法41条)。
これは、明治憲法下における帝国議会(1890年-1947年)が、天皇の立法権に協賛する地位(協賛機関)にとどまったのに対して、国会は立法権を独占する機関(立法機関)であることを意味する(ただし明治憲法下で立法権が天皇にあったのは名目的なことで実際には帝国議会の協賛がなければ天皇は立法権を行使できなかった。ただ、天皇は「緊急勅令」という、法律と同等の効力があるものを発することができた。この勅令には、後日、議会の承認が必要ではあった)。
さらに、この規定を詳細に見ると、「唯一」と「立法」の意味が問題となる。
「唯一」の意味
国会が国の「唯一」の立法機関であるとは、次の2つの意味を持つ。
- 国会中心立法の原則(国会中心立法主義)
- 国の行う立法は、憲法に特別の定めがある場合を除いて、常に、国会を通して為されなくてはならないとする原則。この原則の例外となる「特別の定め」としては、衆議院と参議院の各議院がその自律権に基づいて定める議院規則(憲法58条2項)、および、最高裁判所が定める最高裁判所規則(憲法77条1項)が挙げられる[注 3]。
- この原則は、(1)行政権が緊急命令や独立命令の形式で、議会を通すことなく、独自に立法を行う立法二元制(明治憲法における緊急勅令や独立命令など)の廃止、および、(2)行政権が行う立法を、法律の執行に必要な細則を定める執行命令と法律の委任に基づく委任命令に限定する立法一元制の採用(憲法73条6号参照)に示される。
- 国会単独立法の原則(国会単独立法主義)
- 国会による立法は、国会以外の機関の関与がなくとも、国会の議決のみで成立するとする原則。この原則に対する例外として、憲法は、地方自治特別法の制度を定める(憲法95条)。
- この原則は、明治憲法下での天皇の立法に対する関与の廃止(ただし前述のとおり明治憲法下で立法権が天皇にあったのは形式的なことであり、実質的には帝国議会の議決によってのみ立法された)[注 4]、国会の議決のみによる法律の成立(憲法59条1項)に示される。
「立法」の意味
日本国憲法第41条「国の唯一の立法機関」にいう「立法」とは、形式的意義の立法(国会が制定する「法律」という国法の一形式の法規範の定立)ではなく実質的意義の立法(一般的・抽象的法規範の定立)を指すものと解されている。
その理由は憲法41条の「立法」を形式的意味の立法を指すものと解釈してしまうと、「国会が制定する法律という法形式の法規範を制定する権限は国会のみにある」という意味を持たない規定になってしまうためである。したがって、実質的意味の立法であると理解されているが、実質的意味の立法の内容については一般的・抽象的法規範の定立の範囲を巡って見解が分かれている。
沿革
前史
帝国議会時代
国会時代
構成と組織
両院制(衆議院・参議院)
国会は、衆議院(しゅうぎいん)と参議院(さんぎいん)によって構成される。両議院とも、主権者である国民の選挙(衆議院議員総選挙・参議院議員通常選挙)によって選ばれた国会議員(衆議院議員465人、参議院議員248人)により組織される、民選議院型の両院制である(衆議院は下院、参議院は上院に相当する)。
両議院を補佐する機関として、各議院に事務局と法制局が設置され、また議院に直属しない補佐機関として国立国会図書館がある。このほか、日本国憲法に定める国会による裁判官の弾劾を行うため、裁判官訴追委員会と裁判官弾劾裁判所が設置されている。
両院協議会
衆議院と参議院で議決が一致しなかった場合は、その調整を行うため、両院協議会(りょういんきょうぎかい)が開催される。予算、条約の承認、内閣総理大臣の指名について議決が異なった場合には必ず開催され、法律案について議決が異なった場合には衆議院が協議会を請求したとき及び参議院が協議会を請求しこれに衆議院が同意したときに開催される。
衆議院の優越
衆議院と参議院はそれぞれ国会の一院として対等な地位を占めるが、憲法上あるいは法律上において衆議院の議決が優先する場合(衆議院の優越)がある。
ただし、参議院の緊急集会では衆院予算先議権の例外として、衆議院より先に参議院で予算を審議して採決をすることができるが、内閣に提出権がない憲法改正を議題にできないとされている。
各議院の役員
各議院には国会法により以下のような役員が設置される(国会法第16条・第26条等)。
- 議院の秩序を保持し、議事を整理し、議院の事務を監督し、議院を代表する(国会法第19条)。
- 議長に事故があるときまたは議長が欠けたときに議長の職務を行う(国会法第21条)。
- 議長及び副議長に共に事故があるときに議長の職務を行う(国会法第22条1項)。
- 各議院において各々その常任委員の中から選挙される。(国会法第25条)
- 議長の監督の下に、議院の事務を統理し、公文に署名する(国会法第28条)。
- 事務総長の命を受け事務を掌理する(国会法第28条2項)。
委員会及び参議院の調査会
帝国議会時代の議案審議が本会議中心であったのに対して、戦後国会はアメリカ議会に範をとって国会審議は、委員会を中心に行われている。
各議院の委員会には、国会法に名称が明記された常設の常任委員会と、案件ごとに各議院が必要に応じて設けることが可能な特別委員会の2種類がある(国会法第40条)。すべての議案は本会議での趣旨説明および必要に応じて代表質問の後にどこかしらの常任委員会に付託される(国会法第56条の2)が、所掌するべき常任委員会がなく、かつ特別委員会を設けて審議するまでもないと議長が判断した場合は、本会議の議決に基づき「他の常任委員会に属しない内閣府に関する事項」として内閣委員会、もしくは「議長の諮問に関する事項」として議院運営委員会に付託される。
なお、特に緊急を要する議案は委員会への付託を省略することもできる(衆議院規則111条、参議院規則26条)とされており、内閣ないしは国務大臣・両院役職者に対する不信任決議案がこの例に当たる。
委員会は単独で開催するほかに、同一院内の複数の委員会による連合審査会として(衆議院規則第60条、参議院規則第36条)、あるいは衆議院と参議院の両院の常任委員会による合同審査会として(国会法第44条)、開催することも可能である。
また、具体的な議案の付託の有無にかかわらず、長期的な調査を行うための委員会的な組織として参議院にのみ「調査会」を設けることができ(国会法第54条の2)、慣例により3以内の調査会を置くこととなっている。これは、解散がなく任期が安定している参議院の特色を生かした制度である。
- 常任委員会の例 - 予算委員会
- 特別委員会の例 - 災害対策特別委員会
- 参議院の調査会の例 - 共生社会に関する調査会
常任委員会
憲法審査会
第167回国会から国会法改正法が施行され、衆議院と参議院の両院に、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等を審査するため、各議院に憲法審査会を置き(国会法第102条の6)、国会法第68条の2に基づく両院の議員による改正の発議に加えて、同審査会も改正の発議又は国民投票に関する法案の提出が可能となった(国会法第102条の7)。実際の憲法改正原案についての審議は2010年(平成22年)5月18日以降可能となった。
法的には第167回国会の召集日である2007年(平成19年)8月7日から各議院に憲法審査会が存在していることになる。同審査会の組織・手続の詳細を定める「憲法審査会規程」は、衆議院では2009年(平成21年)6月11日に自民・公明の与党の賛成多数で制定され、参議院では2011年(平成23年)5月18日に民主・自民・公明・みんななどの賛成多数で制定されたが、その後も両院とも審査会の会長・委員が選出されない休眠状態が続いた。
2009年(平成21年)の民主党への政権交代以降、鳩山政権・菅政権時代の国会では憲法審査会の始動に向けた進展はなく、2010年(平成22年)5月18日の完全施行に至っても事実上存在しない状況が続いたが[4]、野田政権発足後の2011年(平成23年)10月21日に会長・幹事・委員が選任されて始動した。
2011年(平成23年)11月17日、衆院憲法審査会が開催された。参考人として元衆院憲法調査会会長・中山太郎は改憲論議の推進を表明し、各党が意見表明をした。同年11月28日、参院憲法審査会が開催された[注 5]。参考人として元参院憲法調査会会長・関谷勝嗣は改憲手続法の制定経緯などを説明し、各党が意見表明をした。
2024年(令和6年)11月、衆院憲法審査会会長には野党立憲民主党_(日本_2020)から枝野幸男が就任している。
憲法審査会は、憲法改正原案及び日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案を提出することができる(第102条の7)。
国民投票広報協議会
憲法改正の発議があったときに、当該発議に係る憲法改正案の国民に対する広報に関する事務を行うため、各議院においてその議員の中から選任された同数の委員で組織される臨時の機関。2010年(平成22年)5月18日以降発効。
情報監視審査会
行政における特定秘密の保護に関する制度の運用を常時監視するため、各議院に情報監視審査会が設けられており(国会法第102条の13)、特定秘密や不開示情報の提供を受けることができる一方で、会議や会議録は原則非公開となっている。特定秘密保護法とともに施行した国会法改正法で規定されたが、しばらく委員の選任は見送られ、2015年(平成27年)2月26日に委員が選任されて始動した。
政治倫理審査会
政治倫理の確立のため、各議院に政治倫理審査会が設けられており(国会法第124条の3)、行為規範等に違反するとされた場合に法的拘束力のない勧告を行う。審査例は存在するが、実際に勧告まで至った実例はない。報道では「政倫審」と略されることが多い。
運営
会期制
概要
日本の国会は「会期」と呼ばれる一定期間にのみ活動を行う会期制を採用している[注 6]。会期は国会の召集により始まる。国会の召集は憲法第7条第2号により天皇の国事行為とされており、国会の召集詔書は集会の期日を定めて公布される(国会法第1条1項)。議員は召集詔書に指定された期日に各議院に集会しなければならない(国会法第5条)。集会する時刻は議院規則で午前10時となっている(衆議院規則第1条及び参議院規則第1条)。
会期延長および臨時会と特別会の会期設定は両議院一致の議決で行うとされているが(国会法第11条・第12条1項)、両院不一致の場合は衆議院の議決に従う(国会法第13条、衆議院の優越)。
会期終了と同時に審議中の議案は原則として廃案となる。ただし閉会前に手続をとることにより、委員会は閉会中も審査を行うことができる。これにより次の会期においても審議の進捗を引き継ぐことが可能になる(継続審議)。
会期中に議決に至らなかった案件は、後会に継続しない(国会法第68条)。
開会式
国会は、召集後の早い時期に参議院本会議場において、天皇臨席のもとで、衆議院議長が主催して開会式を行う。開会式の日時及び場所は衆議院議長と参議院議長の協議で定める(衆議院規則第19条及び参議院規則第21条)。開会式では、衆議院議長の式辞と天皇のおことばが述べられる。開会式には衆議院議員と参議院議員が参議院本会議場に一様に集まるが、席が足りないため、入りきらない議員は2階席に集められる。開会式前には、衆議院議員と参議院議員が正門前に整列し、天皇の出迎えをするのが恒例となっている。
会期の種類
- 常会(通常国会)
- 常会は毎年1回、1月中に召集される国会である(52条・国会法第2条)。憲法上は「常会」というが、一般には「通常国会」と呼ばれることが多い。会期は150日であるが、会期中に議員の任期が満限に達する場合には満限の日をもって終了する(国会法第10条)。延長は1回のみ可能(国会法第12条1項・2項)。
- 臨時会(臨時国会)
- 臨時会は憲法あるいは国会法の規定に基づいて内閣が臨時に召集する国会で、内閣は必要に応じて臨時会の召集を決定できるが(憲法第53条前段)、いずれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば内閣は臨時会の召集を決定しなければならない(憲法第53条後段)。このほか国会法の規定により衆議院議員の任期満了による総選挙が行われたとき及び参議院議員の通常選挙が行われたときにも内閣は原則として臨時会を召集しなければならない(国会法第2条の3)。憲法上は「臨時会」というが、一般には「臨時国会」と呼ばれることが多い。延長は2回まで可能(国会法第12条1項・2項)。
- 特別会(特別国会)
- 特別会は衆議院の解散による総選挙の後に召集される国会である(憲法第54条1項)。憲法上は呼称の規定がなく国会法において「特別会」と定められているが、一般には「特別国会」と呼ばれることが多い。延長は2回まで可能(国会法第12条1項・2項)。常会と併せて召集することもできる(国会法第2条の2)。
休会
会期と会期の間を閉会(中)と呼ぶのに対し、会期中において国会あるいは議院がその意思によって自律的にその活動を一時的に休止することを休会といい、法規上「国会の休会」と「議院の休会」の2種類が定められている。会期中、国の行事、年末年始その他議案の都合等の理由により両院の議事を一斉に休止するのが相当である場合は、両院議長の協議を経て、衆議院と参議院の両院一致の議決をもって、あらかじめ日数を定めて休会することができる(国会の休会)。この場合、衆議院の優越はなく両院の議決が必要となる(国会法第15条1項)。各議院は単独で10日以内において自院のみの休会を議決することも可能で、この場合は他院との事前協議は不要である(議院の休会)(国会法第15条4項)。
なお、明治憲法下では政府の意思により他律的にその活動を休止する停会の制度があったが(同憲法第7条・第44条、旧議院法第33条・第34条)、日本国憲法下では停会の制度はない。
参議院の緊急集会
衆議院が解散された場合、参議院も同時に閉会となる(両院同時活動の原則)。この衆議院解散から特別会の開会までの閉会中、「国に緊急の必要があるとき」に、内閣は参議院の緊急集会の開催を求めることができる。緊急集会は国会の会期ではなく(詳細は「参議院の緊急集会」の項目参照)、緊急集会においてとられた措置は「臨時のもの」とされる。このため、緊急集会でとられた措置は、次の国会開会の後10日以内に衆議院の同意が求められ、同意がない場合には、その効力を失う。
議事手続
開議
参議院規則では会議は原則として午前10時に始めることとされている(参議院規則第81条)。また、衆議院規則では会議は原則として午後1時に始めることとされている(衆議院規則第103条)。
開議の時刻となったときは、議長は議長席に着いて諸般の事項を報告後に会議を開くことを宣告するが、この宣告までは何人も議事について発言することが許されない(衆議院規則第104条、参議院規則第83条)。
散会
議事日程に記載した案件の議事を終わったときは議長は散会する(衆議院規則第105条、参議院規則第82条)。
延会
議事が終わらない場合でも、衆議院においては午後6時を過ぎたとき、参議院においては午後4時を過ぎたときは、議長は議院に諮らないで延会することができる(衆議院規則第105条、参議院規則第82条)。ただし、参議院規則では議事を終わらない場合でも、議長が必要と認めたときは議院に諮って延会することができるとしている(参議院規則第82条)。
定足数
定足数とは、審議・議決に必要な出席者数をいう。
表決数
表決数とは、意思決定に必要な賛成者数をいう。
表決の手続
- 議長は表決を採ろうとするときは表決に付する問題を宣告することとなっており、宣告後、議員は表決に付された問題について発言できない(衆議院規則第150条、参議院規則第136条)。議員が表決に加わるには現に議場にいなければならない(衆議院規則第148条、参議院規則第135条)。表決には条件を付けることができない(衆議院規則第149条、参議院規則第134条)。
- 表決方法
- 起立採決 - 表決方法は議長が問題について可とする者を起立させて起立者の多少を認定して決する起立採決を原則とする(衆議院規則151条、参議院規則第137条)。
- 記名投票 - 議長が起立者の多少を認定しがたいとき、議長の宣告に対し出席議員の5分の1以上から異議を申し立てられたとき、議長が必要と認めたときは記名投票となる(衆議院規則第151条・第152条、参議院規則第138条・第139条)。記名投票は問題を可とする議員が白色の票(衆議院規則では白票、参議院規則では白色票という)を、問題を否とする議員は青色の票(衆議院規則では青票、参議院規則では青色票という)を投票する(衆議院規則第153条、参議院規則第139条)。それぞれの色の木札は各議席に用意されており、白票(白色票)には黒い字で、青票(青色票)には赤い字であらかじめ議員の氏名が記されている。記名投票の際には議長は「議場閉鎖」を宣告し(衆議院規則第154条、参議院規則第140条)、その後、参事に点呼を命じる(議席番号順)。各議員は登壇して投票を行うが、先例により衆議院では時計回りに、参議院では反時計回りに投票が進められる。投票が終わったときは、議長は投票漏れがないか確認する。その後、議長は「投票箱閉鎖」と「開票」、「議場開鎖」を宣告する。そして、理事が票の点検と集計を行い、集計後、議長は投票の結果を宣告する(衆議院規則第155条、参議院規則第141条)。衆議院では議長は事務総長に結果報告を命じるのが先例となっている。
- 押しボタン式投票 - 2015年(平成27年)現在、参議院でのみ導入されている方法。議席に設置された投票機を用いて問題を可とする議員は賛成ボタン、問題を否とする議員は反対ボタンを押すことにより投票する(参議院規則第140条の3)。議長が必要と認めたときに押しボタン式投票となる(参議院規則第140条の2)。参議院の各議員席には投票機が設置されており、賛成の白色ボタン、反対の青色ボタン(緑色に近い)、そして、取消の赤色ボタンが並んでいる。押しボタン式投票の際には議長は「本案の賛否について、投票ボタンをお押し願います」と宣告して投票が開始される。各議員が賛成や反対のボタンを押すと、投票機の上部に付けられている小型の白ランプや青ランプ(緑色に近い)が点灯して自らの押した内容を確認できるようになっている。議長は時期を見計らって「間もなく投票を終了いたします」「これにて投票を終了いたします」と告げる。そして、投票結果を議長が報告すると同時に投票結果(投票総数、賛成、反対)が参議院議場内3か所に設けられている表示盤に表示される。
- 異議なし採決 - 議長は問題について異議の有無を議院に諮るという形で表決をとることができる(衆議院規則第157条、参議院規則第143条)。この場合、議長は異議がないと認めたときは可決の旨を宣告する。ただし、議長の宣告に対して議員が異議(衆議院の場合は出席議員20人以上の異議)を申し立てたときは、議長は異議なし採決をとることができない。
公開の原則・記録の公表
- 本会議(憲法第57条)
- 両議院の会議は、公開とする。ただし、出席議員の3分の2以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。
- 両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、かつ一般に頒布しなければならない。
- 出席議員の5分の1以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。
- 委員会は原則非公開。議員のみが傍聴可能。ただし、報道関係者などで委員長の許可を受けた者は傍聴可能(国会法第52条)。
行政府との関係
- 日本国憲法は議院内閣制を採用している。
- 議院内閣制とは、議会と内閣が一応分立しつつ、議会の信任(特に、両院制をとる場合には、下院の信任。日本では衆議院の信任)を内閣存立のための必要条件とする制度である。多くの場合、議会の多数派が与党を形成し、与党の中から内閣総理大臣を指名するため、議会と内閣は一体的に協働することになる。日本国憲法では、以下の諸規定により、議院内閣制を定める。
- 内閣による行政権の行使について、国会に対し、連帯して責任を負うこと(憲法第66条3項)。
- 内閣総理大臣は、国会の議決により指名されること(憲法第67条1項前段)。
- 内閣総理大臣は、国会議員の中から指名されること(憲法第67条1項前段)。また、国務大臣の過半数は、国会議員の中から選ばれなければならないこと(憲法第68条1項ただし書)。
- 衆議院の内閣不信任決議を定めたこと。また、内閣不信任決議を受けて、内閣が衆議院を解散しうる権限を定めたこと(憲法第69条)。なお、内閣は国会に対し連帯して責任を負うこととされ(憲法第66条3項)、国会を構成する一院である参議院も内閣がその果たすべき責任を充分に果たしていないと考える場合には内閣の責任を問うことができるが、憲法第69条のような法的効果を生ずることはなく政治的な効果を生じるにとどまると解されている。
- これらの規定のうち、内閣の国会にする連帯責任に関する規定を議院内閣制の本質的要素と見る考え方は、責任本質説と呼ばれ、通説とされる。これに対して、責任規定のほか、内閣の衆議院解散権に関する規定をも議院内閣制の本質的要素と見る考え方は、均衡本質説と呼ばれる。
国会の権能
国会としての権能には以下のようなものがある。
立法権
国会は国の唯一の立法機関である(憲法第41条)。法律案の議決については憲法第59条に定めがある。
国の唯一の立法機関であるため、憲法上の人権に関する条文などで見られる「法律の定めるところにより」「法律の定める手続によらなければ」とある場合には、国会のみが具体的な条件・詳細な規定等を定めることができる。なお、立法府としての国会がその判断において、実施細則、具体的な基準等についての決定を行政府たる内閣等に委任することはできる。ただし、この場合でも一定の制約を付することが必要とされる。
憲法は、所定の憲法改正手続を経なければ、国会だけの判断により改正することはできないが、その憲法の範囲内において、立法をなすことができるのは国会だけであり、行政府の活動については法律に従ってなされる必要があるから、行政の活動は、当然に国会の意思に縛られることになる。日本では議院内閣制をとっていることから、通常は、国会の意思と行政府を指揮する内閣の意思とは一致する傾向にある。
裁判官は法律に拘束される(憲法第76条第3項)。憲法に違反する場合には、裁判所が違憲立法審査権を行使して当該法律の無効と判断することはあるものの、法律を制定する国会の意思は、裁判を通して日本国の全てに及ぶものといえる。
その他の国会の主な権能
- 条約の国内法の性質を巡っても諸説あるが、これまた少なくとも行政に対する国会からの統制となることは疑いない。条約否決という強権は、憲法では事実上衆議院のみに認めている。
- 国会は、罷免の訴追を受けた裁判官を裁判するため、両議院の議員で組織する裁判官弾劾裁判所を設ける(憲法第64条)。非行のあった裁判官を裁判官弾劾裁判所に訴追するのは、同じく国会議員で組織する裁判官訴追委員会である。裁判官弾劾裁判所と裁判官訴追委員会は、ともに国会から独立して職権を行使する。
- 財政については予算承認権(憲法第86条)や予備費の承諾(憲法第87条)などの権限を有する。予算の法的性質を巡っては諸説あるが、少なくとも行政に対する国会からの統制となることは疑いない。日本の憲法上は、法律制定による行政統制と見る必要は特になく、行政過程への介入による統制と見ても、国会の予算修正権等、一向に問題はない。予算否決という強権は、日本国憲法では事実上衆議院のみに認めているが、参議院の自然成立前に予算が執行される場合は、暫定予算を衆議院と参議院で議決する必要がある。
議院の権能
議院の権能には主に議院自律権と国政調査権の二つがあり、これら議院の権能については衆議院と参議院の各院が独立して行使することができる。
議院自律権
- 自主組織権
- 出席議員の3分の2以上の多数による議決で議員の議席を失わせることができる。議員に就任した後に議員資格を有するか否かを判断する権限が各議院に付与されている。
- 自律的運営権
- 規則制定権(憲法第58条2項本文前段)
- 議員に対する懲罰権(憲法第58条2項本文後段及びただし書)
- 院内の事項に限られ、院外については及ばない。議員を除名するには出席議員の3分の2以上の多数による賛成が必要
国政調査権
各院には国政調査権が認められている。必ずしも行政機関のみに限らず、公私の諸団体・個人にも及ぶ。
国会の会期一覧
- 会期外における参議院の緊急集会を含む(詳細は同項目参照)。「緊急集会」における括弧内の日付は緊急集会請求日、集会日及び終了日。
- 「審議内容・備考」欄に「衆議院解散」とあるものは、「会期終了日」欄に記載された日に衆議院解散が行われたことを指す(従って、召集前に定めた会期末と異なる場合もある)。
- 開会式欄の「-」は、会期の冒頭で衆議院が解散され開会式が行われなかったことを表す。なお、参議院の緊急集会については、開会式自体が行われない。
- 延長回数欄の数字は、会期の延長に関する議決が行われた回数とし、両院で議決が行われた場合も衆院のみで議決が行われた場合もともに1回とする(各院をそれぞれ1回とは数えない)。延長議決後、当初の会期中に衆議院解散等のため国会が終了となり、実際に延長の期間が効力を発しなかった場合もこの欄では延長回数に含める。
- 第110回から第112回まで、第114回、第125回及び第128回の6国会の詔書は、国事行為臨時代行によるもの。
- 第110回から第113回までの4国会の開会式には、病気療養中の昭和天皇の名代として皇太子明仁親王(当時)が臨席し「おことば」を代読している。
(松澤浩一 1987, pp. 25–26)
会議録
国会の本会議では第1回から速記録の「衆議院会議録」と「参議院会議録」が作成されている[8]。また、第1回国会から第13回国会まで「英文衆議院会議録」と「英文参議院会議録」が作成された[8]。
委員会記録については両院で性格が異なり、衆議院では委員の会議録として「衆議院委員会議録」が作成され、参議院では委員会の会議録として「参議院委員会会議録」が作成されている[8]。
議事は速記によって記録される(衆議院規則第201条、参議院規則第156条)[8]。初期の国会では議事録の作成は速記のみで行われ、各院に速記者の養成所があったが、1951年(昭和26年)2月8日に参議院労働委員会でテープレコーダーが導入され採用テストが行われた[9]。なお、各院独自に設けられていた速記者の養成所は2006年に廃止された[9]。手書き速記は本会議や予算委員会などでは行われているが、それ以外の会議においては参議院では2008年から担当職員がモニターで音声と映像を確認してパソコン入力する方式、衆議院では2011年から音声認識システムが導入されている[10]。
脚注
注釈
- ^ 議長:関口昌一(自由民主党)・副議長:長浜博行(立憲民主党)を含む。
- ^ 議長:額賀福志郎・副議長:玄葉光一郎を含む。
- ^ この点、条例が国会中心立法の原則の例外となるか問題となる。通説的見解によれば、条例の制定は、国会の法律制定と同じ性質の行為であり、また、地方議会もまた、国会と同様に、住民により選挙された議員で組織されるものであること等を理由に、例外と見る必要はないとする。
- ^ この点、日本国憲法7条1号に定められる天皇による法律の「公布」は、法律の成立後、国民に広く知らせて効力を発生させる行為であることから、国会単独立法の原則に抵触しない。
- ^ 2007年(平成19年)8月の設置後初の審査会を開催した[5]。
- ^ 会期制に関連する項目として通年国会の項目も参照。
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
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