外見
銀白色
一般特性
名称 , 記号 , 番号
スカンジウム, Sc, 21
分類
遷移金属
族 , 周期 , ブロック
3 , 4 , d
原子量
44.955912 (6)
電子配置
[Ar ] 3d1 4s2
電子殻
2, 8, 9, 2(画像 )
物理特性
相
固体
密度 (室温 付近)
2.985 g/cm3
融点 での液体密度
2.80 g/cm3
融点
1814 K , 1541 °C , 2806 °F
沸点
3109 K , 2836 °C , 5136 °F
融解熱
14.1 kJ/mol
蒸発熱
332.7 kJ/mol
熱容量
(25 °C ) 25.52 J/(mol·K)
蒸気圧
圧力 (Pa)
1
10
100
1 k
10 k
100 k
温度 (K)
1645
1804
(2006)
(2266)
(2613)
(3101)
原子特性
酸化数
3 , 2[ 1] , 1 [ 2] (両性酸化物 )
電気陰性度
1.36(ポーリングの値)
イオン化エネルギー
第1: 633.1 kJ/mol
第2: 1235.0 kJ/mol
第3: 2388.6 kJ/mol
原子半径
162 pm
共有結合半径
170 ± 7 pm
ファンデルワールス半径
211 pm
その他
結晶構造
六方晶系
磁性
常磁性
電気抵抗率
(室温 )(α, poly) calc. 562 nΩ⋅m
熱伝導率
(300 K) 15.8 W/(m⋅K)
熱膨張率
(室温 )(α, poly) 10.2 μm/(m⋅K)
ヤング率
74.4 GPa
剛性率
29.1 GPa
体積弾性率
56.6 GPa
ポアソン比
0.279
ブリネル硬度
750 MPa
CAS登録番号
7440-20-2
主な同位体
詳細はスカンジウムの同位体 を参照
スカンジウム (新ラテン語 : Scandium [ 3] 英語: [ˈskændiəm] 、中国語 : 鈧 )は原子番号 21の元素 。元素記号 はSc 。遷移元素 、希土類元素 、第3族元素 のひとつ。
名称
スウェーデン の分析学者ラース・フレデリク・ニルソン が、スカンジナビア を意味するラテン語 のスカンジアから、この元素の名前をスカンジウムと命名した[ 4] [ 5] [ 6] 。
性質
スカンジウムは銀色の軟らかい金属であり、空気中で酸化されて淡黄色もしくは淡桃色の不動態が生成する。また、常温でハロゲン元素 とも反応する。比重 は2.99、融点 は1541 °C、沸点 は2836 °C。常温常圧で安定な結晶構造 は六方最密充填構造 (HCP、α-Sc)だが、加熱することにより更に2つの形態(β、δ)があり、それぞれの結晶構造は立方最密充填構造と面心立方格子である。水 や希酸には徐々に溶解し、熱水や酸には易溶。ただし、硝酸 とフッ化水素酸 を1:1で混合した溶液に対しては反応せず、これは不動態 層が形成されるためと考えられている。空気中で燃焼させると、黄色く輝く炎を発して酸化スカンジウム(III) を形成する。通常+3の酸化数 を取る[ 7] 。
同位体
スカンジウムの同位体は36 Scから60 Scまでにわたり、唯一の安定同位体は45 Scである。また、45 Scは天然に存在する唯一のスカンジウムの同位体でもあり、7/2のスピン角運動量 を有している。ほかの同位体はすべて放射性同位体であり、もっとも半減期 の長いものは46 Scの83.8日、次いで47 Scの3.35日であり、ほかに4時間の44 Scや3.7時間の48 Scなどがある。その他の放射性同位体の半減期はすべて4時間未満であり、それらの大部分は2分未満である。スカンジウムはまた5つの核異性体 があり、もっとも安定した物は半減期58.6時間の44m Scである[ 8] 。
45 Scよりも質量の小さな同位体のおもな崩壊モード は電子捕獲 であり、質量の大きな同位体はベータ崩壊 である。前者ではカルシウム の同位体が、後者ではチタン の同位体がおもな娘核種となる[ 8] 。
分布
地殻中においてスカンジウムは特に希少ではなく、その存在度は (18–25)× 10−6 と予想されておりコバルト と同程度である。スカンジウムは地球上で50番目(地殻中では35番目)、太陽系中では23番目に存在量の多い元素である[ 9] 。しかしながら、スカンジウムは濃縮されることなくまばらに分散しているため多くの鉱石中で痕跡量しか存在していない[ 10] 。濃縮されたスカンジウム源としては、スカンジナビア半島 [ 11] やマダガスカル島 [ 12] で産出する希少鉱石のトルトバイタイト (英語版 ) やユークセナイト (英語版 ) 、ガドリン石 などが知られているのみである。トルトバイタイトでは、最大45パーセントのスカンジウムが酸化スカンジウムの形で含まれている[ 11] 。
スカンジウムの安定同位体は超新星爆発 時に起こるr過程 によって合成される[ 13] 。
歴史
1869年、周期表の父として知られるドミトリ・メンデレーエフ によって、原子量 40から48の間の元素であるエカ ホウ素の存在が予言された。1879年、この元素はスウェーデン の分析学者ラース・フレデリク・ニルソン によりガドリン石 およびユークセン石 (英語版 ) から発見され、ニルソンは2 gの高純度な酸化スカンジウム を合成した[ 14] [ 15] 。ニルソンはメンデレーエフの予言を知らなかったが、ほぼ同時にこれを発見したペール・テオドール・クレーベ によってスカンジウムがメンデレーエフの予言したエカホウ素にあたると判明した[ 4] [ 5] [ 6] 。
1937年、カリウム、リチウムおよび塩化スカンジウム (英語版 ) の共晶 混合物を 700–800 °C で電気分解 することで初めて金属スカンジウムが生成された[ 16] 。スカンジウムのアルミニウム合金向けの用途が始まったのは、1971年にアメリカで特許が出されて以降のことである[ 17] 。アルミニウム-スカンジウム合金はソビエト連邦 でも開発されていた[ 18] 。
ガドリニウム-スカンジウム-ガリウムガーネット(GSGG)レーザー結晶は、1980年代から90年代にかけてのアメリカの戦略防衛構想 における戦略防衛の用途開発に用いられていた[ 19] [ 20] 。
スカンジウムの化合物
用途
スカンジウムは反応性が高く価格も高いため、化合物 の応用に関する研究開発はあまり進んでいない。以前は有機化学 の限られた分野で触媒 としてわずかに用いられるにとどまっていたが、現在は用途の拡大にともない新素材として注目されている。その筆頭格が照明への利用で、ヨウ化スカンジウム (ScI3 )をメタルハライドランプ に使用することでより強い光が得られる。そのほかにも、アルミニウム合金 に添加したり、ニッケル・アルカリ蓄電池 の陽極 にスカンジウムを加えて電圧 の安定や長寿命化を計ったり、ジルコニア 磁器 に酸化スカンジウム(III)を添加してひび割れを防いだりする用途がある。
スカンジウムの重量比でみた主要な用途は、高機能素材であるアルミニウム-スカンジウム合金 の形での、一部の航空宇宙用部品、スポーツ用品(自転車 、野球 のバット 、射撃 、ラクロス など)の材料である。しかしこれらの分野では、軽さや強度が近いチタン の方がはるかに多く利用されている[ 6] 。
スカンジウムをアルミニウム に添加すると、溶接 における加熱部分での再結晶化や結晶粒成長が大幅に抑制される。アルミニウムは面心立方構造 の金属であり、粒径の縮小はそれほど強度に対する影響がない。しかし、Al3 Scが細かく分散することによって、合金中にいろいろな析出相があるにもかかわらず、ミクロの構造において強度が増大する。本来の添加の目的は、溶接可能な構造材用合金を加熱した際、過度に結晶粒が成長するのを抑制することであるが、添加によって2つの効果が促進される。1つは、ほかの相がより細かく析出することによる強度の大幅な増大で、もう1つは時効硬化型合金における粒界の非析出帯の減少である。
最初にアルミニウム-スカンジウム合金が使用されたのは、旧ソビエト連邦 の一部の潜水艦発射弾道ミサイル のノーズ・コーンである。海氷を貫通してもミサイル 本体が壊れないほどの強度を確保できたため、北極海 において、海氷下に潜行しながらミサイルを発射することが可能になった。
トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム (英語版 ) は、有機化学 においてルイス酸 触媒 として用いられる。
1990年代 なかばに東邦ガス の水谷らが、酸化ジルコニウム(IV) に酸化スカンジウム(III)を0.04–0.11 mol/mol固溶させたスカンジア安定化ジルコニアを固体酸化物燃料電池 の電解質 として見出した。
2008年 には、東京大学生産技術研究所 サステイナブル材料国際研究センター・教授である岡部徹 の研究室で、金属熱還元法・溶融塩電解法での製造プロセスが検証された。金属熱還元法では酸化スカンジウム(III) を材料とし、カルシウム を還元剤とすることで、電気炉内で1,273Kという比較的低い温度でアルミニウム-スカンジウム合金が生成するが、カルシウム化合物の残留した純度の低いものとなった。一方で、溶融塩電解法 ではカルシウム化合物が残留しないため高純度のアルミニウム-スカンジウム合金が生成した[ 21] 。
出典
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^ a b c 岡部徹『電気化学的な手法によるスカンジウムの新しい製造法に関する研究 (PDF) 』(レポート)、JFE21世紀財団、2008年。2016年12月2日閲覧 。
関連項目
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外部リンク