タンペレ (フィンランド語 : Tampere : フィンランド語発音: [ˈtɑmpere] ( 音声ファイル ) )は、フィンランド共和国 ピルカンマー県 の都市 。タンペレ郡に属する。スウェーデン語 ではタンメルフォシュ (Tammerfors , [tɑmːærˈforsː] ( 音声ファイル ) )と称する。語源は古スウェーデン語のdamber (ダム)+fors (急流)。タンペレは北欧諸国の内陸部で最も人口の多い都市であり、都市部の人口は約24万人である。
歴史
タンペレ大聖堂
18世紀 後半、スウェーデン 王のグスタフ3世 のもとで建設された[ 1] 。フィンランドが帝政ロシア の支配下に入ったのちは、紡績業 などを中心として工業 が発達した。1876年 には鉄道 も開通している。工業化にともなって労働者 の数も年々増加し、フィンランドにおける労働運動、そして社会主義・共産主義運動の中心地であった。レーニン が最初にスターリン に出会ったのがタンペレであったなど、ソビエト連邦 の歴史ともつながりが深い。世界で唯一のタンペレ・レーニン博物館 (英語版 ) がある。1917年 には亡命 中のレーニンがこの地で『国家と革命 』を執筆している。1918年 に勃発したフィンランド内戦 で最大の戦いであるタンペレの戦い が、この都市で起こった。
第二次世界大戦 後には周辺地域を編入合併することで自治体域を拡大させており、1947年 にはMessukyläが、1950年 にはLielahtiが、1966年 にはAitolahtiが、1972年 にはTeiskoがタンペレに吸収された。この時期までは繊維産業 や金属産業 で知られていたが、1990年代 には情報技術産業や電気通信産業がとってかわった。Hervantaにある技術センターにはこれらの企業の本部が多く置かれている。
地理
ピュハ湖
タンペレはピルカンマー県 の県庁所在地であり、2010年まではトゥルク を州都とする西スオミ州 に属していた。隣接する自治体としては、カンガサラ (英語版 ) 、レンパーラ (英語版 ) 、ノキア 、オリヴェシ (英語版 ) , ピルッカラ (英語版 ) 、ルオヴェシ (英語版 ) 、ユロヤルヴィ がある。
北欧諸国の内陸部ではもっとも人口の多い町である。2011年の自治体人口は223,292人であり[ 2] 、都市的地域 の人口は330,711人であり[ 3] 、タンペレ都市圏 (英語版 ) の人口は364,000人(人口密度は4,977人/km2 )である[ 4] [ 5] 。都市的地域の人口ではヘルシンキ に次いでフィンランド第2位であり、自治体人口ではヘルシンキとエスポー に次いで第3位である。ヘルシンキ都市圏 (英語版 ) の外側ではフィンランドでもっとも人口の多い地域であり、中部フィンランドにおける経済的・文化的な中心地である。タンペレ市立図書館の階下にはムーミン谷博物館 (英語版 ) があり、トーベ・ヤンソン の作品『ムーミン 』の関連品が展示されている。南約160kmの距離にヘルシンキ があり、鉄道では1.5時間、車では2時間で訪れることができる。トゥルク までもほぼ等距離である。
タンペレの町はネシ湖 とピュハ湖 に挟まれている。ネシ湖の標高は95m、ピュハ湖の標高は77mであり、両者を結ぶタンメルコスキ川 (英語版 ) で水力発電を行うことでタンペレに産業が発達した[ 6] 。製紙、皮革、繊維産業などが発展していたが、近年は、ノキア (NOKIA) などのIT 産業やITを活用した機械工業が主要産業。タンペレは「フィンランドのマンチェスター 」とも呼ばれる[ 5] [ 7] [ 8] 。
気候
タンペレは湿潤大陸性気候 と亜寒帯気候 の境界に位置し、ケッペンの気候区分 ではDfbまたはDfcとなる。冬季は寒く、11月から3月の平均気温は摂氏0度を下回る。夏季は穏やかである。11月下旬から4月上旬まで、4か月から5か月にわたって降雪がある。
タンペレ(1981–2010)の気候
月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
年
最高気温記録 °C (°F )
8.0 (46.4)
9.4 (48.9)
14.9 (58.8)
24.2 (75.6)
28.4 (83.1)
31.7 (89.1)
33.1 (91.6)
32.1 (89.8)
24.8 (76.6)
18.4 (65.1)
11.1 (52)
9.6 (49.3)
32.5 (90.5)
平均最高気温 °C (°F )
−3.4 (25.9)
−3.5 (25.7)
1.2 (34.2)
8.2 (46.8)
15.4 (59.7)
19.5 (67.1)
22.2 (72)
19.9 (67.8)
14.0 (57.2)
7.5 (45.5)
1.5 (34.7)
−1.9 (28.6)
8.4 (47.1)
日平均気温 °C (°F )
−6.4 (20.5)
−6.9 (19.6)
−2.8 (27)
3.3 (37.9)
9.7 (49.5)
14.1 (57.4)
16.9 (62.4)
15.0 (59)
9.8 (49.6)
4.6 (40.3)
−0.6 (30.9)
−4.5 (23.9)
4.4 (39.9)
平均最低気温 °C (°F )
−9.7 (14.5)
−10.6 (12.9)
−6.6 (20.1)
−1.3 (29.7)
3.8 (38.8)
8.6 (47.5)
11.7 (53.1)
10.4 (50.7)
5.9 (42.6)
1.9 (35.4)
−3.0 (26.6)
−7.6 (18.3)
0.3 (32.5)
最低気温記録 °C (°F )
−37.0 (−34.6)
−36.8 (−34.2)
−29.6 (−21.3)
−19.6 (−3.3)
−7.3 (18.9)
−2.8 (27)
1.8 (35.2)
−0.4 (31.3)
−6.7 (19.9)
−14.8 (5.4)
−22.5 (−8.5)
−34.2 (−29.6)
−37.0 (−34.6)
降水量 mm (inch)
41 (1.61)
29 (1.14)
31 (1.22)
32 (1.26)
41 (1.61)
66 (2.6)
75 (2.95)
72 (2.83)
58 (2.28)
60 (2.36)
51 (2.01)
42 (1.65)
598 (23.54)
平均降水日数 (≥0.1 mm)
22
18
16
12
12
13
15
15
14
17
21
22
197
% 湿度
90
87
82
70
63
66
69
76
82
87
91
92
80
出典1:FMI climatological normals for Finland 1981-2010[ 9]
出典2:record highs and lows[ 10]
人口
タンペレの人口推移 1815-2020
TAMPERE City Population
政治
2007年には新しい政治制度への切り替えが行われ、以後はタンペレ市議会によって1人の市長と4人の副市長が2年ごとに選出されている。在任中の市長は市議会に1議席を有する。2007年には国民連合党 のティモ・P・ニエミネン (フィンランド語版 ) が新市長に就任した。2009年にはニエミネンが再選され、2013年まで市長を務めた。2013年には国民連合党のアンナ=カイサ・イコネン (英語版 ) が市長に就任した。2017年にはフィンランド社会民主党 のラウリ・リリ (フィンランド語版 ) が新市長に就任した。
社会
教育
タンペレ工科大学
タンペレ周辺には2つの大学と2つの工科大学(フィンランド語 : ammattikorkeakoulu )があり、4機関を合わせて4万人の学生を抱えている。タンペレ大学 (UTA)は市街地中心部に隣接しており、16,000人以上の学生を有する。タンペレ工科大学 (TUT)はHervanta地区にあり、12,000人以上の学生を有する。タンペレ応用科学大学 (英語版 ) は約10,000人の学生を有し[ 11] 、最後のひとつはフィンランド警察学校 (英語版 ) である。
交通
タンペレ=ピルッカラ空港
中央広場のバスターミナル
タンペレはフィンランドの鉄道 における重要な拠点であり、ヘルシンキ 、トゥルク 、トゥルク港 (英語版 ) 、オウル 、ユヴァスキュラ 、ポリ などに対して直通する路線がある。タンペレ駅 (英語版 ) は市街地の中心部に位置しており、フィンランドの各都市に向かうバスターミナルも存在する。タンペレから13km南西のピルッカラ (英語版 ) にはタンペレ=ピルッカラ空港 がある。フィンランドで3番目に利用者数の多い空港であり、2016年には208,930人がこの空港を利用した。
今日のタンペレ市内の公共交通手段はバスのみであるが、1948年から1976年にはフィンランド最大のトロリーバス の路線網を有していた[ 12] 。2017年時点ではバス路線を置き換えるタンペレ・ライトレール の建設が進められている[ 13] 。
宗教
フィンランド国民の大半と同様に、タンペレ市民はフィンランド福音ルター派教会 に属している。他の教会としては、バプテスト教会 、福音自由教会、フィンランド・ルーテル福音教会 (英語版 ) 、フィンランド正教会 、ノキア・リバイバル教会などがある。
スポーツ
ノキアアリーナ のオープニングゲーム。
タンペレ・アイス・スタジアム
タンペレでもっとも盛んなスポーツはアイスホッケー であり、フィンランドにおける「アイスホッケーのふるさと」と呼ばれる。フィンランドで初めて建設されたアイスホッケー用のアリーナはタンペレ・アイス・スタジアム (英語版 ) であり、またフィンランドホッケーの殿堂 (英語版 ) (フィンランドアイスホッケー博物館)がある。フィンランド初のアイスホッケーの試合はタンペレにあるピュハ湖 の氷上で行われた。全国リーグであるSMリーガ に所属するアイスホッケークラブにはイルヴェス (英語版 ) とタッパラ (英語版 ) の2クラブがあり、タッパラは10回(1位タイ)、イルヴェスは1回優勝している。
タンペレではサッカーも人気がある。1931年創設のFCイルヴェス は1983年にヴェイッカウスリーガ で優勝した。1998年にはタンペレ・ユナイテッド が設立され、2001年・2006年・2007年にヴェイッカウスリーガで優勝したが、2011年に解散した。バスケットボールクラブのTampereen Pyrintö (英語版 ) は2010年と2011年と2014年にフィンランドリーグで優勝した。アメリカンフットボールのタンペレ・セインツが本拠地を置いており、2015年にはディビジョン2で優勝してディビジョン1に昇格した。
1952年のヘルシンキオリンピック ではサッカー競技 の一部がタンペレ・スタディオン (英語版 ) で開催された。1965年のアイスホッケー世界選手権 や、1967年バスケットボール男子欧州選手権 の一部もタンペレで開催されている。1973年と1983年にはカヌースプリント世界選手権 の会場となった。1977年には世界ジュニアボート選手権 が開催され、1995年には世界ボート選手権 が開催された。2009年にはヨーロッパユースオリンピックフェスティバル が開催され、2010年には世界リンゲッテ (英語版 ) 選手権が開催された。
文化
ムスタマッカラ (英語版 )
伝統的なタンペレ料理には、コケモモ ジャムと一緒に出される「ムスタマッカラ (英語版 ) 」と呼ばれる黒い色のブラッドソーセージ が含まれる。[ 14] [ 15] [ 16]
世界で唯一のムーミン 谷博物館は、タンペレのメッソ図書館にある。[ 17]
出身者
小説家のヴァイノ・リンナ やカッレ・パータロ (英語版 ) はタンペレ生まれではないがタンペレで死去した。
姉妹都市
脚注
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
タンペレ に関連するカテゴリがあります。
01. ヘルシンキ (656,229人)
02. エスポー (291,439人)
03. タンペレ (239,076人)
04. ヴァンター (235,911人)
05. オウル (206,001人)
06. トゥルク (193,089人)
07. ユヴァスキュラ (142,321人)
08. ラハティ (119,944人)
09. クオピオ (119,249人)
10. ポリ (83,809人)
11. コウヴォラ (81,778人)
12. ヨエンスー (76,334人)
13. ラッペーンランタ (72,288人)
14. ハメーンリンナ (67,774人)
15. ヴァーサ (66,960人)
16. セイナヨキ (63,961人)
17. ロヴァニエミ (63,032人)
18. ミッケリ (52,962人)
19. コトカ (51,869人)
20. サロ (51,778人)
21. ポルヴォー (50,610人)
22. コッコラ (47,734人)
23. ヒュヴィンカー (46,572人)
24. ロホヤ (46,054人)
25. ヤルヴェンパー (44,053人)
26. ヌルミヤルヴィ (43,403人)
27. キルッコヌンミ (40,055人)
28. ラウマ (39,006人)
29. トゥースラ (38,779人)
30. ケラヴァ (37,103人)
31. カヤーニ (36,570人)
32. ノキア (34,348人)
33. カーリナ (34,333人)
34. ユロヤルヴィ (33,264人)
35. サヴォンリンナ (32,872人)
36. カンガサラ (32,117人)
37. ヴィフティ (29,222人)
38. リーヒマキ (28,781人)
39. ラーセポリ (27,580人)
40. イマトラ (26,329人)
41. ラーヘ (24,574人)
42. ライシオ (24,344人)
43. サスタマラ (24,140人)
44. レンパーラ (23,711人)
45. ホッロラ (23,428人)
46. トルニオ (21,573人)
47. シポー (21,514人)
48. シーリンヤルヴィ (21,396人)
49. イーサルミ (21,317人)
50. ヴァルケアコスキ (20,885人)