この項目では、小説について説明しています。海上に建設された都市については「海上都市 」をご覧ください。
『洋上都市 』(ようじょうとし、Une ville flottante) はジュール・ヴェルヌ の海洋冒険小説 。新聞に掲載された後[ 2] 、驚異の旅シリーズ として1871年に出版された[ 3] 。
ストーリー
舞台は蒸気船 、グレート・イースタン 。リバプール からニューヨークまでの航海中、船内では幽霊騒ぎなどのさまざまな出来事が起こる。甲板では船客によるリクレーションがおこなわれ、交流が深まるにつれ、語り手の友人マケルウィンはかつてのガールフレンドのエレン・ホッジスと再会する。彼女は結婚していたが、夫であるハリー・ドレイクの暴力に苦しんでいた。
解説
グレート・イースタン号のデッキにて (R・C・ダドリー 画、1868年)
この物語はヴェルヌの自伝的な内容を含んでいる。機械文明愛好家のヴェルヌは1867年の春に、弟のポール・ヴェルヌとともにイザムバード・キングダム・ブルネル が建造した蒸気船「グレート・イースタン 」のアメリカ横断航海に参加した。
これは当時海底ケーブル敷設船 として使用されていたグレート・イースタンがパリ万国博覧会 に出展されることとなり、特にフランス政府がチャーターしたものだった。
この船旅そのものは平凡だったものの、物語を書くにあたって、ヴェルヌはいくつかのエピソードを追加した。それは技術的な不備ゆえに起こる事件やトラブル、船の長さが211メートルもあるグレート・イースタンに圧倒される船舶業者やクルーの姿である。
ヴェルヌはここで自身の機械に対する愛情とともに、人間的な情熱についてもページを割き、機械的な航海記にドラマティックなラブ・ストーリーを加えている。もっとも、この物語はフィクションのみではなく、海上やナイアガラの滝 の描写はヴェルヌ自身の体験から書かれている。
ヴェルヌは弟とナイアガラの滝を訪れ、蒸気船でハドソン川 を下ってオールバニ に行き、列車で滝のカナダ側 に向かった。彼はこの滝にたいへん魅了され、「征服者ロビュール 」や「名を捨てた家族」などの作品舞台に使用している[ 4] 。
主な登場人物
ジェームズ・アンダーソン [ 5]
ヴェルヌは本作で登場人物の何名かのモチーフを実在の人物から借りている[ 6] 。
出版
「洋上都市」は1870年8月9日から9月6日にかけて、新聞のジュルナル・デ・デバ (フランス語版 ) に連載されたのち、短編「封鎖破り 」を加えて、驚異の旅シリーズの1冊として1871年7月17日に刊行された[ 7] 。のちに1872年に刊行された版には「南アフリカでの3人のロシア人と3人のイギリス人の冒険 」が追加されている。
日本語訳版
関連項目
参考文献
Heinrich Pleticha , Jules Verne Handbuch, Deutscher Bücherbund / Bertelsmann, 1992
Volker Dehs , Ralf Junkerjürgen, Jules Verne. Stimmen und Deutungen zu seinem Werk,
Volker Dehs, Jules Verne. Eine kritische Biographie, Artemis & Winkler, 2005. SBN 3-538-07208-6
Alexandre Tarrieu : Les Passagers du Great-Eastern en 1867 , Bulletin de la Société Jules Verne 174, 2010
脚注
外部リンク
フランス語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります。
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