「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ 」(With a Little Help from My Friends )は、ビートルズ の楽曲である。1967年に発売された8作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド 』に収録された。ジョン・レノン とポール・マッカートニー によって書かれた楽曲(名義はレノン=マッカートニー )で、リード・ボーカル はリンゴ・スター が務めている。ビートルズ解散後のスターのソロ・コンサートにおける定番曲の1つとなっている。
1978年に「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド 」とともにシングル・カットされ、全英シングルチャート で最高位63位、Billboard Hot 100 で最高位71位を記録した。
2010年版のローリング・ストーンの選ぶオールタイム・グレイテスト・ソング500 では第311位にランクされている[ 1] 。
背景・曲の構成
「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」は、1967年3月中旬にレノンとマッカートニーによって、スターが演じるビリー・シアーズ(Billy Shears )という架空の歌手[ 注釈 1] が歌うというコンセプトのもとで書かれた。当時『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』のレコーディング・セッションは終盤に差しかかっており、時間に余裕がなかった関係から、本作を書き始めた翌日にレコーディングを行う予定となっていた。マッカートニーは当時について「ジョンと僕のちょっとした職人作業だった。僕はいつもそれを007 の映画の主題歌を書くようなものと考えていた。リンゴのキーにあわせて書かなきゃならなかったうえに、少しおふざけっぽく書かなきゃならなかったから、僕からすれば普段とはちょっと違った作業だ」と語っている。
本曲の当初のタイトルは、「Badfinger Boogie (バッドフィンガー・ブギ)」[ 注釈 2] 。楽曲の制作はレノンがギター、マッカートニーがピアノを弾きながら行われた。レノンは1980年の『プレイボーイ 』誌のインタビューで、「ポールの曲で、少しだけ僕も手伝った。『What do you see when you turn out the light, I can't tell you, but I know it's mine. (灯りを消したらなにが見えるんだろう?言えないけど、わかってる、ぼくのものさ)』の部分をね」と語っている。本作の制作の途中で、マッカートニーは「フール・オン・ザ・ヒル 」を歌い出し、レノンがこの時点でできていた歌詞を書き留めた。
冒頭の歌詞は当初「What would you think if I sang out of tune? Would you throw ripe tomatoes at me? (もし僕が音程を外して歌ったら君はどう思う?熟したトマトを投げつけてくれるかい?)」となっていたが、スターが「将来この曲をステージで歌うことになったときに本当にトマトを投げつけられたら嫌だ」と言って断り、現在の歌詞に変更された。これは1964年頃、記者会見でジョージ・ハリスン がゼリービーンズ が好きだとコメントしたことがきっかけで、ステージ上にゼリービーンズが投げ込まれるというハプニングが起きたことが関係している。
アメリカでの発売後、のちの第39代米国合衆国副大統領スピロ・アグニュー は歌詞中の「I get high with a little help from my friends (友達の助けを借りてハイになる)」というフレーズについて、「キャッチーな曲ではあるが、指摘されるまで“フレンズ”というのが各種のドラッグ を指すことには気が付かなかった」と語っており、本作を放送禁止にするように働きかけた[ 10] 。このフレーズについて、マッカートニーは「当時はマリファナ の時代だったから、軽く触れないわけにはいかなかった」と語っている。
レコーディング
本作のレコーディングは、アルバムのジャケット撮影を行う前日の1967年3月29日にEMIレコーディング・スタジオのスタジオ2で開始。レコーディング初日の時点で、前曲「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド 」と繋げることが決まっていたことから、ボーカル・インタールードからのスタートとなった。バッキング・トラックを10テイク録音したのち、テイク10が採用された。バッキング・トラックのトラック1にはマッカートニーのピアノ 、トラック2にはハリスンのギター 、トラック3にはスターのドラム とレノンのカウベル 、トラック4にはハモンドオルガン が収録されていた。その後2本目の4トラック・レコーダーにコピーされて、テイク11が作成され、トラック3と4にスターのリード・ボーカル、レノン・マッカートニー・ハリスンの3名によるヴァース部分の問いかけ部分が録音された。
翌日、冒頭のボーカル・インタールードにティンパニ とスネアドラム がオーバー・ダビングされ、これらはトラック2に録音。残りのトラックにベース 、タンバリン 、リードギター が加えられた。こののち、スターのリード・ボーカルを片方のみ削除して、トラック3に新たなバッキング・ボーカルを録音し、冒頭にハモンドオルガンが加えられた。本作のセッションは、1967年3月30日午前5時45分で終了した。
1967年3月31日に15種類のモノラル・ミックス、4月7日にステレオ・ミックスが作成された。なお、モノラル・ミックスでスターのボーカルに加えられたADT の量は、ステレオ・ミックス作成後に減らされた。
ライブでの演奏
「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」は、リンゴ・スター&ヒズ・オール・スター・バンド のライブの定番曲となっており、『Ringo Starr & His All-Starr Band Vol.2 -LIVE FROM MONTREUX- 』(1993年)、『ストーリーテラー・ライヴ (英語版 ) 』(1998年)、『アンソロジー・ソー・ファー (英語版 ) 』(2001年)、『King Biscuit Flower Hour Presents Ringo & His New All-Starr Band 』(2002年)、『ツアー2003 (英語版 ) 』(2004年)、『Ringo Starr and Friends 』(2006年)、『Ringo Starr: Live at Soundstage 』(2007年)、『リンゴ・アンド・ヒズ・オール・スターズ・バンド・ライブ2006 (英語版 ) 』(2008年)、『ライヴ・アット・ザ・グリーク・シアター2008 (英語版 ) 』(2010年)などのアルバムにライブ音源が収録されている。
1987年にロンドンにあるウェンブリー・アリーナ で開催された『Prince's Trust Concert』でスターは、ハリスン、エリック・クラプトン 、エルトン・ジョン らとともに本作を演奏した[ 13] 。
2009年4月4日にニューヨークにあるラジオシティ・ミュージックホール で開催されたデヴィッド・リンチ財団 (英語版 ) による慈善コンサートで、マッカートニーとスターが本作を演奏。その後、2014年1月27日にビートルズの『エド・サリヴァン・ショー 』に初出演してから50年を迎えたことを記念して開催された『The Night That Changed America: A Grammy Salute to The Beatles』でも演奏した[ 15] 。
クレジット
※出典(特記を除く)
チャート成績(ビートルズ版)
認定
カバー・バージョン
「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」は、多数のアーティストによってカバーされており、1968年にジョー・コッカー 、1988年にWet Wet Wet 、2004年にサム&マーク (英語版 ) によるカバー・バージョンが全英シングルチャート で第1位を記録した[ 24] 。
ジョー・コッカーによるカバー
ジョー・コッカー によるカバー・バージョンは、1968年10月にシングル盤として発売された[ 25] 。コッカーとプロデューサーのデニー・コーデル (英語版 ) は、レコーディング後にマッカートニーに聴かせており、2014年にマッカートニーは「この曲をソウルのアンセム に変えてくれた彼にいつも感謝している」と語っている[ 26] 。リードギター はジミー・ペイジ による演奏[ 27] 。
コッカーのシングル盤は、1968年11月6日から12日の週に全英シングルチャート で第1位を獲得[ 28] 。1968年12月14日付のBillboard Hot 100 では最高位68位[ 29] 、オランダのシングル・トップ100 では11月16日の週から2週連続で第1位[ 30] 、スイスのシュヴァイツァー・ヒットパラーデ で第1位[ 31] を獲得。
コッカーは、1969年8月17日に開催された「ウッドストック・フェスティバル 」で本作を演奏[ 32] 。コッカーによるカバー・バージョンは、1998年から2003年まで放送されたテレビシリーズ『素晴らしき日々 』のオープニングテーマとして使用された[ 33] 。2014年にBBC が行なった世論調査では、これまでで7番目に優れたカバー曲に選ばれた[ 34] 。2001年、コッカーによるカバー・バージョンがグラミーの殿堂 入りを果たした[ 35] 。
チャート成績(ジョー・コッカー版)
その他のアーティストによるカバー
1967年、ジョー・ブラウン (英語版 ) によるカバー・バージョンが発売され、全英シングルチャート に4週にわたってチャートインし、4週目に最高位32位を記録[ 46] 。同年にはヤング・アイディアによるカバー・バージョンも発売され、こちらは全英シングルチャートで最高位10位を記録[ 47] 。
1986年、カナダのバンドであるキック・アクス (英語版 ) によるカバー・バージョンが、『RPM 』誌のシングルチャートで最高位79位を記録[ 48] 。
1988年、Wet Wet Wet によるカバー・バージョンが、ビリー・ブラッグ (英語版 ) とカーラ・ティビー (英語版 ) による「シーズ・リーヴィング・ホーム 」のカバー・バージョンとの両A面シングルとして発売された[ 49] 。このシングルは、全英シングルチャート で第1位を獲得[ 50] 。
2004年、サム&マーク (英語版 ) によるカバー・バージョンが発売され、全英シングルチャートで第1位を獲得[ 51] 。
2018年、コリーン・ノーラン (英語版 ) 、ルイーザ・ジョンソン (英語版 ) 、リック・アストリー 、ナイル・ロジャース らが国民保健サービス の設立70周年を記念したチャリティー・シングルとして本作をカバー[ 52] 。このシングルは、全英シングルチャートで最高位89位を記録[ 53] 。
竹内まりや が1992年に発売したアルバム『Quiet Life 』に収録の「Forever Friends」には、この曲のフレーズがコーダ に登場する。また、ビートルズのパロディ・バンドであるラトルズ が1996年に発売したルバム『アーキオロジー 』には、本作のパロディ・ソング「ランデヴー」が収録されている。
脚注
注釈
^ マッカートニーが1966年に死去したという都市伝説「ポール・マッカートニー死亡説 」において、ビリー・シアーズは「マッカートニーの替え玉をしている人物の名前」とされている[ 2] 。また、スターはビートルズ解散後に発売したソロ・アルバム『リンゴ 』に収録の「アイム・ザ・グレーテスト」で、「My name is Billy Shears (私の名はビリー・シアーズだ)」と紹介している。
^ この名前は後にアップル・レコード からデビューしたバッドフィンガー (旧名: アイヴィーズ)のバンド名の由来となった。
出典
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外部リンク
UK盤・US盤共通
1963年 1964年 1965年 1966年 1967年 1968年 1969年 1970年 1978年 1982年 1995年 1996年 2023年
UK盤 (パーロフォン /アップル )
US盤 (ヴィージェイ /スワン /トリー /キャピトル /アップル )
1963年 1964年 1965年 1966年 1970年 1976年
その他 (オデオン /パーロフォン /アップル )
1963年 1964年 1965年 1966年 1968年 1969年 1970年 1972年 1978年 1981年