『海底二万哩』(かいていにまんマイル、原題:20000 Leagues Under the Sea)は、1954年のアメリカ映画。ジュール・ヴェルヌのSF小説『海底二万里』をウォルト・ディズニーが映画化した作品。
日本におけるBVHE版から発売されたソフトは『海底2万マイル』、ポニー・バンダイ版から発売されたビデオは『海底20000マイル』のタイトルで発売されている。
さらに東京ディズニーシーには、この映画をモチーフとした同名のアトラクションがある。
1868年、世界各地の海で船舶が謎の怪物に襲われ沈没する事件が相次いだ。船乗りたちは怪物を怖がり出港を拒み、港には出港できない船と乗客が溢れていた。出港できずに途方に暮れていた海洋学者アロナックス教授の元をアメリカ政府の役人ハワードが訪れ、怪物の正体を調査する軍艦への乗艦を依頼する。アロナックスは助手のコンセイユと共に調査艦に乗り込むが、3か月間の調査にもかかわらず怪物は発見できず、元々怪物の存在に懐疑的だったファラガット艦長は調査の打ち切りを決定する。その夜、調査艦の近くを航行していた船が爆発を起こし、怪物が姿を現す。ファラガット艦長は攻撃を命令するが、怪物に体当たりされ調査艦は沈没し、アロナックスとコンセイユ、銛打ちの名手ネッドの3人は海に投げ出されてしまう。
3人は海を漂流した後、怪物こと潜水艦ノーチラス号に辿り着き、艦を操るネモ艦長に捕えられてしまう。ネモ船長は海洋学者のアロナックスに興味を持ち歓待し、アロナックスも高度な技術を持ち、海底で自給自足の生活を送るネモを人類の未来に貢献する人物として興味を持つ。ネモはアロナックスをとある島に連れて行き、火薬の原料・硝酸塩を運び出すために強制労働を強いられている人々を見せ、「かつて、自分もこの島の奴隷だった」と告げ、硝酸塩を積載した運搬船を撃沈する。一方、ネッドは自由を求めノーチラス号からの脱出を目指し、アロナックスの身を案じるコンセイユも彼に同調する。2人はアロナックスの日誌から、ネモの根拠地がバルケニアという孤島であることを知り、バルケニア島の座標を書いたメモを入れた瓶を海に流す。
バルケニア島への航海の途中でノーチラス号は座礁してしまい、修理の間、ネッドとコンセイユは付近の島に上陸する。ネッドは援軍を呼ぶためコンセイユと別れるが、島の食人族に見付かりノーチラス号に逃げ戻り、追いかけてきた食人族はネモが仕掛けた電気ショックに驚き退散する。ネモはノーチラス号から逃亡しようとしたネッドを処刑することに決め監禁するが、その日の夜に軍艦と遭遇しノーチラス号が損傷し、さらにクラーケンに襲われる。ネモは船員たちを連れ海上でクラーケンと戦い、食べられそうになったところをネッドに助けられ、彼の処刑を取り止める。
バルケニア島に到着した際、アロナックスはネモにこれ以上人類と戦うのを止めるように説得し、ネモは自身が持つ技術をアロナックスに委ねようか迷っていることを伝える。しかし、ネッドが流した情報を聞きつけた軍隊が島に上陸したことを知ったネモは、技術が軍事利用され争いの火種となることを防ぐため、島を軍隊ごと爆破しようと試みる。ネモは島の居住区に爆破装置を仕掛けるが、ノーチラス号に戻る際に軍隊の銃撃を受けて瀕死の重傷を負い、ノーチラス号も自沈させようとする。船員たちはネモと共に死ぬ運命を受け入れるが、道連れを拒否したネッドはノーチラス号を浮上させ、アロナックスとコンセイユを連れて脱出する。ボートで脱出に成功した3人が振り向くと、バルケニア島は軍隊を巻き込んで大爆発を起こしており、ノーチラス号も時を同じくして海底に沈んでいった。
フランスの小説家ジュール・ヴェルヌの古典SFの名作『海底二万里』の映像化としては、1916年のユニバーサル・ピクチャーズの『海底六万哩』[3][4]などがあったが、本作は初のスコープ・サイズ、カラー作品で、当時はアニメーション製作を主体としていたウォルト・ディズニーが、実写版として製作した映画である。時代設定や大筋は原作に沿っているが、脚色も加えられ、特に結末は原作と異なったものになっている。原作のノーチラス号は海中から取り出したナトリウムを使用し、ノーチラス号自体を巨大な電池のようにしてエネルギーを得ているのに対し、劇中ノーチラス号は原子力エネルギーであることを暗示しており、本作に込められたテーマである「使い方によって人間に平和も破滅ももたらす科学技術(原子力)」を語っている。また、ネモ船長は劇中では銃で撃たれノーチラス号と共に海に沈んでしまうが、原作では『海底二万里』の後、メイルストロム(大渦巻き)を生き延び、活動を続け、『神秘の島』で再登場し、老衰で亡くなる。
監督のリチャード・フライシャーは1930年代から40年代にかけ、ディズニーにとって最大の競争相手だったアニメ作家マックス・フライシャー[5]の息子である。リチャード・フライシャー自身はドキュメンタリー・フィルムを中心に活動してきた人物で、1947年に "Design for Death" でアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞を受賞していた。本作の後、ミクロ化した潜水艇が人体内部を航行するSF映画『ミクロの決死圏』や、大作『トラ・トラ・トラ!』などを手がけている。撮影のフランツ・プラナーは『ローマの休日』の撮影監督で、同作を含め6回アカデミー撮影賞にノミネートされることになる人物であった。また、音楽のポール・J・スミスは『ピノキオ』などの音楽を手がけ、同作でアカデミー作曲賞を受賞している。
特撮は、特殊効果を『シンデレラ』などに参加した、ジョン・ヘンチとジョシュア・ミードーが担当。視覚効果を、『メリー・ポピンズ』でアカデミー視覚効果賞を受賞するピーター・エレンショー、『ロスト・ワールド』にも参加しアカデミー賞の技術効果賞などに3度ノミネートされたラルフ・ハメラスらが担当した。劇中に登場するノーチラス号のデザインは、ハーパー・ゴフによるもの[6]で、ディズニーランド・パリにあるディスカバリーランドのアトラクション「ノーチラス号のミステリー」や、東京ディズニーシーの「ミステリアスアイランド」に停泊しているノーチラス号は、その再現である。
撮影は1954年の春に開始され、バハマとジャマイカのネグリルで行われた[7][8]。いくつかのロケ地は撮影が困難で、400人の技術スタッフが必要とされた。また、クラーケンのシーンは当初夕暮れ時の穏やかな海で撮影されたため、嵐の海でのシーンは新たに撮影し直され、クラーケンを操作するケーブルなどを隠すためにドラマ部分が追加された[9]。
ニューヨーク・タイムズのボズレー・クラウザーは「素晴らしく幻想的な作品で、シネマスコープによって色鮮やかに表現されているが、子供にとっては上映時間が長く感じられるだろう」と論評している[10]。また、キャストの好演も高く評価されており[11]、評論家のリチャード・シーカル(英語版)は自著の中で、ジェームズ・メイソンを「ネモ艦長として素晴らしいキャストだった」と述べている[12]。
映画評論家のスティーブ・ビオドロスキーは、「制作上の問題や技術的な影響もなく、同時期のあらゆる作品よりも優れている。エピソードは作品のテンポを遅らせているが、長所が短所を上回っており、これまでに作られた中で最高のSF映画」と評価している[13]。Rotten Tomatoesでは89%の支持を得ており、「ディズニーが制作した最高の冒険映画である『海底二万哩』は、ジュール・ヴェルヌの古典作品を生き生きと描き出し、特にクラーケンの描写は特徴的だ」とレビューされている[14]。
本作は2つのアカデミー賞を受賞し、1つにノミネートされている[15]。一方、ノーチラス号をデザインしたハーパー・ゴフは美術監督組合に加入していなかったため、アカデミー美術賞を受賞することが出来なかった[16]。
ウォルト・ディズニー・ピクチャーズは2010年頃の公開を目指して本作のリメイクを進めており[17][18]、マックGが監督に起用される予定と報じられた。リメイクではノーチラス号を建造する物語が描かれるとも報じられていた[19]。これについて、マックGは「この作品はリチャード・フライシャーの作品よりも小説の精神に近いものとなる。同時にアロナクスが何を求めているのか、どのようにネモ艦長が生まれ、戦うようになったのかが描かれる」とコメントしていた。脚本はビル・マーシリー、ジャスティン・マークス、ランダル・ウォレスが起用された[20]。
マックGはネモ艦長役にウィル・スミスの起用を検討していたが、彼は出演を断ったという[21][22]。報道では第2候補としてサム・ワーシントンが挙げられているが、具体的な検討はされていないとされる。2009年11月にはマックGが降板したため、企画が中断されている[23]。
2010年に監督をデヴィッド・フィンチャー、脚本をスコット・Z・バーンズが担当してリメイクが行われることが発表され、2012年末には撮影が開始されると推測された[24][25]。ネッド役にはブラッド・ピットが打診されたが、彼は2013年2月に打診を断っている[26][27]。
2013年6月より撮影がオーストラリアで行われる予定だったが、2014年まで延期すると発表された[28]。2013年7月17日には、フィッシャーが『ゴーン・ガール』の制作に参加するため監督を降板した[29]。彼はチャニング・テイタムをネッド役に希望していたが、ディズニー側はクリス・ヘムズワースを希望していた[30][31]。また、リメイク制作のために用意された制作費は『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』の制作費として活用された[32]。
2016年2月にジェームズ・マンゴールドが監督に起用され、『Captain Nemo』のタイトルで制作されることが発表された[33]。
この他、リメイク映画とは別に2021年にディズニー傘下の定額制動画配信サービスであるDisney+向けに実写ドラマの制作を発表し[34]、既に撮影も完了していたが、2023年8月に本作品の配信公開を行わないことを発表した[35]。
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