リュンケウス(古希: Λυνκεύς, Lynkeus)は、ギリシア神話の人物である。アイギュプトスの息子、アパレウスの息子の二人が登場する。
アイギュプトスの息子
アイギュプトスの50人の息子の一人。彼ら兄弟はダナオスの同じ数の娘たちと結婚し、リュンケウスは姉妹で最年長のヒュペルムネーストラー(ヒュペルメーストラーとも)を娶った。他の夫たちは全員眠っている間に妻に殺されたが、リュンケウスひとりだけは命を助けられた。ヒュペルメーストラーが処女のままだったからだという。リュンケウスはダナオスの死後、アルゴスの王座を継いだ。ヒュペルメーストラーとの間にはアバースが生まれた。
カール・ケレーニイによると、このリュンケウスの名はもともとリュルケウス(Lyrkeus)であったとする。
系図
アパレウスの息子
メッセーネー王アパレウスとアレーネーの息子。兄弟のイーダースとともに並び称され、「アパレウスの息子たち」という意味で、アパレーティダイとも呼ばれる。スパルタのディオスクーロイ、すなわちカストールとポリュデウケースの兄弟と敵対した。
リュンケウスとは「大山猫の眼を持つ者」という意味であり、その名にふさわしい並はずれた視力を持ち、夜目が利くだけでなく、地面の下まで見通すことができたという。
神話
アパレウスの兄弟レウキッポスの娘にヒーラエイラとポイベーがあり、二人はイーダースとリュンケウスの妻とする約束が交わされていた。しかし、カストールとポリュデウケースが姉妹をさらって妻としたため、イーダースとリュンケウスはディオスクーロイを恨み、二組の兄弟は反目するようになった。
イーダースとリュンケウスは、ディオスクーロイとともにイアーソーン率いるアルゴナウタイの航海に加わった。帰還するとカリュドーンの猪狩りにも参加した。
ディオスクーロイとはその後も一時的に協力し合い、4人でアルカディアで牛を略奪した。イーダースは牛の群れの分配を委ねられた。イーダースは牛を1頭殺し4等分に分け、早食い競争で最初に1人分を食べ尽くした者が群れの半分を受け取り、2番目の者が残りの半分を取ると定めた。このことを宣言するや、イーダースは自分の分をあっという間に食べ尽くし、つづいてリュンケウスの分まで平らげてしまった。ディオスクーロイはこの取り決めに抗議したともいうが、イーダースとリュンケウスは構わず、略奪したすべての牛の群れを追いながらメッセーネーに引き上げた。
これに怒ったディオスクーロイは、スパルタの兵を率いてメッセーネーに迫った。このときイーダースとリュンケウスは、ターユゲトス山にポセイドーンへの生け贄を捧げるために不在だった。カストールとポリュデウケースは、木の裏に隠れて二人を待ち伏せした。その場所はアパレウスの墓の近くだった。しかし、隠れた兄弟を山頂にいるリュンケウスの鋭い目がたちまち見つけ出し、イーダースの投げた槍でカストールは串刺しにされた。ポリュデウケースが槍でリュンケウスを倒したが、イーダースはアパレウスの墓石を引き抜いて投げつけ、ポリュデウケースの頭に命中したので彼は昏倒した。そこで、ゼウスが雷霆を撃ってイーダースを殺した。一説には、カストールがリュンケウスを倒し、イーダースがカストールを倒し、ポリュデウケースがイーダースを倒したともいうが、いずれにせよ、生き残ったのはポリュデウケース一人であった。
系図
関連項目
参考図書