ミレニアム囲い
ミレニアム囲い(ミレニアムがこい)とは、将棋の振り飛車戦法に対する居飛車側の囲いの一つ。 歴史2000年頃よりプロ間で意識的に指され始めたことにより、ミレニアム囲いという名がついた。別名、三浦囲い、かまくら囲い、蒲鉾囲い(島朗著『島ノート 振り飛車編』(講談社、2002年)で「カマボコ囲い」)、トーチカなどとも呼ばれる[1]が、そのうち右図の6六角型を特に「トーチカ」と呼んでいる[2]。 神谷広志著『禁断のオッサン流振り飛車破り』(マイナビ出版、2016年)では「ホラ囲い」としている。 プロ棋戦では三浦弘行が用い始めた。三浦によると、もともとは中村修が使用していたという[注 1][3]。 第59期名人戦第3局(2001年5月8-9日、千日手局)では当時の丸山忠久名人が使用した。 この戦法をプロ間で確立したことで、三浦は新手・新戦法を表彰する将棋大賞の升田幸三賞を受賞した(2001年度)[4]。また流行のきっかけを作ったのは、ネットで活動するアマチュアの愛棋家であったともいわれ、「西田スペシャル」の名で三浦以前から知られていた[5]。 藤井システムが猛威を振るっていた当時、居飛車穴熊と異なり、角と桂馬によって玉を狙われにくいために、有力な戦法として定着した。しかし手数がかかる割には穴熊ほど堅くなく、組み上げる手間を逆用して、振り飛車側が穴熊に組む対応を見せられ、藤井システムへの完全な対抗策には至らなかった。 その後、居飛車穴熊や急戦による藤井システムへの対抗策が確立したこともあり、2006年以降、プロ間ではあまり指されなくなった(藤井システムも参照)。一例として、2017年度NHK杯将棋トーナメント(同年4月~2018年3月・放送)では1回戦から決勝戦までの全対局でも、わずか1局しか登場していない。 ところが、2018年ごろから再びミレニアムが指されることが急増した。新しいミレニアムは藤井システムとは無関係に、左桂を攻めに活用できる囲いとして活用されている[6]。 さらに、振り飛車側がミレニアムに組む新しい戦法も考案されている[7][8]。 特徴上図のように囲い方には二つの種類があり、所司和晴著『東大将棋ブックス 四間飛車道場 第一巻 ミレニアム』(毎日コミュニケーションズ、2001年)では先手6筋の状態で、6六角型と6七金型とに区分している。 上図の2つの囲いどちらも、左桂馬の位置に玉将を置き、金将や銀将3枚(又は4枚)で玉を囲う。 特に6七金型は、上部に強くするために右図のようにすることもある。 堅さではいずれも、穴熊囲いより多少劣り、串カツ囲いと同等で、美濃囲いの類より堅い。 穴熊囲いとの決定的な違いとして、玉が相手の角筋からそれていること[9]、左桂を攻めに使いやすいことが挙げられる[9]。左桂の初期位置に玉将を置くという点では、菊水矢倉と共通する。 端(9筋)の守りという観点で比較すると、串カツ囲いは銀と桂、ミレニアム囲いは銀と香で守っている。玉を先手8筋(後手2筋)に置くため、端攻めにも耐久性をもつ反面、中央からの遠さという点では穴熊囲い・串カツ囲いには及ばない。 一段玉のかたちで自陣に深く囲うため、敵陣から遠いが、それをもってしても上部からの攻めに強いとは必ずしも言いがたく、これも弱点の一つである[10]。また、穴熊と比較すると、一路中央に近いため、と金攻めに弱さを見せる[11]。 手順
対四間飛車。藤井システム模様の後手の指し方はあくまで一例。
1...▲6六角。 (fig.1-1) 地下鉄飛車と同じ出だし。桂馬を跳ねられるよう6六の地点まで出る。 2...△6四歩。 (fig.1-2) △5四歩であると、▲7五角と覗かれる手もある。 3...▲7七桂。 (fig.1-2) 玉の位置8九の地点を開けるとともに、後手左銀の玉頭銀進出をけん制。 4...△6二玉。 (fig.1-3) 次に▲5七角の速攻を警戒。 5...▲8九玉。 (fig.1-3) 玉を深く囲う。
6...△5二金。 (fig.1-4) 美濃囲いの完成と、4三の銀との連結、5三地点のケア。 7...▲7九金。 (fig.1-4) 玉の脇を固める。 8...△7一玉。 (fig.1-5) 玉を囲いに入場させる。 9...▲6八金 △7三歩。 (fig.1-5) ひとまず美濃の形になる。玉を9八に移動すれば端美濃。 10...▲7八金。 (fig.1-5) 玉の脱出経路として開けておいてもよいが、さらにトーチカに固める。玉を9八に移動すれば串カツ囲い。 11...△6三金。 (fig.1-6) 高美濃。場合によっては△5四金~6三銀~7二飛の7筋からの攻撃をみる。 12...▲5九銀 △8二玉。 (fig.1-6) 角の可動域を確保するため、5七でなく5九に銀を移動。 13...▲6八銀。 (fig.1-6) 完成。
対四間飛車。藤井システム模様の後手の指し方はあくまで一例。
1...▲7七角。 (fig.2-1) 居飛車穴熊と同じ出だし。次に6八角と引き角にして。飛車先突破の狙いもある。 2...△5二金。 (fig.2-2) 4三の銀に紐付けと、5三地点のケア。 3...▲6八角△6二玉。 (fig.2-2) 狙いの▲2四歩速攻を狙う。後手このままでは▲2四歩△同歩▲同角に△2二飛が利かない。△2二飛を利かせるため、後手は玉を動かす。 4...▲6六歩△7四歩。 (fig.2-3) 陣に厚みをもたせる。 5...▲6七金△7三桂。 (fig.2-3) 6七金型に構え、上部からと角道を生かした攻撃に備える。 6...▲7七桂。 (fig.2-3) 上部からの攻撃に備えつつ、玉が来る場所を開ける。
7...△6四歩。 (fig.2-4) 6筋からの攻撃態勢と高美濃への発展、先手角の覗きに備える。 8...▲8九玉△4五歩。 (fig.2-4) 先手はミレニアム囲いを示す玉の動き。左美濃や穴熊ならば、▲8八玉。後手は四間飛車の飛車先を伸ばし、攻撃態勢に。 9...▲7八金。 (fig.2-4) 先手はミレニアム囲いを示す金の動き。左美濃や穴熊ならば、▲7八銀。 10...△8二玉。 (fig.2-5) 将来的な角筋を避け、玉を囲いに入れる。 11...▲5七角△5四歩。 (fig.2-5) 先手の角上がりは6筋のケアと6八の地点を開けて、右銀をここに移動させる意味。後手は玉を8二に移動したので、5筋の歩を突く。この手で△4四銀には先手▲3六歩としておき、後手右銀3五への動きをけん制する必要がある。 12...▲5九銀△8四歩。 (fig.2-5) 次に6八に移動させる意味であるが、4八の位置では△4四銀や△6三金とされても、▲2四歩では△同歩▲同角△2二飛▲3三角成△2八飛成で、4八の銀が浮いている。後手△8四歩は玉の懐を広げる。右銀が移動したので、ここで△4四銀や△6三金は、上記の通り▲2四歩。 13...▲6八銀。 (fig.2-5) 先手は右銀の移動を完了。右銀が囲いに付く。タイミングをみてさらに▲8八銀~7九銀右とする。 14...△9五歩。 (fig.2-6) 後手端歩を突いて、タイミングを計る。 15...▲8八銀△4四銀。 (fig.2-6) 先手は▲8八銀~7九銀右型を目指した指し手。このとき先手玉の脇が開いたので、後手は△4四銀と進出。 16...▲7九銀右。 (fig.2-6) 先手は囲いを完成。 脚注注釈出典
参考文献
関連項目外部リンク
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