ろ座 (ろざ、炉座、Fornax)は、現代の88星座 の1つ。18世紀 半ばに考案された新しい星座 である。化学者が蒸留に使う炉 がモチーフとされている[ 3] [ 4] [ 1] [ 5] 。日本国内のどこからでも星座の全域を見ることができるが、特に明るい星もないため目立たない星座である。
主な天体
エリダヌス座 に東・北・南の3面を囲まれる形で位置している。面積は狭くないが最も明るい恒星でも4等星と暗い。
銀河南極 に近く、天の川銀河 の銀河面 から離れているため、遠方銀河の観測に適している。そのため、「ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド (HUDF)」や「ハッブル・エクストリーム・ディープ・フィールド (XDF)」といった長時間露光観測の対象領域とされた。
恒星
2022年4月現在、国際天文学連合 (IAU) によって3個の恒星に固有名が認証されている[ 6] 。
α星 :見かけの明るさ 3.98等のA星[ 7] と7.19等のB星[ 8] の連星系。ろ座で最も明るい恒星で、A星に「ダリム[ 9] (Dalim[ 6] )」という固有名が付けられている。
HD 20868 :見かけの明るさ9.93等の10等星[ 10] 。国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」でマレーシア に命名権が与えられ、主星はIntan、太陽系外惑星はBaiduriと命名された[ 11] 。
WASP-72 :見かけの明るさ10.96等の11等星[ 12] 。国際天文学連合の100周年記念行事「IAU100 NameExoworlds」でモーリシャス共和国 に命名権が与えられ、主星はDiya、太陽系外惑星はCuptorと命名された[ 11] 。
そのほか、以下の星が知られている。
星団・星雲・銀河
この領域には楕円銀河 NGC 1399 を中心とする「ろ座銀河団 (英 : Fornax Cluster )」と呼ばれる銀河団 がある。
由来と歴史
19世紀イギリスの星座カード集『ウラニアの鏡』に描かれたろ座(左下)。
18世紀中頃にフランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカイユ によって考案された。初出は、1756年 に刊行された1752年版のフランス科学アカデミー の紀要『Histoire de l'Académie royale des sciences』に掲載されたラカイユの星図 で、蒸留に使われる炉の星座絵とフランス語 で「炉」を意味する le Fourneau という名称が描かれていた[ 5] [ 19] [ 20] 。ラカイユの死後の1763年 に刊行された『Coelum australe stelliferum』に掲載された第2版の星図では、ラテン語 化された Fornax Chimiae と呼称が変更されている[ 5] [ 21] 。
1801年に刊行されたヨハン・ボーデ の『ウラノグラフィア』ではラテン語で「化学装置」を意味する Apparatus Chemicu と改称されたが、多くの天文学者はラカーユの Fornax Chimiae のほうを使っていた[ 5] 。1844年 にイギリスの天文学者ジョン・ハーシェル は、フランシス・ベイリー 宛の書簡の中で、Fornax Chimiae を Fornax と短縮することを提案した[ 5] [ 22] 。これを受けたベイリーが、翌年の1845年 に刊行した『British Association Catalogue』で Fornax と改めたことにより、以降この呼称が定着することとなった[ 5] 。
1922年 5月にローマ で開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Fornax 、略称は For と正式に定められた[ 23] 。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。
中国
現在のろ座の領域は、中国の歴代王朝の版図から見える位置にあったが、この領域の星が二十八宿 の星官 に充てられていたか否かは説が分かれており、渡邊敏夫 は西方白虎七宿の第2宿「婁宿 」の「天庾」という星官 を形作る3星を、ろ座π・ν・μの3星と同定する説を採っている[ 24] 。
呼称と方言
日本では当初「舎密爐 」という訳語が充てられていた。これは、1908年 (明治41年)11月刊行の日本天文学会 の会誌『天文月報』第1巻8号に掲載された星図 で確認できる[ 25] 。その後、1910年 (明治43年)2月刊行の『天文月報』第2巻11号で、舎密爐から「爐 」に改訂されたことが伝えられた[ 26] 。この訳名は、1925年 (大正14年)に初版が刊行された『理科年表 』にも「爐(ろ)」として引き継がれた[ 27] 。戦後の1952年 (昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[ 28] とした際に、Fornax の日本語の学名は「ろ 」と定められ[ 29] 、これ以降は「ろ」という学名が継続して用いられている。
天文同好会 [ 注 1] の山本一清 らは、既にIAUが学名を Fornax と定めた後の1931年(昭和6年)3月に刊行した『天文年鑑 』第4号で、星座名を Fornax Chemica、訳名を「化学爐 」と紹介し[ 30] 、以降の号でもこの星座名と訳名を継続して用いていた[ 31] 。
現代の中国では、天炉座 と呼ばれている[ 32] 。
脚注
注釈
出典
^ a b c “The Constellations ”. 国際天文学連合 . 2023年1月14日 閲覧。
^ “星座名・星座略符一覧(面積順) ”. 国立天文台(NAOJ) . 2023年1月1日 閲覧。
^ “ろ座・エリダヌス座 ”. 大日本図書. 2023年2月25日 閲覧。
^ “ろ座|88星座図鑑 ”. 自然学習館. 2023年2月25日 閲覧。
^ a b c d e f Ridpath, Ian . “Fornax ”. Star Tales . 2023年1月14日 閲覧。
^ a b “IAU Catalog of Star Names (IAU-CSN) ”. 国際天文学連合 (2022年4月4日). 2022年11月11日 閲覧。
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^ "alf For B" . SIMBAD . Centre de données astronomiques de Strasbourg . 2023年1月14日閲覧 。
^ 『ステラナビゲータ11』(11.0i)AstroArts。
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関連項目
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