じょうぎ座 (じょうぎざ、Norma)は、現代の88星座 の1つ。18世紀 半ばに考案された新しい星座 で、製図や建築に用いる指矩 をモチーフとしている[ 1] [ 3] 。日本では、十島村 以南で星座の全域を見ることができる。
主な天体
小さな星座で、明るい恒星もない。また、この星座にはα星とβ星がない。
恒星
2022年 4月現在、国際天文学連合 (IAU) が認証した固有名を持つ恒星は1つもない[ 4] 。
星団・星雲・銀河
1997年から1998年にかけてハッブル宇宙望遠鏡 が撮像したアリ星雲 。
星座全体が天の川にかかっているので、多くの星雲・星団がある。
由来と歴史
クラウディオス・プトレマイオス の著書『ヘー・メガレー・スュンタクスィス・テース・アストロノミアース では、じょうぎ座の恒星の多くの星は、おおかみ座 とさいだん座 の間のにあるどの星座にも属していない星として扱われていた[ 3] 。フランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユ は、1756年 に刊行されたフランス科学アカデミー の1752年版の紀要『Histoire de l'Académie royale des sciences』に掲載された星図 に、指矩と直定規の星座絵とフランス語 で製図用具の指矩と直定規を意味する l'Équerre et la Règle を描いた[ 3] [ 7] [ 8] 。ラカーユの死後の1763年 に刊行された著書『Coelum australe stelliferum』に掲載された第2版の星図では、ラテン語で短縮した「Norma」と呼称が変更されている[ 3] [ 9] 。
1801年 にヨハン・ボーデ が刊行した『ウラノグラフィア』では指矩と直定規を意味する Norma et Regula として描かれた[ 3] 。また19世紀末のアメリカのアマチュア博物学者リチャード・ヒンクリー・アレン によると「ユークリッドの定規」を意味する Quadrans Euclidis と呼ばれたとされる[ 10] 。
1922年 5月にローマ で開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Norma 、略称は Nor と正式に定められた[ 11] 。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。
ラカーユがじょうぎ座を設けた際、彼はα星からμ星まで10個の星をリストアップしていたが、α星とβ星はフランシス・ベイリー が1845年 に刊行した『British Association Catalogue』でさそり座 の領域に無名の星として加えられた[ 12] 。後にベンジャミン・グールド によって、α星はさそり座N星 、β星はさそり座H星 とされた[ 12] [ 13] 。
呼称と方言
日本では、1910年 (明治43年)2月刊行の日本天文学会 の会誌『天文月報』第2巻第11号で星座名の改訂が示された際に「定規 」という呼称が使われている[ 14] 。この訳名は、1925年 (大正14年)に初版が刊行された『理科年表 』にも「定規(ぢゃうぎ)」として引き継がれた[ 15] 。戦後の1952年 (昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[ 16] とした際に、Norma の日本語の学名は「じょうぎ 」と定められ[ 17] 、これ以降は「じょうぎ」という学名が継続して用いられている
天文同好会 [ 注 1] の山本一清 らは、既にIAUが学名を Norma と定めた後の1931年(昭和6年)3月に刊行した『天文年鑑 』第4号で、星座名を Norma alias Quadra Euclidi 訳名「水準と方形定規」または Norma et Regula 訳名「水準と定規」と紹介し[ 18] 、以降の号でもこの星座名と訳名を継続して用いていた[ 19] 。
脚注
注釈
出典
^ a b c d “The Constellations ”. 国際天文学連合 . 2023年1月15日 閲覧。
^ “星座名・星座略符一覧(面積順) ”. 国立天文台(NAOJ) . 2023年1月1日 閲覧。
^ a b c d e Ridpath, Ian . “Norma ”. Star Tales . 2023年1月15日 閲覧。
^ “IAU Catalog of Star Names ”. 国際天文学連合 . 2023年1月9日 閲覧。
^ "gam02 Nor" . SIMBAD . Centre de données astronomiques de Strasbourg . 2023年1月15日閲覧 。
^ "PN Mz 3" . SIMBAD . Centre de données astronomiques de Strasbourg . 2023年1月15日閲覧 。
^ Ridpath, Ian . “Lacaille’s southern planisphere of 1756 ”. Star Tales . 2023年1月7日 閲覧。
^ “Histoire de l'Académie royale des sciences ” (フランス語). Gallica . 2023年1月7日 閲覧。
^ “Coelum australe stelliferum / N. L. de Lacaille ”. e-rara . 2023年1月15日 閲覧。
^ Allen, Richard H. (2013-2-28). Star Names: Their Lore and Meaning . Courier Corporation. pp. 293-294. ISBN 978-0-486-13766-7 . https://play.google.com/books/reader?id=vWDsybJzz7IC&pg=GBS.PA293
^ Ridpath, Ian . “The IAU list of the 88 constellations and their abbreviations ”. Star Tales . 2023年1月5日 閲覧。
^ a b Wagman, Morton (2003). Lost Stars: Lost, Missing and Troublesome Stars from the Catalogues of Johannes Bayer, Nicholas Louis de Lacaille, John Flamsteed, and Sundry Others . Blacksburg, Virginia: The McDonald & Woodward Publishing Company. pp. 215-16. ISBN 978-0-939923-78-6
^ Gould, Benjamin Apthorp (1879). “Uranometria Argentina: Brightness and position of every fixed star, down to the seventh magnitude, within one hundred degrees of the South Pole; with atlas” . Resultados del Observatorio Nacional Argentino 1 : I-387. Bibcode : 1879RNAO....1....1G . OCLC 11484342 . https://articles.adsabs.harvard.edu/pdf/1879RNAO....1D...1G#page=192 .
^ 「星座名 」『天文月報 』第2巻第11号、1910年2月、11頁、ISSN 0374-2466 。
^ 東京天文台 編『理科年表 第1冊 』丸善 、1925年、61-64頁。https://dl.ndl.go.jp/pid/977669/1/39 。
^ 『文部省学術用語集天文学編(増訂版)』(第1刷)日本学術振興会、1994年11月15日、316頁。ISBN 4-8181-9404-2 。
^ 「星座名 」『天文月報 』第45巻第10号、1952年10月、13頁、ISSN 0374-2466 。
^ 天文同好会 編『天文年鑑 』4号、新光社 、1931年3月30日、6頁。doi :10.11501/1138410 。https://dl.ndl.go.jp/pid/1138410/1/11 。
^ 天文同好会 編『天文年鑑 』10号、恒星社 、1937年3月22日、4-9頁。doi :10.11501/1114748 。https://dl.ndl.go.jp/pid/1114748/1/12 。
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